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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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第四十六話 歌姫の加護

「先遣隊が動き出したみたいだね」


地走型空母艦。そのブリッジの上方にある戦況管理室の中で正は前を見据えながら言った。


見据えながらと言ってもかなり距離があるため正確に見えているわけじゃない。


「もう?」


同じ戦況管理室で机に広げられた地図とにらめっこをしていた楓が正が見ている方角を向いた。瞬間的に魔術陣が煌めいて視覚を増長させる。


楓の視界には先遣隊と思われる艦隊がゆっくりと、だけど確かに速度を上げているのが見えた。


「本当だ。よくここから視認出来たね」


「僕を舐めないで欲しいな。それくらいは簡単、といきたいところだけど、実際は今の時間と作戦開始時間から逆算しただけさ。今回の指揮官はどうやら優秀なようだ」


「正が優秀という意味じゃないけど。まあ、正が私の思っている人物と同じなら、無理もないか」


そう言いながら楓は小さく溜め息をつきながら地図上の模型を動かした。それを見ながら机の向かい側にいる光が模型を動かす。


前方にドラゴンの群れの模型。そして、側面に人の模型。


「悠聖の考えをおさらいするで。悠聖は正面からドラゴンの群れをぶつける作戦だと考えてる。そして、側面から精霊召喚符を持つ人達をぶつける」


「確かで完全な作戦だと僕は思うよ。大部隊と真っ正面から戦うなんてバカか圧倒的な力の差、例えば善知鳥慧海とかしかいないよ」


「または私達とか。それには私達も賛成なんだけど、私達を後方に置いたところで砲撃手は潜り込まれたら終わりじゃないかなと思っているけど」


光も楓もどちらも火力の高い。だから、下手に潜り込まれたらなら戦えるのはアル・アジフしかいない。


せめて、近接型のメンバーがいればいいのだが。


「今は考えても仕方ないよ。僕達の戦力は限られているし、前線にメンバーを傾けるのは何ら間違いでもないさ」


「黒猫、いや、竜使いドラゴンマスターがいる可能性があるからやんな?」


「光にしてはよく考えついたね」


楓は驚いていた。無理もない。楓の中では光はアホな子だ。もちろん、それは正の中でも同じなのだが。


光は呆れたように溜め息をつきながら楓を見ていた。


「あのな、うちだって考えるで。まあ、孝治から聞いただけやけど」


「それなら納得」


「うん。僕も納得だね」


散々な言われようだが、光も慣れているため別段文句を言うわけではない。ただし、不機嫌にはなるが。


光はまた小さく溜め息をつきながら人型の模型を指差していた。


「問題はこいつらや。うちも楓も近接はそれほど得意やない。なのに、どうして」


「おそらくだけど」


正は机まで歩み寄ると模型を手に取った。


「悠聖が考える二人の役割は遠距離射撃だと思うんだ」


「遠距離射撃?」


光は不思議そうに首を傾げる。正は頷きながら人型の模型の前をコツコツと叩いた。


「もし、横から強襲された場合、いくら準備していても少しは遅れるよね? その隙に入り込まれたなら大打撃。だからこそ、二人の役割は遠距離射撃による足止めだと思うんだ」


「なるほど。私達が遠距離射撃によって敵の動きを止めれば、味方の準備は整うし、アル・アジフもそこに向かえる。だから、私達は後方なんだ」


「前線は本音を言うなら本気の編成だよ。今のメンバーで考えられる音界最大の戦力。それを突撃させる以上、前線は気にしなくていい。危なくなれば僕は容赦なく『輪廻の力』を使うからね。だから、前線は気にしなくていい」


「そうやな」


そう言いながら光はドラゴンの模型をどかせた。そして、正が地図上に置いた人型の模型を掴む。


「問題はどこから出て来るかやな。それさえわかれば分かりやすいけど」


「そんな簡単なものじゃないから。でも、それには賛成かな」


「そうだね。僕が考え得る作戦を出すから君達はシュミレーションすればいい。僕は本気を出すから」


そう言いながら正は笑みを浮かべた。






ダークエルフを見上げる。僕はパワードスーツを着込んだまま拳を握り締めていた。


守るんだ。みんなを、全てを。敵を倒し、殺し、メリルとの約束を守るんだ。


「ここにいたのか」


ルーイの言葉に僕は振り返った。ルーイは軽く溜め息をつきながらパイロットスーツを着た体で歩み寄ってくる。


「作戦会議でいなかったから心配したぞ」


「ごめん。少し、考えていたから」


「それはいい。悠人は疲れているだろ」


その言葉に僕は首を横に振った。


でも、これは嘘だ。嘘でも僕は虚勢を張り続けないといけない。そうしないと、守りたいものが守れないから。


「さっき、メリルから連絡が来た」


その言葉に僕の体がピクリと動いた。そして、ルーイの表情を見る。ルーイの視線は呆れたような感じだった。


「メリルに何をした、は聞くつもりはない。だが、何をすればあそこまでピンク色になる」


「な、なんのことかな?」


「キョドっているぞ。僕がいいたいのは今のメリルが凄く元気なんだ。それが怖いくらいに。まあ、好きな人とキスをしたなら納得はいくけど」


どうしてそのことを知っているんだ!


僕はそう叫びそうにになった。だけど、慌てて口を抑える。あれ? どうして手を動かさなくても唇に手が当たっているのだろうか。


「なるほど。図星か」


「どうして」


「無意識に唇を触っていたなら誰だって感づくさ。まあ、悪いとは言わない。歌姫を支えられるのは最強のパイロットだ。その条件に合っているからな」


「でも、僕は」


「未だにルナが胸の中にいる、か? そんなことは百も承知だ。それはメリルも分かっている。分かっていながらメリルはお前に歌姫の加護を与えたということを忘れるなよ?」


その言葉に僕は頷いた。そして、麒麟工房から首都に戻る道中の事を思い出していた。






「悠人、重くありませんか?」


僕の膝の上に座るメリル。僕は長距離飛行用パックを身に付けたギガッシュを操っていた。もちろん、メリルに危険がないように。


「大丈夫だよ。メリルこそ大丈夫? 僕の操作は快適?」


「悠人が私を気を使ってくれているので大丈夫です」


メリルが微笑みながら言葉を返してくれる。その笑みは本当に綺麗だった。


僕は顔を赤らめながら周囲を確認する。


「悠人は、また戦うのですよね?」


その言葉に僕は頷いた。ドラゴンの群れと精霊召喚符を使う人達。それが首都に危機をもたらしている。


だから、僕はその危機から音界を救うために動かなければならないと決めていた。


甘い考えでは救えない。だから、全ての敵を殺してみんなを守ると決めていた。


「悠人。これだけは覚えていてください。あなたは一度死にました」


「うん。そして、メリルに迷惑をかけた」


「はい。後二日は歌姫として力は使えないでしょう。でも、私は後悔していません。あなたに歌姫の加護を授けたことに意味がありますから」


どういうこと?と尋ねようとした僕にメリルが覆い被さってきた。それは、キス。


僕は呆然としながらメリルを見て、メリルは目を瞑りながらキスしている。


そして、そっとメリルが離れた。


「あなたの命は私のものです。ですから、帰って来てください。生きて帰って、そして、私だけの、『歌姫の騎士』となってください。あなたが未だにルナを思い続けているのは知っています。それでもいいので私の騎士になってください」


それはまるで告白。そして、儀式だった。


だから、僕は頷く事も首を振る事も出来なかった。ここでの行為がこれからの人生を決めてしまうから。


メリルは少し寂しそうな表情をして俯いた。


「まだ、無理ですよね。わかっています。ですが、帰って来てください。それが私の加護を与えた人物への命令です」






「大丈夫」


僕はダークエルフを見上げながら拳を握り締める。


「必ず戻るよ。全てを倒して」

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