第百五十九話 隣
最近、リアルが忙しすぎてヤバいです。全然更新出来ていません。頑張りますけど遅くなります。
悠人やルーイは問題ないだろう。悠人はともかくルーイは音界の軍で揉まれているから連携は出来る。対する悠人も単体ではかなり強いが作戦に組み込むことによってオレや俊也、周のような戦略的に重要な位置に立たすことが出来る。
それこそ、ワンマンアーミーと言っても差し支えのないレベルで。
オレや俊也は問題がない。まあ、オレはディアボルガを、俊也はミューズレアル以外の精霊を失っているけど、セイバー・ルカやミューズレアルの残る最上級精霊は他の最上級精霊と同じ桁違いの強さだ。だから、問題はない。だが、相手はセルファー。
セイバー・ルカの話では前闇属性最上級精霊。闇属性魔術という点ではディアボルガが最強だが、ダヴィンスレイフが厄介な上にディアボルガの真の精霊武器であるあれは使えない。
せめて、冬華がいれば少しは楽になったんだけどな。
「悠聖、ちょっといい」
考え事をしていたオレの背中にリリィが声を投げかけてくる。オレは振り返ってリリィを見た。
さっきまでボロボロだったけど、服装は青のスカートと白のシャツ。薄くおめかしまでしている。
「いいぞ。ただ、考え事をしていただけだからな」
「アルネウラや冬華のこと?」
「それも悩み事であるけど、一番の問題はそっちじゃなくて明日に向かうクロラッハ達のレジスタンスのこと」
「リリーナもミスティも突撃思考すぎるんだから」
「お前もな」
オレは苦笑しながら答えた。あの音姫さんを倒すために立ち向かったリリィは突撃思考と言ってもいいだろう。あの条件なら守りを固めればいいのだから。
まあ、音姫さんのことだから簡単に守りを崩してくるだろうけど。
「悠聖は寂しいんじゃないの?」
「何が?」
「アルネウラが怪我で精霊界に戻って、冬華が敵に捕まって、優月もそばにいない。今の悠聖は一人だから」
「確かにそうだな」
確かに寂しい。今までずっと傍にいてくれた三人は今はいない。特に冬華は操られているから今後、さらに戦う可能性だってある。
すると、リリィがオレの背中に背中を預けてきた。
「天界はね、たくさんのことを教えられるの。人界は悪魔がたくさんいる。魔界は化け物がたくさんいる。音界は虫けらしかいない。天界こそが至高の世界であり神々が住まう土地。ずっと、ずっとそう信じていた。私が持つ純白の翼は選ばれた証だと思っていたし、アークレイリアを手に入れた時だってたくさんの人が祝福してくれた。私は特別なんだって思った。アーク・レーベが次の天王候補だとしても、そのために戦えるんだって。でもね、そんな私を待っていたのは孤独だった」
リリィの語りにオレは何も言い返さず聞いていた。言葉に悲しみが混じっていたからだ。まるで、オレに全てを吐き出すように。
「力の無かった私はまだただの少女でいられた。だけど、アークレイリアを手に入れて、みんなは私を妬んだ。力が無いのに選ばれた相応しくない人物って。私の友達にはたくさん凄い人がいたの。未来の官僚候補もいれば、次期天王候補の候補と言われたくらいにすごい人もいた。でも、私が選ばれたから、みんな、私から離れて行った。その時に私は思ったの。天界が至高なんてありえない。天界にだって悪魔がいるんだって。そう思っても私は何も出来なかった。特別扱いされたから。こんな子供でもアーク・レーベやお祖父ちゃんと同じだったから特別扱いされた。そして、私の隣には誰もいなくなった」
リリィがギュッとオレの手を握ってくる。その手は震えていた。
「悠聖の気持ちはわかるよ。だから、私は傍にいる。悠聖の傍で悠聖を助けることが出来る。悠聖は私と違うから」
「リリィ」
「怖いの。私が天王になったら天界は分裂するんじゃないかって。天王になってもついてきてくれる人が少ないんじゃないかって。不安になるの。また、一人になるんじゃないかって」
リリィの年齢は詳しくは聞いてはいない。だが、オレと同じか下くらいだろう。そんな少女が孤独を恐怖するのは無理もない。
それに、リリィは天界では特別だ。これで負けたりでもしたらリリィは天界にいられないかもしれない。
「私の居場所って、どこにあるの?」
その声はまさに年頃の普通の女の子のような声だった。
リリィとは違ってオレはまだ恵まれているだろう。悲しいことはたくさんあったけど、それでも仲間がいたから。だが、リリィは今まで一人だった。だから、仲間という感覚が薄いのかもしれない。
「なあ、リリィ。音界での騒動が一段落したら第76移動隊に入らないか?」
「えっ?」
「リリィはこれから強くなれると思う。例え、アークの戦いに負けても周ならアークレイリアの能力を再現したデバイスを作れるし、アークの戦いに買っても天王となったお前をオレ達がカバー出来る。悪くはない提案だと思うけど」
「悪くはないけど、それって私が裏切り者だよね」
「だったら、その考えを変えてやればいい」
オレは目の前で拳を握り締めた。
「たかが世界が違うだけで文句を言うならオレがぶっ飛ばす。人界も天界も音界も魔界も等しく生きているんだ。そこに優劣なんてつけるわけにはいかない。なんたって、オレ達は全ての世界を救うんだからな」
自信満々にオレはリリィに言った。何一つオレの力だけでは出来ない。だけど、みんながいてくれたら何だって出来る。オレはそう信じている。
今までだってそうだった。不可能だとかありえないだとか子供だとか、第76移動隊は影で散々言われていたのを知っている。だが、狭間戦役が終わればその声は完全に無くなった。
みんなが、周や孝治達がいればオレ達は何だって出来るんだ。
「悠聖、ありがとう。少しは元気になったかな。悠聖を好きになって良かったよ」
「そっか。それは何よりだ。まあ、オレも大変なんだけどな」
「そうだね。でも、大丈夫」
リリィはオレに笑みを浮かべながらそう言った。その笑みは輝いていて思わずオレをドキリとさせてしまうくらい、
「悠聖。私は悠聖と出会えて良かった。心からそう思っているから」
「そっか。それは良かった」
「本当なら愛の告白くらい欲しいけど」
「寝言は寝てから言おうな」
「ふふっ。冗談だよ。でも、悠聖が恋人だったらいいよね」
そうリリィが笑みを浮かべた瞬間、オレは胸ぐらを掴まれていた。
「てめぇ、俺のリリィを誑かしやがったな!」
「お前誰だよ!」
憤怒の形相でオレの胸ぐらを掴み上げたのはレジスタンスの自称エース。名前は興味が無かったから忘れた。
「お兄ちゃん?」
リリィが驚いたように目を見開いている。
「久しぶりだな、リリィ」
「リリィの兄?」
「白川悠聖。お前が何の目的で」
『悠聖を離して!』
懐かしい声と共にオレの胸ぐらを掴んでいたリリィの兄の後頭部にチャクラムが叩きつけられた。
一撃で昏倒したリリィの兄にリリィが駆け寄るが、オレはチャクラムを振り下ろした人物を見つめていた。
『悠聖、ただいま』
満面の笑みで言うアルネウラ。オレは目尻に溜まった涙を指で拭きつつ頷いた。
「お帰り、アルネウラ」