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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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幕間 対話

かなり重要な話です。ネタバレ大丈夫な人なら読んだ設定の内容にある本編との矛盾点の一部を一部だけ書いています。あれは第四章終了時点の気持ちで書いたものなので。

レヴァンティンを地面に突き刺す。


地面に描かれているのはオレを中心として描かれた魔術陣。それを不安そうに魔術陣の外から四人が見つめている。


断章を胸に抱く都。


炎獄の御槍を肩に預けているメグ。


弓を握り締める夢。


そして、呆れたような表情の琴美。


ほんの少し前まで俊輔もいたが、危険だから避難させた。


「周様」


「大丈夫だ。心配するな、というのは無理かもしれないけど、こうするのが手っ取り早いからな」


「わかっています。ですから、無事に」


「ああ」


オレは小さく息を吸い込んで魔術を発動させた。






「狭間市に?」


帰って早々に行く準備を始めたオレにメグが首を傾げてくる。オレはそれに頷いた。


「まあな。オレがやろうとしている儀式は一番狭間市が適当な場所なんだ。そもそも、オレの能力の一部を使うならあそこが儀式場としては最適だしな」


「あんまりよくわからないけど、また私達だけでお留守番?」


「少し、不安かも」


メグと夢の二人が不安そうな顔になっている。確かに、オレ達が修行やら説明やら何やらで飛び交っていたから二人だけっていうのも寂しいよな。


オレは小さく息を吐いてカレンダーを見た。今日は金曜日か。


明日に狭間市に行くと考えたら土曜日になるな。土曜日なら学校はさほど重要じゃないし。


「だったら、お前らも来るか? 狭間市で都や琴美と合流するつもりだし、万が一のことを考えたらいてくれたらありがたい」


「万が一? 周君は、何を」


「鬼との対話、いや、オレの内面にある世界との対話かな」






周囲が金色の光に包まれている。その光は気を抜けばバラバラにされかねない気配があり、気を抜くことは全く出来ない。


オレが行った儀式はかなり古いタイプだけど、上位存在、人間よりも上、つまりは精霊や神と対話をするための儀式だ。


狭間市は狭間の儀式があったため都や琴美、俊輔に様々な文献を調べてもらって一日で完成させてくれた。


まさか、ここまで完全なものが出来上がるとは。


『いやはや、儀式魔術としては最高峰ですね。まさか、本気で術者本人の内面と会話出来るなんて』


ブレスレットの形になったレヴァンティンがオレに語りかけてくる。さすがのレヴァンティンでも介入はこれしか出来ないらしい。


時折、体を持って行かれそうになる感覚に耐えながらオレはゆっくり前に進む。


「狭間の儀式は狭間の鬼を封印するために作られたものだ。つまりは狭間市限定かつ狭間市内で最強の術式。そもそも、狭間市が魔力的にもかなり上質な地だからこういう儀式は成功しやすい」


『それを考慮にいれても、ここまでのものはありませんよ。私が知る限りでは最高峰の術式です。だって』


金色の光が途切れる。次に現れたのは満月の夜の丘。まるで、狭間の夜である儀式会場。その中央に金色の鬼の姿があった。


オレはゆっくりと地面に着地しながら笑みを浮かべる。


「久しぶりだな、狭間の鬼」


『何をしにここに来た?』


「ちょっと聞きたいことがあってな」


オレは軽くすくめながら一歩前に踏み出す。


体内で術式を発生させるのは不可能。それは体外も同じ。どうやらここは狭間の鬼によって完全に制御されているらしい。


「お前は世界の滅びについて知っているんだろ?」


『知っている、とは少し違う。これはお前達人間に話してもわからない話だから省くが、我は理解しているだけだ』


「理解、か。知らされたってことか?」


『見た、というのが正しいな』


狭間の鬼が楽しそうに話してくる。散りばめられたあまりに遠すぎるヒントを集めて答えを出せ、ということだろう。


知っているのではなく理解している。知らされたではなく見た。


考える要素は少ないから類推を入れないとな。


「理解して見た。ということは浸食系の特殊スキルを持っている、ということだな?」


『ほう、その理由は?』


「知っていると理解しているは意味が似ている。というか、知るの中に理解するも内包している。だけど、知っているということはオレの質問、世界の滅びについてそれが確かなものだと認識しているということだ。対する理解するは道理や道筋が正しくわかること。今はこの時点で置いておくけど、オレがお前の能力に気づいたのはもう一つがあるからだ。知らされたではなく見た。そもそも、お前は自由に動けない。それに、知らされたなら知っているだろうからな。でも、見たと言った。滅びを体験したなら理解するはおかしい。確かに、滅びの道筋は理解している、という表現ならおかしくはないけど、滅びを体験したなら滅びを知っているということだ。でも、理解している。つまりは体験していないが見た。どうやって見たかと言ったならオレの中の力、ファンタズマゴリアを生み出す場所。つまりは幻想空間ファンタズマゴリア。そこじゃないか? そこを浸食系のスキルで盗み見た」


『なるほどな。さすがはもう一つの世界を内包しているというべきか』


幻想空間ファンタズマゴリアはオレだけが使える完全な唯一無二のスキル。このことは誰にも言っていないけど、それはあまりにもおかしなものだ。


あるものを極限まで上昇出来る能力。もちろん、副作用はある。


でも、そんなものがどうしてオレの中にあるのかが一番疑問だった。だから、オレは狭間の鬼に尋ねる。


「だから、滅びについても聞きたいが、もう一つ聞きたいことがある。慧海が生きていたよりも過去から存在しているお前にな」


『何を聞きたい?』


「この世界は神が行うボードゲーム上か?」


理由は正の存在だった。いや、海道あまねと言うべきか。


オレと同じでありながら、オレとは性別が違う。そして、未来が大きく変わっている可能性があることも。それらを考えたら考えられるのは一つだった。


「神の存在は信じたくはないが、いろいろ考えるとおかしいんだよな。特にオレとかだけど。『天空の羽衣』、『強制結合』、『天使』、幻想空間ファンタズマゴリア。能力があまりに一極に集中しているように思える。偶然としては考えられないだろ?」


『面白いな。やはり、全ての平行世界で我が力を渡した唯一の人物だけのことはある』


「どういうことだ?」


『我が力はあらゆる世界においてたった一人にしか渡せない』


「正は狭間の力を使っていたぞ」


『正確には違うな』


そう言えば、あの時、エンシェントドラゴンは言っていたはずだ。二人目の金色の力はありえない、と。


つまり、金色の力を持てるのはオレだけ? なら、どうして正は金色の力を使ったんだ?


ちょっと待てよ。そう言えば、あの時、正は応用が効かないって言っていたよな。そして、魔術強化に使っているって。金色の力である狭間の力はかなり応用が効く。幻想空間ファンタズマゴリアほどじゃないけど利点を伸ばしたり、能力を強化したり、威力を強化したり。


幻想空間ファンタズマゴリアは一点を最大限まで伸ばせるから狭間の力は埋もれるけど、それでも使い勝手はかなりいい。


「正が持っているのは別の力? じゃあ、幻想空間ファンタズマゴリアの力があるということか?」


『そこを語るのはまた後日だ。お前がここに来た理由、それを達成したくはないか?』


その言葉にオレは狭間の鬼を見た。そして、小さく頷く。


その頷きを見た狭間の鬼が楽しそうに笑みを浮かべた。


『見せてやろう。滅びの光景を。貴様に内包された世界の真実を。そして、未来に訪れる世界の真理を』

次も幕間です。

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