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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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第八十三話 決定

勝った。


ダークエルフの中でその事に安堵して小さく息を吐く。最後の攻撃は極めて威力の高い一撃でもあった。だから、ダークエルフの無事じゃない。赤く点滅する箇所が多くてどこが壊れているのか全くわからない。


だけど、勝った。モニターにはガルムスが怒り狂った表情で愛機であるはずの『天聖』アストラルソティスを蹴っている。


僕は小さく息を吐いてコクピットを開いた。いや、開こうとした。


「あれ?」


コクピットが開かない。ダークエルフは軽くだが動かせるのでダークエルフを使って外部からの開閉スイッチを押す。


コクピットが開き、ようやく外部の空気を取り込めた。思っていた以上に空気が籠もっていたからか澄んだ匂いがする。


「さてと、ガルムスは確実に難癖をつけてくるだろうな」


開閉したコクピットに立ちながら苦笑する。そして、ダークエルフを振り返った。


「お疲れ様。少し、休もうか」


ダークエルフの体を撫でて僕はダークエルフから飛び降りる。外見にはほとんど以上ないから警報が鳴っていたのはシステム面だろう。多分、システムはズタボロのはずだ。もう、ダークエルフは使えない。


使おうと思ってもシステムの解決方法は完全な解体の後の組み上げ無ければならない。もう、この姿で見ることはない。


「ありがとう。長い間使っていない期間もあったけど、重要な時に僕の力になってくれてありがとう」


僕はそう語りかけてダークエルフから降りた。すでにガルムスはいつの間にかやって来ていたクーガーさんとラルフさんに絡んでいた。


一体、何を語りあっているのだろう。


「悠人!」


「悠人!」


リリーナと鈴が駆け寄ってくる。僕は声のした方を向いた瞬間、背中を誰かに叩かれた。


慌てて振り返ると少し嬉しそうなリースが僕に向けて軽く手を上げる。だから、僕はリースとハイタッチをした。


「おめでとう」


「これくらい、余裕だよ」


「むう、いつの間にかリースさんと仲よく合っている」


「悠人。いつの間にリースをNTRしたのかな?」


「ここは僕が怒ってもいいよね?」


二人共よく似たことを言っているけど、かなり違いがあるんだよね。本当に、かなり困ってしまうのは僕だけかな?


そもそも、リースと仲よくなったらどうしてダメなのかわからない。


「私は浩平一筋。悠人は家族だから」


「だよね。というか、リースはいつの間に僕の後ろにいたの? 気づかなかったけど」


「それもまた、竜言語魔法」


竜言語魔法にはたくさんの種類があるんだな。感心してしまう。


「ともかく、悠人、やったね」


「おめでとう。まさか、あんな凄い相手に勝つなんて思わなかったよね。びっくりだよ」


「勝った? ふざけんじゃねえ!」


ガルムスの声が響き渡る。その声に僕は小さくため息をついていた。


ガルムスはクーガーさんとラルフさんを押しのけてこっちに近づいてくる。無意識に身構えようとしたリースとリリーナの二人を僕は手で制した。


「あんな卑怯な手を使って勝っただなんてよく言えるよな!」


「卑怯? なんのこと?」


「とぼけんな! あんなフュリアスの力存在しねえんだよ。そんな反則な力を使ったら勝ち負けなんて決まるわけないじゃないか? そんなこともわからないのか?」


「僕はあなたが何を言いたいのかがわからないよ。あの力のどこが反則だと言うの?」


「あんな光の翼で空が飛べるわけがないだろ! 何をした? 何のずるをした!!」


確かに、普通ならあんな翼で飛べるわけない。だけど、僕は飛べる。それをみだりやたらと見せるわけにはいかないし、勝った時の言葉は決めてあるからその言葉を言えばいいよね。


僕はガルムスに向けて笑みを浮かべた。


「そっちこそ、よく時間を制御していたみたいだけど?」


その瞬間、ガルムスの顔色が変わった。簡単に言うならどうしてそのことを知っている、っていうところこかな?


だから、僕は思わずクスッと笑ってしまった。


「そっちは機体の性能を最大限にまで使用しただけ。僕も同じだよ。ダークエルフの性能を最大限まで利用した。それであなたは負けたんだ。いいわけなんて見苦しいと感じないの?」


「小僧、言わせておけば!」


ガルムスが腕を振り上げた瞬間、隣のリースとリリーナが動いていた。


リースは光の剣をガルムスの首筋に突きつけて、リリーナはアークベルラを目の前に突きつけている。


こういう時のリリーナの速度って本当に見えないんだよね。フュリアスに乗るために身体強化をしていても。


「勝負は決まった。負けたなら大人しくしておく」


「そうだよ。みっともないよ。本気を出したからって怒るなんて」


「この餓鬼どもが」


ガルムスの顔がゆがむ。もちろん、怒りによって。それはそれでかなり怖いことではあるけど、僕は気丈に笑みを浮かべてやった。


僕は勝ったんだ。だから、胸を張っていかないと。


「双方、止めてください」


呆れたようなメリルの声が響いてリースとリリーナの二人は大人しく下がった。そこに音姫さんを連れたメリルが割り込んでくる。


「ガルムス。勝負はつきました。今回の勝負は悠人が勝ち、それにより、悠人が『歌姫の騎士』となります」


「そんな。あんなおかしな翼をあなたは認めると言うのですか!?」


「認めますよ。認めないという時は、あなたが『天聖』の力を使った時でしょう。ガルムス。式典は明後日に迫っています。すぐさま『天聖』アストラルソティスを修理してください。それが歌姫である私からの命令です」


ガルムスが怒りに顔を歪めているが、メリルは涼しい顔でガルムスを見ている。もちろん、先に折れるのはガルムスの方ではあるが。


ガルムスは小さく舌打ちをするとそのまま『天聖』アストラルソティスの方へと歩いて行った。


それに僕はほっと息を吐いた。メリルがいなかったら危なかったな。そもそも、二人がいなかったら殴られていたかもしれない。


「やるな、少年。まさか、あのガルムスに勝つとはね」


「ああ。凄まじい操縦技術だった。出来ればご教授願いたいところだが」


クーガーさんとラルフさんが感心したように笑みを浮かべて行ってくる。そんなことを言われたら少し照れてしまう。


確かに、僕を知らない人達が見たらきっと凄まじいものにしか見えないのだろう。


「いや、あれ真似できないよね?」


「七葉さんは黙っていた方がいいと思います」


「由姫姉はあんな動きが可能?」


「無理ですよ。相手の動きを勘で動くなんて。姉さんなら出来るかもしれませんけど」


「それは買いかぶりすぎだよ。せめて、分身を囮に使うくらいかな」


「分身を囮って。孝治。俺がいない間に何が起きたんだ?」


「俺も驚いている」


「へえ、孝治が驚くことがあんねんな」


「意外ですね」


「そ、そういうものか。驚くのが意外。俺は一体」


「相棒! 落ち込むのは早いぞ!」


「確かに意外って言えば意外だけどな」


『悠聖。トドメだよね』


「うん。トドメ、かな」


なんというか、凄く騒がしいな。でも、みんな、ここにいる第76移動隊の大半のメンバーは僕が勝ったことを嬉しく思っているみたいだ。良かった。


「ふふっ。皆さん嬉しそうですね。悠人。明後日の式典であなたを『歌姫の騎士』として民の皆さんに紹介します。つまり、あなたは音界所属となります。それでもいいですか?」


メリルが真剣な表情で尋ねてくる。その質問に誰もが開こうとしていた口を閉じていた。


今ここにいる面々の中で理解していないのは浩平さんだけだろう。『歌姫の騎士』は歌姫だけの騎士だから第76移動隊には所属していられない。だからこそ、メリルは尋ねた。


僕は頷く。真剣に。


「決めていたことだから。僕は第76移動隊を辞める。ここに来たのも、最初は療養目的だったけど、今は僕が望む未来のために踏み出したいから。孝治さん。許可、してくれますか?」


「今回はさずがに俺だけの許可は無理だ。だから」


孝治さんが通信機を差しだしてきた。それを僕は受け取る。


『どうやら、立ち直ったみたいだな』


通信機から聞こえてきたのは周さんの声だった。


「周さん? どうして」


『話は孝治から聞いている。まあ、面倒なことに巻き込まれたらしいな』


「面倒と言えば面倒になるのかな」


よくわからないけど、僕というものが少しは新しく見えてきたように思える。


『まあ、それはさておいて、いろいろ大変だったんだぞ。慧海のところから第76移動隊のフュリアス部隊の脱退申請を通すのが大変だったからな』


「えっ?」


『孝治から聞いてこっちで書類整理していたんだ。レヴァンティンがいなかったら日程的に危なかったけど、申請は通っている。この意味、わかるな』


「僕が抜けてもいいの? たくさん迷惑をかけたのに」


『違うだろ』


周さんが苦笑しながら返してくる。


『そう言う時は、ありがとう、って言って欲しいな』


「周さん、ありがとう!」


嬉しかった。多分、周さんは孝治さんから話を聞いてすぐに作業を開始したのだろう。


立った一日で書類が通ることなんてありえないけど、周さんはどうにかして通したに違いない。あれ?ちょっと待って。


「周さん。さっき、フュリアス部隊の脱退申請って言った?」


『言ったぞ。元からメリルと話し合っていたことだからな。音界の技術提供の代わりに第76移動隊のフュリアス部隊の音界への部隊移転。ちなみに、鈴とリリーナの二人は知っている』


「知らなかったのは僕だけなんだ」


『まあ、そうなるな。でも、悠人。オレは嬉しいんだぞ?』


「嬉しい?」


何が嬉しいのかよくわからないけれど。


『お前が決めたんだろ。だから、見守ってやる。でも、甘やかすことはしない。言うならばオレ達から独り立ちだ。出来るな』


「うん」


出来ると言う気がした。甘えてばかりはいられない。だから、頑張らないと。


「周さん」


『なんだ?』


「アル・アジフさん」


「なんじゃ?」


多分、この言葉を言うのはこの二人が一番だろうな。


「今まで、ありがとうございました!」

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