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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
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第二十一話 白銀崩落

空に浮かび上がったストライクバーストの両肩の砲門からエネルギー弾が放たれる。それと同時に地上にいる純白のフュリアスもエネルギー弾を放ってくる。


僕はそれを変形や急加速を繰り返して絶妙なタイミングで回避をしていく。無理な体勢でエネルギーライフルの引き金を引いているからか撃墜率は下がってきているけど敵の数は着実に少なくなっている。


「はぁっ、はぁっ、はぁっ」


息が荒くなっているのがわかる。感覚を感じるままに体をひたすら動かしているからだ。今までこんなことが無かったのは今回の敵は今までよりも遥かに強いからだろう。


だけど、逃げることは出来ない。ストライクバーストは強い。どこまで戦えるかわからないけど、強襲が成功してイグジストアストラルがやって来るまでストライクバーストの前からは引けない。


「悠人! もう逃げてください! 悠人はもう限界です!」


メリルの言葉が僕の頭の中に響き渡る。僕は歯を食いしばりレバーを立てた。そして、地面に着地しながら両手のエネルギーライフルの引き金を引く。


すかさず前に駆け出しながらさらにエネルギーライフルの引き金を引きながら素早く横に飛んだ。


ストライクバーストの射撃がエネルギーライフルの一つを撃ち抜くけど僕はエネルギーライフルを手放しレバーを倒した。そして、出力を上げて急加速しながらフュリアスの間を駆け抜けた。


さらにフュリアスを翼で切り裂きながらすかさず空に駆け上がる。


「残り敵フュリアス、目視可能なかずで13機です」


「後、12機」


そんなにたくさんいるんだと一瞬だけ気を抜いてしまう。だけど、すぐに頭の中で鳴り響いた警鐘を受けてすかさずペダルを踏み込みつつスラスターの出力を上げた。


ストライクバーストの攻撃を回避しつつ僕は息を吸い込んだ。


集中する。どこまでも、どこまでも集中する。敵の位置を確認してストライクバーストの位置も確認する。全ての機体が向いている方角や動作も確認する。


全ての確認が終わって、僕は行動を開始した。エクスカリバーの全出力エンジンを一時停止。それによってエクスカリバーの機体が風によって大きく動く。それにより下からのエネルギー弾を勝手に回避した。


やはり、そうだ。


僕を疲れさせるくらいに射撃が正確だとは思っていた。機体の数で言えば狭間戦役と比べて遥かに少ない。なのに、僕はかなり疲れている。


相手の射撃はこちらと違ってプログラム補正だ。昔、イグジストアストラルでも体感したことはあるけど、撃った場所とは違うところに向かう感覚。


おそらく、天界の機体全てにそういう予測プログラム補正が入っているのだろう。だから、今の自然に揺らされた移動を当てることが出来なかった。


僕は小さく息を吐いてレバーを握り締める。そして、すかさずレバーを立てた。






ソードウルフの足が立ち止まる。それと同時にエネルギーライフルを構えて周囲を警戒していたアストラルルーラとアストラルソティスの二機が地面に降り立った。


ソードウルフのコクピットが開き、パイロットスーツを着たリリーナがアークベルラを片手に飛び降りて着地する。


『リリーナ、どうかしたのか?』


ルーイの疑問を聞きながらリリーナは周囲を見渡した。そして、微かに目を細めながら小さく頭を振る。


その様子をアストラルルーラに乗るルーイは不思議そうに首を傾げて見ている。


「いない。誰もいない。ルーイ、リマ、周囲を警戒して。倒れている人達以外の敵の気配が見当たらないから」


『見当たらない? そんなわけはないだろう。白騎士達が森の中に入ったはずだが』


「だよね。ルーイ、ソードウルフをお願い。私は森の中に」


「俺も行こう」


漆黒の翼が舞い降りて運命を握り締めた孝治が着地する。そして、森の奥を睨みつけた。まるで、何かを警戒しているかのように。


その視線を追ってリリーナも森の奥を睨みつける。


「何かわかったの?」


「何も起きていないのがわかった。小威力ながらスターゲイザー・バスターが炸裂したはずなのに、敵の姿が森から出ていない」


「逃げていないから、籠城している可能性が高いよね」


「ああ」


孝治の頷きと共に二人は地面を蹴って走り出した。もちろん、孝治が本気で走ればリリーナは簡単に置いていかれるためリリーナに速度を合わせている。


それがわかっているからリリーナは全速力で走っていた。


森の中で何かが起きているのは事実だ。楓の遠距離砲撃から光とイグジストアストラルで中距離から攻撃しつつ接近。そして、近距離でソードウルフやアストラルルーラの強襲という作戦であり、孝治の立ち位置は逃げ出す敵を倒す役割だった。


だが、あれだけ攻撃したにも関わらず敵は出て来ないどころか姿を消している。森の中で何かがあるのは一目瞭然だった。


「せめて、見通しさえよければ」


リリーナの呟きに孝治は周囲を見渡す。そして、小さく息を吐きながら手に持った運命を振り切った。


近くの木々を斬り裂いて、木々に隠れていた純白の翼を持つ兵士を斬り裂く。それにリリーナは驚きながらその場に立ち止まり襲いかかってきた矢を上手く受け流した。


「どうして天界の兵士が」


「わからない」


リリーナと孝治の二人がお互いに背中合わせになる。そんな二人を取り囲むように天界の兵士達は握り締めた槍や弓の先を二人に向けたままゆっくりと包囲を縮めていた。

孝治は静かに運命を振りかぶる。


「こういう時にこそ、悠聖がいてくれたらと思うのだがな」


「そう言っている場合じゃないよね?」


リリーナが小さく溜め息をつきつつアークベルラを構える。周囲の天界の兵士を気にしながら二人は包囲を睨みつける。


だが、包囲は弱いところが少なく、一点突破は少し難しいどあろうとは簡単に考えられる陣形だった。


「よく訓練されているな」


「そうだね。大規模部隊でもここまで包囲出来るのは少ないんじゃないかな?」


「だろうな。考えられとしたなら」


「天王直属の軍勢」


リリーナの言葉に孝治は頷いた。つまりはここに天王マクシミリアンがいるということ。


「悠人、大丈夫かな」


天王マクシミリアンがいるなら乗機でもあるストライクバーストがいると考えていいだろう。おそらく、後方から攻めるために確実に戦っているのは容易に想像がついた。


「今はここを抜ける。そして、海道正や白騎士と合流するぞ」


「了解」






レバーを倒すと同時に踏み込んでいたペダルを離しながら出力を最大限まで上げたままエンジンとの接続を切断した。


エクスカリバーの体が風に舞い、エネルギー弾を回避する。そんな状況を冷静に感じながら僕はすかさずレバーを立てた。そして、ブースターとスラスターを下降するように展開して地面に着地する。それと同時にエクスカリバーの頭上をストライクバーストのエネルギー弾が通り過ぎた。


僕はすかさず前に駆け出しながら対艦剣を取り出す。


前方にいる純白のフュリアスは僕達に向けてエネルギーライフルを構えているけど、僕は対艦剣を投げつけながら横に飛びつつブースターを起動させてレバーを倒した。


エネルギー弾が何もいない虚空を切り裂いて、対艦剣が純白のフュリアスのコクピットを貫く。


前方からはエネルギー弾が迫ってはいるがそれを翼で斬り散らしながら最大までスラスターまでも展開した。


エクスカリバーが加速し最後の純白のフュリアスを両断する。すかさず機首を上げて僕は空中でレバーを立てた。


「後はお前だけだ! 天王マクシミリアン!」


残ったフュリアスはストライクバーストのみ。こちらはまだ被弾していない。


『さすが、というべきか。さすがは空の民』


その言葉に僕の手がピクリと動いた。


空の民については天王マクシミリアンも知っていてもおかしくないと思いつつ僕はストライクバーストを睨みつける。


「降参しろ! もうすぐここにイグジストアストラルがやってくるから!」


『イグジストアストラルが、か。ふっ、甘いな。我は天王マクシミリアン。我を倒せぬ限り退くことはないとしれ!』


「わかったよ」


僕はレバーを握り締める。


だけど、やる気満々の僕の背中に声がかかった。


「悠人、危険です。残存エネルギーが15%を切りました。回復までは後3分ですが、戦うのには分が悪いです」


「そうだとしても、ストライクバーストはここでどうにかしないと。戦えるのはイグジストアストラルだけだから」


「それはそうですが」


「大丈夫」


僕は笑みを浮かべてレバーを倒した。そして、エクスカリバーが加速する。


ストライクバーストはすかさず全ての砲を開いて狙って来るが、僕はエネルギー弾とエネルギー弾の間をくぐり抜けて急降下した。


そして、地面に着地する瞬間にレバーを立てて変形しながら対艦剣を取り出しつつ地面に滑りながら着地する。そして、ストライクバーストに対艦剣を叩きつけようと振りかぶった瞬間、振動が襲った。さらに大きな振動が襲う。


「っく」


「きゃっ」


目を開けた先にあるのは地面。足を滑らせた? でも、一部が赤く光っているのはどういうこと? アラーム? 一体、何の?


「悠人! エクスカリバーの左足が負荷に耐えきれず損傷! 地上戦での戦闘能力70%減です」


僕はすかさずレバーを倒して変形する。そして、ストライクバーストから離れようとブースターを点火した瞬間、衝撃が襲った。体の一部がもがれそうになる感覚に悲鳴を上げそうになるが、そのことによってストライクバーストの攻撃が直撃したのだと実感出来た。


「左翼被弾! 空戦機能が維持出来ません!」


メリルの悲鳴に近い声。それに僕は素早くペダルを操作する。前に迫っているのは山肌。残ったブースターとスラスターを使ってギリギリで山肌とエクスカリバーを平行に合わせ、激突した。


凄まじい衝撃に体中が揺られ、そして、天地がひっくり返った。何かにぶつかったのだと気づいた時にはすぐそこに地面が迫っていた。


そして、僕の意識は闇に落ちた。

やっぱり主人公は一度は負けないといけないと思っています。

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