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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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第七十二話 破壊の花弁(デスペルタル)

「舞え。『破壊の花弁デスペルタル』」


オレの言葉と共に飛び散る葉っぱが水晶の輝きと共に粉々になった。それを見ながら『破壊の花弁デスペルタル』を操り剣状にする。


「上手く制御は出来ないか」


破壊の花弁デスペルタル


オレとの契約精霊、であるにはあるのだが契約内容から考えて契約精霊ではないエルブスの持つ武器。


雪の結晶のような形をした小さな水晶を大量に操ることが可能で威力が極めて高いのが特徴。というか、小さなチェーンソー。水晶と言っても水晶みたいな物質であり、破壊出来るかはわからない。


そんな能力は決まって制御が難しい。だから、オレは『破壊の花弁デスペルタル』の訓練をしていた。


「使い勝手はかなり悪くないんだよな。ただ、制御が甘いというか」


『悠聖は指示するのは慣れていても動かすのは慣れていないからじゃないかな?』


それを見学している内の一人であるアルネウラが必死に悪い点を探して言ってくれるけど、そういうことじゃないのはオレ自身がわかっている。


そもそも、『破壊の花弁デスペルタル』自体が特徴的なのだ。水晶と言っても小さいため風の影響を受けやすい。さらには名前が名前だ。まさに花びらで風が強ければ叩きつければいいが、その風が逆風なら制御を間違えば味方にダメージを与える。


「やっぱり、固体化すべきかな」


「どうかな? 私は悠聖ならトラップにも使えるようにした方がいいと思うけど」


振り向いたそこには葉っぱを抱えた優月が魔力の翼を纏って宙に浮かんでいる。


エルブスという新たなシンクロの手段が出来た以上、強力だか連発は出来ない優月の能力は使い道が狭くなった。それに、優月の希望通りに優月がリーダーとして指示出来ない精霊を指示することになっている。


優月はあまりぱっとはしないけど、指揮能力はそれなりに高いし単体戦闘能力もそれなりに高い。まあ、ぱっとはしないけど。


「トラップにもね。ただ、そういうの苦手だからな」


『だよね。悠聖ってトラップ関連は苦手だから』


「そうなの?」


『そうだよ。第76移動隊よりも前にいた部隊での悠聖の役割は不意打ちか仕掛け担当だったから』


確かにそういう時期もあったな。


オレみたいに強力な精霊を扱える精霊召喚師は少ない。むしろ、前線で戦えるオレや俊也は特別だと言ってもいいだろう。それほどまでに珍しい。


だから、精霊召喚師の役割は不意打ちや罠などによって相手を嵌めることが求められている。本来、精霊とはそういう能力の方が向いていたりするからだ。


何故か攻撃的な奴らが集まっているけど。


「精霊召喚師ってのもいろいろあるんだね。突撃型しかいないと思った」


『まあ、悠聖やフィンブルドとシンクロしていた俊也を見たらそうなるよね。でも、世界の精霊召喚師を集めたら基本的な戦い方は受け身だよ』


「精霊召喚符を使う奴ら突撃しか考えていないからな。精霊召喚師は精霊と協力することで大きな力を出せるからな」


そもそも、精霊召喚符は精霊を無理やり使役するための仕様となっている。その中でも精霊と会話出来たのは俊也くらいだろう。その俊也も適性から考えたらオレ以上だけど。


まあ、精霊召喚師はそこのところがよく間違えられる。精霊を使役するのではなく共闘すること。


まあ、精霊召喚師としてのスタイルとして前線型が広まったのはオレが理由なんだけどな。


「ふーん。でも、ルカとかイグニスとかは前線向きだよね」


「ルカは剣技と特殊能力で最上級まで駆け上がった天才型だからな。対するディアボルガは昔からある一族で相応の年齢はあるからな。まあ、普通に天才型だけど」


『フィンブルドやミューズレアルも天才型だよね。後はアーガイルとか』


「ちなみにイグニスは努力型。あいつは毎日筋トレだからな。まあ、精霊によってタイプは違うし。レクサスは支援型でアルネウラの場合も支援型だな。対する優月は近接型。それぞれの精霊に合った戦い方が出来れば一番なんだけど」


オレはそう言いながら水晶の剣を見た。


エルブスの得意距離は中距離だろう。だけど、近接でもこの水晶の刃は強力だ。一体、何の物質で水晶が出来ているのだろうか。


「私は悠聖のサポートかな。シンクロ出来ないのは少し悲しいけど、それが一番悠聖を生かす手段だし」


『うーん。エルブスとシンクロしたら違和感があるんだよね。優月となら悠聖と三人で一体感があるんだけど』


「なかなかに難しい話だよな。優月、もう少しだけこれの操作を練習する」


そう言いながらオレは細かく分割した水晶を操って空に浮かばせた。花びらのようにやるんじゃなくてチャクラムみたいにすれば使い易いかもしれない。


作り出すのは難しくなるけど、上手く使えば支援しながら戦闘も可能だ。


「いくよ」


優月が空に葉っぱを散らす。オレはそれに対して水晶を放った。


チャクラムを形取った水晶が葉っぱを切り裂く。だが、操作は難しい。一度操ればどっかに行きそうになり、制御して戻しても他のチャクラムの制御が疎かになる。


「難しいな。だけど」


集中する。


チャクラムを四つ放って一気に動かした。葉っぱをチャクラムが切り裂き、制御出来た三つが戻ってくる。だが、あらぬ方向に一つは飛んでいた。


何となくコツは掴めたんだがな、どうやらまだまだのようだ。


手の中にチャクラムを全て戻して小さく溜め息をつく。


「本当に、どうするかだよな」


「レヴァンティンモードⅧのようにすればいい」


その声に振り返るとそこには孝治と冬華の姿があった。どうやら二人は外周の見回りらしい。ここは首都から少し離れているからちょうどパトロールコースだったのだろう。


「レヴァンティンモードⅧ? ああ、レヴァンティンが操作する四つの刃とナックルか? オレはそんなに近接が出来ると思っているのか?」


「孝治が言いたいのはそっちじゃないわよ。その水晶をレヴァンティンモードⅧみたいに動かせっていうこと。チャクラムみたいに戻ってくること前提に作るから操作が難しいのよ」


「そういうものなのか?」


「そういうものよ」


オレは水晶を四つの刃に変えた。確かに、これなら『破壊の花弁デスペルタル』として上手く使えるかもしれない。


すかさず近くの木に向かって放って、簡単に木を貫いた。


無言のまま刃を戻す。


「やっぱり薙刀だな」


「せめて槍にしろ」


「槍か。まあ、使えないわけじゃないけど」


「待ちなさい」


孝治のアドバイスに答えたオレを冬華が止める。冬華はどこか疲れたようにオレを見ていた。


「この光景には何も無し?」


木々が倒れる。ここから見ても切断面は見たことがないくらい綺麗だった。というか、確実に削って綺麗にしたような形になっていた。


切れ味がいい、という次元を超えているからオレと孝治は無視したのに。


「冬華、障壁魔術を頼む?」


「障壁魔術? それなら」


障壁魔術が展開される。オレはその中の一つを障壁魔術に向かって投げつけた。そして、貫通する。まるでバターのように。


その場を静寂が覆った。オレは小さく息を吐いて振り返り額に流れた汗を拭く。


「ふー、今日の訓練は終了」


「待ちなさい」


オレの肩を冬華が握り締めた。


「いい度胸ね。私に対して何の言葉もないわけ?」


振り返ることが出来ない。だけど、振り返らなければ確実に殺される。だから、オレはゆっくりと振り返ったそこには、鬼がいた。


満面の笑みを浮かべながらも青筋が浮かんでいる冬華の姿。まさか、障壁魔術すらも抵抗なく貫くなんて。


「何か言う言葉は?」


「美人が台無しだぞ」




その後、オレの意識は約5時間ほど無い。

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