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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第五十一話 見舞い

オレは小さく息を吸って病室のドアをノックした。


「どうぞ」


由姫の声が聞こえ、オレは部屋の中に入る。


「元気か?」


「お兄ちゃん。うん、元気だよ」


病室内にいるのはベッドの上にいる由姫とベッドのそばで座っている音姉の二人。


オレは椅子をベッドの横に置いて座った。


「明後日には退院してもいいってさ。さっき、医者と話してきた」


「そうなんだ。良かった」


「ようやく落ち着いたんだね。弟くんがここに来れるくらい」


音姉の言葉にオレは肩をすくめる。


落ち着いたと言えば落ち着いたのだが、まだまだ落ち着いていない部分もたくさんある。


「狭間市内はかなり落ち着いたな。『ES』の方がゴタゴタしていることを除いて」


「今、アルちゃんいないんだよね」


アル・アジフはあの日の夜、調べることが出来たと言って部隊副隊長に後を任してどこかに行った。


だから、現在はリースが一時的に『ES』に戻っている。


「アル・アジフさんがいないの?」


「ああ。クラリーネの名前に聞き覚えがあるって。確かに、レベルは高い」


レヴァンティンが簡単に受け止められるレベルの頸線。それが出来るのは一人しか知らないが、クラリーネではない。


七葉じゃ月とスッポンくらいに実力が違うだろう。


「そうなんだ。お兄ちゃん、ごめんね」


「あのな、あの時オレを庇ってくれなかったらもっと混乱していた。確実に誰かやられていた。庇ったことは怒るけど助かった。オレこそごめん。あの時、油断して」


「弟くんが油断なんて珍しいね。やっぱり、まだ子供なんだね」


「その点だと音姉も子供だろ」


オレは小さく溜息をついた。


あの時は完全に油断した。音姉の技が決まり勝ったと思った。後は鬼を封印するだけだと。


オレはまだまだ大人になりきれていない。


「音姉、刀は」


「修復不可能。でも、柄だけは今も持っているから」


「オレが油断しなければ」


「ううん。私だって取り乱していたから。あの場面で砕破剛刀は使うべきじゃなかったし」


「お姉ちゃんが? 敵はそんなに強いの?」


由姫の驚きは最もだ。音姉は戦闘中にはあまり動じない。それが音姉のすごいところだ。だけど、あの瞬間は違う人になっていた。オレの知らない音姉に。


「貴族派って言ってたな。魔界の一派。強さはかなりのレベルだ。『影写し』をどうにかしないと」


「だよね。私が対抗すれば大丈夫だけど」


確かに音姉なら大丈夫だろう。音姉の技術なら簡単にどうにかなる。どうにかなるけど、


「クラインだっけ。あいつに音姉を当てたとして、他はどうするか」


「誰か味方を呼ばないの?」


「それも考えたんだけど、こういう場合って確実に脅していると思うよ。上を」


音姉が言うことはオレも考えていた。


貴族派だろうが何だろうが、慧海が出て来たなら一瞬で全滅する可能性だってある。だから、確実に脅迫状でも送っているはずだ。


「だとしたら、私達だけで戦わないといけないということ?」


「いや、オレが抜ける可能性がある」


オレの言葉に音姉が俯いた。音姉と孝治にはすでにこのことを言っている。


「どうして?」


「更迭の可能性がある。明明後日、由姫が退院して次の日にオレは査問会に出る。時雨達がいろいろしてくれているけど、最悪の場合、オレはここには戻れない。後任は無理だから音姉が隊長に昇格かな」


「そんな。私はお兄ちゃんと一緒にいたいから戦うことにしたのに、また、一人になるの? もう、嫌だよ。一人は。お兄ちゃんと一緒に」


「ただで負けるつもりはない。最悪、オレの隠している能力を知らせてどうにかする」


「弟くんはやっぱり何か隠しているんだね」


音姉がやっぱりという風な顔になる。対する由姫はキョトンとしていた。まあ、音姉ならわかるか。


音姉はオレからすれば剣技の師匠。だから、実力はよく知っている。なのに、戦功は釣り合わない。何かの能力を隠していると思われてもおかしくない。


「交渉は苦手だけど、オレが第76移動隊に残れるように頑張るだから、信じてくれ」


「お兄ちゃん。うん。わかったよ。私はお兄ちゃんを信じているから。だから、絶対に戻ってきて。多分、今回の相手と戦えるのはお兄ちゃんだけだから」


「そうだね。私が無事で光輝を持っているとわかった以上、貴族派はほとんど手を出さないと思う。だから、猶予はあるかな」


「猶予か。後、二週間と二日」


鬼が言った言葉だ。あの日から考えて二週間と二日後に何かがある。オレはそう思っている。


一週間は貴族派がアクションを起こさないだろうな。


「あの時は不意を打たれてやられた。だけど、次はない」


「あの時は由姫ちゃんや亜紗ちゃんが負傷していたからね。でも、私達はクライン一人にあしらわれた」


「クラインが誰と相手をするか考えないとな」


浩平が殴られる速度を見ていた以上、対抗出来るのは音姉と亜紗くらいだ。オレも反射神経でどうにか出来そうだがあまりにも不確定。


最悪、オレか亜紗が本気を出すしかない。


「お兄ちゃん、私じゃ、ダメかな?」


「ダメというか、速度が足りないだろ。確かに由姫はパワーもあるし速度もあるけど、クラインと対抗出来るほどじゃない」


「うん。でも、敵討ちがしたい。私がこうなった原因はあの人だから、一発殴りたいの。それに、愛佳師匠と比べれば十分に遅いと思うし」


『比べる人が間違っているから』


オレと音姉の声は見事にシンクロしていた。


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