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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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幕間 帰還者

前の戦いで姿を見せていない面々は基本的にシェルター周囲で戦闘を行っていた面々です。

創世計画についてはわかったことがたくさんある。今回、音界に行かずに残ったのはどうやら正解だったようだ。


オレの推測が正しいなら、滅びから世界を救う手段としては最も適当なものだろう。だからこそ、容認するわけにはいかない。


「まさか、ここまで大事だとはな」


『さすがに滅びを救った後の役割が明確にされているとは思いませんでしたね。いやはや、この計画は端から見れば荒唐無稽なもので内容を知らなければありえない計画だとさすがの私も笑えたんですが』


「細部まで計算され尽くしているからな。確かに、当てはめれば確かに正しいデータばかり。覆せる奴がいるなら見てみたいもんだけど」


『無理ですね。おそらく、いえ、確実にマスターが望む未来よりも遥かに達成する可能性の高い、極めて優秀な計画です。たった10人ほどの犠牲で世界を救えるなんて』


「繰り返される世界の、いや、この表現は正しくないか。神によって弄ばれる世界の中であいつらが必死に考えた新たな未来を求めて動く計画。穴が無く、確実性が極めて高い。多分、オレの計画か創世計画の二つを提示されたら、みんなは創世計画を取るだろうな」


創世計画を簡単に言うならこうだ。


動くメンバーは約30人。そして、犠牲になるのは10人ほど。そして、滅びを回避した後の世界の動かし方が書かれている。


対するオレの計画は何人動くかわからず、何人犠牲になるかわからず、非戦闘員ですら巻き込まれる可能性があるもの。


それを考えるだけでも創世計画の方が優秀だ。そして、創世計画が支持される。


「オレはこの計画に反対しないといけないんだな」


『マスターらしくないですね』


「これに反対するということは世界の敵になるってことだろ。今の第76移動隊じゃそれは無理だ」


『確実に封殺されるのは確定ですよ。ただ、気になることはいくつかありますが』


「気になること?」


『はい、それは』


「ただいま~」


呑気な声にオレは顔を上げた。そして、玄関を覗くと、そこには固定した左腕を首から布で支えている由姫の姿。そして、その後ろにはベリエとアリエの姿があった。


「お邪魔しま~す」


「邪魔するわ」


「ちょっと待て。お前ら何で帰ってきているんだ? 由姫と悠聖が負傷したのは聞いていたけど」


「仕方ないじゃない。由姫の左腕はかなり危ない状況なんだから。四六時中注視して治療を行わないと、最悪、由姫の左腕は使えなくなるし」


「そんなに酷いのか?」


オレの言葉に頷いたのはオレに抱きついてきた由姫だった。


「そうだよ。あっ、お兄ちゃんの匂いだ」


「私もする~」


「アリエはやめなさい」


同じように抱きつこうとして来たアリエをベリエが止める。ベリエは小さく溜め息をついて肩をすくめた。


「由姫以外だったら今頃腕がただの飾りになっていた、と言えば深刻性がわかる?」


「里宮本家八陣八叉流を習っていたからか」


「それもあると思う。私とアリエと委員長の三人で治療を行ったけど、1ヶ月は安静。戦闘どころか訓練禁止。まあ、1ヶ月は動かせないと思うけど」


つまり、由姫は1ヶ月無理は出来ないのか。それは良かった。


「私は大丈夫です。あっ、でも、左腕が使えないから兄さんからあーんって食べさせて」


「右が使えるだろ?」


「最後まで言わせてください! そして、希望を散らさないでください!」

「私がするよ~?」


「アリエは相変わらず空気が読めないわね」


ベリエが呆れたように溜め息をつきながらも由姫の左腕に触る。


「周。一応詳しい診断を行うから由姫の部屋に上がるわよ」


「オレも手伝おうか?」


「そうして欲しいのは山々だけど、あんたの治癒はむちゃくちゃだから」


確かにむちゃくちゃだよな。魔術の構築は正しくても治癒の仕方は完全な力任せ。それを言われたなら返す言葉もない。


すると、ベリエがにっこり笑みを浮かべて背伸びをしてオレの頭を撫でた。


「大丈夫。私達に任せて。後で詳しい診断結果、音界で診断した時の結果を渡すから」


「それなら。という、恥ずかしいんだが」


「私もする~」


「私が兄さんの頭を」


「お前らは早く上に上がれ!」


このままだと永久に撫でられそうだからとりあえず怒鳴ることにした。






「肉離れ多数に一部は筋肉自体が断絶。神経の一部もやられているが後遺症に悩むほど酷い損傷ではない、か。大丈夫そうだな」


「言ったじゃない。とは言っても、絶対安静にしなきゃダメだけど」


少し怒ったように言いながらベリエがオレの手から診断書をひったくる。そして、カバンの中に直した。


本来なら診断書なんて持ち出したらダメだけど、今回ばかりは特例だろうな。


「あんたがいない中、みんなよく頑張ったわ。私やベリエはシェルター周囲かその中の負傷者の救助に当たっていたから詳しい話は後から聞いたけど、周は連絡が言っているよね?」


「そりゃな。音界の首都の四割が壊滅。死者は翌日時点で1063人。負傷者は8000人越えでその内意識不明の重体が3人。重傷の中には悠聖も含まれる」


その報告を最初に聞いた時は信じられない気持ちだった。悠聖は弱くはない。確かに、オレや孝治とかと比べたら精霊召喚で戦うことを除けばパッとしない強さでもある。


だが、全く弱くはない。だから、悠聖が負けたのは最初信じられなかった。そして、悠聖からの直接の連絡を聞いてオレは納得する。


「相手が優月を捕まえて何をするかはわからないけど、問題が部隊を裂けないことなんだよな。どうしても優先順位は」


「音界の内紛、でしょ。私も報告に目を通したけど、私達を含めて全部で9の勢力があの場にいたって本当?」


「当事者だから何とも言えない。だけど、優月の救出に悠聖、冬華、俊也に委員長の4人を当てるとして、残すのはどうするかになるな」


「その話なんだけど、孝治から」


そう言いながらベリエが何らかのリストを取り出した。それを受け取ると、そこには上手くチーム分けがされていた。


優月救出班にリーダーを音姉として、悠聖、冬華、俊也、委員長。


内紛解決班にリーダーを孝治として、アル・アジフ、楓、中村、浩平、リース、七葉、和樹。


そして、最後が帰還組で由姫、茜、都、ベリエ、アリエ、メグ、夢、エレノアか。バランス的には全く悪くはないな。


「まあ、オレもしばらくはここにいる予定だし、久しぶりにゆっくり出来そうだな」


「今までゆっくり出来なかったの?」


「それは一人で第76移動隊の仕事を回してたオレに対する嫌みか?」


「あはは、ごめん」


本当に大変だった。というか、思い出したくない。


「でも、ここでもゆっくり出来ないよね?」


「………どういう意味だ?」


「珍しい」


ベリエが呆れたように言う。確かに珍しい。ここまで言葉に詰まってしまうのは。


「どうせ世界の滅びに関する話でしょ。それくらい、私も相談にのるから」


「まあ、お前には言ってもいいか。この事は他言無用だぞ」


オレはそう言いながら創世計画について纏めた紙の束をベリエに渡した。

次からキャラが少し減ります。

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