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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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第二十八話 白騎士の正体

いろいろと大事な話がある話です。

「混乱、しているわよね」


慌ただしく動く人達。もちろん、慌てているのは数少ない人達ではあるが、誰もが必死な形相で動き回っていた。廊下を歩いている冬華には目もくれない。


もちろん、その全てはフルーベル平原でのことに起因している。


向かっていた本体はまさに大軍だった。それは、レジニア峡谷に向かった悠人達よりも戦力があると言っても言い数。話を聞く限り、フルーベル平原で負けた悠遠の翼を持つフュリアスは加護の能力を持っていたと冬華は聞いていた。


どういう効果はわからないが、文字通りなら防御に長けたフュリアスなのだろうと推測できる。ルーイの悠遠の翼が悠遠の力を持っているのだから。


「悠遠が時間というより空間の操作。移動に関する時間を省略する力だとしたなら、加護は守るためのもの。それを破壊できるということは」


小さく呟きながら冬華は考える。


「防御に対する何らかの特殊能力? でも、悠遠の翼の能力は本物だから、現物は見ていないけど周のレアスキル並みと考えていいかも。そうなると、出力という観点ではまず出せないから、どう考えてもレアスキルの領域よね。でも、有限の性能でもあるレアスキルの領域で加護の力を破ることなんてできるのかしら?」


「あれ? 冬華だ。悠聖の傍にいなくていいの?」


その声に考え込んでいた冬華は顔を上げた。そこにいるのは窓の外にある広場で槍を合わせている楓と光の姿。その傍ではリマがそれを見学していた。


見ている人は呑気だと思うかもしれないが、人界では軽く手合わせして体をほぐしておくのが普通だ。特に、いつ敵が攻めるかわからない状況ではの話だが。


「呑気ね」


そうは言っても口に出すしかない冬華に楓は苦笑する。


「呑気というか、いつもの癖? 最近はメグが入ったからどうしても槍を上手くならないといけないし」


「そう言えば、二人共槍だけなら負けていたわね」


「それは言わないでよ」


楓も光も基本的なスタンスはバックに位置した支援攻撃だ。だから、純粋なフロントでもあり、最近力をつけているメグには槍技だけでは相手にならない状態になっている。


「魔術が禁止となると私達って攻撃できるレパートリーが少ないから。周君は多いけど」


「あんな器用貧乏の塊なんてそうそういないから」


そう言いながら冬華は小さく息を吐いた。そして、腰に身に付けた刀に手を置く。


「軽く手合わせする? 多分、これから『黒猫子猫』と戦うだろうから私の戦い方で練習しないと」


「『黒猫子猫』って本当に存在するん? うちらですら昨日初めて聞いたけど」


「するわよ。一応、私もそこに所属していたんだから」


『黒猫子猫』。


それを知る人は本当に少ないだろうと冬華はわかっていた。そもそも、『黒猫子猫』自体が黒猫の私設部隊の一つで、20歳以下で組んだチームだからだ。


冬華はその話を楓にしか話していないが、ちょうど近くにいた光やリマは聞いていたため、ここでこういう風に話すことが出来る。


「ですが、本当にそう言う部隊がいるのでしょうか。全員が20歳以下で構成される部隊なんて音界には存在しませんよ」


「いや、うちらはリマと会った時に当てはまっていたからな」


光が呆れたように言うが、確かにその通りである。第76移動隊がルーイやリマと出会った時、メンバー全員が20歳以下どころか15歳以下だったりもする。その誰もが一癖も二癖も強い個性的すぎるメンバーではあったが。


リマも納得したように頷いた。


「黒猫がそういう部隊を作った経緯は昨日話したように将来に使える部隊を作れるため。そう考えると、この時のために作られた可能性は高いわね」


「冬華、『黒猫子猫』の中に冬華と仲のいい子がいるんじゃないの?」


楓のその言葉に冬華は一瞬だけ躊躇って、そして、頷いた。


その頷きをその場にいる三人が静かに受け取る。


「『黒猫子猫』の中でも私を姉のように慕う子がいたわ。今では音信不通だけど、その子は絶対に生きている」


「絶対? なんで絶対って言いきれるん? はっきり言わせてもらうなら、20歳以下の『GF』隊員及びう『ES』構成員は基本的に死亡率は高めやで。いくら天才やからと言っても」


「その子が海道周と同じタイプだったなら?」


その言葉に光の言葉は完全に止まった。


周と同じタイプ。それはあらゆる状況下において100%の力を出すことが出来る器用貧乏(オールラウンダー)。普通ならありえない存在である上に、20歳以下のオールラウンダーはまず存在していないとされている。


それと同じタイプということはどんな劣悪な環境での戦闘でも勝てるような要素をいくつも持った存在であるということ。


「ここに来ているのかはわからないけど、もしここにいるなら、私が倒すわ」


「冬華」


「いいの。その子を育てたのは私だから。私の手で終わらせないと。大丈夫。私の強さはわかっているでしょ?」


「そうだけど」


冬華は笑みを浮かべて刀を鞘から抜き放った。そして、その先を地面に向ける。


「だから、軽く手合わせするわよ。『黒猫子猫』の行動は基本的に」


「ヒットアンドアウェイ。攻撃したからの離脱戦法。違うかな?」


聞こえてきたその言葉に冬華は反射的に振り返りながら刀を振っていた。だが、刀はレヴァンティンレプリカによって受け止められる。


「危ないな。別に盗み聞きしていたわけじゃないよ。これでも物知りでね、『黒猫子猫』については少しだけ知識はある」


そこにいたのはレヴァンティンレプリカを構えて笑みを浮かべている正と、その後ろに付き従っているようにも思える黒いロングヘアーの女の子。その背中には白い剣が、正確にはアークフレイの剣が背負われている。


ただ、女の子の雰囲気はどう考えてもうろたえているとしか思えない。


「「誰?」」


楓と光の二人は同時に声を上げ、リマは驚いて一歩後ろに下がっていた。残る冬華はひきつった笑みを浮かべている。


「あ、あの。わ、私に、け、けけけ、剣技を教えてもらえないでしょうか!?」


女の子が頭を下げる。頭を下げた相手は冬華。ただ、冬華はひきつった笑みを浮かべたままだ。


楓はそんな冬華の反応に首を傾げ、そして、女の子の背中に背負われているアークフレイを見て絶句する。ちなみに、光はただ首を傾げているだけだ。


「最初は僕に相談されたんだけど、僕の剣技はそれほど上手いものじゃないからね。それに、たくさんの流派を組み合わせているから素人に教えるには適していない。だから、冬華、君にこの子の剣技を指導してもらいたいんだ。どうかな」


「別にそれはいいんだけど。その前に、一ついい?」


未だにひきつった笑みを浮かべて冬華は尋ねる。


「その子、白騎士よね?」


「へっ?」


光の口から出た声を最後に周囲に静寂が訪れる。もちろん、周囲といってもこの場だけで、周囲では喧騒が続いていたりもする。


女の子はしばらくの時間をおいてからゆっくりと頷いた。


「は、はい。わ、私の名前はミスティーユ・ハイロスで、です。えっと、白騎士で、でも、あります」


「これってどっきりやんな?」


光の冗談のような言葉には誰も答えない。それが真実であると言うのはアークフレイを見たらわかるからだ。女の子はアークフレイを鞘から抜き放った。


「手合わせ、お願いしてもらえますか?」


冬華は小さくため息をついて軽く刀を回した。正が持っていたレヴァンティンレプリカが宙を舞い、冬華はそれを手に取って構える。


「あなたみたいな子があの白騎士だとは驚いたわ。というか、話し方が変わってない?」


「えっと、その、あの、鎧を着ると精神的に興奮して、そうなっちゃうみたいです」


「みたいですって。まあ、いいわ。あなたの剣技、私に見せなさい」


「はい」


そして、女の子、ミスティーユ・ハイロスが地面を蹴った。そのままアークフレイを握り締めて斬りかかる。対する冬華は迫りくるアークフレイを見てから一歩前に踏み出した。


振り下ろされたアークフレイにレヴァンティンレプリカを合わせ、上手く受け流す。だが、ミスティーユ・ハイロスも振り下ろしたアークフレイを強引に横に振った。もちろん、冬華の頭を剣の腹で殴り飛ばすつもりで。その場から足を全く動かさずに踏ん張って。


冬華の眼が微かに細まる。そして、冬華の体が不自然に横に滑り、沈み込んだ。


アークフレイは完全に空振りに終わってミスティーユ・ハイロスが体勢を崩す。そこい冬華が足を引っ掛けてミスティーユ・ハイロスをその場に倒れさせた。


すかさず立ち上がろうとする姿に冬華は小さくため息をつく。


「はぁ。ミスティーユ・ハイロス、だったっけ」


「はい。出来ればミスティと呼んでください」


「わかった。ミスティ。今のあなたに剣技は必要無い」


呆れたような物言いだが、その言葉を聞いたミスティは小躍りしそうなほど顔をほころばせた。だが、続いた冬華の言葉にその笑みが固まる。


「覚えても意味がないから」


「え、えっと、ど、どういうことでしょうか?」


「あなたの戦い方を思い出してみなさい。振り下ろしから振り払いまで力任せにやっていたでしょ」


「はい」


それのどこが悪いのかという顔で尋ねるミスティ。その顔に冬華はもう一度ため息をついて返した。


「ミスティは剣技というよりもステップの仕方。アークフレイの鎧は万能かもしれないけど、そのせいでいまのミスティは攻撃地点から動かなくても敵の攻撃を受ける心配がないと思っている。この意味はわかる?」


「はい。アークフレイは私の相棒です。相棒を信じていますから」


「それはいいんだけど。問題はあなたが横に振り払った時、あなたはどうして私に向かって一歩を踏み出さなかったの?」


「え、えっと、仰っているいる意味がいまいちわからないのですが」


「そこがミスティの治さなければならないところ。ミスティはヒットアンドアウェイの逆。狭い通路での戦闘に向いているタイプなのよ。対する私は開けた場所を得意とするタイプ。ミスティの戦い方も間違いじゃないんだけど、届くかもしれない範囲ではその場から一歩も動こうとしない。確かにアークフレイを考えたら間違ってはいないんだけど、出来れば攻撃の際に一歩踏み出すようにならないと剣技なんてまだまだ夢の先ね」


冬華も若干ながらずるをしているのだが、相手は気づいていないからいいとして、ミスティの動きはまさに冬華が言ったような動きだった。


その場から動かない動き。それはメリットは少なくデメリットは多い。ただ、そのデメリットの大半の部分でもある防御という観点ではアークフレイがあるため、そう考えるとデメリットは少なくなるかもしれない。


「これからミスティがアークを巡る戦いに巻き込まれるなら、アークフレイの防御力に頼ってばかりではいられないから。まあ、力があるから後は動き方。私が教えられるのは動き方だけだし」


「つまり、け、剣技は私にはいらないということでしょうか?」


ミスティの疑問に冬華は頷きで返した。それにミスティはがっくりしたように肩を落とす。


それを正は背中を向けて肩を振る舞わせながら立っていた。


「わかってやったでしょ」


冬華が微かに目を細めながらレヴァンティンレプリカを正に向かって投げる。正はそれを受け止めて笑みを浮かべた。


「そうだよ。でも、僕はいくつもの流派を使うからどうしても教えにくいんだよ。でもね、冬華なら必ず教えることが出来ると思っているからね」


「はぁ、わかったわよ。とりあえず、師事するのは今起きていることが終わってからでいい?」


その言葉にミスティも頷いた。ミスティは政府レジスタンスとして、白騎士としてフルーベル平原を進行中の存在を気にしているのだろう。だから、頷いた。


冬華は小さく溜め息をついて空を見上げる。


「せめて、敵の構成がわかれば。『黒猫子猫』がいるなら、私は」


冬華は拳を握り締める。そして、本当に小さな声で呟いた。


「私が全てを殺すから」

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