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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第二章 学園都市
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第二百九話 リベンジマッチ

目の前に広がるのはリーゼフィアに向かって突撃する光の翼を生やしたダークエルフ。その姿は天使のように神々しいわけではなく、悪魔に取り憑かれたかのような突撃だった。


その様子をスコープ越しに見つめていた浩平が小さく溜め息をつく。


「この距離から無理かよ」


浩平がいるのはダークエルフから100mと離れていない建物の屋上。フュリアスの弱点でもあるエネルギー機関をここから狙えないか試しているのだが到底無理なようだ。


一番の問題は胸部と背部にあるリアクティブアーマー。リアクティブアーマーの前ではフレヴァングですら収束砲でないと貫けない。そして、それを使えば悠人は十中八九死ぬ。


「リース、そっちはどうだ?」


『無理』


すぐさま即答が返ってくると同時に光の剣がリアクティブアーマーに当たって砕け散るのが見えた。


リースの攻撃ですらリアクティブアーマーは破壊出来ない。かくなる上は、


「天王マクシミリアンに話しかけるしかないか。ストライクバーストの火力なら何とかなるだろうし」


「ようやく見つけたぞ」


その言葉に浩平は振り返った。そこには雨霰セントリアですらかき消した槍使いの男。今回は一人のようだ。


浩平は振り返りながらフレヴァングを構える。


「暇人なんだな。俺を捜すなんて」


「個人的な用事だ。もちろん、すぐに終わらせる。お前を殺すことでな!」


男が地面を駆け出した。そのまま手に持つ槍を突いてくる。最速で最速の突きを放つ。使い方としては十分に有効であり、避けるのは難しい。


だから、浩平は素直にフレヴァングを突き出した。フレヴァングと槍がぶつかった瞬間に浩平は体を捻り、上手く懐に入り込む。


そして、フレヴァングの銃床を男の顔面に叩きつけた。男は数歩後ろに下がって顔を押さえながら浩平を睨みつける。


「貴様!」


「そう怒るなよ。こっちだって急いでいるんだからさ」


その言葉と共に浩平の周囲にいくつもの銃が現れる。大小様々な形をしているが、共通しているのは浩平が操っているということ。


男は笑みを浮かべながら槍を構える。


「学習しないのだな」


「学習? あいにく、俺はバカだからな。俺が出来るのは射撃と竜言語魔法だけ。でも、それだけでいい。俺はバカだから、一つのことに関しては極められる」


その言葉と共にフレヴァングから弾が放たれた。壁を跳ね返って迫る弾丸を男は槍で弾き、弾丸は地面に叩きつけられる。


その事実に男は驚いたように目を見開いていた。


「ちょっとは減衰するけど、これくらいなら大丈夫だな」


「何をした!?」


男の言葉に浩平は笑みを浮かべて答える。


「シェルバレット。外殻弾だっけな、日本語だと。魔力の弾丸の上から魔力の殻を被せる。その分魔力を消費するし、一撃が大きくなるから誘導は難しくなる。だけど、効果は抜群だろ?」


男は浩平を睨みつける。男の持つ槍は相手の魔力を感知して打ち消すもの。相殺というのが正しいかもしれない。


だが、シェルバレットの場合は弾丸を包む殻が打ち消されるだけで中の弾丸は打ち消されない。それが浩平の考えた対策の一つだ。


「舐めるな、小僧」


「小僧を舐めるな、大人。俺達はお前達の思い通りに行かないものなんだぜ」


「ならば、力で抑えつければいいだけの話だ!」


男が加速する。槍を握り締め、浩平との距離を詰める。浩平はフレヴァングを握り締めながら周囲に浮かぶ銃から弾丸を放った。


四方八方から弾丸が男を狙う。対する男は槍を振るった。飛んでくる弾丸を正確に、かつ的確に叩き落として距離を詰める。


浩平はそれがわかっているためフレヴァングの引き金を引く。


実力者が相手の場合は話にならないくらい直線射撃は当たらない。当たらないからこそ普通は不意打ちか狙撃を行う。


男はフレヴァングから放たれた弾丸を槍で打ち払おうとして、その場から吹き飛ばされた。


「なっ」


驚きながらも弾丸を気にしながら上手く着地する男。


浩平はニヤリと笑みを浮かべた。


「どうだ。新開発の弾丸、ブラストバレットは」


「ブラスト? そうか、この槍に反応して」


「違うな。せっかくだから説明してやるよ。ブラストバレットは二重の殻に包まれている。その内一つが傷つけられたなら傷つけられた方向に爆発が襲いかかるっていう弾丸だ」


つまり、男が吹き飛ばされたのは槍によって一番外の殻を消して、二番目の殻を傷つけたから。だから、浩平は無傷で存在している。


「シェルバレットとブラストバレット。お前はこの弾丸の嵐から耐えきることが出来るかな?」


「悪いが、遊びに付き合っている暇はない!」


男が地面を蹴る。浩平が晒した手札はかなり強力だ。シェルバレットとブラストバレット。その二つがあれば確かに男を封殺が可能だろう。


だが、それはブラストバレットについて話していなければだ。話したということは技の能力を教えたということ。それだけでかなりのデメリットでもある。


男は地面を蹴る。対する浩平はフレヴァングの引き金を引いた。そして、弾丸がフレヴァングの銃口から放たれる。


男はとっさに弾丸を回避して浩平に迫る。対する浩平は周囲の銃からシェルバレットを放った。


男はすぐさま槍を使ってシェルバレットを受け流し、浩平に向かって一歩を踏み出す。


それに浩平は笑みを浮かべた。


「フルバースト!」


男に向かって浩平が全弾発射する。男はニヤリと笑みを浮かべて槍を振り回した。


浩平がフルバーストによって放った全ての男を狙った弾丸が槍によって消え去る。だが、そんなことは浩平も承知している。


だから、浩平は笑みを浮かべたままフレヴァングを向けた。


男はその笑みに少し驚きながらも前に踏み出して、背中にシェルバレットが直撃した。


「なっ」


男の体勢が崩れた瞬間に浩平はフレヴァングの引き金を引く。男はとっさに槍で払い、爆風によって吹き飛ばされた。


「何を」


「誰がシェルバレットをリフレクト出来ないって言った? フレヴァングから最初に放った弾丸はシェルバレット。お前は勘違いしてブラストバレットだと思ったみたいだよな?」


フレヴァングから放たれたシェルバレットは建物にぶつかって跳ね返った。もちろん、シェルバレットの跳ね返りを予測していた浩平は直接当たるような軌道に乗せなかったのだ。


そして、フルバーストの際に狙ったのは男にダメージを与えることではなく跳ね返ったシェルバレットに気づかせないため。そして、跳ね返ったシェルバレットの軌道を変えるため。


「シェルバレットすら予測出来るというのか!?」


「言ったろ。俺はバカだって。俺が極めたのは射撃。狙撃手スナイパーの中なら負けない自信はあるぜ」


男は歯噛みする。シェルバレットにブラストバレットは厄介だし、シェルバレットとブラストバレットの見分けがつけれない。


さらにはシェルバレットを避けても通常射撃で軌道を変えてやってくる。


男は槍を構えた。そして、地面を蹴る。


浩平はとっさに引き金を引いて、


男が距離を無視して浩平の隣まで滑り込んでいた。


浩平の視界には足から血を吹き出している男の姿。必死に痛みを堪えて浩平に向かって槍を振るっている。


決死の覚悟による瞬間移動ショートジャンプ。男は全力で槍を振り切った。だが、手応えはない。


何故なら、浩平が槍に当たってすらいないのにフレヴァングを手放して吹き飛んでいるからだ。


男は気づく。ブラストバレットの特性を思い出して。


「オーバードライブ!」


浩平は笑みを浮かべながら自分のデバイスを握り締めて叫んでいた。


「オーバードライブ!」


対する男も叫ぶ。だが、男は足を怪我している。有利か不利か言えば完全に不利。


浩平はその手にフレヴァングを呼び戻す。そして、着地しながらしっかりと男に狙いを定めた。


「フルバースト!」


浩平が使える全ての銃口が男に向かって射撃を行う。男は槍を握り締め、弾丸を消し去ろう振り切り、そして、槍が砕け散った。


「何故だーっ!!」


男の体が弾丸の雨に呑み込まれる。


浩平は小さく息を吐いてフレヴァングを下ろした。


「そりゃ、どんなものにも最大許容量があるだろ? そういうことだ」


そして、浩平は腰を下ろす。それと同時に浩平の上を何かが通り過ぎた。振り返ってみればそこにはイグジストアストラルの姿がある。


「さてと」


浩平は小さく息を吐くとダークエルフに向かってフレヴァングを構えた。


「リアクティブアーマーを早く剥がしてくれよ。そうしたら、一撃で機能停止にしてやるからよ」


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