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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第四十七話 VS鬼

オレは自分を器用貧乏だと思っている。白百合流を主に使うが、状況によっては八陣八叉流だろうが白楽天流だろうがなんだって使う。


ただ、最強ではないはずだ。


オレの攻撃をかいくぐり足を払いながらレヴァンティンを鞘から抜き放つ。


鬼はすかさず飛び上がって回避をするが、そこに立ち直った亜紗が斬りかかった。


鬼は刀を弾いて後ろに下がる。


「亜紗、無事か?」


亜紗はこくりと頷いた。


オレはレヴァンティンを右手で構える。


「時間は後約三分。いけるな」


亜紗の頷きと共にオレ達は地面を蹴った。


亜紗が鬼の右から刀を振り上げて振り下ろす。オレは右手でレヴァンティンを下から斬り上げた。


この場合、前に出るか後ろに下がるかだが、鬼は空に飛び上がった。


「撃ち落とすで!」


中村の言葉に空を見上げ、亜紗の手を取りながら全力で地面を蹴る。


見上げた空には星空を背景に数万というレーヴァテインのコピーが浮かんでいたからだ。しかも、全てが全力全開。


「跪け!」


レーヴァテインが一気に放たれた。オレはすかさず亜紗も守るように防御魔術を展開する。


鬼を中心に太陽が出来上がった。


おそらく、デバイスを操作して魔力ダメージを与えるものではなく、物理ダメージを与えるものにしたのだろう。本来なら違反だが、こういう場合は黙認出来る。


レーヴァテインの爆発で鬼が地面に叩きつけられる。オレは防御魔術を切った。


「いくぞ」


亜紗と二人で地面を蹴る。


レヴァンティンを鞘に収めて鬼との距離を詰める。このまま紫電一閃を叩き込む。そう思った瞬間、鬼の口が開いた。


「っつ、まずい」


とっさにストックしていた防御魔術を多重に展開する。だが、鬼から放たれたダウンバーストはそんな防御を簡単に砕いた。


オレと亜紗が吹き飛ぶ。


ダウンバーストの攻撃範囲はさほど大きくはないが、避けるには距離が狭すぎた。


とっさに使用した覚醒魔術で気絶するのはなかったが、動くには二十秒ほど必要だ。


だが、鬼は待ってくれない。


鬼はオレの胴体を掴んだ。そのまま力を込める。


「あっく」


『貴様らは弱い。さあ、我が手で葬ってやる』


そのまま凄まじい力がオレの体に加わった。


防御魔術がほとんど意味をなさない。体が限界である悲鳴を上げている。このままじゃ、死ぬ。


「させない!」


そんな時、由姫の声が聞こえた気がした。


鬼の手が唐突に外れ、落下するオレは誰かに受け止められた。


「けほっ、けほっ。由姫、か?」


オレは由姫に抱っこされていた。由姫はオレを地面に置く。


「大丈夫だよ。お兄ちゃんは私が守るから」


「駄目だ。お前が叶うような相手じゃ、いつっ」


体が悲鳴を上げる。どこかにひびが入ったみたいだが、そんな掠り傷で止まっている暇はない。


「鬼の相手は、オレだ」


『そうか。貴様にとって大事なのはその人間か。なら、貴様の前で八つ裂きにしてやろう』


鬼が身構える。だが、由姫は笑みを浮かべていた。


「由姫、今すぐ下がれ。オレが」


「お兄ちゃんは私を信じれない?」


由姫が身構える。八陣の構えでも、八叉の構えでもない。これは、確か、


「私はお兄ちゃんを信じている。だから、私も信じて。里宮本家八陣八叉流継承者白百合由姫。行きます」


里宮本家八陣八叉流。


それは八陣八叉流の中でもかなり特別な名前だ。


八陣流と八叉流が合わさった八陣八叉の極意の全てを知る里宮家にのみ伝えられる八陣八叉流の最高峰。


里宮本家が本当に認めた弟子にしか習うことを許さないもの。


由姫はその構えをしていた。


『その構え。崩しの構えか』


鬼が驚いたように声を上げる。オレからすれば鬼が知っていることに驚いていた。


里宮本家八陣八叉流には四つの構えがある。その構えを基本に戦うのだが、崩しの構えはその中でも一番有名だ。


「お兄ちゃんには使えないけど、あなたなら使える」


肉を切らせて骨を断つというわけではないが、カウンターの一撃で勝負を決める構え。


わかる人が見ればわざと作られた隙は死の誘い。


『なら』


鬼がまたダウンバーストを放った。いや、放ったはずだった。


キーンというかん高い音が鳴り響きダウンバーストは発動しない。オレはニヤリと笑みを浮かべたまま取り出した小さな鐘を鬼に向ける。


「ダウンバーストを使えるお前にオレは何の対抗もしていないと思ったか?」


『崩壊の鐘か』


「ああ。衝撃を全て打ち消す鐘。使用条件が厳しいからさっきは使えなかったけど、今回は成功だな」


『小癪な。だが、我を止めることは出来ない。貴様らでは我を倒せない』


「だろうな」


だから、オレはニヤリと笑みを浮かべた。


「後一分、付き合ってもらうぜ」


崩壊の鐘を戻しながらレヴァンティンを左手で握りしめて地面を蹴る。由姫も同じように地面を蹴った。


オレはダウンバーストを使おうとする。だが、そこに放たれた黒い矢が鬼を貫いた。


レヴァンティンが鬼の腕を斬り飛ばす。鬼はすかさず反撃をしてくるが、由姫がそれを受け流しながら肘を鬼に叩き込んだ。そのまま足を払って逆の肘を叩き込む。


鬼は勢いよく吹き飛ぶが、すぐに着地する。


「来るぞ」


オレの言葉と共に鬼がダウンバーストを収束させたらしきものを放ってきた。


由姫は腰を落とす。


「竜昇拳!」


そのままエネルギーの塊を空に殴り飛ばした。こればっかりはオレも鬼も呆然としている。


鬼が放ったのはある意味魔力そのもの。それを殴り飛ばすなんて非常識にもほどがある。


「お兄ちゃん!」


一瞬後ろを振り返った由姫が叫んだ。


オレは由姫を抱えて左に跳ぶ。


オレ達の横を抜けるように音姉が走った。そのまま鬼に近づき、


「白百合流滅び斬り『鬼払い』!」


音姉の刀が振り切られ、二十もの剣閃が鬼の体を斬り裂いた。


「よし」


オレは思わずガッツポーズを取る。いや、取ってしまった。だから、気づかなかった。


「お兄ちゃん!」


由姫がオレの体を押し飛ばす。


どうして、と思う時間はなかった。


どこからか飛んできた光が由姫を直撃し、由姫を吹き飛ばしたから。


「由姫ーッ!」


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