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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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第七十九話 翼の力

「そもそも、悠遠の翼自体、研究が公表されているわけじゃないみたいね」


公共の図書館にある会議室で一心不乱に情報を探していた僕達の中で琴美さんが顔を上げながらみんなに向けて言った。


ちょうど、琴美さんやルーリィエも悠遠の翼について調べていたらしく一緒に調べることになったのだ。都さんは一人で一心不乱にフュリアスについて調べているけど。


「まあ、悠遠の翼自体が国家機密クラスのものだから仕方ないけど」


「そうですね。『悠遠』や『加護』は一般にも広まっていますが、『栄光』や『天剣』は数少なく、『天聖』にいたっては一切見つかりませんね」


「そうじゃな。『天聖』についての記述が見つかれば良かったのじゃが」


「すみません。悠遠の翼自体が音界にとっては最終兵器みたいなものですから」


「責めているわけではない。我も同じ立場なら公表する情報は隠しておくものじゃ。ダークエルフのシステムとかの」


「そうね。システム的なものは見つかったけど、肝心の悠遠の翼のシステムは見つからないわね」


「まだ見つけていない書物がある可能性もありますが、フュリアス関連の本はここにあるだけだと思います。利用者の皆様には申し訳なく思いますが」


「仕方が無かろう。歌姫のためとあれば皆差し出すぞ」


みんなは調べた情報をお互いに話し合い始める。余計な話も混じっているがともかくそういうこと。


確かに『天聖』の言葉は一つも見つかっていないし、調べた中でも見える文字は『栄光』と『天剣』はあっても詳しくは書かれていない。逆に『悠遠』や『加護』に関しては公式発表や自論問わず様々なものがある。


『悠遠』について調べるに関してなら十分だと思うけど。


「それにしても、三人は遅いの」


呆れたように溜め息をついたアル・アジフさんが僕達を見る。見ているのは僕達の前にある書物と言うべきか。


書物は全部で500ほどあり、アル・アジフさん、琴美さん、メリルの三人が400ほど。僕、リリーナ、リースが残りを担当したんだけど、僕達の前には13の書物が残っている。


明らかに比率がおかしいと思うのは僕だけかな?


「三人が早すぎるだけだよ! というか、どうやったら二時間の間に百冊以上読めるか聞きたいくらいだよ」


「魔術じゃな」


「歌姫の力です」


「慣れよ」


最後はともかくアル・アジフさんとメリルの二人は完全に才能の無駄遣いだ。


「あなた達はじっくり読み過ぎなのよ。情報を探す時は必要な言葉だけを抜いて読まないと。そんなんだと将来後悔するわよ」


「そういう方法で読めるんですね」


「琴美さんは事務作業は慣れているから。周さんの次くらいに早かったっけ」


「残念ながら音姫にも負けるは。あっちは純粋に身体能力だから」


意味がわからないんですけど。


「そういうメリルこそ、読むのが早いくせに」


「そう怒らないでください。リリーナ。私は集中力と動体視力を歌姫の力で底上げしただけですから。後、疲れの緩和も」


「才能の無駄遣いだよ」


同意見です。


「アル。無理」


「そなたも書物を扱った魔法を放つじゃろ。それと同じ原理じゃ」


「あれは全部記憶しているだけ」


どっちも凄まじいよね。


何というか、こうしているとフュリアスに乗らなければ本当に一般人だなと理解してしまう。僕からすればそんなに早くする必要はないと思うのに。


でも、琴美さんはそういう仕事が中心だから仕方ないのかな。


「ともかく、今は『悠遠』について纏めましょう。私が調べた限りでは『悠遠』は空間と空間を繋げて道を作り出す能力です。デメリットは無く、敵味方関係なく道の中に入れることが可能」


「同意見じゃ。我もそう思っているが、他はどうかの?」


「同じね。それについての研究論文はあるけど、支離滅裂で文章として成り立っていないわ。まあ、そういうのがあるだけましだけど」


僕が調べたものも同じくらいだ。というか、そういうものしか見つかっていない。


そもそも、空間と空間を繋げて道を作り出すこと自体が意味がわからない能力でもある。そんなものは器用貧乏オールラウンダーの周さんでも出来ないだろう。


そう考えると、『悠遠』ってどういう能力なんだろう。


「『悠遠』が『天聖』によって消されるとするなら、『天聖』の力は断ち切る力かな?」


「違うじゃろうな。断ち切る力なら『悠遠』だけではなくあらゆる機体に対して有効じゃ。その場合は明らかに強すぎる」


「そうですね。断ち切る力なら『天聖』の名前としては不適格です。もっと別の名前に」


「能力」


リースがポツリと呟いた。その言葉は話していたメリルの言葉を簡単に遮っていた。


「名前じゃなくて能力から名付けられたなら、それは関係がない」


「リース、急に何を言っているのじゃ?」


アル・アジフさんが不思議そうにリースに尋ねる。対するリースは小さく溜め息をついてみんなを見渡した。


「悠遠の翼はそれぞれが特殊能力を持っている。それはエネルギー機関としての側面にある副作用だと考えられていた。違う?」


「は、はい。悠遠の翼はエネルギーとしては最高のものです。特殊能力はあくまで副産物であり」


「逆」


つまり、エネルギーは特殊能力の副産物ということ?


「特殊能力の副産物としてエネルギーが生まれた。そうは考えられない?」


「ちょっと待って。もしそうだとしても、悠遠の翼が高エネルギーな理由にはならないよ!」


一番の問題がそれだ。それを解決する術があるとするなら、リースの言うことは正しい。でも、解決することは難しいだれう。


「もし、そうだとしても、能力と名前に何の関係が」


「能力が見つかってからの名前なら、能力に似た効果であったとしても、それが同じとは限らない。それが悠遠の翼にも言える」


「つまり、リースが言いたいのはエネルギーがあるからその能力が作られたのではなく、能力があったからこそ、その能力を扱うためにエネルギーが開発されたと言うことじゃな」


「そう。それはよくわかっているはず。アルなら」


その言葉にアル・アジフさんが小さくため息をついた。確かに、アル・アジフさんが生まれたのはイグジストアストラルやマテリアルライザーが開発された魔科学時代とは聞いている。最初からアル・アジフさんに尋ねればよかったんじゃないかな?


だが、アル・アジフさんは力なく首を横に振った。


「本当なら我も持てる知識を全て使って教えたいところじゃが、悠遠の翼に関してはわからない点が多すぎるのじゃ。例えば、どのような理論によってエネルギーが作られているのかが」


「えっと、アル・アジフさんは魔科学時代から知識があるんじゃないの?」


「そうじゃな。じゃが、悠遠の翼は魔科学時代の遺産ではない。魔科学時代の一つ前、科学時代のテクノロジーじゃ」


「ちょっと待って。意味がわからないんだけど」


魔科学時代の前ってどういうこと? そんな話は聞いたことがないんだけど。


「それもそうじゃな。今よりも、魔科学時代よりも、イグジストアストラルやマテリアルライザーが開発された時代よりも遥か過去にあらゆる科学技術を超越する時代があったのじゃ。我も詳しくは知らぬが、その時の遺産、世界を九回破壊することが出来るとされるエネルギーの集まり。それが悠遠の翼だと聞いておる。どうしてそのようなものが開発されたのかは未だに謎じゃが」


「その話は初めて聞きました。もし、その話が本当だとするなら、どうして最初から」


「我が考えても答えは出なかった。ならば、皆で考えれば出るのでは中と思っての。しかし、リースの考えは新しいの。我らの中では従来の考えしかしてこなかった」


「能力があるからこそ名前がありエネルギーがあるってことだよね。ルーリィエは何かある?」


「あるわけないじゃない! でも、どうして『悠遠』って名前なのか不思議に思うけど。『悠遠』って永遠とよく似た言葉よね? どうしてそれが空間と空間を操作して道を作ることになるのかな?」


確かにそうだ。悠遠という言葉が道を作るということに同じになるわけがない。道を作ると言う意味ならもっと別のものがあるのに。


「そうじゃな。我らも不思議の持っていたのじゃ。我が知る悠遠の翼は少ない。そもそも、それほど研究されていなかったからの。じゃから、悠遠と呼ばれる理由を」


「もしかして、空間と空間を操作した間の道が永遠に作り出せるとか?」


「どういうことじゃ?」


僕の言葉に全員の視線が集まる。


「だから、『悠遠』の能力は空間制御。それは間違ってはいないと思う。でも、空間と空間を操作して道を作り出した際に、その未知の長さを変えることが出来るとか。例えば、エネルギー弾が減衰する距離以上に長くできるとか。その中での時間が進まないとしても、エネルギー弾は理論上、進めば進むほど減衰する」


「つまりは、時空の操作と言いたいのじゃな」


「そういうものかわからないけど、よく似たものかもしれない。ルーイは空間と空間を繋げての特殊攻撃しか使用しなかったけど、もしかしたら、それ以外のものも利用できるかもしれないけど、その話は置いておいて。時空の操作を『悠遠』が可能だとしたら、それを打ち消す『天聖』は」


「時間の操作じゃな。莫大なエネルギーを利用すれば時を止めることが可能なのは魔術でも証明済みじゃ。それを考えても、『天聖』は可能な範囲内にいる」


「天なる聖なる力とはよく言ったものです」


「天は太陽や月、つまりは昔の観念から言って時間を表し、聖なる力ってことは手を加えることが出来ない絶対なるものなら内容的にはわかるわね」


『天聖』の力がそうだとするなら、今度は対策になるけど、もし効果がその通りなら対策はあまり必要のないことかもしれない。


「魔王の娘。話はわかった?」


「天界の娘。わからないからって私に振らないで」


約二名理解していないみたいだけど大丈夫だろう。とりあえず、希望は見えたのだから。


「悠人」


リースの言葉に僕は振り向いた。リースは微笑を浮かべて僕を見ている。


「絶対に勝って」


「わかった。勝つよ。絶対に」


だから、僕は笑みを浮かべて返した。

『悠遠』も『天聖』も悠人達の推測でしかありません。というか、実際の能力は・・・

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