第二百十四話 最大火力
身内の不幸や精神的に不安定な時期がありほんの少しだけ休めていましたが、休めたので更新を再開します。おそらく、十一月の内に終わることはできませんが、十二月の初めには第二章は完結出来るはずです。
レーヴァテインの数がぶれる。
巨大な光の翼の出現以降、光はレーヴァテインのコピーの数を上手く制御出来なくなっていた。
多く作る訳じゃない。だけど、いつの間にか数が少なくなっている。コントロールがあまり変わっていないという点だけが僥倖かもしれないが。
光は苦悶の表情を浮かべながらレーヴァテインを一気に展開していた全てを放った。今までで倒し逃した全ての天魔をレーヴァテインのコピーが貫き爆発する。
光はさらにレーヴァテインをコピーする。さっき放った分を補うように。
「コピーの生成が安定せえへんな。あの翼に魔力が吸い込まれているみたいやわ」
小さく呟きながら光はすかさずレーヴァテインを放つ。ゲートから出て来る敵の数はだんだん増えており、このままあの光の翼が増えていけば辛くなるのは明白だった。
だが、光は諦めない。レーヴァテインをゲートに向けたままレーヴァテインのコピーをゲートに向かって放つ。
「絶対に地表には行かせない。学園都市にあんたらみたいな奴らは入ってきたらあかんから。やから、消し飛べ!!」
レーヴァテインが一気に放たれる。その数は今までより苛烈に、そして、強力になっていた。
「ブラックレクイエム、討ち漏らした敵をお願い!」
楓の言葉と共にブラックレクイエムが自動で魔術陣を展開し、光を射撃する。それにより、楓が放つ八つの光線から逃れた天魔を貫いていく。だが、数に差がありすぎる。
楓は一撃の高さは高いが相手の数が多ければ多いほど討ち漏らしが多くなる。さらには、巨大な光の翼によってかなり弱体化している。
楓は額を流れる汗を袖で拭う。
「準備は出来ているのに、準備は出来ているのにチャージをする時間が」
楓は呟きながら砲撃を行う。だが、だんだん討ち漏らしが多くなっていく。
「バレット、セット!」
楓の言葉と共にいくつもの光弾が討ち漏らした天魔に向かって放たれ貫いた。だが、その間にも天魔は大量にやってくる。
楓はカグラを握りしめる。
このままじゃマズいのは楓も分かっている。巨大な光の翼がなければ負けないとは思うのだが。
いつもなら誰かがチャージの時間を稼ぐ分、こういう状況には弱い。
「せめて、ルネがいたら」
楓の砲撃が天魔を穿つ。だが、その砲撃をかいくぐる霧が密集したかのような天魔の姿があった。その姿を見て楓は唇を噛み締める。
天魔の中でもかなり特殊なファントムミストという天魔だ。個体数が少ないというのもあるが、特殊なのはその特性。
熱量に関する攻撃を受け付けないのだ。つまり、炎、光、雷、闇属性はほぼ全く効かなくなる。一応、斬撃のような斬る攻撃は受け付ける。ただ、炎と光は確実にダメージを受けない。
つまり、楓は光属性の砲撃を得意とするため対ファントムミストには接近戦しか出来ないのだ。
「こういう時にルネがいてくれたら」
「呼んだ?」
その瞬間、ファントムミストの体が何かによって両断された。
楓は声のした方向を振り向く。そこには、デバイスをつけた手袋をしているショートカットの女の子の姿があった。
「やあ、君ともあろう神剣使いがここまで押されるなんて珍しくない?」
「うるさい。私だってあの翼さえ無ければ圧倒出来たんだから」
そう言いながら楓は砲撃を放つ。ルネはそれを笑みを浮かべながら見ており、そして、魔術陣を展開した。
「『神楽乱舞・崩落打破』のチャージは?」
「準備は出来た。だから、30秒お願いできる?」
「任されました。リュリエル・カグラに変わってこの私、ヤクモ・ベガルタが相手になるよ」
ルネが魔術陣を展開する。展開した魔術陣がさらに魔術陣に重ねられいくつもの魔術陣が重なり合っていく。さらに、重なり合った魔術陣はさらに規模を広げ、大きく、そして、分厚く展開された。
その魔術陣が展開できたことを確認して楓は砲撃を止める。それと同時に雪崩のごとく天魔が侵攻を開始する。
だが、その瞬間に魔術陣は発動した。
「結界術八雲式第八星雲。式名『ベガルタ』」
ルネの言葉と共に魔術陣が魔術を発動させる。だが、天魔はそんなことを気にせず侵攻し、
溶けて消え去った。
視力の高い人物なら見えるかもしれないゲートを取り巻く魔術陣。ルネの発動した魔術はゲートを囲む結界術式だった。だが、結界術式とは少し違う結界術でもある。
それを知っているのは数少ないが、その能力を知っているのはルネの上司でもあるアルエル・ロワソと楓に冬華の三人。
「ルネ、チャージを開始するから」
「いいよ」
ルネがさらに術式を展開する。
ルネの術式の展開の仕方は独特だった。その手に取りだした筆を握り締め、空中に走らせる。それと共にそれをなぞるように魔術陣が浮かび上がり効力を発揮する。だが、描くのは筆だけではない。時には筆を握っていない手や足を動かして複数の魔術陣を展開する。もちろん、通常の魔力を使った魔術陣の展開も同時並行して行っていく。
複数の魔術陣を同時に組み合わせることで大きな力を発揮させることのできる技能。それは個人の所有するレアスキルとでも言うかのような難易度を誇り、その威力は絶大。ルネはそれをいとも簡単に成し遂げていた。
その近くで楓がカグラを構えている。
「我が名、木村楓の名において、神剣カグラに命じる」
その瞬間、カグラの穂先を中心に魔術陣が展開された。その魔術陣は大きく、そして、八つの円が回りながら中心にある魔術陣である円を囲んでいる。
その全ての円の中心では魔力の収束が始まっていた。
「世界を清めし神楽の力、今この地において顕現せよ。存在は粒子に、敵は灰燼に、世界を清め、世界の崩落を進めし存在を打破する力を」
詠唱が続く間にだんだん収束する魔力の塊は大きくなっていく。その大きさは次第に広く、そして、視界を埋め尽くすほどになっていた。
「星の力を今ここに、原初の力を今ここに、始まりの力を今ここに、神の力を今ここに!」
カグラの穂先が震えだす。これ以上の収束は不可能であるという合図。それをカグラは示している。
楓は叫んだ。
「神剣解放! 『神楽乱舞・崩落打破』!!」
その瞬間、光が視界を埋め尽くした。九つの光がほんの刹那の間に光を包み込む。
楓の持つ最大にして最強の神剣解放攻撃。神剣であるカグラしかできない最大の砲撃奥義でもあった。
カグラから蒸気が噴き出す。カグラ内部にある熱を外に逃がしているのだ。楓は小さく息を吐いて空を見上げた。
そこにはゲートの姿はない。『神楽乱舞・崩落打破』の光がゲートごと天魔を消し去ったのだ。そこにはファントムミストもいたであろうが、光の奔流の前では消し去られたらしい。
楓は未だに現れている光の翼の方を向く。そこには四肢をもがれたリーゼフィアとリアクティブアーマーを付けた対艦刀を握り締めるダークエルフ。そして、ようやく到着したイグジストアストラルの姿があった。
「楓?」
その方向を向いている楓にルネは声をかける。
「私は見届けるよ。全ての選択を。それが、カグラを持った運命だから」
「楓、何を言っているの?」
楓の言葉にルネが首をかしげる。対する楓は少しだけ笑みを浮かべた。
「何でもない。ただの独り言だから」
『ひと、ごろし、め』
声が聞こえる。声が聞こえるけど意味がわからない。一体何を言っているのかわからない。僕の耳がおかしくなったのか相手の口がおかしくなったのか。
そんなことはどうでもいい。本当にどうでもいい。
ただ、こいつを殺せばいい。四肢は千切った。精神感応がないのは残念だ。もし、あったなら今頃悲鳴で綺麗な声を聞かせてくれていただろうに。
『ははおや、も、ちちおや、も、ころすの、か』
殺す。殺してやる。殺して殺して殺し尽くしてやる。お前らが生きていいことなんてない。
「死ね」
持っていた対艦刀を振り下ろそうとする。だが、その対艦刀は根元から折れていた。
いつ折れた? 関係ない。折れたということは敵が来たということだ。敵が来たということは戦えるということだ。殺せる。もっと、もっと殺せる。
振り返った。振り返ってその先を見る。そこには、背中が翼のように展開している蒼鉛色のフュリアスがいた。
イグジストアストラル。最も硬いフュリアス。
『悠人』
声が聞こえる。でも、意味がわからない。だから、殺そう。誰が乗っているかわからない。だから、殺そう。
『返事をして! 悠人!』
「うらぁっ!!」
対艦剣を取り出して振り下ろす。だけど、イグジストアストラルは簡単に避けた。
『悠人! 私だよ! 鈴だよ! お願いだから、返事をして!!』
「殺す。殺す。殺して、殺して、殺してやる」
口から声が漏れる。殺せばいい。全て殺せばいい。そうすれば、そうすれば、
きっと、ルナは寂しくないから。
残る戦いは五つ。光のゲート攻防戦。中央の広場における防衛戦。地下におけるシリーズとの戦い。悠人との戦い。そして、周達の戦いです。予定では後、15くらいになると思います。そこまでのお付き合いを。
それと、ルネの武装ですが、彼女の戦い方はとても面白いものになっています。後々書く時には凄まじい戦いになるんじゃないかなと。