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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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第百七十二話 二つの力

「ダヴィンスレイフ!」


模写術師コピーライターがオレ達に向かってダヴィンスレイフを放ってくる。だが、ダヴィンスレイフはリリィの持つアークレイリアの力によって弾かれた。その代わり、血塗れた宝剣アバランシェを纏う模写術師コピーライターが突撃してくる。


ダヴィンスレイフを操作しながら。


「悠聖、血塗れた宝剣アバランシェの能力は何なの!?」


アークレイリアの力で模写術師コピーライターを吹き飛ばしながらリリィが尋ねてくる。オレは吹き飛ばされた模写術師コピーライターに向かってエッケザックスを振り抜くがそれは血塗れた宝剣アバランシェを纏う腕によって受け止められた。


すかさず刃を消してダヴィンスレイフに巻き付かれるのを防ぐ。


「狂人化って言っただろ。身体能力を強化しながら体のリミッターを解除。痛みも感じなくする能力だ! 血塗れた宝剣アバランシェなんてものは本来ありえないはずなんだけどな!」


模写術師コピーライターが放つダヴィンスレイフを回避しながらオレは隙を窺うようにエッケザックスを構える。


ダヴィンスレイフはかなり厄介だ。だが、ダヴィンスレイフよりも血塗れた宝剣アバランシェの方がさらに厄介だ。


リリィもアークレイリアの力をダヴィンスレイフではなく模写術師コピーライター中心に使用していく。ダヴィンスレイフよりも血塗れた宝剣アバランシェの方が危険だと本能的にわかっているのかもしれない。


「悠聖。私が突撃してみる。ダヴィンスレイフは私が弾けるから」


「駄目だ。血塗れた宝剣アバランシェはそれだけじゃ食い止められない」


オレはとっさにリリィに手を伸ばすがリリィは素早く地面を蹴った。こうなったら援護するしかない。


オレはルカとのシンクロを解除してこの場で出来る最高のシンクロを行うために二人を呼び出す。


「アルネウラ! エルブス!」


『了解だよ!』


『行きましょう』


すかさず二人とダブルシンクロを行い『破壊の花弁デスペルタル』を模写術師コピーライターに向かって放った。だが、模写術師コピーライターはリリィがアークレイリアを握り締めながら突撃しているのを見つつ『破壊の花弁デスペルタル』に向かってダヴィンスレイフを放つ。


アークレイリアの加速があれば血塗れた宝剣アバランシェの防御を貫ける可能性は高いはずだが、それなら何故ダヴィンスレイフを『破壊の花弁デスペルタル』に向かって放つのだろうか。


その考えが頭の中に過ぎり、相手が三重装填トリプルストックだったことを思い出してオレは叫んでいた。


「リリィ! 下がれ!」






一瞬、何が起きたかわからなかった。わかったのは目の前に迫っていた模写術師コピーライターの手にいつの間にか先程まで悠聖が持っていた刃の無い柄だけの剣が握られていたことくらい。


私はすかさずさらに速度を上げてその剣に刃があれば斬られるであろう軌道を避けながら地面を蹴る。


神速を見に纏い、模写術師コピーライターを確実に殺せるように私は左胸に向かってアークレイリアを突いた。


「クロノスエッジ!」


だが、アークレイリアが血塗れた宝剣アバランシェの輝きに弾かれる。とっさに弾かれた力を利用しながら後ろにステップを取り、さらに前に踏み込んだ。


「アサルトエッジ!」


寸分違わずアークレイリアによって突かれた場所は変化なく、禍々しい血の色のオーラによってアークレイリアは完全に受け止められていた。


アークレイリアの切っ先が震える。いや、私の手が震えている。


「惜しかったですね~。もし、本当の血塗れた宝剣アバランシェだったなら今頃死んでいましたよ~」


「くっ」


私は後ろに下がった、はずだった。だが、後ろに跳んだ私と模写術師コピーライターの距離は変わっていない。


「残念でした~。あなたはすでに私の能力の中に囚われていますよ~。白川悠聖はダヴィンスレイフによって助けに来れない。あなたはここで死ぬのです。そして、アークレイリアを渡しなさい」


「嫌」


すかさずアークレイリアを振ろうとする。だけど、それは魔力の鎖が私の体を拘束することで出来なくなっていた。


恐怖が、私の体を襲う。


「アークセラーは破壊されましたが~、アークセラーを破壊したアークレイリアにはアークセラーの力があります~。さあ、私に全てを」


「『破壊の花弁デスペルタル』!」


悠聖の叫びが聞こえた瞬間、水晶の花びらが模写術師コピーライターに向かって襲いかかっていた。模写術師コピーライターはすかさず私を拘束していた鎖を消しながら『破壊の花弁デスペルタル』から距離を取るように後ろに下がる。


私はさらに模写術師コピーライターから距離を取るように後ろに下がろうとした。だが、それより早く私の体が横に突き飛ばされる。


何とかアークレイリアの力で壁への激突を防いだ私が見たものは、不可視の刃によって貫かれた悠聖の姿だった。前面に展開していた『破壊の花弁デスペルタル』の壁は砕け、悠聖の体を正面から背中まで貫いている。


「うぐっ」


「悠聖!」


私は不可視の刃に最速まで加速したままアークレイリアを叩きつけた。だが、不可視の刃はアークレイリアを弾く。


「エッケザックスは、砕けない刃。アークレイリアじゃ、破壊出来ない」


「でも!」


「こうなったら、お前だけで模写術師コピーライターを倒せ。今のアークレイリアには、アークセラーの力もあるだろ?」


弱々しい、だけど、意志はしっかりと籠もった声に私は頷いた。そして、模写術師コピーライターに向かってアークレイリアを構える。


模写術師コピーライター血塗れた宝剣アバランシェを纏ったままエッケザックスの持つ不可視の刃を消しつつ構えた。後ろで悠聖が倒れる音がする。


あの傷から見てもまだ助かる範囲だ。それに、悠聖には水属性精霊がいる。


「この剣は使い易いですね~。でも、あなたの腕を頂かないといけない以上、捨てないといけませんね」


模写術師コピーライター。私はあなたを倒す。全ての力を使って」


「倒せますか~? アークレイリアの力でダヴィンスレイフは弾けても、血塗れた宝剣アバランシェとエッケザックスは弾けない。それに、エッケザックスは砕けませんからね~」


「なるほどな。それは良いことを聞いた」


背後で悠聖の声が響く。弱々しさは無くなっているから傷は塞がったのだろう。良かった。心置きなく戦える。


血塗れた宝剣アバランシェは弾くことは出来るんだな」


「白川悠聖。あなたは何が言いたいのですか?」


模写術師コピーライターの問いに悠聖はフッと笑い、そして、何かを誇示するように言葉を紡いだ。


「なあ、模写術師コピーライター。アークセラーの力は相手に振動を叩きつける能力だったのか?」


「何を今更。そうですよ~」


「そうか。なら、振動は音もなんだぜ」


その言葉に私はアークレイリアを見た。


振動も音。魔術の中には音を増幅させて叩きつける攻撃魔術も存在する。もちろん、燃費はかなり悪いし相手へのダメージが極めて高い。


音を、振動を叩きつけるということは相手の体全てにダメージを与えるからだ。それは殴られるのと同じ衝撃となる。なのに、お爺ちゃんがあの海道正に放ったものはそんなものじゃなかった。


ただ、海道正を吹き飛ばすだけの能力。アークレイリアと一緒ならわかるけど、海道正だけをターゲットとした能力。つまり、アークセラーの力は違うもの。


「それが何だと言うのですか~。音が無いから振動じゃないと言うのですか~?」


「違うな。振動ってのは操るのが難しいんだ。それこそ、指向性を持たせないと無差別に攻撃してしまうくらいにな。だから、大丈夫だ、リリィ」


悠聖は私に語りかける。優しい声で背中を押してくれる。


「信じろ。お前のお爺ちゃんを」


「うん!」


だから、私は前に踏み出す。アークレイリアを握り締めながら。


この攻撃は一回だけしか出来ないだろう。血塗れた宝剣アバランシェの力は未知数だし、エッケザックスの力は未だによくわかっていない。アークセラーの力が本当にあれなら一回でも見られたら警戒されて終わりだ。だから、一回でも決めないと。


「無駄ですよ~」


模写術師コピーライターがダヴィンスレイフを放ってくる。私もわかっていた行動だ。だから、ダヴィンスレイフを全てアークレイリアの力で軌道を変えて無力化にした。


まずは一つ目。次は模写術師コピーライターが握るエッケザックス。


あの位置から悠聖を貫いたということはエッケザックスが持つ不可視の刃は射程をいくらでも変えられるということ。つまりはエッケザックスの先にいる敵は簡単に貫ける。だから、エッケザックスの動きを見切って回避する。


私は床を蹴って壁を走った瞬間、エッケザックスの不可視の刃が私がいた床を貫いていた。慌てた模写術師コピーライターがエッケザックスを構え直そうとするけどそれより早く懐に飛び込む。


残るは、血塗れた宝剣アバランシェのみ。


模写術師コピーライターは笑みを浮かべながら勝利を確信し、私も笑みを浮かべながらアークレイリアを全力で突く。


血塗れた宝剣アバランシェを拒絶しながら。


「クロノスエッジ!」


そして、アークレイリアはまるで磁石の同じ極が反発しあうかのように弾かれあった血塗れた宝剣アバランシェの間を駆け抜け、模写術師コピーライターの左腕を大きくえぐった。


「あがっ」


模写術師コピーライターが左腕を押さえながら一歩後ろに下がる。私も一歩後ろに下がり、前に踏み出した。


「アサルトエッジ!」


今度は模写術師コピーライターの左脇腹を切り裂く。後はこのまま殺すだけ。そう思った瞬間、血塗れた宝剣アバランシェが蠢いたのがわかった。


とっさに大きく後ろに下がりながらエッケザックスを警戒する。だが、模写術師コピーライターは痛みを堪えるように私を睨みつけながら左腕の傷を右手で押さえている。


かなり深くえぐったものの致命傷にはほど遠い簡単に治癒出来る傷。だが、その傷口から血が血塗れた宝剣アバランシェに流れていた。


「この借りは、いつか返します」


その言葉と共に模写術師コピーライターが身を翻す。私も身を翻して悠聖に駆け寄った。


すでに傷口は塞がっており顔も血色がいい。それを見た私は安堵の息を吐いた。


「良かった。大丈夫みたいで」


「いや、まあ、エッケザックスの能力だからな」


「能力?」


私が不思議そうに首を傾げると悠聖は少しすまなさそうな顔で頷いた。


「エッケザックスは傷つけることが出来ないんだ。いくら斬ったところで血は出ないし、精神的なダメージしか与えられない。優しい剣なんだ」


「何、それ」


「まあ、それがバレたらみんなエッケザックスを警戒しなくなるって、痛い痛い。リリィ!」


私は涙を流しそうになりながら悠聖の胸をポカポカと叩いた。そして、悠聖の胸に顔をうずめる。


「心配したんだから」


「悪い。それにしても、あれだけでよくアークセラーの能力に気づいたよな」


おそらく、悠聖は最初から疑っていたのだろう。アークセラーの能力を。だから、真っ先に気づくことが出来た。


アークセラーの能力は『振動を叩きつける』能力ではなく、『拒絶する』能力ということを。


「悠聖のおかげだから。これから私達はどうする? このまま機関部、きゃっ」


凄まじい振動によってクルシスが震えた。今まで模写術師コピーライターと戦っていたからか状況が全くわからない。


悠聖は『破壊の花弁デスペルタル』で足場を作りながら近くにある破壊された壁を指差した。


「じゃあ、外に出るか」

リリィがパワーアップしまくってます。まあ、天王になると宣言した以上、あの天王マクシミリアンと同等の力以上を持たないといけなくなっているからですけど。

つまり、リリィはリリーナと一緒にさらにパワーアップします。最後のアークの戦いはどうなることやら。

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