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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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第四十一話 承諾

実はこの中の行動の一つが後にある結果をもたらすことになります。ただし、その予定です。

「元気そうで良かったわい。エクスカリバーが撃墜されて消息不明と最初聞いたときは周の前で倒れかけたぞ」


アル・アジフさんが取り出して集積デバイスを麒麟工房にあった機器に配線を取り付けている。そして、モニターにデータを映し出していた。


すかさずキーボードに指を走らせる。


「ごめんなさい。迷惑をかけて」


「そなたらが生きているだけで十分じゃ。それにしても、耐えられなかったようじゃな」


アル・アジフさんがモニターに出したのは集積デバイスが記録した機体の負荷データだ。


初期の調整によく使うものだけど、エクスカリバーの場合はかなりのじゃじゃ馬だからそのデータはかなり細かくなるようにしている。


「変形のタイミングがかなり早くなっておるの。戦闘方法も大きく変わっておる。中距離射撃主体から近距離戦闘主体じゃな。変形着地横滑り射撃変形加速。そんなものを繰り返していたら通常の魔鉄では機能せぬな」


「そう聞いている限り、かなり無茶させたみたいやな」


「エクスカリバーは下半身の負荷はかなり強い計算じゃったから、これを作る際は世界最高峰の魔鉄を使ったんじゃが、今の悠人では素材自体が耐えきれないの」


「最高峰ってことは75%?」


「そうじゃな」


僕のエクスカリバーって一体どれだけのお金がかかったの?


「せめて、歪曲魔鉄さえあればいいんじゃが」


「何やそれ?」


「魔科学時代で最も最後に開発された魔鉄じゃ。莫大な費用のかかる100%魔鉄ほど硬いものではないが、変形と衝撃、負荷に極めて強くての、データだけなら覚えておるからわかるが、それがあれば悠人の力を最大限引き出せる」


「変形ってことはエターナルやヴェスペリアのことやんな。文献に変形機に乗ってたで」


「今となってはどちらも失われた存在じゃがな」


アル・アジフさんは懐からデバイスを取り出した。そのデバイスを機器に繋げる。


アル・アジフさんってデバイスを持っていたんだ。


「何じゃ? そんな不思議そうな顔をして」


「アル・アジフさんがデバイスを取り出したのを始めて見たから」


「それはそうじゃ。これは記録用デバイス。ただ記録するだけじゃからな。この集積デバイスの必要なデータだけ吸い出しているのじゃ」


完全に僕が独断でアンに集積デバイスを預けると決めたからだよね。


「これで完了じゃ。まあ、我は音界最高峰のここでどういう評価を受けるか気になっているからの」


確かに、ここはあのアストラルシリーズが作られた場所。アストラルシリーズに乗せられる集積デバイスも機体と同様に最高レベルのものだ。


この集積デバイスはアル・アジフさんや周さんが基礎を作ってアル・アジフさんやアリエル・ロワソさんが組み上げたと聞いている。つまりは天才達が作り上げた最高傑作。


技術者としてはどのような評価を受けるかは絶対に気になる。僕だって最初に音界に来た時は操作技術がどういう評価を受けるかかなり気になったし。


アル・アジフさんはアンを見た。アンは楽しそうに笑みを浮かべている。


「チラッと今見たけど、かなりのスペックみたいやな。詳しく調べやんなあかんけど、このレベルやったらアストラルリーネに積むには十分やと思うわ」


「アストラルリーネ?」


そう言えばアル・アジフさんはあのアストラルリーネを見たことが無いんだった。一度見たら忘れられないと思う。


「見る?」


「見たいのは山々じゃが、時間が無くての。悠人、メリル、すぐに首都に戻れるか?」


アル・アジフさんの言葉に僕達は顔を見合わせて、そして、頷いた。


「大丈夫だけど」


「なら、すぐに戻る準備をするのじゃ。我はアンに事情の説明をするから」


「準備と言っても僕達には持っていくものはないよ」


あったとしても着ていた服、は血だらけだから捨てられたんだった。つまりは持っていくものはない。


でも、アル・アジフがこんなに急ぐのは少し珍しいかな。いつもならアル・アジフさんがここまで急かすのは少ないのに。


僕の言葉にアル・アジフさんは納得したように頷いた。


「了解した。理由を言うなら、一つは首相が呼んでいるからじゃ。今朝方出発する前に挨拶に来ての、どうしてもメリルがいるのだとか」


「大軍を動かす場合は私の宣言が必要ですから。ですが、あの首相のことです。いつでも出せるようにしているのですよね?」


「その点は柔軟であるというしかないの。一つは第76移動隊の戦力を必要としているからじゃ」


「相手が簡単にフュリアスを倒すならこっちも簡単にフュリアスを倒す戦力を用意する」


「概ね間違ってはおらぬ。最後はそなたじゃな、悠人」


みんなの視線が僕に向く。僕は完全にキョトンとしてしまった。


「相手が天界の勢力の関係者なら、確実にストライクバーストが現れる。我単体のマテリアルライザーの戦闘能力はたかが知れておるし、ルーイのアストラルルーラもそなたの操縦技術には及ばぬ。そなたにはダークエルフがあるからの」


確かに、ダークエルフならストライクバーストと戦ったことがある。かなり意識は飛んでいたけど。


相手の装甲をどうにかする手段さえあればストライクバーストを倒すことは不可能じゃない。どうにか出来なくても封じることは可能だ。


「へぇー、悠人ってストライクバーストと戦ったことは一度じゃないんやな」


「二回、だね。二回目はエクスカリバーがやられたけど、ダークエルフなら僕はストライクバーストを倒せる可能性がある」


「問題はストライクバーストの高火力部分やな。そのダークエルフなら勝ち目はあるん?」


「理論上ではあるが、ダークエルフのリアクティブアーマーは対エネルギー弾装甲としてストライクバーストと対抗出来る力がある。問題は、ストライクバーストもそのことが分かっているからの」


もしかしたらダークエルフ用の対リアクティブアーマー装備のフュリアスが他にいるかもしれない。


未だに少ししか戦っていないけど、音界のフュリアスは高性能だ。パイロットが追いついていないけど、“義賊”みたいなパイロットが乗れば話は変わってくる。


気を抜けばやられるほどの性能だから。


「それでも、僕は勝つよ。ううん。勝たないといけない。ストライクバーストが出て来たなら僕が必ず倒すから」


「そうじゃな。無理をするではないぞ。さて、アンよ。我らにフュリアスを一機貸してもらえぬか?」


「どうしてなん? 航空艦やったらアル・アジフが乗って来たものがあるんとちゃうん?」


「我は飛んで来たからの」


その言葉にアンが呆れたような表情となった。そして、小さく溜め息をつく。


「白騎士みたいに単体で空を飛ぶやつがいるみたいやからそこまでは驚かんけど、やっぱり驚くわな」


音界の人に空戦能力持ちが飛べば必ず手品かどうか判断する。基本的には飛ぶ際は属性翼が出るんだけどね。ほんの微かに。


白の壁を背中にしたら僅かにわかるくらいだし。


「我ともう一人くらいなら我一人でどうにかなるが、さすがに二人は無理じゃ」


「本当なら断る所やけど、メリルがいるから特別や。ただ、問題が複座式の期待がアストラルリーネしかおらんねんな」


「単座で大丈夫です。私は悠人の膝の上に座るので」


それはそれで恥ずかしいけど仕方ないか。


「わかった。長距離飛行用ブースターの装備を連絡するからここで待っとき」


そう言いながらアンは立ち上がるとそのまま部屋から出て行った。僕は小さく溜め息をつく。


「そんなに事態が危ないんだ」


「認めたくはないがの。我らの力を必要としている。それに、今回の敵はどうやら冬華の知り合いらしいのじゃ」


「冬華さんの?」


「そうじゃ。昔いた場所で妹や弟みたいな人だと聞いた。今の冬華は目の前でその弟みたいな人物に自爆されて憔悴しきっておるがの」


冬華さんは第76移動隊でもかなり強い人だ。かなり埋もれているけど。強ければ精神も強いという図式は成り立たないのは分かっているけど、立ち直れるかは不安だ。


でも、悠聖さんがそばにいるだろうから大丈夫だよね。


「心配ですね。早く、首都に戻らないと」


「焦る必要はないじゃろ。焦った所でいいことはない。そなたらは少し前まで気絶していたのじゃ。今は休んでおれ」


「アル・アジフさん」


アル・アジフさんは僕とメリルに手を回して頭を抱き締めてきた。


「いいな」


「うん」


もし、お母さんがいたなら、こういう風に安心出来るんだろうな。メリルも安心したような優しい顔付きになっている。


首都に戻ればどうなるかはわからない。でも、僕は戦わないと。今度こそ、守るんだ。みんなを、メリルを。

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