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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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幕間 世界の真理

今まで周達が戦ってきた相手の、目的が同じなのに手段が違う、理由を書いたものです。

広がる荒野。普通の視点で見たならそうだろう。


だけど、オレはこの光景を知っている。見たことはないけど知識で知っている。


時雨達がハイゼンベルク魔術学園事変で戦った魔神。それが暴れた場所はこんな光景だったとされている。


何もないのだ。本当に、何も。


砂漠の方が何かあるだろう。そう思えるくらい何もない荒野。今ではそんな荒野ではないが、伝えられた内容が正しいと思える荒野だった。


いや、何もないのではない。何かある。


オレは駆け出していた。嫌な予感を感じながら。そして、それらを見てオレの足が止まる。


壊れないはずの機体、イグジストアストラルがひしゃげていた。コクピットは抉られ、四肢は千切れ、残った胴体にはどんな力かわからない力によってひしゃげていた。


その近くには折れ曲がった棒状のもの。確か、悠遠の翼だったはずだ。それが全部で七本ある。


オレはこれが意味する内容に気づいて周囲を見渡した。そして、現れる新たな物体。


どうやら、オレが気づくことによって出現するらしい。


そこにあるのは慧海が持つ『蒼炎』、ギルバートさんが持つ『シュナイトフェザー』と『ラファルトフェザー』。さらには写真でしか見たことの無い英雄の杖、『黎帝』。



『黎帝』は杖の先に三つの輪っかがついてあり、その輪っかの中にはそれぞれ、太陽を表すギザギザがついた円盤、月の中でも三日月の形をしたもの、そして、丸いただの円盤のそれぞれがゆっくり回転している杖。


まさか、この目で見られるなんて。


そこの横には見事な青色が映える剣。その腹には星が散りばめられていた。それに寄り添うように刀が突き刺さっている。


それを見たからか、周囲に新たな武器が現れる。


『運命』、『カグラ』、そして、折れたレヴァンティン。さらには女の子、いや、海道あまねの姿がある。その側には正の武器である『伝説』だったっけ。


「これは、もしかして、正の世界が滅びた姿? ちょっと待てちょっと待てちょっと待て」


オレの頭の中で一つの理論が組み上がる。もし、それが正しいならやはり神が弄ったとしか考えられない。でも、本当に正しかった方が幻想空間ファンタズマゴリアの説明はかなり楽になる。


世界だとは思ったが、まさか、


「この光景は懐かしいな」


その言葉にオレはゾッとした。振り返った先にいるのはゴスロリ服、ではなく、どう猫柄の寝間着をきた正だった。


少し、いや、かなり可愛いかも。


オレの視線に気づいた正が恥ずかしそうに自分の体を抱く。


「あまり見ないでくれるかな。さすがにここに呼び出されたのは予想外でね」


「呼び出された? 誰に?」


『我だ』


その言葉と共にオレ達の間を陣取るように狭間の鬼が現れる。その姿を見た正は少し困ったかのような顔をしていた。


まるで、何かがばれることを恐れるように。


『我はこれ以上は話す気はない。もちろん、説明して欲しい事柄があるならば可能な限り答えてやろう。だが、我はこう思う。本当に世界を救う気があるなら』


「今の時点で絶対不変の世界の真理を話しておけばいい、そういうことだよね? でも、もう遅いよ。僕も周も道を決めている。そんな真理を聞いたとしても」


「説明してくれないのか?」


オレの言葉に困ったような表情を浮かべる正。そして、周囲を見渡している。


その光景は正が知るこの世界最後の光景だろう。世界の滅びを回避できず、たった一人だけ生き残ったしまった姿。


はっきり言うならわからないことの方が多い。それでも、正の口から話してもらわないとダメだと感じているのだから。


「全く。君達は、相変わらずなんだね。いや、相変わらずだと思っていた方がいいかな。僕が語れるのは僕が体験した経験のみ。今の世界は大きく動いている。どうしてかは分からないけどね。だから、君はいつか君の持つ疑問の大半を解消するだろう。それでも、聞くのかい?」


「ああ」


「そうかい。なら、話すよ。僕が最後まで変えることのできなかった絶対にして唯一の世界の真理を」


そう言いながら笑みを浮かべる正の表情はどこか悲しげだった。オレはそんな正を抱きしめたいと思いながらも我慢して耳を傾ける。


「君は考えたことがないかな? どうして、世界は一つにまとまらないのだろうかって」


「いくらでもあるな。同じ目的なのに手段が違う。だからこそ、対立しなければならない。魔界も、展開も、そして、人界も。そんな些細なことで大きな戦争を引き起こしていたんだ。誰もが自分達の世界がよくなればいいと思っている。その中では他の世界を落としてでも息のkろうという考えもあった。でも、それは、そんな孤立するような意見は危険視され、排除されてきた。本来なら、それが一番いいかもしれないのに」


「そうだね。僕や君は儀式魔術、とりわけ生贄を利用した魔術については一時期調べていたからわかるけど、いくらでも犠牲を払っていいなら世界なんて簡単に救うことが出来る。でも、それは出来ない。どうしてかわかるかな?」


「民衆はそんなことを望まないから。正確には、自分が幸せならそれでいいから」


世界を救うために犠牲なるなんてただの綺麗事だ。たった一人や二人の力で世界が救われるわけがない。それこそ、何千人、何万人、何十万人、いや、何億人という生贄を捧げれば世界の理すらも変えることは出来るだろう。


実際に、とある少数民族が迫害されていた時、何千人という生贄を使った魔術は国家の一つを滅ぼしたということがある。もちろん、遥か昔の伝承だけど、生贄はそれほどまでに魔術の威力を向上させる。


「そう。だから、生贄は集まらない。いつか自分達が生贄にされるのではないかと恐怖して、民衆はその主導者を殺す。それこそ、最もいい選択肢を自らの手で潰しながら」


「でも、それは最善とは」


「最善だよ。思い出すといい。狭間戦役の最初、狭間市での出来事を。魔界の貴族派は生贄を求めた。そして、狭間の鬼すら生贄にしようとした。本当に復活したならあんな勢力では話にならないのにね。それは君がよくわかっているんじゃないかな?」


「まあ、な」


あの時は本当に死闘だった。あれで都が生贄に捧げられていないんだから捧げられたなら第一特務が行かなければ洒落にすらならない事態になっていただろうと思える状況。


でも、その力を利用することが出来たなら、どれだけの力になるだろうか。不完全な狭間の鬼でもこんな大きな力なのにって、ちょっと待てよ。正は確か狭間の鬼が復活したって言ったよな? でも、正のものは使い勝手が悪いし強くもない。


抑えていただけの可能性は否定しないけど、それでもおかしい。


じゃあ、正の力は狭間の鬼じゃない?


「生贄が最もいい集団なのは間違いはないよ。でも、世界はそれを否定する。なら、次に考えられるのは」


「たくさんの人を集めた総力戦」


「正解だよ。そして、それを僕は成し遂げた」


「ちょっと待て」


全員が協力すればいいと考えているのはオレだ。仲が悪いけれども、何とかするしかないと思っているのもオレだ。でも、正がそれを成し遂げたと言うことは、


「世界は救われないのか? みんなが協力するだけじゃ」


「答えはこれだよ」


正が示すのは周囲の光景。それを見ているからこそわかる。


これは、総力戦の後の光景。総力戦に負けた後の光景。


「どんな民族、種族、性別。それらの垣根を取り払っても世界を救うことは出来ない。みんなで滅びのために戦いましょう。それは確かにいいことだよ。そんなことが出来て世界が救えるならすでに世界は救われている。だから、みんな目的は同じでも手段が違うんだ。それで世界を救うことが出来ないから」


正のその言葉はオレの心に重くのしかかる。それはまるで、オレが生きて考えてきたこと全てが完全に否定されたかのような状況だった。


どうすればいいんだ。そんな状況。どうすれば、みんなを救えるんだ?


「それが世界の真理だよ。君の理想は不可能だ。そう、夢想というべきかな?」

実はまだ幕間は続きます。

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