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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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幕間 綻び

これで幕間は終わりです。周自身半信半疑だった自身に内包する世界を理解するためと、ヴァルフォミアという滅びの根源を出すための幕間でした。

「じゃ、世界が滅びる原因は」


『世界自体の存在が消え去る。例え、その大地が死の大地だとしても何もいなくなるんだよ。微生物も何もかもが。まるで砂漠みたいにサラサラした土だらけ。雨は降ってもそれは恵みの雨じゃない。だから、僕はヴァルフォミアに勝てても世界を救えなかった。世界を内包するからこそ自立出来る存在でも、守れるのは一人だけ』


「なら、幻想空間ファンタズマゴリアを広げれば」


『それこそ、幻想空間ファンタズマゴリアの存在を消されかねない。そんなことをされれば確実に存在を消されるだろう。ヴァルフォミアと対抗するには僕一人では無理だった。だから、みんなと共に戦った。でも』


「正」


正は戦いに勝って勝負に負けているのだ。たくさんの人を目の前で失っているんだ。慰めの言葉じゃない別の言葉がいる。


「正。オレはお前が生きてくれていて良かった」


『そうだね。君からすれば大事な』


「だから、最後の可能性が出来た。お前と共に歩む未来の可能性が」


『君は何を言っているんだ?』


正が動揺している。そんな正の声を聞いてオレはやはり考えが間違っていないと判断する。


創世計画はほぼ完全な計画だ。だが、ヴァルフォミアという存在を考えればそれこそ不完全な計画だ。それに、オレはオレのためだけに戦う。


「なあ、正。オレは大好きな人と共に戦いたいと思っている」


『君はまさか』


正はどうやら気づいたらしい。オレの計画に。


「一人で出来なければ二人でやればいい。オレと正、二人の海道周なら可能だ。だから、力を貸して欲しい」


『不可能だよ』


だが、オレの計画を正はすぐさま否定した。


『さっき話したように同じ世界に二つの存在は許容されない。僕と君が許容されているのは僕達が幻想空間ファンタズマゴリアを持っているからだよ。それでも、僕は常に存在を消費続けている。つまり、ヴァルフォミアと戦うのは僕か君のどちらかだ』


「神様も難儀な理を作ったものだな」


『そうだね。でも、それを作ったのはヴァルフォミア当神だ。倒されないためのルールかもしれないね』


「なるほどね。そう言えば、学園都市で最後に会った時と知っている内容がかなり違うみたいなんだが」


『ああ。それは僕の世界単位で話していたからだよ。ヴァルフォミアの力は過去すら消し去る。だから、僕の世界の過去を見ることは出来なかった』


「つまり、同じ世界を繰り返すことは出来ないのか」


『出来ていたら初代海道あまねがしていただろうね』


「それもそうか」


そう考えると平行世界って面白いよな。同じ姿なのに中身が違う分岐した世界だなんて 。


「そう言えば、正の世界の創世計画ってどんなのなんだ?」


『ないよ』


創世計画の二つを見比べたなら戦い方が出来るはずだとオレは思っていた。だが、正の回答は耳を疑うものだった。


『創世計画はこの世界だけのものだ。今、君は不思議に思っているよね? どうして創世計画が無いのかを。簡単だよ。昔は神という存在が僕達のバックにいたんだ。そして、神が主導で世界を導いていた。世界を救うために』


「その神は今はいない」


『そう。神威時代後期。神の力を得た神剣を持つ新たな神を危険視した神達は極一部を覗いて人を消し去ろうとしたんだ。それこそ、使用してはいけないヴァルフォミアを利用して。だが、ヴァルフォミアは神を消し去った。生き残った神は人間側についていた極少数の神。これだけ言えば答えはわかるかな?』


「そうなると、ヴァルフォミアに人間側が勝ったと言うことだよな?」


『そういうものじゃないよ。ヴァルフォミアは今なお封印されている。二重の封印によってね』


「二重の封印?」


一つがその人間側についた神達による封印だとして、もう一つは一体どこの封印だろうか。いや、待てよ。確か、創生計画にはああ書いてあったから、つまりはどちらも、


「人柱の結界か。どちらも、神を利用したものだな」


『そう。一つは神剣を三つ扱った歴史上最強クラスの神。そして、もう一つが50年近く前、新たな神達によって築かれた結界。神と言う無限の生命力を持つ者だからこそ永久に近い強度を誇っている』


「永久ね。もし、そうなら滅びなんてなかっただろうな」


『相手は神とはいえ生物だよ。上書きは本来すべきものだし、最初の結界が無ければ今頃世界は滅んでいる』


「ちょっと待て。つまり、ヴァルフォミアはそれほどまでに強いのか? 慧海達が戦ったとしても」


『僕は関わらずに見ていただけだけど、あの戦いは凄まじいものだったね。まさに、北欧神話における最終戦争(ラグナロク)と似た凄まじいものだった』


北欧神話ってのは確かただの御伽話だからその話におけることだろう。神にそれに近い名前はいたとしても、そんな凄まじいこと出来る人間なんていないからな。


でも、最終戦争(ラグナロク)で例えられる戦いか。まさに神と神とのぶつかりあいだったんだろうな。それを聞いて気になることがあるけど。


「じゃあ、どうやってヴァルフォミアの攻撃を耐えきれたんだ?」


『そうだね。ヴァルフォミアを倒す方法は二つあるんだ。一つは僕達みたいな存在を消し去る攻撃に対抗出来る存在で直接戦う。もう一つが相手の攻撃が届かないところから一撃必殺クラスの攻撃を何億と叩きこむこと』


「ちょっと待て。それはいいのか?」


『生まれたばかりのヴァルフォミアには有効だったみたいだね。いやー、凄かったよ。まさに天変地異が起きたかのように戦った後は生命一つすら残らなかったからね』


「その作戦は取れないと思ってた方がいいだろうな」


もし、そんな作戦になったら生命一つどころか星が一つ滅んでしまいそうだ。


昔と比べて魔術自体が強化されている今ならそんな火力で星を消し去ることは造作もない、というか、世界ランクに名を連ねる猛者達が集まったら簡単にしそうだし。


『神はすでにいない。つまり、繰り返されていた平行世界は今回で終わりさ。この意味が君ならわかるよね』


「なるほどね。だから、あの創世計画か。あれ? 神威時代はどうしてヴァルフォミアを倒せたんだ? 一撃必殺を何億と放っても世界を内包する存在じゃなければヴァルフォミアは倒せないんだろ?」


『そうだよ。だから、神威時代が取った手段は封印。とある五つの神剣を利用した一時的な結界さ。ヴァルフォミアを弱めたとこで結界を展開。そこに封じ込めたまま封印を上書きした。だから、創生計画も同じ方法をとるんじゃないかな?』


「いや、違う」


あいつらがそんな不確定な要素を取り入れるわけがない。不確定なんかじゃない。あいつらにとってその創世計画の道筋こそが世界を救うために必要なことだと考えているんだ。


確かに、オレが正の話を聞いて考えたやり方なら最小限の犠牲でヴァルフォミアを倒すことが出来る。でも、もしそうなるとしたなら、オレ達の立ち位置が大きく異なる。


今までのことを考えても、創生計画の中身はそう簡単に信じられるものでもないし。


『周。どうかしたのかい?』


「悪い。考えをまとめていたんだ。なあ、正。お前ならオレ達の創世計画の役割をどうする?」


『その答えは君が一番よくわかっているんじゃないかな? だって、君は第76移動隊隊長だろ?』


「まあな。良かった。正が同じ考えで。ありがとうな。助かった。今度デートする時にめい一杯何か勝ってやるから」


『いつの間に僕は君とデートすることになっているのかな? まあ、平和になったらそれもいいかもしれないね』


「だろ」


オレは笑みを浮かべた。おそらく、通信機の向こう側では正も笑みを浮かべているだろう。


「じゃあ、また」


『ああ。また』


通信が切れる。オレは小さくため息をついてレヴァンティンを下ろした。


「レヴァンティン。録音は出来ているよな?」


『当り前です。ところでマスター。綻びは見つかりましたか?』


その言葉にオレは頷いた。


「ああ。見つけた。創世計画の全容がわかった。さあ、ここからはオレ達の幕の始まりだ」


オレ達が劇の脇役ではなく主役にならなければならない。


「行くぞ、レヴァンティン。『GF』と『ES』と国連の戦争だ」


『勢力が全て敵に回っていますね。まあ、今回のことはそうするしかないでしょう。私はマスターについて行きますよ』


「頼む。慧海、時雨。お前達がこれを望むならオレはそれをやってやるよ。ただし、オレ達の戦いに引き込んでからな」

創世計画という定められた未来までの計画に対する唯一の周が見つけた綻び。世界を敵に回してでも勝ち目があると判断した理由はすでに書かれてあります。

ある意味それは、話し合いで決まる世界の枠組みに対するイレギュラーであるかもしれません。


次の話からは物語が激しく動いていきます。悠人、悠聖、孝治だけでなく首都にいる楓や光達も激しく動きます。どこまで書けるかわかりませんが。

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