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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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第六十五話 終結

ついにこの話で2000000文字達成です。わーい。ここまで一年と三ヶ月。次の一年と三ヶ月後にはどうなっているかはわかりませんが、第四章は絶対に終わっていません。第三章は終わると思いますが。

首都に向かって突撃していたドラゴンの体に由姫の拳が微かに食い込んだ。たったそれだけでドラゴンの動きが止まる。そして、そのまま横に倒れた。


突き出していた拳を下ろして由姫は小さく息を吐く。


「これで、終わり、ですね」


そう言いながら身に着けていた栄光を虚空へと戻した。近くで戦っていた金色のオーラを纏うアストラルレファスから立ち上っていたオーラが消え去り、片膝立ちとなってコクピットが開いた。


そこから蒼いパイロットスーツ、通称蒼服を着た男が姿を現した。


「あんた強いな。助かったぜ」


そのまま上手くフュリアスを伝って下りてくるパイロットに由姫は小さく息を吐いた。


「そうですか。それはよかったです」


パイロットは金髪で蒼い目をしている。そして、非常に整った顔で所謂イケメンだろう。そんなパイロットが由姫に近づいて手を伸ばした。


「俺の名前はクーガー。クーガー・ラスファルト。お嬢さんの名前は?」


「由姫です。白百合由姫」


軽く握手をして二人は手を離す。すると、クーガーはさわやかな笑顔で由姫に向かってウインクをした。


「これから一緒に食事でも」


『何をしておるか!!』


その瞬間、二人の間に魔力の刃を作り出す剣が突き刺さった。ちなみに、由姫は大きく後ろに下がっている。対するクーガーはさわやかな笑顔で剣を握るアストラルソティスを見ていた。


フュリアスのコクピットが開き、そこからクーガーと同じ蒼服の男が現れる。


「親友。危ないじゃないか」


「危ない、じゃないわ!! お前はこんな状況でもナンパをするのか?」


「俺の人生は守ること3割、ナンパに7割使っているのでね」


「威張るな!! すまない。俺はラルフ。ラルフ・ゲリスナだ」


「由姫です。白百合由姫。急に乱入して混乱させてすみませんでした」


そう。由姫は戦いが終わる寸前で戦線に参加したのだ。瞬く間に周囲の数人を無力化して拳一つでドラゴンを倒した。もちろん、これでも全速力で急いだのだが、あまりに戦いが終わるのが速すぎた。


ラルフは少しだ苦笑してクーガーはさわやかな笑みを浮かべている。


「いや、助かった。俺達では食い止められなかったからな。由姫殿は人界の出身、ですね?」


「はい。そろそろ、あっ。孝治さん! こっちです!」


「由姫も来ていたのか」


「久しぶりッスね、由姫ちゃん」


由姫が手を振る先には孝治達四人の姿があった。もちろん、由姫からすればこの内半分が完全に初対面だったりもするが。


孝治はクーガーとラルフの近くまで歩み寄って二人に手を差しだした。


「『GF』移動課の第76移動隊副隊長花畑孝治だ。あの時は急だったからちゃんとした挨拶はしていなかったことをすまないと思っている」


「いや。緊急事態では簡略化されるのが通例だ。それに、俺達も助かっている。特殊部隊四番機『天剣』アストラルソティスのパイロットラルフ・ゲリスナだ」


「同じく、特殊部隊三番機『栄光』アストラルレファスのパイロットのクーガー・ラスファルト。お嬢さんは大歓迎だが野郎は嫌いだ」


そう言いながら笑みを浮かべるクーガーに孝治は潔いまでのさわやかな笑みを浮かべて頷いていた。


「気が合うな」


「合ったらダメだから。私はルネ。『ES』の人員だけどちょっとした調査ついでに手伝ってた。身元を調べるために拘束をされてもいいけど」


「こんな可愛いお嬢さんを拘束するだなんて頭のおかしい奴以外にはありえない。ラルフ、そう思わないか?」


「お前の頭がおかしいだけだ」


クーガーの調子に呆れたように溜め息をつくラルフ。それにルネはクスッと笑った。


こういう時に正規の手続きで来ていない人は基本的拘束されるのが普通だ。だから、ルネはそんな話をした。刹那もアーク・レーベも動揺することなく立っている。


そんな様子を見たラルフは小さく溜め息をついた。


「俺からは何も言えない、が、危機を救ってくれた以上、悪いことはしない。それは俺が誓おう」


「それは助かるッス。あっ、刹那ッス。一応、魔界の住人ッスよ」


「アーク・レーベだ。天界の住人だ」


「天界?」


由姫がその言葉に反応して軽く腰を落とす。だけど、それを孝治は手で制した。


小さく溜め息をつきながら腰を上げた由姫を見たアーク・レーベは身構えていた体を戻す。


「あらら。どうやらこっち側は音姉除いて全員集合かな?」


そうしていると挟撃を行っていた茜達がやって来ていた。全員がボロボロだが、大きな怪我はしていないみたいだ。


「大丈夫だったみたいですね」


「まあね。由姫姉ほどじゃないけど私を含めてかなり強いメンバーだったし。お兄ちゃんからの連絡は?」


その言葉に孝治と由姫が同時に首を横に振った。でも、不安そうな顔はしていないから二人共大丈夫だと思っているのだろう。


すると、茜が少しだけ不安そうな顔になった。そして、メグを見る。メグも不安そうな表情をしている。


「何かあったのか?」


「あー、孝兄にも伝えた方がいいかな。メグが、メグのお兄ちゃんと戦ったって」


「何?」


孝治は直接戦ったことはないが学園都市騒乱の時には対処法を考えていたりもしたためその言葉はかなり衝撃的だったのだろう。


メグはそんな孝治が向けてきた視線に対して頷きを返した。


「お兄ちゃんは私に炎を向けてきた。そして、すごく不安になることを言ってきたの」


そこで言葉を切ったメグは何かを決心したように顔を上げた。


「目的が同じなのに過程が違うなら戦わなければならないって」






「あれ?」


小さく呟かれる声。その声は静寂な部屋の中で大きく響いた。声を上げた人物、白川七葉は目の前にある光景が信じられずに何回も瞬きをしている。


見えるのは白い天井。記憶が確かなら、七葉は確実に死んだはずなのに。


「どうして、生きて」


「起きたか」


その声がした方に視線を向けるとそこには周の姿があった。


「周兄、どうして、ここに」


「まあ、お前が一日寝ている間に色々なことがあったからな。ちなみに、和樹は寝かせた。さっきまでずっと起きていたから。ともかく、無事で良かった」


「冬華、お姉ちゃんと、メリル姫、は?」


「無事だ。音姉が何とかな。事後処理がありすぎて慌ただしくなってる。オレは軽く息抜きだな」


そう言いながら周は苦笑した。そして、窓の外を見る。その時になって七葉は外がうるさいことに気づいた。


痛む体を堪えて何とか周の力も借りて起き上がる。起き上がった七葉が見たのは、詰めかける市民の、大半が女性の、群れだった。


「何が」


「戦いは終結した。ただ、フルーベル平原に向かった兵の九割以上が死亡。生き残った数は限りなく少ない。首都防衛も被害がかなり大きいな。はっきり言って、オレ達が間に合わなかったらここは廃墟になっていたと思う」


「そんなに?」


「ああ。戦いが終結したってのに、今度は市民が詰めかけているんだ。軍も機能していないし」


「そうなんだ。っく」


痛む体を堪えていると周が七葉をベッドの上に寝かしつけた。そして、呆れたように溜め息をついてベッドに腰掛ける。


「今から第76移動隊内で情報整理だ。終わったらまた来るからそれまで休んでおけ」


「周兄。戦いは、終わったんだよね?」


その言葉と共に周は立ち上がる。そして、出口のドアに手をかけたところで止まっていた。


七葉は答えにくい質問だとわかっていながら質問したのだ。だから、周は少しだけ考えて頷いた。


「戦い、は、終わった。でも、まだたくさんのことが終わっていない。そして、第76移動隊のことも」


「周兄?」


「大丈夫だ。考えはある。だから、今はゆっくり休め」


その言葉と共に周は部屋から出て行った。そして、ドアが閉まる。


七葉は小さく溜め息をついて窓を見つめた。


「いるよね、あまねお姉ちゃん」


「気づいていたのかい?」


その言葉と共に淡い黄色のゴスロリ服を着た正が窓から侵入してきた。それに七葉は苦笑する。


「うん。心配してくれたんだね」


「当たり前だよ。七葉は未来を回避した数少ない人間だからね。それに、大切な妹だから」


「ありがとう。あまねお姉ちゃん、周兄が言っていたのは本当?」


「そうだね」


正は窓に腰掛けて小さく頷く。


「これから第76移動隊は大きな流れに流される。その中でどうなるかは僕にはわからない。だけど、僕は最後まで見届けるよ」


「言うと思った。あまねお姉ちゃん。周兄をお願いね。一番大変だとは思うから」


「わかっているよ。ゆっくり休むんだよ」


七葉の頭を軽く撫でた正はそのまま窓から姿を消した。七葉は少し嬉しそうにしながらも、少し不安そうな声音で言う。


「何が、終結したのかな?」

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