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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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第六十話 破壊

悠人が少し壊れてます。

「あははっ。あははははっ」


思わず笑みを浮かべてしまう。笑ってしまう。


両手に持つペネトレートの引き金を引きながら僕は踊っていた。


「弱い。弱いよ! そんな力で僕を倒すつもりなの? 本当に、笑えるよね!」


空から降り注ぐ大量のエネルギー弾を回避しながら僕は的確にペネトレートの引き金を引いて敵を落としていく。


ペネトレートのエネルギー収束率は極めて高い。だから、イグジストアストラルのようなエネルギー弾自体が効かない敵以外には大きなダメージを与えることが出来る。


狙うのはコクピット。一発で一撃で殺していく。


「僕達を狙う奴は全員死ねばいいんだ! 殺して、殺して、殺し尽くしてやるよ。この僕がね!!」


射撃戦では分が悪いと思ったからか何機ものフュリアスが地上に降り立つ。でも、たったそれだけだ。たった30ほど。


僕は笑みがこぼれるのが止められ無かった。


「あははははっ。たったそれだけ? 僕を倒そうだなんておこがましいよね!」


右手のペネトレートを対艦剣に変える。本来ならペネトレートを全てしまうべきだろうけど、そんなものは必要ない。


ペネトレートが無ければ殲滅力が確実に落ちてしまう。


「殺すよ。みんなを殺したお前達は、僕が全部殺し尽くしてやる!!」






ファンタズマゴリアの光が降り注ぐエネルギー弾を受け止める。そんなファンタズマゴリアを展開している周は呆れたように溜め息をついた。


「こっちに必死だよな。まあ、先制砲撃で倒せなかったし仕方ないか」


そう言いながら笑みを浮かべているが、周でもこの量は辛いはずだった。アル・アジフがマテリアルライザーの出撃を提案したけど、周が却下した。


今の戦力ではここを守りきることは出来ないから。


「どう打ってでるかじゃな。この状況を傍観しているだけの余裕は我らにはないぞ」


『正確には何人かやられる覚悟なら壊滅は可能だろう』


ディアボルガが錫杖を鳴らして光を曲げながら都さんを見る。都さんは断章を軽く掲げた。それだけでファンタズマゴリアの隙間を狙うように放たれたエネルギー弾を受け止める光の壁が出来上がった。


こいつらがいたら一生エネルギー弾が届かないよな、と思いつつオレは寄りかかるように眠っているリリィを見た。


周達が来た後にリリィは気が抜けたのかそのまま気絶したのだ。まあ、至近距離であの砲撃を受けたのだから仕方ないかもしれない。


「周君。このままだとマズいのはわかるけど、このままでいるのが一番いいんじゃないかな?」


「そうやな。はっきり言って、相手の攻撃圏内にはうちらしかおらん。それやったら、相手のエネルギーが切れるまで耐え忍ぶのが一番やないん?」


「一理はあるんだけどな。まあ、悠聖の腕の中にいる見知らぬ女の子とかが気になるわけ。振動迫撃砲を至近距離で受けたなら早く治療した方がいいからな。応急処置したとはいえ、あの威力は極めて高いらしい」


「まるで知っているような口振りじゃな。振動迫撃砲は魔科学時代最後期に生まれたものじゃ。それを理解しているとなると」


「奴ら、天界にスパイを放っているからな、それ経由だ。それに、何回か放たれてる。ファンタズマゴリアが受け流すことに特化したものじゃなかったら確実に抜かれていたな」


「だとすれば、僕では無理だね」


そう言いながら肩をすくめる正。どういうことだろうか。


「だけど、こうも守ってばかりだと彼が壊れるかもしれないよ」


憂いを含めた目で正はひたすら駆け回るダークエルフを見ていた。ダークエルフは強い。怖いくらいに強い。だけど、まるで機械が動かしているような感覚に陥ってしまう。


それほどまでに正確で、そして、怖いものだった。


「そうじゃな。打って出たいところじゃが」


「今出ればやられる可能性がある。どうすればいいんだよ」


オレは小さく言葉を吐き捨てた。周に頼るという手もあるが、周に頼ってばかりじゃこれからが大変になるだろう。オレ達が何かを考えないと。


「悠聖」


その時、リリィの声が響いた。オレがリリィの方を向くとリリィは笑みを浮かべながらアークレイリアをオレに差し出していた。オレは反射的にアークレイリアを受け取ってしまう。


その瞬間、オレの中で何かが動いた。


『ほう』


頭の中でいつもなら何も言わないエルブスが感心したように声を上げた。しかも、シンクロしたような感覚だ。


シンクロしているアルネウラと優月が絶句していた。


まあ、エルブスって精霊からしたら完全に神様だしな。


『なるほど。この娘は面白い事が出来る人物だと私は考えます』


面白い事?


頭の中でエルブスに語りかける。すると、エルブスは頷きを返してきた。


『アークレイリアの所有権が精霊帝に移っていると私は考えます。そういうことが出来るなんて』


どうやらエルブスも驚いているらしい。すると、リリィがオレのアークレイリアを掴む手の上に手を合わせた。


「私の力を貸してあげるから、だから、私も守ってね」


「ったく。リリィは少し休んでろ。優月、アルネウラ、一度シンクロ解除するぞ」


オレの言葉と共に二人がオレの体から離れる。だから、オレは優月にリリィの体を預けた。


優月は少し寂しそうに笑みを浮かべてリリィを受け取る。


「悠聖。頑張ってね」


「当たり前だ。守るなら、あいつが一番だしな」


エルブスの能力は知っている。だけど、エルブスとシンクロしたことはない。エルブスはシンクロ自体を嫌がるからだ。でも、今だけはエルブスの力を必要としている。


今ここにいる戦えないリリィを守るために。


「我との盟約に従いて我が名に応じ、我が前に現れよ。エルブス!」


オレの前にエルブスが姿を現した。本当ならあまり見せたくないんだけどな。


水晶みたいな翼をはためかせてエルブスはオレに向かって笑みを浮かべる。


「出番だと私は考えます」


「ああ。頼むぜ」


「ちょっと待つのじゃ」


その言葉にオレが振り向いた瞬間、そこにはアル・アジフを開き手のひらでいくつもの魔術陣を収束させたアル・アジフの姿があった。可愛い女の子の声に振り向いてみればそこにはプロレスラーがいたと考えたらわかりやすいだろう。


それほどまでにアル・アジフはエルブスに対して怒りを滲ませていた。


「久しぶりじゃの。天罰神エルブスレイヤ」


「その名前は二世界前の名前だと私は考えます。今の名前は精霊王エルブス。我が子達を精霊帝の隣で見守る精霊です」


「そうは言っても我はそなたを許せぬのでの。今ここで焼き尽くしても」


「そういう状況じゃないみたいだぜ」


二人の間にレヴァンティンを引き抜いた周が入り込んだ。アル・アジフは小さく怒りの声を漏らして、エルブスは長い青い髪を軽く触った。


というか、ファンタズマゴリアを維持しなくてもいいのか?


「オレ達から悠人に狙いをつけた。さすがの悠人も危ない」


その言葉にオレ達は周囲を見渡す。確かにいつの間にか悠人の乗るダークエルフだけが狙われていた。オレ達が守ってばかりだからって。


「舐められたな。周はアル・アジフと一緒に自由に動いてくれ。楓と光の二人は空からサポート。正と白騎士は地上から悠人をサポート。他は遠距離射撃をしながらここに待機」


「いいぜ。アル・アジフ、行くぞ」


「ちっ、仕方ないの」


アル・アジフはエルブスを睨みつけながら周と共に走り出した。オレは小さく笑みを浮かべてアルネウラとエルブスの手を取る。


「さあ、見せてやろうぜ。オレ達の力を。ダブルシンクロ!」


二人の体がオレと重なる。


ドクン。


大きく跳ねる心臓の音。急激な魔力の上昇に鼓動が追いついていない。


ドクン。


力を感じる。精霊王、いや、アル・アジフの言葉が正しいなら天罰神エルブスレイヤか。その力を感じながらオレは小さく息を吐いた。


エルブスが持つのは武器だけ。武器と言ってもただの武器じゃない。


キラキラと光る輝き。それは水晶の輝き。まるで桜の花弁のように舞うそれを感じながらオレは笑みを浮かべた。


「さあ、始めようぜ。舞え! 『破壊の花弁デスペルタル』!」






「こんなものかな? あなた達の力はこんなものなのかな?」


向かってくる光刃と光弾を回避しながら僕は笑みを浮かべる。そして、目の前の純白のフュリアスに対して対艦剣を突き刺した。その体を盾にしつつペネトレートの引き金を引く。


ペネトレートによって貫かれて爆発するフュリアスを見ながら僕はさらに笑みを深める。フュリアスは本来爆発しにくいけど、上手く狙えば簡単に爆発するんだよね。特にコクピットとか。


対艦剣に突き刺さったフュリアスを払い、無造作に対艦剣を一閃する。それだけで斬りかかってきた三機のフュリアスが横に両断していた。


「弱い弱い。弱すぎるよ。もっと僕を楽しませてよ! 僕が満足出来る強さを見せてよ! どっちにしたって僕が殺すけどね。あははははははっ」


声を上げ笑いながら対艦剣を振り抜きペネトレートを倒す。心地よい高揚感に体中を預けながら僕はフュリアスを倒し、パイロットを殺していく。


こんな奴らは死んでいいんだ。死んで当然なんだ。だから、僕は何も悪くはない。正しいことをしているだけなんだ。こいつらを殺す僕は正義なんだから。


気づいた時には近づいてくるフュリアスの姿は無かった。見えるのは距離を取るフュリアス達の姿。その手にはエネルギーライフルが握られている。


「一斉射撃? そんなもの、僕には効かないよ」


僕がニヤリと笑みを浮かべた瞬間、周囲のフュリアスが一斉に僕に向かって引き金を引いた。


放たれたエネルギー弾に対して僕は何も動かない。動く必要がないから。


エネルギー弾がダークエルフの体を叩く。だけど、エネルギー弾は全てリアクティブアーマーによって弾かれていた。


「あははははっ。これを笑う以外に何が出来るのかな? さあ、あなた達には死んでもらうよ。僕のために、死ね!」


ペネトレートを取り出し引き金を引く。放たれたエネルギー弾は近くのフュリアスに向かい、それは剣によって弾かれた。弾いたフュリアスを見て僕は思わず目を見開いてしまう。


マテリアルライザー。


パイロットは周さんとアル・アジフさん以外にありえない。


「どうして」


『悠人。これ以上の戦闘は無意味だ。敵は戦意を失っている。これ以上は『GF』として』


「関係ないよ。こんな奴らは僕が殺すんだ。守るために殺すんだ!」


『ちっ。状況は最悪だな。エリシア、悠人を止めるぞ』


『はい。私達の息子は、私達が止めてみせます!』

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