第六十一話 第76移動隊VS天界
や、やっと形になった。
本編には関係ありませんがかねてより言っていた外伝である短編集の「始まりのクロニクル」の連載を開始しました。あるライト、違った、ヘビーノベルのタイトルと告示していますが気にしない方針でお願いします。
短編集でありディバインナイツ外伝であるためディバインナイツシリーズ全ての話が詰まっています。今は「新たな未来を求めて」しか書いていませんが、originや星語りなどの物語も書く予定です。暇があれば読んでください。現時点で一話しか上げていませんが。
カグラから放たれた光が向けられたエネルギーライフルを弾き、飛来したブラックレクイエムがフュリアスの頭部を吹き飛ばす。
「23機目!」
楓は大空を飛翔しながら声を上げつつカグラを向ける。そして、小さな収束砲を放った。
放たれた収束砲は寸分違わずフュリアスが構えたエネルギーシールドを貫いてエネルギーライフルを持つ右腕を吹き飛ばした。動きが止まったフュリアスの左腕をブラックレクイエムが切り裂く。
「収束砲のチャージで一網打尽にしたいのに」
「楓が放ったら完全に消滅やん。それに、うちらは敵を引きつけやなあかん」
光が楓と背中合わせになりながらレーヴァテインを構える。そして、一瞬にして複製された大量のレーヴァテインが一斉に放たれた。
狙われたフュリアスは回避行動を取ったり迎撃したりしているが数が膨大すぎて次々と撃墜されている。
二人は弾かれたように離れ合うと、二人がいた位置に対艦剣を持った純白のフュリアスが降ってきた。だが、振り向き様に二人が放った収束砲が腕と頭を吹き飛ばす。
楓は周囲を警戒しながら地上を見た。そこには着地した純白のフュリアスの群れとそれと戦う正と白騎士の二人にお互いの持つ剣を合わせるマテリアルライザーとダークエルフだった。
味方なのにと思うが、今の悠人にとっては味方すらも敵なのだ。
「どうにかして止めないと」
「その気持ちはわかるんやけどな、空をうちら二人で制圧せなあかんねんで」
「わかってる」
楓は空中に作り出した足場に降り立ってカグラをしっかりと握り締めた。そして、収束砲を薙ぎ払う。
四肢を四散させるフュリアスの群れを見ながら楓はすかさず飛び上がった。楓がいた場所に大量のエネルギー弾が通り過ぎる。
楓は周囲を確認しながら隙間を縫うように逃げ回る。そして、楓を追いかけるフュリアスはブラックレクイエムが的確に戦闘不能にしていた。
「だんだん誘われているね」
「冷静やな」
散発的にレーヴァテインのコピーを放つ光が呆れたように肩をすくめるが、楓は浮かべた笑みを周囲に見せつけた。
「そんな作戦ずっと受けていたから」
「そうやな。周って本当に効果的にうちらを潰してくるからな」
その目は少し遠くなっている。
空戦出来ない面々にとっては空戦可能な面々は恐怖の対象でもある。だからこそ、部隊内の模擬戦では活躍出来るのだが、第76移動隊では空戦持ちが多い上に周が空戦持ちを容赦なく潰しにいくのだ。もちろん、作戦で効果的に。
作戦次第では空戦持ちは潰される。だからこそ、楓や光達は潰されないように訓練している。周の作戦からは逃げられないが。
「周君からは絶望しか受けなかったけど、すごく役立っているよね」
「あいつはいつか見返さなあかんな」
「そういうこと。でも、しつこいな」
追いかけて、いや、追い詰めようとしてくるフュリアスを見ながら楓は小さく呟く。光も『炎熱蝶々』の力をを最大限まで使い飛翔しながら炎弾をバラまくが数が多すぎる。
それに、空に浮かぶゲートからは未だにフュリアスが吐き出されていた。
「真っ正面からやり合ってもうちらが負けるだけやし」
「このままだと押されてしまう。せめて、空戦可能な人が後三人いれば」
「欲張りすぎやろ。まあ、鬱陶しいのは賛成やけど!」
光が振り返った瞬間、大量のレーヴァテインが複製されて一斉に放たれた。だが、放たれたレーヴァテインが全て間に入り込んできた一機の純白のフュリアスによって受け止められる。
「っつ!?」
レーヴァテインの火力が受け止められたことに光が驚いた瞬間、その隙を狙って一斉にエネルギー弾が光に向かって放たれた。楓がとっさに防御魔術を展開しながら光に体当たりをして二人はエネルギー弾から避けた。
だが、二人は未だに体勢を崩している。
「仕方ない。オーバードライブ!!」
だから、楓はとっさにオーバードライブを発動した。ブラックレクイエムが魔力の光を放ったまま周囲を薙ぎ払う。だが、焼け石に水。
楓は光を抱えたまま高速で飛翔する。
「ごめん」
「さすがにあれは止まると思う。指揮官機かな?」
「そうやな。うちらで倒したいところやけど、下手に動けば逆にやられるし」
「孝治君もいれば良かったんだけどね。後は冬華。オーバードライブと言ってもあれとあれとあれとあれは使用出来ないし」
「羨ましい限りやわ」
飛来するエネルギー弾を軽々と避けながら楓は手元に戻したブラックレクイエムを薙ぎ払った。ブラックレクイエムから出ている光が周囲のフュリアスを切断する。
それによってフュリアスの動きが止まった瞬間、光がレーヴァテインを四方八方にコピーして一斉に放っていた。
爆発の花が周囲に輝きフュリアスを一掃する。
「大丈夫や」
「わかった。ブラックレクイエム」
光の言葉に楓は光を話し、ブラックレクイエムを周囲に放ちながらカグラを構えた。それに警戒するフュリアスはいるが、退くフュリアスは存在しない。
それを見た楓が小さく息を吐き唇を噛んだ瞬間、水晶の輝きが一番近くにいたフュリアスを破壊した。それに目を見開く二人の前に魔力の翼をはためかせた優月がその隣にディアボルガとセイバー・ルカ、そして、煌めく水晶の群れを従えて浮上してきた。
「お待たせ。二人共」
「悠聖のそばにいなくていいん?」
光の言葉に優月が頷いた瞬間、ディアボルガが鳴らした錫杖の音が周囲のフュリアスを破砕した。
「悠聖にはアルネウラがいる。それに、エルブスもいる。私は悠聖が安心して守れるように戦うだけだから」
その言葉と共に優月が握る薙刀に水晶が纏わりついた。
「ディアボルガ、セイバー・ルカ、二人の力を私に貸して」
水晶は光を反射し眩いまでの輝きを作り出す。それを振り上げた優月は周囲のフュリアスに向けて宣言した。
「我が名は精霊王の娘ソラ! 我が身を守るは精霊王の忠臣ディアボルガとセイバー・ルカ! 我らの破壊から逃れたいものは今すぐ立ち去れ!!」
回答は、エネルギー弾。
だが、それら全てはディアボルガによって作り出された闇の中に吸収されていた。
「二人共。私に力を貸して」
「しゃあないな」
「そうだね」
光と楓が苦笑しながらレーヴァテインとカグラを構える。
「暴れるで」
「うん。光、行くよ!」
「始まったか」
空で激しさを増した戦いを見ながらオレは小さく呟いた。そして、その呟きの最中にもオレが操る『破壊の花弁』がエネルギー弾を弾いた。
『破壊の花弁』はかなり便利だ。ただ、守ることに特化しているわけじゃない。破壊することに特化しているのだ。
「呑気ね」
隣で呆れたように頸線を操る琴美さんが呟いた。というか、この人はこんな武器が使えたんだな。
「呑気、というより信頼しているだけですからっと。都さん! 六時の方向に一斉掃射」
「わかりました」
オレの言葉と同時に収束していたフォトンランサーがオレが示した方向に向かって放たれた。東西南北はわからないから都さんが向いている方向から場所を指示している。
オレは『破壊の花弁』の間をかいくぐってきたエネルギー弾をアークレイリアで弾き、『破壊の花弁』を一斉に周囲に放った。
『精霊帝、精度が落ちていると私は考えます』
『エルブス! 悠聖の集中力を阻害しないで! 七時の方角に都を狙ってる!』
「っつ。アークレイリア!」
すかさずアークレイリアの力を発動して都さんを守るようにアークレイリアの能力を発動する。八つの花びらが都さんに向かって放たれたエネルギー弾を弾いた。
都さんだけは守らないと。
『無茶すんじゃねえぞ! お前が防衛の要だ! お前がやられたら全滅する!』
その言葉と共に風が前方にいたフュリアスを一斉に切り裂いていた。言葉があった方向を向いてみればそこにはフィンブルドの姿がある。
オレはフィンブルドに向かって笑みを浮かべた。
「誰に向かって言っているんだ? オレはお前のマスターの師匠だぜ」
『軽口を叩けるなら十分だな。俊也も頑張ってんだ。俺も頑張らないでどうする』
途中からは明らかに自分自身に対して言っている。
戦力差は絶望的だ。ここは要塞ですらなく相手は飛翔するフュリアス。人界のフュリアスはダークエルフをベースに地上戦を考えて作られているのに対し、天界は完全に空中戦。そして、膨大な物流。
せめて、音界の軍隊が生きていれば。
『悠聖、今は前を見よう』
悪い。でも、さすがに折れそうにはなるな。
『破壊の花弁』とアークレイリアの操作は負担が大きい。さらには終わりが見えない状況だ。よく守りきれているというべきか。
「周が頑張っているんだ。きっと、孝治も戦ってる。あいつらの親友であるオレが戦わないわけにはいかないんだよ!」
「そうね。今、音界に第76移動隊全員が来ているわ。負けてられない。私だって、負けてられないわよ!」
琴美さんの気合いの言葉と共に頸線によってフュリアスが切り裂かれる。だが、やはりと言うべきか焼け石に水。
せめて、戦場を一変させられる力を持つ奴が後二人いれば。
「こういう時に浩平がいればな」
「呼んだか?」
その瞬間、まるで雨のような光弾が空から降り注いだ。それにオレはハッとして空を見上げる。
そこには、フレヴァングを肩に担ぐ親友と親友の彼女の姿があった。
「ったく、美味しすぎるじゃないか」
あまりの嬉しさに漏れでた涙をそっと拭きながらオレは親友に向かって大きな声を出した。だから、親友は笑みを浮かべて声を返す。
「だろ? 俺とリースが来た以上、好き勝手はさせないぜ。いくぞ! リース!! フレヴァング!!」
「行く!」
二人がオレ達の上空で戦いを始める。それを見て、オレは笑みを浮かべながらアークレイリアを構えた。
「さあ、後少しだ! このまま押し返すぞ!」
次回、化け物VS化け物の戦いです。もう、フュリアスの戦いじゃありません。