表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第三章 悠遠の翼
530/853

第十五話 強襲作戦準備

エクスカリバーZ1


それは僕の愛機。そして、僕が最も使用している機体。


あらゆるフュリアスの中でも最高クラスの性能であり、最高速度もトップ。まさに、最強のフュリアスの名に相応しい機体だと思っている。


でも、これを使うのは久しぶりだから使えるか不安がある。


僕はエクスカリバーの装甲に手を触れた。そして、小さく息を吐いた。


「リンク」


精神感応のシステムとエクスカリバーをリンクさせる。そして、隅々までエクスカリバーを確認する。


左翼感応システム異常無し。右翼感応システム異常無し。中央感応システム異常無し。


「可変」


僕の言葉と共にエクスカリバーが変形する。人型に変形したエクスカリバーに僕は手を当てた。


「リンク」


右腕感応システム異常無し。左腕感応システム異常無し。右足感応システム異常無し。左足感応システム異常無し。中央感応システム異常無し。


「可変」


エクスカリバーが戦闘機形態に変形する。そして、僕はコクピットに乗り込んだ。そして、精神感応をリンクさせる。


エクスカリバーを使用する際に必要な作業の一つ。精神感応自体のシステムがちゃんと繋がっちなければエクスカリバーはまともに動かない。だから、僕は入念に確認する。


ダークエルフと違ってエクスカリバーはレバー操作やペダル操作も必要とするが基本的には精神感応を利用する。特に、ブースターやスラスターの起動を精神感応に任せているためあると無しじゃかなり使い勝手が変わってくる。


僕は小さく息を吐いた。全ての確認は終了。後はレジニア峡谷まで向かった際にどれだけ感を戻せるか。


コクピットを開けて座席から立ち上がる。そして、全てのリンクを切りながら僕は首につけていた精神感応用の首輪を外した。


「また、頼りにさせてもらうよ。相棒」


「ほう。これが異界最強のフュリアスか。面白いフォルムをしているな」


その言葉に僕は振り向いた。そこにはいやらしい笑みを浮かべた音界の首相の姿がある。周囲には武装した兵士。


僕はコクピットから下りて首相を睨みつけた。


「何のようですか?」


「別に小僧の機体を盗ろうとは思ってはいない。これは小僧にしか使えないらしいからな。我ら自慢のエースパイロットですら、人界から提供されたエクスカリバーを乗りこなせなかった。それを考えても小僧の実力はわかりきったものだとは思わないか?」


「あなたの考えがわからない。僕はあなたの敵のはずだ。なのに、僕に話しかけるなんて」


「自惚れるな。俺がやりたいのは歌姫に頼らない治世を作り出すことだ」


その言葉に僕は眉をひそめた。


確かに、音界では歌姫の権力は極めて高い。音界の象徴として拝められているだけでなく、歌姫の力の強制力は誰からも逃げることは出来ない。


メリルの力はわかっていないけど、音姫さんの力なら周さんですら逃げることは出来なかった。だから、この首相はそう考えているのだろう。


「小僧は異界の人間だったな。この街をどう思っている?」


「首都を? 長閑で、静かで、平和で、でも、絶えず動いている感じ」


「確かにそうだな。首都の治安は極めて安定している。それは俺が首相をしているからよくわかるが、この首都ではほとんどの人が平和に暮らしている。だが、地方を見ればどうだ。今だにレジスタンスが現れて活動している。政府レジスタンスはまだいい。あいつらは我ら政府にだけ反抗しているのだから。だが、その他のレジスタンスはどうだ? ただの盗人達だ。そいつらをどうにかするには歌姫をどうにかするしかない」


「どうしてそんな理論になるの? 歌姫はこの世界の象徴だから」


「小僧は過去の大戦に聞き覚えがないか? あれは、歌姫がレジスタンスを焚きつけたために起きた歌姫による革命だ。わかるか? 歌姫というのはこの世界を言葉一つで動かすことが出来る。良くも悪くも」


確かにそうだ。会議中だってメリルに反抗しようとする人はほとんどいなかった。見ていたらわかるけど、ほとんどがメリルの言葉に頷いていた。首相や一部の人を除いて。


それほどまでに音界で歌姫は絶対。逆らってはいけない存在。


「俺が目指す政治の先に歌姫はいらない。いや、象徴としては必要だが、その権限は無くした方がいい。そう思っている」


「それだと、歌姫はただの人形になる。象徴と持て囃されて、ただ、祭り上げられた哀れな人形でしかない。あなたは、歌姫の未来を奪うつもり?」


「若いな。確かに若い内はそう思うだろう。だけど、歌姫というのはどうして音界で象徴としているのか考えてみろ? 歌姫はレジスタンスにすら愛されている。政府は敵だと思われている。わかるか? 歌姫というのは政治をする上ではこの上なく邪魔な存在なのだ」


否定は出来ない。確かに、メリルの権限を考えても、それは邪魔にしかならない。でも、それでも、歌姫が必要なのは変わらないと思う。


「歌姫は必要だよ。音界はまだ、発展しているから。そこに歌姫と言う象徴いることで世界は安定すると思う。人界の歌姫は本当に自由気ままだよ。でもね、それは人界の強い人は歌姫に匹敵する人はいるから。だから、自由なんだと思う。歌姫がいらなくなるのは、歌姫の力が抑止力として意味がなくなる時。僕はそう考えているよ」


「なるほど。確かにそうだな。だが、今の暮らしを考えてもそれを待つ時間は無い。歌姫をないがしろにしてでも、俺は音界というこの愛すべき地を救わなければならないのだ。それが、俺が首相になった意義だ。小僧に、いや、貴様というべきか。貴様に歌姫メリルのい敵と思われていてもいい。だが、俺の考えを理解していて欲しい」


「どういうこと?」


僕は目を細める。意図がわからない。その話をするなら僕ではなくルーイにすればいいのに。


首相は笑みを浮かべた。笑みを浮かべて口を開いた。


「貴様が悠遠の翼を持っている以上、な」


「悠遠の、翼?」


翼の言葉に思い浮かぶのは僕のレアスキル。『天使』と呼ばれる僕と周さんしか持ちえない魔力の翼。


上手く魔力を固めたら飛翔も可能だし、僕のものと周さんのものとは特性が違うけど、その特性の違いは本当に些細なもので、どちらも特殊能力を持っている。


「そう。本当は語るつもりはないが、お前には語った方がいいと天啓があってな」


「どういうこと?」


「そうだな。俺はこう思っているのさ」


そして、首相は笑みを浮かべながら僕に背中を向けた。


「貴様なら、あれを託してもいいかもしれないとな」


そして、首相は歩き出す。あれが何を指しているのかはわからない。でも、僕にはなんとなくそのあれがわかるような気がした。


頭の脳裏に閃いたのだ。七枚のエネルギーの翼を持つ特徴的な青と白の二色の装甲で作られたフュリアスの姿が。


「どういうこと? あなたは何を知っているの!?」


僕の疑問に首相は何も答えない。ただ、歩いて去っていくだけ。


僕は拳を握りしめた。そして、小さき息を吐いてエクスカリバーに手を触れる。


「災難ですね」


リマの声に僕は振り返った。リマは赤色のパイロットスーツを着ており、すぐさま出動出来るような姿でもあった。


「災難、かな?」


「ええ。現首相は昔、古い書物を貪るように読んだと聞いています。メリルもじここい来てから読んでいたみたいで時々、まるで子供の喧嘩のように言い争いをします。それに巻き込まれましたね」


「そうかもしれない。でも、面白い話はいくつか聞けたような気がするよ」


「ドMなのですか?」


「どうしてそう言う考えになったのか教えて欲しいところなんですが」


僕は小さくため息をついてリマの手に握られているものに気づいた。それは青色のパイロットスーツ。それを見た僕は信じられないという表情でリマを見る。


「メリルがあなたに授与するものです。あなたの体に合うパイロットスーツはこれしかなかったので」


「蒼服の? 紅服のものはなかったの?」


「そもそも、私よりもはるかに強いのに紅服のつもりですか? バカにしていますよね?」


あれ? リマってこういう人だったっけ。


「それとも、白服がよかったですか? 私は問答無用で命令を飛ばしますが」


「ありがたく蒼服をお借りさせていただきます」


何故か寒気を感じたので僕は蒼服を受け取ることにした。リマは満足そうに笑みを浮かべて頷く。


「作戦開始はこれより30分後。全力を持って戦闘空域に突撃する。作戦は煮詰めた通り。成否はあなたの腕にかかっている」


「わかっているよ」


僕は小さく呟いて。呟いて首輪をしっかりと握りしめる。


「僕は負けない。僕は勝つ。そして」


エクスカリバーを見つめながら僕は最後の言葉を放った。


「全てを倒すから」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ