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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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第百八十話 血塗れた宝剣

血塗れた宝剣アバランシェ


それは呪いの剣の名前だ。遥か昔より人々の信仰を得て栄光を掴んだ元光属性最上級精霊ペンドラゴンが持っていた輝く栄光の剣カリバーンの成れの果て。


ペンドラゴンは遥か昔からいる、ディアボルガよりも古株の精霊だった。実際の実力は並の剣士では瞬殺され、どんな実力者ですらその精霊武器の前では霞む存在。それがペンドラゴンと輝く栄光の剣カリバーンだった。


だが、そんな栄光の最中にいたペンドラゴンを倒したのが若い精霊だったルカ。ペンドラゴンからしたら赤子の存在だったが、ルカの持つ本来の精霊武器であるエッケザックスやルカの能力である遠距離への斬撃を巧みに使い、ルカはペンドラゴンを倒した。


もちろん、一度倒してもペンドラゴンはすぐさまルカに再戦した。だが、結果は同じだった。それはルカが剣士としても天才であったからだけど、ペンドラゴンが栄光の座から落ちたためだとも言われている。


十回戦い十回負けたペンドラゴンはルカが反則をしていると言い始めた。だが、すでにルカの強さに熱狂していた精霊界はルカにセイバーの名と剣聖の名を与えた。


ペンドラゴンはそれに怒って精霊界から離脱、とある人物と契約したんだが、まあ、それから一年くらい経った頃かな。


オレがルカとディアボルガと契約してからしばらく経って周を経由して音姫さんと初めて出会ったんだ。音姫さんは当時から人気絶頂で世界中の有名な剣士と戦っていたんだ。だから、精霊界で剣聖の名を持つセイバー・ルカと手合わせするために。


そんな手合わせの場に突如として現れたのがペンドラゴンと契約した男、カイネル。カイネルの手には輝く栄光の剣カリバーンではなく、禍々しいくらい赤黒い剣があり、同じような血の色をしたオーラを纏っていた。


ペンドラゴンの気配に気づいたルカはすかさずカイネルに斬りかかろうとしたけど、それより早く音姫さんがカイネルに斬りかかったんだ。だけど、音姫さんは負けた。


刀の刃は血塗れた宝剣アバランシェの壁に阻まれて赤黒い剣によって斬り裂かれた。もちろん、寸前で審判役の周が間に入ったから大きな傷にはならなかったけど、この場では戦闘不能になるような傷だった。


オレはルカとシンクロをして周の二人と戦ったけど、周が武器を折られて離脱。劣勢になったところで音姫さんが傷を抱えながらも斬りかかったんだ。


でも、それでも血塗れた宝剣アバランシェには勝てなかった。オレもルカも音姫さんも負けて、カイネルがオレ達を殺そうとした時、ディアボルガが自らの精霊武器を使ってオレ達を助けたんだ。


一撃でペンドラゴンは消滅。カイネルは深手を負って死んだ。


エッケザックスや音姫さんの剣技ですら血塗れた宝剣アバランシェの壁は貫けなかった。


血塗れた宝剣アバランシェとの因縁を簡単に説明したならこうなるな。




「と、オレと音姫さんの血塗れた宝剣アバランシェに対する因縁はこんなものだな」


「思っていた以上にすごい因縁だったね。でも、音姫はどうしてその頃に光輝を使っていなかったの? 神剣である光輝なら血塗れた宝剣アバランシェくらい簡単に斬れそうなのに」


「使っていなかったというより所持させてもらえなかったが正しいかな。当時の私は確かに天才でも白百合の中じゃ三本の指に入るのが精一杯だったし、光輝は白百合の秘剣だから。狭間市では相手が相手だから光輝を使ったけど、本来ならもっと後にお披露目予定だったんだよ」


当時で三本の指に入る実力の時点でかなりおかしいが、確かにまだ上がいるのに光輝を持たされることはないな。


それこそ、実力が上の奴が反発するだろうし。


「そうなんだ。っと、話がズレた。えっと、血塗れた宝剣アバランシェの能力が狂人化って言っていたけど、あれはどうして? 因縁を聞いただけじゃ斬れないオーラとしかならなかったし」


「それは難しいところなんだよな。血塗れた宝剣アバランシェって名前も能力が狂人化であることもカイネルの自称なんだ。『GF』のデータベースには血塗れた宝剣アバランシェなんて能力はない。もちろん、血塗れた宝剣アバランシェに似た能力もないからそう考えているだけ」


「狂人化というのもあの後、弟くんがカイネルの身辺調査をしてくれたんだけど、ペンドラゴンと契約する前のカイネルは温厚で動物を可愛がる優しい青年だったって結果になってたの。血塗れた宝剣アバランシェというあのオーラがカイネルを変えたのか輝く栄光の剣カリバーンが堕ちた姿がカイネルを変えたのかわからないけど、血塗れた宝剣アバランシェが血を吸って強化される以上、人を狂わす能力だと考えたの」


あれはあれで驚いたのを覚えている。言うなら、事件を起こした犯人の近くに住む住人が「こんなことをするような人には思えなかった」と言うのと同じだった。


周は聞き取りをした人達が嘘をついていないのはあいつが証明をしている。周が嘘をつくわけがないし、周が嘘をわからないわけがない。


つまり、血塗れた宝剣アバランシェには人を狂わす能力があると判断出来る。


「じゃ、模写術師コピーライター血塗れた宝剣アバランシェを使った理由は? 悠聖の話だとペンドラゴンは消滅したと言っていたし、消滅した精霊は魔力粒子に還元されて消え去るんじゃなかったっけ」


そう。精霊が消滅又は生命活動が出来ないくらいのダメージを受けた時、精霊界に戻る選択肢を取らなければ精霊は消滅する。消滅した精霊がどうなるかは謎な部分は多いが、リリィが言ったように魔力粒子に還元される説が有力だ。


ただ、それを証明するようなはっきりとした論文は無く、実験はされたことはあるが、精霊はすぐさま精霊界に戻り契約主との契約を打ち切ったと聞いている。


証明されたことはない。だが、消滅した精霊は一度も復活していないというのも事実だ。


「ペンドラゴンはディアボルガが倒した。消滅の瞬間はオレ達も見ていたし、あれは間違いなく消滅したとディアボルガも言っていた。もし、ペンドラゴンが生きているなら執拗にルカを狙うはずなんだ」


「ペンドラゴンが立っていた栄光を壊したから」


「それもあると思うが、ペンドラゴンがルカを見る目が狂っていたって話なんだ。まあ、今はペンドラゴンがいないからどうしようもないけど」


オレ達の前に再びペンドラゴンが立っていない以上、ペンドラゴンは消滅したと考えた方がいい。


だけど、ペンドラゴンが消滅したなら模写術師コピーライター血塗れた宝剣アバランシェを使った理由がわからない。模写術師コピーライターはどのタイミングで血塗れた宝剣アバランシェを手に入れたのだろうか。


模写術師コピーライター血塗れた宝剣アバランシェを使う理由がわからないか。悠聖は血塗れた宝剣アバランシェ模写術師コピーライターが持っていることに疑問を感じているよね?」


「ああ。模写術師コピーライターは最大で三週間ほどしかコピーを維持出来ない。そうなると、三週間以内に血塗れた宝剣アバランシェの持ち主と合わないといけない」


「だけど、血塗れた宝剣アバランシェの持ち主は悠聖達が過去に倒した。だから、模写術師コピーライター血塗れた宝剣アバランシェを持つ理由がわからないってことか。あー、確かに意味不明かも。血塗れた宝剣アバランシェの持ち主が他にいたなら模写術師コピーライター血塗れた宝剣アバランシェを使う理由にはなるけど、そうなると血塗れた宝剣アバランシェの持ち主はペンドラゴンと契約していることになる。でも、ペンドラゴンは悠聖達が消滅させた。だけど、模写術師コピーライター血塗れた宝剣アバランシェを使えるから」


「リリィ。完全にループしているから」


答えを出す方法はない。答えは今は出せないから。あまりに情報が少なすぎる。


そうしているとドアが勢いよく開いた。そこにはミューズレアルとシンクロをして最速でやってきたであろう俊也が息を切らせながらそこにいる。


まさか、もうクロラッハ達が来たのか。


「はぁはぁはぁ、大変だよ。首都で、反乱が起きた。首相は行方不明。首都にいる第76移動隊のみんなとも連絡が取れない」


「七葉」


その事を聞いたオレは真っ先に七葉の顔が思い浮かんだ。


頼むから、無事でいてくれ。

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