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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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幕間 今と昔

リリーナ視点

一人寂しそうに歩く悠人を見送る。本当なら隣にいたかった。だけど、悠人はそれを望んでいない。今の悠人は一人になりたいのだから。


「そこまで深刻にならなくてもいいじゃない。ライバルとしても気が滅入るから」


そんな悠人を見ていた私にルーリィエが話しかけてきた。リリィと呼べば怒るからルーリィエだ。


まさか、あのルーリィエが私をライバルなんて言うなんて思わなかった。魔界と天界の住人はお互い仲が悪い。だから、ライバルなんて考えられなかった。


「リリーナ。悠人はもしかして」


「うん。メリルが思っていた通りだと思う。悠人は逃げているんだよ。フュリアスから」


「別に逃げることは悪いことじゃない。そんなに気にすること?」


事情がいまいちわからないルーリィエが不思議そうに首を傾げる。だけど、それは仕方ないことだし正論だ。だから、私は何も返さない。


「私だってフュリアスは怖いよ。あの戦いだって私は死にかけたんだから。アークレイリアが無かったら今頃」


「そんなんじゃないよ、悠人は」


確かにルーリィエはフュリアスによって殺されかけた。あの火力はソードウルフでも出せないであろう威力。それを出す敵のフュリアスが気にはなるが、今はそういう話をする場じゃない。


悠人のことだ。ルーリィエが持っているのはフュリアスに対する恐怖心。だけど、悠人は違う。


「悠人はね、あの戦いの後にダークエルフを見ながら私と鈴の前でこう言ったんだよ。『僕は、これでたくさんの人を殺したんだね』って。悠人が怯えているのはフュリアスにじゃない」


「人殺しをする自分自身じゃな。こうなることなら、悠人専用のフュリアスなぞ作らなければよかった」


アル・アジフが言葉を吐き捨てる。悠人の力を見いだして、悠人に戦う力を与えたアル・アジフは間違ってはいない。


悠人は、悠人には守る力が必要だったから。


「悠人にはもう、フュリアスに乗せない方がいい。音界の一部は未だに悠人の力を欲している部分があるけど、乗らない方がいい」


「そうですね。悠人に後で尋ねようとしたことがあるんですけど、止めておきます。悠人は人界に戻った方がいいかもしれませんね」


そういうメリルの目にはどこか寂しさを宿していた。


その意見に関しては私も賛成だけど、口に出したならきっとメリルみたいに寂しくなるだろうな。


悠人は音界にいない方がいい。フュリアスによる戦いがある音界にいたら、必ず悠人はフュリアスに乗るのを躊躇って死ぬ。そんなことにはさせたくないから。


「式典が終わるまでは戦闘は起きません。それから、皆さんと一緒に悠人と話をしましょう。人界に帰るべきだと」


「確実に悠人は反対するじゃろうがの。悠人にとってここはもう、心休める土地ではない。守るにはどうすればいいのか、再度考えないと」


「過保護」


ルーリィエが呆れたように言うけれど、アル・アジフの悠人の可愛がり方は他人じゃないほど常識を逸している。多分、アル・アジフは悠人を息子だと考えているのだろう。悠人だって必ずアル・アジフを母親だと言うだろう。


あのマザコンめ。


過保護と言われたアル・アジフは胸を張っていた。それにルーリィエはさらに溜め息をつく。


「別に過保護でもいいんだけどね。私が言いたいのは、それが本当に悠人だっけ。あいつの意志なのかどうか。あいつがそう望まなければ、きっと後悔するとも思う。あいつもあんた達も」


まるで私がそうだからとでも言うかのような口調。それを不思議に思いつつも私は言葉を返した。


「そんなこと、わかってる」


そんなことは、わかっている。でも、私達は悠人に頼っていた。


「今のままじゃだめなんだ。アル・アジフ、ソードウルフの改修状況は?」


「大丈夫じゃ。そなたの言うような改修になっておる。じゃが、あれでいいんじゃな」


アル・アジフの念押しの声に私は頷いた。隣ではメリルが心配そうに私を見ている。


「大丈夫。大丈夫だよ。私が、悠人の代わりになるから」


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