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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第五十話 報告書

『鬼の封印作業の顛末。


来たる日午後八時より鬼の封印作業のため戦闘を開始。対暴徒鎮圧用魔術をくらうも白百合音姫の攻撃により、鬼を撃破。だが、封印作業に入る寸前で別勢力の攻撃により白百合由姫が負傷。そのままメンバーの半数がやられ封印作業は失敗。別勢力は魔界の貴族派と名乗り、鬼を回収し逃走。第76移動隊の被害は軽傷4、重傷1。『ES』からは軽傷1。作戦失敗の責は第76移動隊隊長海道周にあり、他の人員には無いとする。


第76移動隊隊長海道周』


時雨は静かに周から送られてきた報告書を机の上に置いた。部屋の中には慧海の他に銀髪の青年がいる。


時雨は小さく溜息をついた。


「まさか、別勢力が介入するとはな。ゲートの記録は?」


「残念ながらないよ。記録が改竄されたらお手上げだけどね」


銀髪の青年が肩をすくめる。


別世界に向かえるゲートには必ず記録が残る。その記録を操作出来るのはゲートの職員か、各勢力の上層部くらい。


「しかし、貴族派か。何が目的なんだ?」


「僕からは何とも。慧海は?」


「貴族派自体は魔界にある勢力の一つだ。魔王派、議会派に続く第三勢力。血の気が盛んらしいな。詳しくは知らん。つか、時雨宛てに手紙が来ていなかったか?」


「ああ。来てる」


時雨はそう言って机の上に置いてあった手紙を手に取った。すでに封は切ってある。


「貴族派からの脅迫状だ。増員したら人を殺す。簡潔に言えばこうなる」


「だけど、貴族派の言う通りにすれば世界が滅ぶと僕は思うよ。慧海や時雨だって気づいているんじゃないかな? 鬼の正体に」


「当たり前だ。慧海だってそうだろ。あいつが本当に封印されていた場所か。つか、慧海は知らなかったのか?」


慧海は首を横に振る。表情を見ても本当にわからなかったようだ。


「封印されたのは確実にはるか昔だ。オレが生まれるよりずっとな。だが、由々しき事態ではある」


「だな。幸運なのは周達がいるってことか。慧海から見て再戦したらどっちが勝つと思う?」


慧海は時雨から報告書を受け取った。


一枚目に書かれている大まかな筋書きを読まずに詳細なページに向かう。


「確率は半分だな。詳細を見る限り、亜紗と孝治の神剣は知られていない。音姫の神剣は対抗手段が難しい。この二つはかなりのプラスだ。だが、実力は貴族派の方が上。天才軍団だとしても、その差は歴然だ。後は、不確定要素の二人がどう動くか」


不確定要素というのはおそらく周と由姫のことだろう。慧海から見ればあまりに不明な部分が多すぎる。


慧海は小さく溜息をついた。


「周の実力がどこまで本気か、由姫がどこまで戦えるか。それが問題だな。というか、重傷の由姫は三日で退院出来るレベルなんだな」


「あの愛佳が育てたんだぜ。ぴんぴんしているだろうな。問題は」


「評議会だね」


『GF』の最高意思決定機関は確実に周の査問会を開く。そして、時雨達へ批判の矛先を変えるに違いない。


「ったく、奴らは人一倍頭が頑固なんだから、ちょっとくらいは柔らかくしろっていうんだ」


「まあ、少し頑固なくらいじゃ評議会では生きていけないと思うよ。慧海、慧海は貴族派について全く知らなかいの?」


「全くというほどじゃないけど、答えられる内容は少ないな。ただ、評議会の奴らに対して有効な手段にはならない」


肩をすくめて慧海は言う。


評議会による査問会はほとんどの可能性で降格処分が除名処分だ。もし、周がそうなったなら第76移動隊は確実に崩壊する。


「有効な手段を見つけて、評議会による査問会で周をどこまで庇いきれるか。もし、庇いきれないなら第76移動隊は確実に崩壊するな」


「そうだね。慧海の言うように確実に崩壊する。第76移動隊で海道周の役割は司令塔。ブレインを無くした部隊ほど脆いものはない。時雨は何か秘策はある?」


「周が何とかすると思うんだよな。だけど、オレ達も調べないといけない。慧海。慧海は貴族派について当たってくれ」


「了解。ギルガメッシュに尋ねてみるさ」


「ギルバートは評議会の動向を頼む」


「いつも通りだね。了解したよ」


「オレは鬼についてまとめる。やるぞ」


時雨はそう言って立ち上がった。


周がどうなるかはわからない。だが、周は守らないといけない。


だが、立ち上がったと同時にドアがノックされた。そして、ドアが開く。


「失礼するぞ」


「アル・アジフ!?」


時雨は驚いて声を上げた。


アル・アジフは小さく息を吐く。


「急いでここに来たから疲れたわ。さて、『ES』穏健派より重大な情報じゃ」


「『ES』としてね。慧海とギルバートを外すか?」


「いや、大丈夫じゃ。我が言いたいのは、貴族派に『浸透』のクラリーネがおる」


「『浸透』のクラリーネだと。まさか、水帝になった」

慧海が驚いたように声を上げた。


「そうじゃ。魔界五将軍の一人が貴族派におる。真なる鬼を手に入れるためにの」


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