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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第二章 学園都市
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第二百二十一話 ラストバトル

「礎ってどういうことだ?」


オレは迫り来る幻想種の群れをチラッと見ながらお袋に尋ねた。お袋は笑みを浮かべて槍を構えている。


「今からあれを爆発させる、ということですよ」


「爆発?」


お袋が指差した方角には悠遠の翼、でいいのかわからないが、ともかく棒がある。それを爆発させたならかなり危険だ。


どれくらい危険かを説明するなら、魔力の爆発での計算は最大出力が関係する。最大出力があればあるほど威力はだんだん上がっていく。もし、これが悠遠の翼なら爆発の規模は桁違いだ。


「そんなことをすれば世界を救うための力が」


オレはそこで言葉を止めた。お袋の目的はこの学園都市を焼け野原にすること。オレや親父はこれを使おうと考えたが、お袋は違う。


世界を破壊するためならこれすらも使うはずだ。


「レヴァンティン、いけるな」


『大丈夫です。全然大丈夫です』


レヴァンティンを構え、そして、地面を蹴る。今はお袋を倒すことをしないと。だが、オレは嫌な予感を感じて後ろに下がった。それと同時にオレがいた場所に光の槍が突き刺さる。


「お兄ちゃん! 後ろに下がって!」


遅れてやってくる茜の声。それと嫌な予感を組み合わせてさらに後ろに下がった。


オレがいた場所に光の槍が突き刺さる。


「マズいな」


幻想種の中には見たことのない敵の姿がある。遠距離攻撃型の幻想種だ。幻想種として小柄ではあるが、遠距離攻撃が可能な分、堅いゲルナズムやエンシェントドラゴンと一緒になればかなりややこしい事態になる。


それにお袋もいる。隙を見せたらやられる。


「こういう時に正がいたらありがたいけどな」


「こういう時は僕の名前を呼んだ方がいいよ」


いつの間にか、本当にいつの間にかオレの背後には正がいた。


オレは笑みを浮かべて口を開く。


「助かる」


「どういたしまして。それで、僕はどうすればいい? ここでは君がリーダーだ」


「そうだな。お袋を少しの間だけ止めてくれ。幻想種を先に倒す」


「了解したよ」

オレは幻想種達がいる扉に向かって走り出した。茜が展開した魔術の矢を隠れながら放ってはいるが、相手の数が多い。第四階層から現れた幻想種なのかもしれない。


術式をいくつも展開して幻想種に向かって放つ。もちろん、幻想種にダメージを与えることが出来そうな高火力の魔術ではないが、目的が違う。


魔術は幻想種の手前で炸裂して大きな光となる。オレはそれと同時に術式を展開。障壁魔術を幾重にも作り出した。


これで少しは時間が稼げるはずだ。


「茜、下がれ。これからとっておきの裏技を」


『マスター、その必要はありませんよ』


オレの言葉をレヴァンティンが塞ぐ。オレは少し驚いてレヴァンティンを見た。レヴァンティンに何か策があるというのだろうか。


『ここに私と隼丸が揃っている以上、マスターが危険を犯す必要はありませんから』






爆発。


休んでいたオレらを襲ったのはまさにそれだった。


すかさずオレの横に座っていたアルネウラと優月の手を握る。二人はすぐさま握り返してきたのですぐにシンクロを行った。


二人が体の中に入ってくる感覚と共に次にやるべきことが見えてくる。


オレ達を襲ったのは曲射された砲撃。しかも、空から。


オレは空を見上げる。そこにはいつの間にか航空艦の姿があった。その上には何機ものフュリアスの姿が見える。


「おいおい、どういうことだよ。あんな所から曲射による精密射撃なんて出来るわけがないだろ」


「悠聖、考えるのは後よ。フェンリル、あなたの力を私に貸して」


またまた放たれた射撃に対し、冬華はフェンリルから雪月花を抜きはなった。そして、向かって来た射撃を強制的に曲げる。だが、一発が限界。続いて放たれた射撃に冬華は大きく後ろに下がって避けた。


射撃が地面で弾け、冬華を吹き飛ばす。


「ちょっとだけ時間を稼いでくれ!」


オレはすかさず通信機にデバイスを繋げる。相手はこちらを狙っているみたいだが、こういう時には周の切り札を使えばいい。


周が作り出した史上最高のデバイス。デバイスという部類の中だと文句なしに最強クラスだろう。

「第76移動隊臨時指揮官白川悠聖より学園都市内の『GF』全部隊に通達する。今現在より配布したデバイスの使用を許可する。各々が考えて使用し、学園都市を守れ!」






「配布したデバイス?」


リコは走っていた足を止めた。そんなデバイスは周から渡されていないからだ。だけど、話は聞いたような気はする。


最後の最後の最終手段であると。


周囲にいる学園都市の『GF』部隊員が新たなデバイスを取り出す。それはまるで宝石のようなただのコアのみの存在だった。そして、デバイスを使用する。


その瞬間、リコは何故最終手段なのかを理解した。何故なら、学園都市を覆い隠すように不思議な色をしたクリスタルのようなドームが作り上げられていたからだ。


それは、空にある航空艦からの射撃を全て受け止め散らしている。


「単一能力型のデバイス? でも、それぞれを繋いで回路として巨大な防御魔術にするなんて」


デバイスのことをあまり詳しく知らないリコでさえわかる。それがどれだけありえないということなのかも。


デバイスの種類の一つである単一能力型のデバイスは強力な能力を持っている分、柔軟性は全くない。そのはずなのにデバイス同士でネットワークを繋げていた。


「天才」


リコの口からはただそれだけしか出なかった。






「えっ?」


レーヴァテインが不思議な色をした全天を覆うクリスタルによって阻まれた。


光はゲートに向けていたレーヴァテインを下ろす。


「これは一体」


「光、無事だったか」


空を見上げている光に孝治が声をかける。全速力で来たからか息は荒く汗をかいている。


「大丈夫やで。やけど、あれは何?」


光は空を覆うドーム状の何かに指差した。孝治はそれを一瞥してゆっくり頷く。


幻想展開ファンタズマゴリアだ」


「ファンタズマゴリア? それって海道の防御魔術やないん?」


「そうだな。だが、幻想展開と書いてファンタズマゴリアと呼ぶデバイスがあるんだ」


「ここはボケるところ?」


「怒るぞ」


孝治は小さく溜め息ついて空を見上げる。天魔は展開された幻想展開ファンタズマゴリアによって完全に進路を阻まれていた。


むしろ、何体かはゲートの方向に帰っている。


「周が作り出した最強のデバイスだ。本来なら個人、又は局所的に守るはずだった。それなのに、結果はこれだ」


孝治は空を見上げて笑みを浮かべる。


そこにあるのは周が作り上げた最高傑作。


「あいつは、昔から変わっていない。あいつは変わったと思っているが、根っこからは何も変わっていない。そう、あいつはただ、守りたいだけなんだ」






「数が多いですね」


向かってきたゲルナズムの頭部に都はレイピアとなった断章を突き刺した。断章はゲルナズムの甲羅を軽々と貫いている。そのまま甲羅を軽々と割り、上から落ちてきたゲルナズムを簡単に斬り裂いて後ろに下がった。


エンシェントドラゴンの口が赤く光るのを見て鞘を戻し、断章を杖に戻して構える。それと同時にエンシェントドラゴンが味方を巻き込むように炎を放ってきた。


だが、それは断章によって打ち消される。


打ち消された瞬間に亜紗が前に飛び出し、握り締めていた七天失星を振り抜いた。七天失星はゲルナズムを軽々と裂いて亜紗は次の目標に向かう。だが、数が多すぎる。


「見える、範囲に、クモが120。竜が6。蛇が8」


「ゲルナズムの数だけおかしくない?」


体力が戻ったメグは幻想種との戦いに戻っている。だが、いや、やはり数が違いすぎる。誰もが少しずつ後ろに下がりながら戦っている。


メグの持つ炎獄の御槍がゲルナズムに受け止められる。だが、メグはすかさずその手に炎を宿してゲルナズムの甲羅に拳を叩きつけた。


甲羅にひびが入り、受け止められていた炎獄の御槍がゲルナズムから離れる。メグはすかさずそこに炎獄の御槍を全力で突いた。


ゲルナズムの体に炎獄の御槍が突き刺さりゲルナズムを焼き尽くす。


「キリがないわよね。というか、いつになったら終わるの?」


「せめて、魔術師がもう一人いれば」


都の小さな呟き。それと同時に都の後方から紫電を纏う槍が頭上を通り過ぎ、ゲルナズム3体とエンシェントドラゴンを貫いていた。


都は振り返る。そこには幾つもの簡易杖を握り締めているシリーズ03の姿があった。


「て、手伝います。た、助けてくれた、お、お礼に」






「茜、大丈夫か?」


オレは弓形態の隼丸を握っている。握っているというより茜の左手にオレの左手を重ねていると言った方がいい。


右手は隼丸に矢の代わりにレヴァンティンを使っているためその柄を握り締めている。


茜は小さく頷いた。


「大丈夫だよ。えへへっ」


茜が嬉しそうに笑みを浮かべる。すでに作り出した障壁魔術は残り一つ。もうすぐ障壁魔術は破られるだろう。


「お兄ちゃんの体って暖かいね」


「お前は痩せすぎじゃないか? もう少し鍛えないと第76移動隊は辛いぞ」


「大丈夫だよ。だって、みんながいるから」


オレ達は笑みを浮かべる。そして、しっかりとお互いの武器を握り締めた。


レヴァンティンと隼丸。その二つはお互いに共鳴機関がついているらしく、隼丸によってレヴァンティンを放てばその共鳴機関が力を発揮するらしい。


それによって魔力を込めれば込めるほど強力なものとなる、らしい。


らしいというのは詳しくないからだ。本当にそれが正しいかなんて知らない。だけど、レヴァンティンが嘘をつくとは思えない。


障壁魔術が砕け散る。まるで雪崩のように幻想種がやってくる。オレ達は同時に息を吐いた。


「お兄ちゃん」


「茜」


オレ達は頷き合い、そして、ありったけの魔術を叩き込んだレヴァンティンから手を放した。


その瞬間、オレ達は吹き飛ばされていた。茜を受け止めながらオレは尻餅をつく。


「った。何が起きたんだよ」


オレは痛みに顔をしかめて前を見る。そこには、ただの通路が広がっていた。


オレは思わず固まってしまう。だって、幻想種が一撃だぞ一撃。今まで苦労して倒していたのに一撃だなんて。


「対策を立ててきたオレは何なんだろうな」


「お兄ちゃん、どうかしたの?」


茜が上目遣いで見てくる。オレは小さく溜め息ついて立ち上がった。とりあえず、後方では戦闘がまだ続いている。


オレは小さく息を吐いて呆れたように呟く。


「回収に行くのが面倒だな」


オレは苦笑しながら放たれたレヴァンティンを取りに行くために走り出した。


後二話で戦いが終わります。ようやく終われます。長かった。

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