第二十一話 歌姫勢力VSレジスタンスVS天界勢力
まだまだ第三章は序の口ですが、この話で第三章に関わる基本的な勢力は全て出たと思います。後は派閥とか私の気まぐれとかで増えます。
魔術による誘導性の高い遠距離射撃を避けながら楓はカグラの先を目標の森に向け砲撃を放つ。
すでに光と鈴が乗るイグジストアストラルの二人も飛び出しておりその姿は楓の視界から確認することが出来た。
「作戦は第二段階。第二段階になったら私の役目は収束砲による砲撃」
楓は時折飛んでくる魔術による射撃を避けながらカグラを向ける。
収束砲は魔力を収束させて放つものだが、その際には必ずと言っていいほど立ち止まる必要がある。だから、収束砲を放てるタイミングは敵の狙いが一切無い時限定となる。
だから、回避しながらの収束砲は本来不可能なはずだった。だが、楓は回避した先でカグラを構えた瞬間に収束砲を放つ。収束砲は楓に向かって放たれた魔術を蹴散らしながら森の中に飛び込んで大きな爆発となった。
これが敵の攻撃に晒されながらも収束砲を放つための手段として確立した楓のみの技術でもあった。
楓はその場に立ち止まったまま今度は普通に収束を開始する。
「ブラックレクイエム、チャージ終了」
楓は遠隔操作中のブラックレクイエムの魔力収束を終了させた。そして、カグラの前にある魔力収束も終了させる。
「威力少なめ、スターゲイザー・バスター!」
そして、スターゲイザー・バスターが放たれた。それと同時にちょうど森と太陽が重なるような位置からスターゲイザー・バスターが放たれる。
二方向からの収束砲による照射。魔力の爆発は極めて大きい範囲で起こり、森の中の大半を吹き飛ばしていた。
「よし。次は第三段階だから接近して」
その瞬間、楓は何かが迫っているのを感じてその場から飛び退いた。それと同時に楓がいた場所に光の槍が通り過ぎていた。
楓はすかさず姿勢を制御して振り返る。そこには、純白の翼を持つ青年の姿があった。それに楓は睨みつける。
「天界の住人」
「リュミエル・カグラ、だったか? 神剣『カグラ』を持ちし我らと同じ光の力を操る存在」
楓はすかさずカグラを向けた。だが、楓は気づいている。いや、楓だからこそ気づいているというべきか。
楓を囲むようにいくつかの魔術陣が展開されているのを。それを肌で感じているから楓はまだ平常心でいられる。
「ここで殺すのは惜しい。どうだ? 我ら天界の仲間にならないか? 同じ光の加護を受けしもの同士で」
「断る」
相手にわからないように楓はいくつもの対抗術式を組み上げていく。おそらく、未だに相手は楓が術式自体に気づいていることはわからないだろう。
「そうか。ならば、名乗らせて貰おうか。私の名はアーク・レーベ。光明神アーク・レーベだ」
「アーク・レーベ!?」
楓が驚いた瞬間、楓の周囲の術式が全て発動した。
だから、何も起こらない。
アーク・レーベは目を見開いて驚き、楓はすかさずカグラを構えて砲撃を行った。近距離射撃でもあるショットバスターは正確にアーク・レーベに向かって飛び、アーク・レーベは防御魔術を展開してショットバスターを散らす。
アーク・レーベが持つ光明結界は光属性と相性の悪い攻撃を防ぐものだ。だから、魔力を光として放つことを得意とする楓には光明結界は効かない。
「光明神アーク・レーベ。一度戦ってみたい相手だったから、どちらが光属性で強いか、比べてみようよ」
そう言って楓は薄く笑みを浮かべた。
横一列に並べられたレーヴァテインのコピーが一斉に森に向かって放たれる。そんな様子を鈴はイグジストアストラルに乗りながら見ていた。
敵からの攻撃は確かに強いが、鈴の中にはある疑問が浮かんでいる。
「光さん。相手は本当にベルトランを倒した集団なのでしょうか?」
イグジストアストラルの翼の砲門を森に向けてエネルギー弾を放ちながら鈴は光に尋ねた。
光は一瞬だけ首を傾げた後、首を数回横に振る。
『何かあったの?』
「相手の攻撃があまりにも弱いので」
『弱い?』
光はそう返しながらもレーヴァテインをコピーして放っている。時折やってくる魔術を簡単に避けつつ二人は確実に前に進んでいた。
鈴はイグジストアストラルを加速させつつ周囲を見渡す。
「ベルトランを落とした理由も不明ですし。もしかしたら」
『罠の可能性がある?』
「はい。考えたくはありませんが」
イグジストアストラルが現れたのに相手が一機もフュリアスを出していないというのも鈴は気になっていた。
本当に相手はフュリアスを持っていないのか、それとも罠なのか。
「光さん、先に出てもいいですか?」
『ええよ。その代わり、間違って撃ったらごめんな』
「そんなに軽く言われても」
イグジストアストラルの出力を上げつつ鈴はペダルを踏み込む。背中のブースターが開きイグジストアストラルの体が加速した。加速したため鈴の体がシートに少し押し付けられる。
イグジストアストラルという絶対防御の機体だからこそ、周囲を気にせずに行動出来る利点を最大まで活用して鈴はイグジストアストラルを真っ直ぐ一直線に向かわせた。
その胸に妙な胸騒ぎを感じながら。
ストライクバーストの両肩の砲塔からエネルギー弾が放たれる。僕はそれをギリギリで何とか回避しながらエネルギーライフルの引き金を引いていた。
エネルギー弾がストライクバーストの隣でエクスカリバーを狙っていた純白のフュリアスを貫き、爆発する。
すかさずレバーを倒して変形して前を塞いだ純白のフュリアスの胴体をエクスカリバー自慢の翼で両断した。
「悠人、これは一体、きゃっ」
加速したエクスカリバーが急に変形したためメリルが小さく悲鳴を上げる。僕はギリギリでエネルギー弾をやり過ごし、対艦剣を地上の純白のフュリアスに向かって投げつけた。そして、ブースターとスラスターを最大限まで利用しながら嫌な予感のしない方向にエクスカリバーを踊らせる。
僕はすかさずレバーを倒して囲まれかけた包囲網から飛び出した。だが、ストライクバーストはしつこく僕を狙っている。
両肩と両腰の計四点からの砲撃はどれも威力が高く、一撃でもかすればエクスカリバーは大きく吹き飛ばされるだろう。
こういう時にダークエルフがいてくれればと思うけど。
嫌な予感を感じて僕はレバーを立てながらその場で宙返りを行った。エネルギー弾をギリギリで回避しながら宙返りの途中でレバーを倒し、追加装備を身に着けながら加速する。
両翼の先に砲身、ではなく筒のようなものを装着する。それは、片側一つでフュリアスが数機作れるほどの超高級品。その筒の中にある八つのミサイルの内、右から二つだけ前方に向けて放った。
僕は追加装備を戻しつつレバーを立てて人型に変形しながら上に向かって上昇する。
放たれたミサイルは途中で爆発。僕に向けてエネルギーライフルを構えた純白のフュリアスの集団に細かなエネルギーの塊が高速で降り注いだ。
結果、蜂の巣にされた純白のフュリアスが落下する。それも、空中にいた大半のフュリアスが落下する。
人体には影響の無い魔力粒子弾だ。魔力粒子によるダメージであるため、人体には全く影響が無く、魔鉄で作られたフュリアスには極めて効果が大きいものである。
僕は両手にエネルギーライフルを構えて残った空中のフュリアスを撃ち貫く。
これで、後は地上のフュリアスだけ。
『その腕。やはりあなたか、真柴悠人』
通信から天王マクシミリアンの声が響き渡る。やはり、ストライクバーストのパイロットは天王マクシミリアン。
「あなたがどうしてここにいる!? ここは天界ではない! 音界だ!」
『撃ち落とされたくないなら大人しく投降して欲しい。その機体でストライクバーストに勝つことは出来ない』
「断る。この世界はメリル達音界の人の世界だ。だから、僕は、お前を倒す!」
森の中を疾走する正は足を止めた。そして、それと同じように白騎士も足を止める。二人の視線の先にあるのは死体の群れ。しかも、老若男女関係のない死体だった。
死体の群れがあるからか、周囲は赤黒く染まっている。
共通しているのは全員がローブを着ているということくらいだろうか。
「どういうことだ?」
白騎士は完全に戸惑っている。無理もない。普通ならこういう光景はありえないからだ。
正は静かに死体の一つに歩み寄った。そして、死体をひっくり返す。
心臓を貫かれたことによる出血死。おそらく、即死であろう。
「強襲されたとしか考えられないね。おそらく、ここにいるのはベルトランを落とした集団。つまり、僕達が狙っていた相手ということだよ。だからね」
正は落ちていた石を拾い上げて投げつけた。投げつけた場所には何もない空間。だが、石は跳ねる。
白騎士は慌ててアークフレイを構えた。
「出てきたらどうかな?」
正もレヴァンティンのレプリカを構えつつ周囲に向かって言う。すると、周囲から純白の翼を持った兵達がぞろぞろと現れた。
正と白騎士が背中を合わせ合う。
「こいつらは」
「音界の住人だよ。そして、僕達よりも早く集団を襲撃した部隊。さて、事態は少し面白いことになってきたね」
第76移動隊
音界歌姫側
音界政府側
レジスタンス
黒猫軍団
天界
この六つがかなり第三章の基本的な勢力です。話は前書きにも書いたように序の口ですが温かい目で見守ってください。