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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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幕間 水面下の動き

最近、お気に入り登録が多くなってきてとてもうれしいです。ありがとうございます。

フュリアス専用の着陸場。そこを視界に捉えたルーイは素早くペダルを操作して機体を減速させる。そして、そのまま上手く着地した。


すでに着陸場には誘導用の人員が旗を振って誘導してきている。


「相変わらずの場所だな」


ルーイはその誘導に従いながら周囲を見渡した。周囲に見えるのは森と集落。見方によっては完全な田舎だろう。特に、ルーイがやって来た首都から考えたら田舎も田舎だ。


精密な操作でルーイはアストラルソティスをフュリアス専用の整備ブースに収める。すると、アストラルソティスの体がロックされ、コクピット付近にまで足場が伸びた。それと同時に群がる整備士達。


ルーイは小さく溜め息をつきながらロックをかけてからコクピットを開け、足場に乗り移った。


「相変わらず、綺麗な置き方やな。うちらも整備しやすいわ」


「ブースに機体を入れるのはパイロットとしての必需項目だと考えている。久しぶりだ、アン主任」


「ほんま久しぶりやな。前に会ったのは二年前やな。それにしても、見ない内にかなり汚れたな」


確かにアストラルソティスは最近立て続けに起きた戦いによって小さな傷がたくさんある。だが、それでも小さな傷だ。いくらでも直すことが出来る。そして、その技術をこの麒麟工房は簡単に出来るくらいのレベルで可能だ。


だからこそ、ルーイはここに来た。


「見ないと言ってもかなりの歳月がたっているだろ。それに、僕もただ首都を守っているわけじゃない。二人が、鈴とリリーナの二人が来るまで僕やリマが中心に走り回っていたのだから」


「そうやな。うちらによくお世話になりにきたよな。特に、アストラルブレイズを持つまでは」


「今でも十分に世話になっている。愚問だとは思うが、式典までには間に合うか?」


「愚問や。うちらをなんやと思ってる? こんなれべるやったら副作業でお茶の子さいさいだ。まあ、ルーイが来たんはそれだけじゃ無いやろ? むしろ、これはあくまでついで」


「いや、これが目的なんだが」


そう言いながらもルーイは呆れたようにため息をついた。そして、軽く肩をすくめて整備ブースの近くにある格納庫を見る。


「あれの完成度は?」


「そうやな。話すよりも見た方がいいやろうな。それに、ここで話せるような内容でもないし」


「そうだな。案内してくれ」


「あいよ」


アンが歩き出す。その後を追いかけるようにルーイが歩く。二人は無言のまま階段を下りて行く。だが、ただ無言なわけじゃない。ルーイは周囲を気にしている。気にしていると言っても視線を向けるようなあからさまのものじゃない。文字通り視線と気配を感じている。


昔からルーイはメリルを守るために様々なスキルを身に着けていたのだが、これもその一つだった。


「相変わらず多彩やな」


「仕方ないことだ」


「恋した人が人やもんな」


「僕はメリルに恋はしていない。だが、アンの言うことも的を得ているようだな」


そういいながらルーイは視線を向けた。だが、そこに動きはない。動きはなくても視線は動いている。


「僕もこういうスキルを身につけてからここまで使えると思ったのは初めてだ」


「へぇ。首都はもっとドロドロしているもんやと思っていたけど?」


「確かにドロドロはしているが、あまりに視線が多くて逆にわからない。それに、メリルは人気者だ。しそれもある」


「案外使えないスキルやねんな」


二人は階段を降り切って格納庫に向けて歩き出した。それと同時にルーイが大きく首を動かして周囲を見渡す。周囲の整備ブースには多くのフュリアスがある。


型遅れした民間用のフュリアスや災害救助用のフュリアスもあれば明らかに軍事用のフュリアスまで様々なフュリアスがあった。どれにも共通しているのはほとんどが四肢のどこかを欠損していると言うこと。


そして、何機かは戦闘によって中破している。


「戦いが酷くなっているみたいだな」


「レジスタンスとレジスタンスの争いや。政府の部隊がほとんど壊滅したって話が出回って今では戦いが激しくなってる。うちらからしたら嬉しいくらいやけどな」


「死の商人扱いされるぞ」


「うちらは整備や。改造は政府の頼みの時しかせえへん。武器を売るわけやない。それに、フュリアスを修理せえへんかったら誰が民間用や災害救助用のフュリアスを修理するんや。そこにとっては死活問題のものやねんで」


フュリアスの整備は災害救助用のフュリアスにとっては本当に死活問題だ。だからこそ、こういう時であってもこの工房は整備を止めない。例え、それがレジスタンスの機体であっても。


フュリアスは乗り手によって変わるものだと思っているのだから。


「それは納得している。まあ、ようやく込み入った話をするとしようか」


格納庫に入ったルーイは小さくため息をついた。そして、格納庫の奥の扉をアンが開ける。


そこにあるのはアストラルリーネ。だが、それは悠人とメリルがいた時とは翼が変わっていた。


正確には機械の翼が無くなった変わりに上下に開いた凹のような板がそれぞれに二つずつ、閉まれば七本になるであろう状態だった。


ただ、その内三つには凹の隙間に棒が挟まっている。


「パイロットは確保できていない」


「目星はつけたって言ってなかった?」


「精神状態が安定していない。だから、見送ることにした。だが、これは本当に動かせるのか?」


「動かせるパイロットが存在していないからな。まあ、あんたやったら出来るんとちゃう?」


「バカ言うな。これを作った本当の理由を考えても、乗れるのはあいつだけだ」


ルーイはそう言いながらあいつの顔を思い浮かべていた。


世界でも類を見ないレベルの高さを持つとあるパイロットのことを。


「機体の名前は?」


「そうやな。あの機体にあやかって、名前は」


そう言いながらアンはまるでいたずらをした子供のように笑みをルーイに向けて笑みを浮かべていた。


「エターナルツヴァイ、やな」

結構重要な名前が飛び出したりもしました。エターナルツヴァイの名前は英語+ドイツ語ですが、エターナルは固有名詞だと考えてください。

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