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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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第百六十九話 たった一つの能力

セルゲイがアークレイリアの光の刃をアークセラーで弾いた。それにリリィはとっさに後ろに下がり、セルゲイが後ろに下がろうとするリリィに狙いをつける。


だが、リリィは下がった足が床についた瞬間前に飛び出していた。さすがのセルゲイもそれには反応出来なかったのかギリギリでアークレイリアからアークセラーを体で守りつつ後ろに下がる。


今のは綺羅朱雀のステップ。


『上手く運動方向を操作してるよね。あそこまで完全に出来るってのはすごいね』


いや、そういう意味で驚いているんじゃないから。


『どういうこと?』


リリィがすかさずセルゲイを攻め立てようとする。だが、セルゲイはすかさずアークセラーの弦を鳴らした。リリィはギリギリで受け止めるが大きく後ろに下がる。


通路上だから援護出来るような状況じゃない。


「お爺ちゃん。降参して。お爺ちゃんは私には勝てない」


「何を言う、リリィ。むしろ逆だ。我にリリィ勝てない」


「私とアークレイリアには反射がある。お爺ちゃんの攻撃を反射して私は攻撃を加えることが出来る」


ああ、疑問に思っていたのはそこだったのか。


『何が?』


オレの呟きにアルネウラが反応する。


さっきリリィが放った綺羅朱雀のステップの突きだよ。里宮本家八陣八叉流の綺羅朱雀はあくまで繋ぎの技なんだ。


『繋ぎって。由姫のあれも?』


あれは重力を拳に乗せて威力を倍増させてるから例外。だから、リリィの攻撃もあくまで繋ぎのはず。


そもそも、後ろに下がった瞬間に前に出るのは幾ら氷属性、方向性を操る魔術に長けていても速度と威力が落ちてしまう。しかも、長けていなければ速度は激減する。


まるっきり逆方向に力をかけるのだから激減するのは無理はない。だが、問題はセルゲイが思わずアークセラーを体で守ってしまう速度だ。つまり、あの時のアークレイリアはアークセラーを破壊する可能性があったと考えられる。


アークベルラが分身を作り出す能力。アークフレイは特殊能力は無いが強力な剣と鎧。アークセラーは振動を発生させる能力。ならば、アークレイリアは、


『指向性強化操作。氷属性魔術のカテゴリーに位置しながら絶対に作用出来ない不可能魔術』


だろうな。反射も加速も指向性の攻撃を操作してかつ強力にして叩きつけている。確かに、ポテンシャルが一番だな。


アークレイリアの能力を極めたならリリィはどんな相手にも負けないだろう。だが、リリィは気づいていない。アークレイリアのポテンシャルの大きさに。


「反射? そんなもので我を倒せるというのか? 面白い。面白いの、リリィ。ならば、アークセラーの奥義を見せてやろう」


セルゲイがアークセラーを構える。対するリリィもアークレイリアを構え、そして、オレは前に飛び出していた。


ギリギリで見えた魔力の塊をチャクラムで斬り裂く。それはちょうどリリィの顔の前。


「てめぇ、セルゲイ! リリィはお前の孫だろうが!! 今のは完全に殺す気」


「邪魔だな、小僧。ああ、邪魔だ。こいつも」


セルゲイの顔に笑みが、いや、顔が狂ったような笑みを浮かべるように歪んだ。狂っているんじゃない。これは、


「お前は誰だ」


オレはチャクラムをセルゲイ、いや、何かわからない存在に向ける。


「悠聖、何が」


「だから小娘は嫌いだったんだ。我が主の贄にするために育てていたが、やはり、無理だったか」


セルゲイの声質のまままるで精神が入れ替わったようだった。いや、違う。精神が入れ替わったんじゃない。リリィはセルゲイが操られていると思っている。


だけど、風霊神が操られるのか? むしろ、これは、


「お爺ちゃん。何を言っているの?」


「ここで死ね、リリィ。それこそが祖父に対する恩返し」


「いや、違うな。お前は本当にセルゲイか? いや、答えてやるよ、模写術師コピーライター


「何を言っている?」


セルゲイがオレにアークセラーを向ける。だが、そのアークセラーが微かに震えているのを見てオレはニヤリと笑みを浮かべた。


「最初はわからなかったぜ。肩はえぐられているしノートゥング受けた様子なのに平然としているからさ。最初はお前が操られていると思った。自分の意思に反して戦っていると。それにしてもおかしいんだ。風霊神ならもっと風属性魔術を使ってもいいんじゃないか?」


セルゲイが使っていたのはアークセラーの力だけ。風霊神ならもっとアークセラーの力を使ってもいいはずなのに。


そして、オレがこの考えにいたったにはもう一つだけ理由がある。


「それにな、ノートゥングが直撃したなら例え操られていても、神経を強制的に疑似的なものに繋げて動かせる周ですら体を動かすことは出来ない。つまり、ノートゥングは当たっていない。当たっていない上に当たったように見せられただけなんだ。そうだろ、模写術師コピーライター


「くっくっくっ、あははははっ」


セルゲイ、いや、模写術師コピーライターが声を上げて笑うのと同時に腕以外がセルゲイから姿を変える。俊也から聞いていた模写術師コピーライターの姿に。


ニコニコと浮かべた笑みには誰が見ても悪意の笑みだとわかった。それほどまでに黒い笑み。


「まさか、簡単にバレるとは思いませんでしたよ~。白百合音姫ならともかく、まさか白川悠聖にバレるなんてね~。そこの小娘は気づきませんでしたけど」


「そもそも、ノートゥングの効果をリリィは知らないからな。知らないなら無理はないだろ」


「お爺ちゃんをどこにやったの」


リリィがアークレイリアを構える。だが、その切っ先は震えていた。それを見た模写術師コピーライターが笑みを浮かべる。


まるで、今からリリィを傷つけるかのように。


「殺しましたよ~。天界からの使者でしたけど、今更休戦なんて出来るわけないじゃないですか~。それに、私達の勢力はようやく大義名分を手に入れられる」


「歌姫メリルのことか」


「はい。歌姫さえ手中に収めれば勝ったも同然。歌姫が命令したことにして政府を打倒すればレジスタンスが政府を設立出来るんですよ~。それによってようやく、音界は幸せになれる」


「なんだ。ただの子供か。お前達レジスタンスは何もわかってないよ」


「何ですって?」


模写術師コピーライターの顔から笑みが消える。オレはその表情に笑みを返しながらリリィの手を握った。すかさず握った部分で魔術を発動させる。


リリィ、聞こえるか?


オレは口を開きながら頭の中でリリィに直接語りかけた。


「国というものを知らない奴らってことだよ」


『悠聖? あれ? 頭の中に直接』


表情にも口にも出すな。今はリリィと直接パスを繋いで会話をしている。


「あんた達がやろうとしているのはただ今の政府の立場にお前達がなるだけだ」


『あっ、うん。悠聖、もしかして』


早まるな。今は落ち着け。時間は稼ぐ。


オレは笑みを浮かべながら模写術師コピーライターを指差した。


「お前達はレジスタンスみたいだが、お前達は何のためにレジスタンスとして動いているんだ? オレには欲望のためにしか見えないな」


「何ですって?」


模写術師コピーライターの表情が変わる。どうやら挑発に対する耐性は無いようだ。煽れば煽るほど向こうが冷静を失っていくのはかなりありがたい。


おかけでリリィとの会話の時間が増える。


お前の気持ちはわかる。だけど、今は冷静になれ。


『だけど! お爺ちゃんがあんな奴に殺されたんだよ! 私は、許さない。殺さないと。この手で、殺さないと』


落ち着け! 模写術師コピーライターが持つアークセラーはお前が破壊しろ。アルネウラ、ちょっとだけ頼めるか?


「お前達が政府を打倒しようとしている姿だよ。歌姫を捕まえて勝手に歌姫が言ったようにでっち上げて、自分達の世界を作るために今ある政府を打倒しようとしている。まさに、自分達の欲望のためにしか見えない」


「違う! 私達は音界を救うのです! 地方に支援の手を伸ばし、苦しんでいる人達を助けるために私達は」


「それがわかっていないって言うんだよ!」


『悠聖。私は非常に嫌な予感がするんですけど』


リリィにあの事を教えてやれ。本当の、アークレイリアが持つ力のことを。


『悠聖。どういうこと?』


『あー、わかった。エルフィン、悠聖をお願いね』


「何もわかってねえよ。お前達がなんのために戦っているのか。その理由が曖昧になっているんだ。エルフィン」


アルネウラとのシンクロを解除してエルフィンとシンクロをする。そして、剣を構えた。


「お前の考え、正してやるよ。地方を救うだけじゃこの音界は救われないってことをな」


アルネウラがリリィに説明するまでオレは模写術師コピーライターを引きつけないといけない。


アークレイリアのたった一つの能力。アドバイスするだけでリリィの力は飛躍的に伸びるだろう。だから、今は模写術師コピーライターをどうにかする。


この戦いはリリィが決着をつけないといけないから。

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