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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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第六十四話 制御

レヴァンティンでストライクバーストのエネルギーソードを受け止める。それを最初の提案に受けた時は本当に驚いた。


理論上、破壊は限りなく難しいとされていたリアクティブアーマーを軽々と破壊する超高密度のエネルギーの刃。それを受け止められるものが存在するとは。


「僕達空の民の翼は魔力に対して絶対的に優位に立つ。ただ、普通の使い方じゃ生活に必要な魔力を集めるだけ」


オレと同じようにレヴァンティンレプリカを使って、同じように空の民が持つ魔力の翼を刃に宿してエネルギーソードを受け止める正が話しかけてくる。


「いくら他に宿したところで翼としての本質は消えない。そうだろ?」


「というか、飛べるもんなんだな」


意識しなくても。


正がクスッと笑う。多分、同じことを言おうとしたのだろう。


「最初は驚いたよ。属性翼の持ち主に聞けば話はわかりやすいとは思うけどね」


「聞いている暇はないだろ?」


「そうだね」


ストライクバーストがエネルギーソードを上げた瞬間、今度は逆側のエネルギーソードを振り抜かれる。オレ達はそれを受け止めた。


「空の民、って何なんだろうな」


「さぁ。でも、今はその力を使うことによって守れる人がいる。違うかい?」


「まあな!」


エネルギーソードを二人で弾き、二人で収束砲をストライクバーストに叩き込む。だけど、ストライクバーストは数歩後ろに下がるだけだった。


やっぱり、ストライクバーストは硬いみたいだな。


「さすがはマテリアルライザーやイグジストアストラルと同じ世界の遺物だな」


「これは硬いね。直接戦ったのは初めてだから噂だけは聞いていたけど」


「戦ったことがないのか?」


ストライクバーストの肩の砲が光る。オレはファンタズマゴリアで放たれたエネルギー弾を受け流した。


すかさずそのファンタズマゴリアにエネルギーソードが叩きつけられるが、ファンタズマゴリアは簡単にエネルギーソードを受け流す。


オレ達はダークエルフが下がっているのを確認しながらゆっくり後ろ下がる。


「直接はね。現在いまの世界は僕の時と変わっている。現在いまはね」


「なるほどね。まあ、今やることを簡単だからな」


レヴァンティンを握り締める。すると、ストライクバーストのコクピットが開いた。そこから現れたのは初老の男。


天王マクシミリアン。だと思う。


こんなに老けていたっけ。


「久しぶりだな海道周。そして、海道正。いや、別の名前で呼んだ方がいいか?」


「お好きな方をどうぞ」


「そうか。ならば海道正でいこう。お前達は何故邪魔をする?」


「邪魔? そうなのか?」


「君は人界に少し前までいたからね。でも、僕の記憶が正しいなら侵略してきた君達を僕達は迎え撃っているだけだよ」


その場にいなかったから詳しいことはわからないが、どちらも嘘を言っているようには思えない。


すると、天王マクシミリアンは何かに納得したかのように頷いて笑みを浮かべた。もしかして、


「連絡が来ていないのはこちらか」


「慧海には伝えたのだがな」


どういうことだ? 慧海が連絡を怠るとは思えないし。可能性としては、


「今は考えても仕方ないよ、周。さすがの僕も戸惑っているから」


「なら安心だ。マクシミリアン、どんな事情かはわからないが、オレ達は引くわけにはいかない。そっちが引いてくれるならありがたいけど」


「無理だな」


だとは思った。オレは小さく息を吐いてレヴァンティンをしっかりと構えた。引かないなら戦うしかない。それに、正がいる。


オレ一人なら天王はキツいだろう。でも、二人なら戦える。


「戦うつもりか? 我らと」


空のフュリアスが一斉にエネルギーライフルを向けてくる。マクシミリアンが笑みを浮かべている以上、合図一つで撃たれるだろう。


でも、こちらも二人だけじゃない。


「スターゲイザー・バスター!!」


その声が聞こえた瞬間、オレと正は同時にマクシミリアンに斬りかかっていた。同じくして光の嵐が空を覆い尽くす。


マクシミリアンが一瞬だけ空を見て軽く笑みを浮かべてストライクバーストからオレに向かって突っ込んできた。レヴァンティンでマクシミリアンの取り出した杖を受け止めた、はずだった。


「なっ」


そのまま力任せに振り抜かれてオレは力任せに飛ばされた。空中に足場を作り出して着地する。


だが、マクシミリアンは追撃するように加速して杖を振り上げていた。


避けられない。オレの体は作り出した床を滑っている。だったら、


レヴァンティンを鞘に収め腰を落とす。足に力を入れ、力を全てレヴァンティンに集約する。


「紫電一閃!」


振り抜いたレヴァンティンがマクシミリアンの振り下ろした杖とぶつかりお互いが大きく弾かれ合う。だけど、その時にオレはステップに入っていた。


回るように回転して前に踏み出す。


「雲散霧消!」


体勢を戻していないマクシミリアンは杖でレヴァンティンを受け止めるが、オレの力任せの一撃はマクシミリアンをオレが作り出した足場に叩きつけていた。そこに正がレヴァンティンレプリカを握り締めて距離を詰めていた。そのまま紫電一閃を叩きつける。


マクシミリアンの体は大きく跳ね、空中に静止する。


「これが二人の海道周か。強いな」


マクシミリアンが笑みを浮かべて見ている。そんな中で正がオレの横に立ってレヴァンティンレプリカをマクシミリアンに向けた。


「助かった」


「雲散霧消の後、僕の追撃が入らなかったら一撃をくらっていたよ」


「だろうな」


「空中戦では足場を使わない方がいいよ。足場が砕けて衝撃が落ちる可能性がある。それに、相手はあの天王マクシミリアンだ。耐久値は高いと考えた方がいい」


警戒しながらも正はオレに空中戦のことを教えてくれる。


「空中戦の基本はヒットアンドアウェイと言われているけどそうじゃないよ。僕や君みたいな連続攻撃型は逃がさない。ひたすらに攻撃を叩き込む」


「オールオフェンスか」


「僕達に回避は必要な時だけでいい。ヒットアンドアウェイはいらない。ただ、攻撃を考えるんだ。僕達なら、何をすればいいかはわかるだろ?」


「こういう時に防御オプションがたくさんあるのは嬉しいよな」


マクシミリアンが動く。弾丸のごとく突っ込んでくる。それに対してオレ達は前に飛び出した。


二人でマクシミリアンの杖を受け止める。


「空中戦の戦い方は敵の攻撃を受け流してどこまで自分の攻撃を叩きつけられるか」


正の言葉を聞きながらレヴァンティンでマクシミリアンの杖を受け流す。すぐさま杖が翻るがそれより早くレヴァンティンがマクシミリアンの腕を下から跳ね上げた。


杖の軌道がそれてオレはそのまま蹴りを顎に叩き込む。叩き込みながら回転してレヴァンティンを側面に叩きつけようとした。だが、それは腕によって受け止められる。


すかさず体を回転させながらマクシミリアンから距離を取った。感触的には悪くはなかったんだけどな。さすがに重力とは真逆な位置で放ったレヴァンティンは威力がないか。


『悪くはないんですけどね』


「今までよく話さなかったよな」


レヴァンティンが語りかけてくるのをオレは小さく息を吐いて返した。マクシミリアンはちょうどとオレと正に挟まれた位置にいる。


『相手が相手ですから分析をしていました。いやー、やはりさすがは天王ですね。隙がほとんどありません』


「お前はオレのやる気を削がすために現れたのか?」


『違いますよ。言いましたよね。ほとんどって』


マクシミリアンが突っ込んでくる。オレはそれにレヴァンティンを合わせて受け流そうとした瞬間、


『前!』


レヴァンティンの声に釣られてオレは前に出た。レヴァンティンと杖がぶつかり振り抜かれる。


オレは吹き飛ばされた。マクシミリアンの後ろに。


「なっ」


すかさず足場を踏みしめてレヴァンティンを振り上げる。マクシミリアンはとっさに杖で受け止めるがオレはすかさず足を跳ね上げた。


杖を蹴り上げる。マクシミリアンはすかさずその杖を戻そうと力を込めるが、オレはすかさず後ろに回り込んでいた。


マクシミリアンが振り返る。でも、そこにオレはいない。オレはすでに翔け抜けて逆に回り込んでいる。


鞘に収めたレヴァンティンを走らせる。それはぎりぎりでマクシミリアンに受け止められていた。後少しだったんだけどな。


「貴様」


「どうかしたのかマクシミリアン。そんなにこの小僧の動きに驚いたか?」


「ふっ、ふふふ」


すると、マクシミリアンは急に驚き始めた。オレは訝しむようにマクシミリアンから距離をとる。何か嫌な予感がする。


「これが海道周か。なるほどなるほど。どうやら、手のひらの上で動いていたのは我のようだな。今日は引かさせてもらおう」


「それは少し待って欲しいね」


正がレヴァンティンレプリカを構える。だけど、マクシミリアンはその状況でも笑みを浮かべていた。


「たかが小僧二人、我が勝てぬとでも?」


「なんだって?」


正の目がかずかに細まる。それでも、警戒は解いていない。そのはずだった。


「教えてやろう。お前には未だに教えていなかったからな」


オレも視線を外していない。そのはずなのに、マクシミリアンは正の背後にいた。


「なっ」


正が振り返る。だが、間に合わない。正に向かって杖が振り下ろされ、


水晶の輝きがマクシミリアンの杖を受け止めていた。


正が慌てて距離を取る。マクシミリアンも水晶から離れようとするが水晶はマクシミリアンの周囲に漂っている。


「よっ。援護はいるか?」


その言葉と共に水晶の足場に乗った悠聖が上昇してきた。マクシミリアンを囲むように堕76移動隊が集合している。


どうやら、敵は撤退か全滅したらしい。当のマクシミリアンは笑みを浮かべていた。どういうことだ?


「なるほどな。これが、第76移動隊か。面白い。さすがの我もこの数は辛い。引くとしよう」


「引けると思っているのか? 周隊長を差し置いて悪いが」


「悠聖。ストップ。ストライクバーストを見ろ」


ストライクバーストの方がこちらを向いている。遠隔操作だとは思うが、あの威力で撃たれたなら無事では済まない。


「賢明な判断だ」


「どうかな? この場で犠牲を覚悟で戦うのもいいとは思うけど、ちょっとばかし何かひっかかるんだよな」


そう。何かが引っ掛かる。どうして、味方がやられたのにマクシミリアンは笑みを浮かべているのかが。


「次会う時は、我らが悲願を達成する時だと思え」


ストライクバーストに向かって加速するマクシミリアン。その背中を楓がカグラを向けて狙いを定めていた。だが、撃たない。もし、ストライクバーストからの砲撃があったならかなり危険だから。


オレも正もいつでもみんなを守れるように身構えている。だが、そんな考えは杞憂だと言うようにストライクバーストはゲートに向かって飛翔してゲートから消えて行った。ゲートが消え去り、この場に静寂が戻る。


「とりあえず、撤退と被害状況の確認。勝ったとは言えない戦果出しな」


そう言ってオレは小さくため息をついた。

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