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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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第五十七話 挟撃

よくよく考えると、第三章は様々な勢力が動きます。基本的には第76移動隊、音界、天界、黒猫達ですが他にも様々な勢力が動きます。上手く書けるか不安になりますが応援よろしくお願いします。

遠目に見ても向こう側で戦闘をしている。それがわかるからこそ私は小さく息を吐いて炎獄の御槍を握り締めた。


敵部隊の最後尾は見えている。だが、そこにいるのは二体のドラゴン。あまり相手にしたくない。


「大丈夫?」


隣にいる夢が弓の弦を確認しながら尋ねてくる。それに私は頷いた。


「大丈夫だけど、どうしてこういう味方メンバーなのかなって」


そう言いながら振り返った先には談笑している四人の姿があった。


歴代最強の魔術師である海道茜。


雷帝の後継者であるベリエ・アトラス。


第76移動隊で数少ない治療兵の一人であるアリエ・アトラス。


一つの魔術ごとに杖を破壊するが威力はかなり高い田中緒美。

夢も加えたら一癖も二癖もあるかなりバランスの悪い組み合わせにしか考えられない。というか、私とベリエの二人が前に出ないと駄目だし。


「でも、メグなら、大丈夫。私が、保証する、から」


「ありがと。じゃ、みんな、準備いい?」


私の言葉にみんなの反応は様々だった。夢はすぐさま弓を構えてくれたけど、茜さんは未だにアリエと談笑している。ベリエがそれに対して二人の頭を叩く始末だ。緒美も背負った荷物から簡易杖を取り出そうとするけどなかなか抜けてくれないようだ。


本当に大丈夫なのかと思ってしまう。


「作戦はさっき話した通り。だから、緒美と夢は援護射撃をお願いね」


「はい!」


「うん」


緒美の元気な声と夢のしっかりとした声を聞いて私は頷く。


「茜さんはアリエと一緒に私達の後方から援護をお願いします」


「いいよー」


私は炎獄の御槍を握り締めて敵部隊最後尾を睨みつけた。そして、炎獄の御槍の先を向ける。


「突撃!」


その言葉と共に私は走り出した。走り出して炎獄の御槍を最後尾に向かって全力で投擲する。


あの学園都市騒乱後に私が使う特殊技の一つとして開発したものだ。私を追いかけるように速度を落としたベリエがいることを確認しながら全速力で駆け抜ける。


飛来する炎獄の御槍に気づいたドラゴンの一体が炎獄の御槍に向けて炎のブレスを吐いた。すると、炎獄の御槍がその炎全てを纏いドラゴンを貫き、爆発する。その爆発は隣にいるドラゴンも巻き込んで吹き飛ばしていた。


狙い通りに進んだことにほくそ笑んで炎獄の御槍に向かって駆ける。その最中、背後から飛来した魔術が振り向いて武器を構えた集団を包み込んで吹き飛ばした。


さすがは緒美。第76移動隊の新参者ではあるけど昔に第76移動隊と敵対していただけのことはある。


これで、敵の最後尾の大半は倒れた。後は炎獄の御槍を握り締めて敵部隊を穿つだけ。そう、考えていた。


チリチリと肌を焦がす感覚がする。その感覚に私の手が炎獄の御槍を掴んだ時に気づいた。そして、振り向いたそこには、


迫り来る炎の塊があった。


「炎閃!」


すかさず炎を纏い、その炎を真っ正面から受ける。温度は極めて高く、そして、殺す意志を持った攻撃。


「ベリエは作戦通りに! 私が止めておくから!」


その炎を炎獄の御槍で払い、私は駆け出した。明確な意志を持った炎が来た方向にいるのは仮面をつけた男。その肩には炎の鳥、フェニックスが止まっていた。


一瞬、お兄ちゃんの姿が頭の中に思い浮かぶ。だけど、そうじゃない方が私はいいと思ってもいた。


男が手のひらに炎を作り出す。私は槍を突き出しながら前に向かって跳んだ。すると、炎獄の御槍の石突から炎が吹き出して私の体が前に引っ張られた。


地面に足がついた瞬間にさらに跳び一気に距離を詰める。そして、放たれた炎を炎獄の御槍で打ち払った。


「あなたは誰!?」


私は炎獄の御槍を仮面の男に叩きつける。男は手のひらから作り出した炎の壁で炎獄の御槍を受け止めた。相手にフェニックスがいるからか炎獄の御槍でも押し切れない。


ステップで後ろに下がりながら回転して炎獄の御槍を叩きつける。


「フェニックスと契約しているあなたは誰って聞いているのよ!?」


炎の壁の一部を破壊するが、今の炎獄の御槍の火力ではあの壁は貫けない。


ベリエなら大丈夫だとは思う。雷神槍を纏ったベリエは私よりも強いし、茜さんは普通に強い。だけど、こいつの炎は別だ。呑まれたなら焼き尽くされる。


だから、私が戦わないと。


「ドライブ。穿て!」


ドライブモードに移行して私は炎獄の御槍を全力で突いた。石突から炎が吹き出した炎獄の御槍の穂先が炎の壁に食い込む。だが、それだけだった。


この状態でも押し切れないだなんて。相手の炎はどれだけ強力なのよ。


私は大きく後ろに下がって炎獄の御槍を構える。未完成ながらこの壁に対抗出来る手段はある。だけど、ここで使っていいのかと考えてしまう。私の勘だけど、この仮面の男とはまた戦う。そういう予感がするのだから。


私は小さく息を吐いて男の挙動を睨みつける。だが、仮面の男は動かない。まるで、私を食い止めるためのように存在している。


「気にくわない」


私は小さく呟いた。本当に気にくわない。だったら、私は、


「炎獄の御槍、オーバードライブ!!」


全力を出すだけ。


私がオーバードライブを維持出来る時間は一分。オーバードライブ後に戦闘を継続出来る時間は30秒。


つまり、30秒しか使えない。


炎獄の御槍を炎の盾に向けて突き刺した。石突から吹き出す炎によって炎獄の御槍はさらなる力を得て先程より遥かに貫いている。だが、まだ足りない。


「うらぁっ!!」


私の口から女の子とは思えないくらいの声が出るけど気にしてはいられない。炎獄の御槍を振り抜いたから。盾に突き刺さったまま。


炎の盾がく裂け、周囲に炎が飛び散る。男の口から驚いたような微かな声が響くが、そういうのを気にせずに私は炎獄の御槍を叩きつけていた。だが、寸前で現れた炎の壁が炎獄の御槍を受け止める。


後、ちょっとだったのに。


後ろに下がりオーバードライブを終了させる。それと同時に体を襲う疲労感を堪えて私は炎獄の御槍を構える。


虎の子のオーバードライブはもう使えない。使えるけど、この後に加わることを考えれば完全に余裕などはなくなる。でも、この状況なら一発だけ。そう、一発だけ、あの技が使える。


これが学園都市騒乱で使えていれば、もっと簡単にお兄ちゃんは倒せたはずなのに。そして、保護できたはずなのに。


「集え! 誇り高き誉れの炎よ!!」


呼び出すのは内にある炎の力。


「纏え! 聖なる焔の清き力よ!!」


オーバードライブによって燃やした少しの炎の搾りかすを全て使う。


「我が身に集いてその力、一人にして一軍の力!!」


そして、炎獄の御槍に存在する術式を引きだす。


赤の一人一軍オリジン・ワンマンアーミー!!」


多分、この技の存在は誰も知らないはずだ。たった一人で訓練している最中に見つけたオリジンの中に眠る究極の強化スキル。発動条件がオーバードライブ後しか出来ないかなりピーキーな性能だけど、その力は一級品。


私は炎獄の御槍で仮面の男を殴り飛ばした。


一番わかりやすいのは力の強化。全体的な強化だから攻撃力や防御力共に激増する。それだけでも脅威なのに極めつけにもう一つあった。


仮面の男が焦ったように炎を放ってくる。私はそれを打ち払い、逆に炎を投げつけた。その炎はまるで太陽のように輝きを放ち仮面の男を呑み込む。


赤の一人一軍オリジン・ワンマンアーミーの最大の特徴は炎魔術が極めて強化されることだ。多分、炎獄の御槍だからと思うけど、その強化は脅威的であり威力が数倍に変わる。


炎が消え去ったそこには、ボロボロになった仮面の男がいた。私は荒い息をしながら赤の一人一軍オリジン・ワンマンアーミーを消して炎獄の御槍を向けた。


消費が極めて激しいというのも弱点の一つかな。


「そろそろ降参して。これ以上は殺してしまうから」


向こうには未だに戦うつもりだろうけど、赤の一人一軍オリジン・ワンマンアーミー中に受けた炎によって戦えるような状態じゃないはずだ。誰にも試したことがないからわからないけど。


「強くなったな、メグ」


その声に私は目を見開いていた。この聞き覚えのある声。学園都市騒乱後に姿を消した人物の声。


「嘘、だよね?」


仮面の男が仮面を外す。そこに現れた顔は確かに学園都市騒乱後に姿を消した北村信吾、お兄ちゃんの姿だった。


「どうして、どうしてお兄ちゃんがここに」


「強くなったな。俺も強くなった。だから、勝負だ。お前の強さを見極めさせてもらう」


その言葉と共にお兄ちゃんの体を炎が包み込んだ。私は思わず息を呑んでしまう。

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