第二百四話 ダークエルフ
対艦剣が火花を散らす。握り締めた、じゃなくて、握り締める感覚のある対艦剣がリーゼフィアを吹き飛ばした。
僕は対艦剣を握っていない方の拳を握り締める。
空を自由に飛べないということはあっても、エクスカリバーよりも地上を動くことに関してはダークエルフの方が遥かにいい。
リーゼフィアがエネルギー弾を放ってくるけどダークエルフの追加装甲であるリアクティブアーマーが受け止めてくれる。
「リアクティブアーマーは最大許容値の8%。まだまだ大丈夫」
対艦剣を握り締めてリーゼフィアに斬りかかる。リーゼフィアは素早くブースターを起動させて対艦剣を避けた。だけど、僕は素早く対艦剣を投げつける。
リーゼフィアは対艦剣で僕が投げた対艦剣を弾き、僕は前に駆けた。
対艦刀を取り出して柄を握り締め、居合い斬りのように対艦刀を振り抜いた。宙を舞う対艦剣を握り締める漆黒の腕。
AEBAの腕が対艦刀によって斬り飛ばされるのはありえない。だけど、現実にはそうなっている。
AEBAは斬撃に対して強いがAEWCと違って絶対の抵抗性を持っているわけじゃない。対艦刀に最大限まで許容量一杯にエネルギーを込めた場合、AEBAを斬り裂くことが出来る。ただ、許容量一杯なんて普通は出来ない。
だから、僕の握る対艦刀はリアクティブアーマーのエネルギーを利用していた。リアクティブアーマーに繋がった線。これをバイパスとして対艦刀にエネルギーを許容量一杯まで溜め込んだのだ。
振り抜いた対艦刀が火花を散らす。たった一回限りの攻撃だが、リーゼフィアを牽制するには十分な攻撃だった。
リーゼフィアが距離を取る。僕は対艦刀を投げ捨てて対艦剣を掴んだ。
「もう諦めろ! あなた達の負けだ!」
『何を言う!? 未だにリーゼアインもリーゼツヴァイも動ける』
だが、リーゼアインもリーゼツヴァイも動く気配がない。例え動けたとしてもリアクティブアーマーの前には通常の攻撃は効かない。
僕は前に踏み出した。そして、対艦剣を握り締め、リーゼフィアに向けて振り上げようとした瞬間、嫌な予感が体に駆け巡った。
すぐさま動作を中断してその場から跳び退く。そして、リーゼフィアがいた場所にエネルギー弾が突き刺さった。
ただのエネルギー弾じゃない。突き刺さったエネルギー弾が炸裂する。
『ちぇ、外れたか。まっ、いっか。隼人さん、無事ですか?』
その言葉と共に新たな純白のコートを着た機体が現れる。その背中には漆黒の翼に見立てたブースター。それが二機。
それに、この声は聞き覚えがある。
「この声、周さんのクラスメートの」
『おうよ』
頷きの声。新たに現れた機体をどう言えばいいかわらない。今まではリーゼアイン、リーゼツヴァイ、リーゼフィアだったが、新しい機体は今までとは少し違う。
『まあ、お前には恨みもないけどよ、ちょっとばかし静かにしていてくれ。俺達は戦うことに喜びを見いだしているわけじゃないからな』
「そんなことに応じるとでも?」
『困ったな。そんな時代遅れの機体でこの新リーゼアインに勝とうなんて考えるなんて』
『一応、あのダークエルフは第三世代がベースだけど性能は普通に現役だからね。中身もカリカリにいじっているけどね』
『そんなことを言うなって』
どうやら新しく現れた二機はリーゼアインとリーゼツヴァイ。そこに倒れているのも同じ名前だけど、新しく来たのが最新機というわけか。それに、この二人は僕の動きをFBSで見ているはずだ。隠しギミックの一部も含めて。
こちらの手は一部わかっているだろうけど、相手の手は全く分からない。はっきり言って少し困る事態だ。
『とりあえず、戦おうぜ。フュリアス同士の真剣勝負。お前の機体がエクスカリバーじゃないのが残念だけど、俺達は本気で戦いたかったんだよ。実戦をな』
「迷惑なんだけどな。わかった」
僕は対艦剣を身構える。そして、リーゼフィアを守るリーゼアインとリーゼツヴァイを睨みつける。数の差はこちらが不利。本当ならルーイくらいは援軍として欲しいけど、今の状況じゃ難しいだろう。だから、一人で戦わないといけない。
せめて、鈴かリリーナがいてくれれば。
「行くよ」
僕は地面を蹴る。リーゼアインは対艦剣を、リーゼツヴァイはエネルギーライフルを構えた。基本的な分け方だ。でも、ダークエルフのリアクティブアーマーならどんな攻撃も無意味。
地面をかける。そのまま対艦剣を投げつけた。リーゼアインはその対艦剣を撃ち払い、リーゼツヴァイがエネルギー弾を放って来る。エネルギー弾はリアクティブアーマーで受け止め、すかさず対艦刀を取り出し振り切った。
対艦刀は対艦剣によって受け止めらる。だけど、その瞬間に足についているスラスターを利用してリーゼアインの腹部を蹴りつけた。だが、その蹴りはリーゼツヴァイの腕によって受け止められる。
ブースターを噴射しつつ体を捻りスラスターと出力を全開にして僕はリーゼツヴァイの頭部を蹴りつけた。その瞬間には対艦剣が迫っているけど、落ちてきた対艦剣を掴み、寸前で受け止める。
二体の動きが止まった瞬間、僕は二体を蹴り飛ばして大きく距離を取った。
傍から見ていたら確実におかしな動きをしているだろうなとは思う。リアクティブアーマーを使ったエネルギーによるスラスターはメインブースターに匹敵する出力を出せるためこんなおかしな三次元攻撃が可能なのだ。本来なら抜刀斬りまで持っていきたいものだけど、そこはリアクティブアーマーの弱点によって使用できない。
対艦刀を戻し、対艦剣を構える。
『なんつう機動だよ。あんな動きを出来るのは本当にフュリアスか?』
『最大出力はこっちの方が上のはずなんだけどね。やっぱりあのリアクティブアーマーかな? 健さんはどう思う?』
『どう考えてもそうだろ。真人も同じ意見のくせに』
「通信内容が漏れてるけど?」
ここまで話を漏らしていいのかと不思議に思ってしまう。普通は通信は一種の暗号をかけて共通通信を除いて専用の通信機にしか届かないようにしている。もちろん、その分数も膨大になるけど戦力上は必要だ。なのに、普通に通信がダダ漏れだ。
『うおっ、共通通信で話しかけちゃってるぜ』
『気づいてなかったの!?』
「普通は気づくよね!?」
思わずリーゼツヴァイのパイロットと一緒に怒鳴ってしまう。僕は小さく息を吐いて対艦剣を構え直した。
「とりあえず、無力化させてもらうよ。二人の実力は大体わかったから」
『ふざけたこと抜かしてんじゃねえぞ! 俺達はまだ実力の半分も出していないんだからな』
『それ、負けフラグだよね』
地面を踏みしめ地面を駆ける。ダークエルフの地上の反応はエクスカリバーを遥かに超える。だからこそ、学園都市を守るためにはこのダークエルフが一番合っている。
対艦剣を握り締めて地面を踏み出し、嫌な予感が体全体を覆い尽くした。すかさず飛び退きながらリアクティブアーマーの出力を最大限まで上げる。ほんの少しだけ棺桶状態になるけどこの感覚が正しいならこれが一番だろう。
そして、轟音と衝撃、そして、爆発がダークエルフを包み込んだ。
リアクティブアーマーの許容値の限界ギリギリ近くまで数値が跳ね上がる。だが、リアクティブアーマーの最大状態は何とか耐えきってくれた。
衝撃が収まり、視界が開く。攻撃が飛んできた方角を見たそこには肩に二つの砲塔、腰にも砲塔がつき、そして、背中にはイグジストアストラルを彷彿とさせるような翼が広がっていた。そんな姿をするフュリアスはトリコロールの装甲をしている。
僕は新たに現れたフュリアスを睨みつける。
『虫が湧いているな』
そして、響いたのは老人の声。
『天上の神の降臨だ。跪くがいい』
「天上の神? 神を名乗ってお前は何様のつもりだ!?」
対艦剣をトリコロールのフュリアスに向ける。フュリアスはこちらを一瞥して腰の砲の先を腕で支えながらこちらに向けた。
『地上を這いつくばる虫けらは、黙って言ううことを聞いているがいい』
意味がわからない。あのフュリアスは、いったい何?
最後に出てきたトリコロール(ガンダムみたいな配色)の機体ですが、一度名前を出しています。
一応、ここからは戦いは佳境。海道駿を追う周に動きだしたアルト達。さらには謎の勢力まで。戦いは次第に範囲を増して規模も増えて行きます。
ところで、いつになったら地下に潜れるのだろうか。