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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第二章 学園都市
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第二章最終話 海道周

最終話と言っておきながら次の話に幕間が入りますが気にしないでください。

「どうして」


オレは目の前に突き出された剣を見て完全にうろたえていた。


突き出されたものにも驚いたが、正の目的がオレを殺すことだったなんて思いもよらなかった。だけど、どうして今言うんだ? いつでも殺す機会ならあっただろうに。


「どうして今すぐにも殺さないのか。君はそう思っているよね?」


オレは無言で頷く。それに正は笑みを浮かべた。


「君は『伝説』ということばを聞いたことがあるかい?」


「伝説? 過去の伝承とかそういうものの中でも格別に有名なもの。違うか?」


「確かに言葉通りの意味として捉えたらなそうなるかな」


正がオレに剣を首筋に当ててくる。少しでも動いたなら斬るつもりなのだろう。


「『伝説』というのはね、過去にあった最強の神剣の名前だよ。どうして伝説になったと思う?」


「さあ」


「だろうね。僕も詳しくわからないよ。だけどね、一つわかるのは」


その瞬間、正の姿が消えた。オレはとっさに振り返る。そこには、給水塔の上に立つ正の姿があった。正は剣を肩に担いでいる。


いつの間に、というレベルじゃない。こういう状況になってもオレは魔力粒子を周囲に散らしている。だから、今の正の動きはよくわかった。


先ほどまでいた位置から今いる位置まで誤差なく移動した。断章を使った瞬間移動(ショートジャンプ)なんてレベルじゃない。移動なんてしていない。ただ、場所を移しただけ。


オレの背中に冷や汗が流れる。今まで詳しく調べたことはなかったけど、まさか、こういう現象が起きるなんて。


「その剣が、『伝説』か」


「正確にはこの剣の神の形が神から『伝説』と呼ばれたものだよ」


「神?」


「神剣の元となった様々な神がいるらしい。そのことについては僕も詳しくは知らない。だけど、この剣が真の姿をさらした時、それこそが僕の新たな求める未来だ」


正が握り締める伝説、とは少し違うものか。だけど、それを正が持っている。そして、正はその片割れを探している。


オレは小さく舌打ちをした。オレが思っていたこの感情はなんだったんだという感覚が出てくる。簡単に言うなら怒りだろう。怒りだとしても、正に騙されて怒っているわけじゃない。そういうことは考慮することが出来た自分に怒っている。


どうしてこの未来を考えなかった。


「そのために僕はこの世界に来た」


「そして、その剣を手に取る可能性を持つ海道周、つまりはオレに接触したということか」


オレは小さくため息をつく。これで正がオレ達の前に現れた理由というのもがよくわかった。でも、よくわかったとしてもそれを信じれるかというと話は少し違ってくる。


よくわからない部分がいくつかあるからだ。


「なら、どうしてオレを今まで助けた? あまり姿を現さなくても」


「君は並行世界という言葉を知っているかな?」


オレは微かに眉をひそめる。言葉としては知っているがこの状況でどういうことを意味するのかがわからない。


だが、それは信じるしかないだろう。


「世界はいくつも分岐した未来の世界がある。今、僕達が歩んでいる世界がその一つである、同じ時間でありながら別の未来を進んだ世界がある。そういうものが並行世界だよ。でも、どうして並行世界というものが考えられたのだと思う?」


「空想、妄想、ロマン。そこらへんじゃないのか?」


「確かに間違ってはいないかな。僕も同じような意見だよ。だけどね、それが存在するからこそ、僕はここに存在する。君はもうわかっているよね? 僕の存在に」


その言葉にオレは頷いた。


「話が早くてありがたいよ。僕は別の並行世界から、いや、別の並行世界の未来からやってきた存在だよ。それはね」


「その剣の力。そういうことなんだろ? 『伝説』とはよく言ったものだ」


オレは軽く笑みを浮かべる。


「今まで実現不可能、幻想空間(ファンタズマゴリア)を持つオレだけが使用できる時を制御する術式。まあ、オレのものは外界を遮断するだけのものだが、それを次元を渡るまで昇華させた武器。それがその剣なんだろ?」


「正確には並行世界を渡ることに特化したものだけど、間違ってはいないね」


正の言葉にオレはいろいろと話が繋がるのがわかった。そろそろ、本題に入るとするか。


オレは小さく息を吐いて正を睨みつける。


「正、お前の目的は『伝説』を真の姿にすること?」


「そうだよ」


「そして、この世界を救うこと」


「そうだね」


「そして、オレ、海道周の代わりに海道周としてこの世界で暮らすこと」


その言葉に正は笑みを浮かべて答える。


今までの正の動きはいろいろとおかしいものがあったし、言葉にも違和感があった。そして、それ以外にもたくさんのことが。小さな積み重ねではあるが、オレの考えではこの答えが一番正しい。


「そうなんだろ。並行世界での海道周。つまり、オレ自身」


「正解。一応、聞かせてもらおうか?」


「墓穴を掘りまくっているのに気づいていないのか?」


正の言葉の節々にたくさんのヒントが存在した。それがこの答えに辿りついたのはそれらが原因だ。まあ、それを知っていて告白したんだけどな。


正は不思議そうに首をかしげている。どうやら全く身に覚えがないらしい。


「オレを殺そうとしているのはオレがもう一つの片割れを手に入れることが出来るから。それはお前が海道周であるなによりの証拠でもある。というか、本当に世界が滅びただな」


「そうだね。その事実は僕は頷くよ。そして、僕は君に宣言する。君の考えたことは僕も実行した。だけど、それは失敗した。本当の意味で世界を救うことの意味を履き違えていたのさ」


オレは正の笑みに嫌な予感を感じる。何かを間違えているような感覚は確かにあるけど、この感覚はもしかして、


「そして、世界は滅んだ。だから、僕はこの手で世界を救うために戦ってみるよ。これからの僕と君は敵だ。そして、僕は僕のために動き始める。君はもう、世界を救えない」


「そうかよ。でも、オレは自分の道を」


「それが、無理だと言っているんだよ」


いつの間にか正はオレの背後に回っていた。あの剣はかなり厄介だな。殺ろすつもりがなければオレの勘は働かない。


「君は戦わない方がいい。全てを僕に任せてくれれば、全てを解決するから」


「だったら、返事をする前にオレは先に言っておく」


オレは振り返る。それによって首の皮が切れるがそういうものは気にしてはいられない。気にしたら負けだろうとオレは思うから。


「オレはお前のことが好きだ」


「えっ? えっ!?」


正は驚いて後ろに下がった。というか、完全に動揺しているよな。


「僕は君を殺そうとしてるんだよ。というか、将来殺すと言っているんだよ。そんな相手に告白するなんて君は正気?」


「さすがに傷つくんだが。いや、まあ、今はいい。ともかく、オレはお前のことが好きなの。わかった?」


「は、はい」


あれ? 正って意外と強引に行けば主導権を握りやすい? なんか、


「正は可愛いな」


あっ、口に出して行ってしまった。それにより正の顔が真っ赤に染まる。


今ならどうにか出来そうな気もするが、今の状況でどうにかするわけにはいかないだろう。それに、オレはこのことと他にも言いたいことがある。


「お前が並行世界の海道周だろうが、オレを殺そうとしているだろうが関係ないの。ともかく、オレはお前に惚れている。その事実を踏まえて言うぞ」


オレは息を吸い込んだ。そして、笑みを浮かべる。


「かかってこい、オレ。オレが真正面からぶつかってやる。そして、勝つ。いくら未来を知っていようがなかろうが、オレはオレに勝たなければ新たな未来は作れない。そう思っている」


「もしかしたら、誰か死ぬかもしれないよ? 僕は君を殺すかもしれない」


「なら、精一杯抗えばいい。オレに簡単に勝てると思うなよ。オレ」


その言葉に正は俯いた。俯きながらものその顔には笑み浮かんでいる。オレだから何を考えているかはよくわかる。


正は顔を上げた。その時には笑みは消えているけど、十分にその表情の意味はわかる。


全力で叩き潰す。


そうとしか言っていない。だから、オレは言葉で返すことにした。


「力づくでもお前をオレのものにしたい。そう考えているからな」


「期待しているよ。未来の姿を完全に知る僕と、未来の姿を完全に夢想する君と、どちらが強いか。なら、僕も勝った時の条件を言おうか」


その時の正は顔を真っ赤にしていた。そして、笑みを浮かべてその言葉を口にする。


「君を僕のものとする。そして、世界を救ってみせる。君の意志を継いで」


「世界を救うのはオレだ」


「いや、僕だ」


「オレだ」


「僕」


「オレ」


「僕」


そして、オレ達は同時に噴き出した。


同じだからか同じように意地の張り合いになってしまう。でも、そういうのも新鮮でいいかもな。


「まさかここまで被るとはな。まあ、いいや。正、次会う時は敵なんだよな?」


「そうだね。次会う時は敵だよ」


「そっか」


オレは正に向かってポケットに入れていたものを放り投げた。正はそれを受け取って不思議そうにky美を傾げ、続いて顔を真っ赤にする。


何故なら、それはリボンに包まれた手のひらに乗る大きさの箱だったからだ。


オレは顔を真っ赤にした正に笑みを浮かべる。


「こういう未来は知らないみたいだな」


「うん。だって、今までの海道(あまね)は全て女性だったから」


(しゅう)って読まないんだ。


「開けてくれ」


正はリボンを解き、箱を開ける。そこに入っていたのは指輪。特殊な加工はしていないがただの指輪だ。それがペアで入っている。


「それがオレの気持ち。だから、オレが勝った時、その指輪をつけてくれないか」


多分、オレの顔は真っ赤だろう。正の顔も真っ赤になっている。


そして、正は静かに笑みを浮かべて姿を消した。


オレは小さく息を吐いて、そして、気づく。


「あれ? 返事もらっていないよな?」


せめて返事をして欲しかった。とオレは沈みゆく夕陽をみながら思った。


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