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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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第百五十三話 違和感

無意識だった。無意識の内に僕はペダルを引いていた。


ペダルを引くということはフュリアスが一歩下がるということ。電子戦特化のギガッシュが一歩後ろに下がり、そして、胸部装甲をかすめるようにエネルギー弾が通り過ぎた。


弾速がかなり速い。それよりも、今、嫌な予感がしなかった。動かなかったら死んでいたかもしれないのに。


『悠人!』


鈴がすかさずエネルギー弾が飛んできた方角から僕を守るように動く。僕はすぐさま通信を入れた。


「ルーイ! 出撃を!」


だが、返ってきた音は砂嵐のようなジャミングされた際に起きる嫌な音。


電子戦特化のギガッシュと言えども、通信電波自体を妨害されたら何も出来ない。


『悠人! 敵の姿は?』


「索敵範囲外だね。でも、あの弾速で姿が見えないとなると敵の武器は新型かストライクバーストだと思う」


『ストライクバーストなら真っ先に出て来そうだけど』


「相手を自分の常識で計らない方がいいよ。リリーナ、白騎士、聞こえる?」


『大丈夫だよ。今、そっちに向かっている最中だから』


『こっちもだ』


どうやら攻撃を受けたのは僕だけらしい。でも、どうして僕だけだろうか。


「下がろう。鈴が一番最後で。僕が先頭を行くから」


『わかった。一応は警戒するけどあの弾速だから撃ち落とせる可能性は低いよ』


「大丈夫。撃ち落とされるつもりはないから」


ギガッシュのブースターを起動させ周囲の木々より高く飛び上がる。そして、基地に向かって加速した。


今の状況は基地との間にジャミングが展開されていると考えるべきだから、どうにかしてジャミングを見つけ出した方がいいかな? でも、このギガッシュじゃ難しいし、何故か僕の勘は働かなかったし。


「おかしいよね。どうしてだろ」


あれは完全な直撃コース。あれが当たれば確実にギガッシュは破壊されていたはずだ。なのに勘が働かなかったということは別の何かがあるかもしれない。例えば、あれはエネルギー弾に見えたけどエネルギー弾じゃないとか。


そうなると考えられるのは、


「メッセージ用レールガン? いや、確かにこれならギガッシュを破壊することはないけど」


僕はギガッシュを着地させてパネルを出した。そして、すかさず熱源探知を行う。


エネルギー弾が来た方角を考えたら大体ここくらいかな。


反応はある。熱源、というより一直線上に熱源が広がっている。木々を薙ぎ倒した時に出た熱量かな。


「リリーナ」


『何?』


「ギガッシュをお願い」


僕は位置データをデバイスに取り込んでギガッシュの隅に置いていた携帯型エネルギーライフルを掴みコクピットを開けた。


近くにいたリリーナがすかさずコクピットまで上がってくる。


「ちょっと待って。悠人、どういうことかな?」


リリーナが不思議そうに首を傾げているけど僕はコクピットの中を指差しながら飛び降りた。魔術で速度を軽減して静かに着地する。


「悠人」


ミスティが、いや、今はハイロスが近づいてくる。僕はエネルギーライフルを肩に担いで今から行く方角を指差した。


「ミスティ。今からさっき飛ばしてきたものを確認しに行くからついて来てくれない?」


「さっき? あのエネルギー弾の放たれた場所?」


「そうじゃなくて、あれはメッセージカプセルだと思うから」


「わかりました」


ハイロスが、ミスティが兜を脱いで頷く。すごく汗をかいているから兜を脱ぎたくなったんだね。


「リリーナ、鈴、聞いていたよね?」


『うん。聞いていたけど、私が向かった方がいいと思うよ?』


イグジストアストラルのスピーカーから鈴の声が響く。まあ、鈴が言うことがもっともなんだけどね。


敵の罠である可能性があるからイグジストアストラルで行くのが一番いい。


「イグジストアストラルはギガッシュを守って。ギガッシュはレジスタンスに返さないとダメだから。こっちにはミスティが、白騎士がいるよ。だから、大丈夫」


『別にそれはいいんだよ。ミスティの力はよくわかっているから。でもね、悠人が行かずに私が行くべきじゃないかな? ミスティと二人なら普通の敵は簡単にどうにか出来るし』


「違和感があるんだ」


『違和感?』


リリーナが聞き返してくる。僕はそれに頷いた。


「最初、僕は攻撃されたと思ったんだ。だけど、実際はメッセージカプセル。正確に当てるならイグジストアストラルの方がいいよね?」


『確かに。私のイグジストアストラルだったら悠人みたいに速くないから確実に当たるし』


「それに、あんな弾速の攻撃なら第二波が来てもおかしくないんだ。なのに、来ない。まるで、メッセージカプセルを僕に渡すことが目的だと言うかのように。だから、向かってみるんだ。これでも訓練はちゃんと受けていたからね。それなりには動けるよ」


『そうかな? 鈴ほどじゃないけど悠人は魔術の実力が無いし』


『どうせ私は才能ないですよ』


確かに僕はフュリアスに乗らなければ強いというわけじゃない。だが、魔術をほとんど使わないこの音界ではそれなりに強いことになるはずだ。


それに、エネルギーライフルを当てられなくなるってわけじゃないし。


『リリーナ。悠人に行かせてあげよ。こうなったら維持でも行く気だよ』


『ぬぬぬ。わかった。でも、基地についたらベイオウルフで迎えに行くから』


『私はリリーナを置いて先に向かうから』


『先に向かうのは私だよ!』


そんなやり取りにミスティがクスッと笑う。


「羨ましいな。こんな親友同士って」


「やっぱり、ミスティは一人だったの?」


「そ、そういうわけじゃないけど、一人遊びは好きですよ?」


「墓穴掘っているから。大丈夫だよ。例えアークの戦いに決着がついても、僕達とミスティはもう友達だから」


「友達」


ミスティが驚いて僕を見る。そして、満面の笑みを浮かべて頷いた。


「ありがとう。悠人」


「お礼されるほどじゃないよ。さあ、行こうか」






離れていく電子戦特化のギガッシュとイグジストアストラル。だが、悠人とミスティでメッセージカプセルらしきものの場所で向かっている。


その姿をはるか遠くにいる一機のギガッシュがライフルのスコープから覗き込んで見ていた。


「真柴悠人と白騎士か。ふっ、面白くなってきたな」


ギガッシュに乗る山賊みたいなもさもさの長い髪に無精髭を生やした男がゆっくり笑みを浮かべる。


その背中にあるのはライフル型のレールガン。


「幸か不幸かここの位置は知られていない、か。さて、レジスタンスも狙うあのメッセージカプセルを二人はちゃんと得ることが出来るかな?」


ギガッシュがゆっくり立ち上がる。そのギガッシュは装甲が他のギガッシュと比べてかなり多かった。さらには、オプション武器の数も。


ギガッシュがゆっくりと歩き出す。歩き出しながらもカメラはしっかりとメッセージカプセルらしきものの場所を見ていた。


「音界はこれから動く。戦争という名の戦いでな」


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