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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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第五十八話 雷神装填

ちょっとゲームをしていたら更新が遅れました。この作品及びディバインナイツシリーズの神剣についてその作品から影響は多少なりとも受けています。まさか

名前までかぶってしまうとは、という部分もありますが。効果とかストーリーとかから名前をつけていたんですけどね。

迸る紫電を形にして飛び上がっていたベリエは高速で空を滑り落ちた。着地した際に迸った雷撃によって周囲の敵が倒れる。


「紫電よ集え!」


ベリエの手のひらが地面に触れた瞬間、ベリエを中心に魔術陣が展開され雷が空に浮かぶ魔術陣の間を大量に駆け抜けた。


小さく息を吐いて立ち上がったそこには大半が倒れている男女の姿。立っているものも無事なものはいない。


ベリエは小さく息を吐いて拳を握り締めた。


「メグは誰かと戦っているし、私が頑張って前線を支えないといけないってのも辛いけど」


ベリエの拳には微かに火傷があるがまだ戦えないわけじゃない。だから、ベリエは小さく息を吐いて術式を展開する。


術式は力となって広範囲に及ぶ周囲の静電気をベリエの体の中にかき集めていた。


ベリエが扱う雷神槍は体内で紫電を操ることで体内加速を行う術式だ。だからこそ、完全な耐性が無ければ中から焼き尽くされる。


ベリエは小さく息を吸って体内の神経全てを尖らせる。


波の無い水面に波紋が生まれた瞬間、ベリエは一気に加速していた。


何でもかんでもすぐさま加速していればそれだけでダメージを受ける。だからこそ導き出した最もダメージを受けないやり方。


ベリエは雷神を纏って敵の中に突撃していた。加速された体が縦横無尽に駆け回り敵を文字通り蹴散らす。ベリエの雷神槍中の戦い方は実に簡単だった。


殴る蹴る加速する。

たったそれだけで敵は木の葉のように空を舞う。それほどまでに雷神槍の力は強力だった。


ベリエは小さく息を吐いて雷神槍を消した。周囲に立っているものはおらず、ベリエは痛みで少しだけ顔をしかめながらさらに息を吐いた。


「これだけ蹴散らせば大丈夫かな。後は、メグのところに、っつ!」


ベリエがすかさずその場から跳び退いた瞬間、紫電を纏った男がベリエがいた場所に剣を突き刺していた。ベリエはとっさに雷神槍を再展開せて前に出る。


振り上げられた剣をベリエは弾き加速した体のまま拳を叩きつけた。だが、拳に弾かれるように男が離れる。


「雷神槍じゃない。天雷槍? そんなことはありえないのに」


雷神槍及び天雷槍はベリエか刹那、時雨の三人しか出来ない。だが、精霊を介せば可能であることは知っている。それでも、その精霊がミューズレアル、雷属性の最上級精霊だからだ。


例え精霊召喚符を使っても体の負担を無視した力でなければ不可能なはずだった。


「くっ」


ベリエは拳を握り締めた。迸る紫電がベリエの肌に火傷をつけるがベリエは気にしない。気にしていられない。


「この手に集え、紫電の稲妻!!」


ベリエはすかさず魔術陣を展開して男に向かった魔術を放ったはずだった。だが、放った稲妻は割り込んできた紫電を体から迸らせた女によって弾かれていた。


二人目。


小さく思いながらもベリエはすかさず加速する。そのまま再展開させた魔術陣を直接押しつけていた。


「レクスボルト!!」


紫電が煌めき女を吹き飛ばす。だが、その瞬間には同じように紫電を纏った少年が懐に入り込んでいた。


ガードは間に合わない。受けるしかない。


そう思った瞬間、二人の間に半透明な幕が出来上がったいた。それに少年の攻撃は弾かれてベリエはすかさず後ろに下がる。


「ベリエちゃん、大丈夫?」


いつの間にか近づいてきていたアリエが寸前のところでベリエを助けたのだ。ベリエは大きく肩で息をしながらアリエがかける治癒魔術を感じつつ前を見つめる。


いつの間にか雷神槍を纏う人は増えていた。数は大体20くらいか。


「こんなにも才能豊かな人達がいたものね。世界って広いわ」


「現実逃避している暇じゃないと思う。術式凍結結界の準備を」


「ダメ。相手は私の想像が確かなら、術式じゃない。多分、命を燃やしている」


二人は後ろに下がりながら防御魔術を交互に複数種類展開していく。だが、距離はだんだん縮まっている。このままでは追いつかれるのは明白だった。


「アリエ。先に戻って。カウント30であれを使う」


「あれ? もしかして」


雷神装填(レクスティア)を使う。私が保てるのがそれくらいだから」


「ベリエちゃん。うん。わかった。準備しておく」


「お願い!」


ベリエは下がっていた足に力を込め、そして、前に向かって地面を蹴った。腰に身に着けていたナイフを抜き放ちそのナイフに雷の刃を宿す。


相手も同じようにそれぞれの武器に紫電を宿していた。


「30秒持ちこたえれば、この戦線は殲滅出来る!」


紫電と紫電が弾かれ合う。ベリエは迫りくる全ての攻撃を集中して最大限まで神経を走らせながらさばいて行く。上から迫りくる刃を受け流し、横から迫ってきた刃を弾き、背後から迫っていた刃とぶつからせながらベリエは前にでる。前に出たそこには四人が並んで術式を展開していたが、ベリエはナイフに宿した紫電を放っていた。紫電が迸り敵を吹き飛ばす。


その場から飛び退きつつ、ちょうど前にいた相手をすれ違いざまに切り裂いていた。だが、右の二の腕から血が流れる。その血が紫電に触れた瞬間、一瞬で蒸発していた。


「少し辛い、かな」


痛みに顔をしかめながらもベリエは迫りくるナイフを弾く。敵の目標は完全にベリエに向いており、ベリエは全ての攻撃を弾くだけでよかった。攻撃する必要はない。それに、茜が飛ばす矢は周囲を吹き飛ばすためそれだけで牽制になっている。


ベリエはナイフを地面に突き立てながら速度を落とす。それを好機にベリエに向かって五人が飛びかかっていた。


静かな水面。


雷神槍によって高速化された思考の中でベリエはイメージを膨らませる。


水面に映る小さな波紋。それは、重なり、そして、大きなうねりとなる。


バチッと大きな音が鳴り響いた瞬間、ベリエの体は加速していた。その速度は飛びかかっていた人達には見えなかっただろう。ベリエはただ駆け抜けただけだった。


紫電をその体に纏い、刃としながら。


ベリエが駆けだすと同時に背後で倒れる音が鳴り響く。その音は水たまりに倒れたような音だった。


その攻撃を見た誰もが動きを止めていた。それを見てベリエは少しだけ笑みを浮かべる。


雷神槍や天雷槍の槍の意味を考えたものはいただろうか。槍は薙ぎ払いなどに利用できる。だが、本来の使い方は突くこと。雷神槍は駆け抜けるだけでも攻撃となるものだ。ただ、その本質を理解していたとしても、その息までたどり着くことは出来ない。


ベリエが笑みを浮かべながらアリエの下に到着する。アリエはベリエを笑顔で出迎えていた。


「お帰り」


「ただいま。準備は?」


「カウント26」


「27」


ベリエとアリエが背中合わせになって術式を展開する。それに群がる敵勢力。その数は大体200くらいだろうか。誰もが精霊召喚符を持っている。だからこそ、二人はこの攻撃結界魔術を使う。


「カウント28」


「29」


二人が笑みを浮かべあい、お互いに手を握り合った瞬間、大地に巨大な魔術陣が浮かび上がっていた。


二人で一人前にして二人で世界レベル的にも誰もが到達出来ていない結界を使用可能とする姉妹。その最も得意なものはもちろん結界魔術。これは、その二人が作り上げた究極の結界だった。


「「カウント30。発動。雷神装填(レクスティア)」」


二人の声が鳴り響いた。叫んだわけじゃない。でも、二人の声は確かに鳴り響いていた。


大地の術式が光を放った瞬間、周囲のあらゆる紫電がその結界に集まっていた。


結界と言うのは本来防御または侵入禁止するためのものだ。その効果は様々ではあるが、これはその効果を応用した最大級の結界にして最大級の火力を持つものだった。


原理はいたって簡単ではあるが。


「紫電の海に溺れなさい!!」


ベリエの声が響き渡った瞬間、紫電が迸った。


雷という生易しいものじゃない。その雷が結界内に常時荒れ狂っているからだ。結界と言う外部を遮断する本来の効果と、結界の効果である静電気をかき集める能力。そして、集めたあらゆる電気を放出する能力。その三つが重なった瞬間、その結界は広範囲に破壊を撒き散らす凶悪な攻撃と化すのだった。


耐えきられるものは時雨と刹那、そして、膨大な魔力を持つ者達ぐらいだろう。迸る紫電は範囲内にいた全ての敵を焼き尽くし、そして、消し去る。光が輝いているため様子はわからないが、その威力はまさに凶悪と言う言葉が相応しいものだった。


ちなみに、電気の力で様々な化学反応が起きているが、それは結界が打ち消している。


光が収まった時、そこには何も残っていなかった。ベリエとアリエはスタンとその場に腰を下ろす。


「何とか、成功したね、ベリエちゃん」


「私、もう、くたくたなんだけど」


「大丈夫。ほら、首都のフュリアスが見えたよ」


「アリエ、ごめん」


その言葉と共にベリエはアリエに体重を預けた。そして、寝息をたてる。


雷神槍による高速戦闘に雷神装填(レクスティア)の発動。それによりベリエの体は限界を越えていたのだ。


「お疲れ。後は私達でやっておくから。だから、ゆっくり休んでね」


そう言いながらアリエはベリエの体を抱きしめた。

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