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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第二章 学園都市
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第百九十六話 真の姿

周の真の姿、というより最後のレアスキルの真の姿です。真の姿の能力はチート、っぽい欠陥品です。その話はまた後で。

核晶。


それは生物が魔力を使う際に貯めておける結晶。大きさは大小様々であり、大きければ大きいほど魔力を貯めておけるかというとそうではない。


核晶を研究するのは極めて難しいため正確なデータは存在していないが、基本的には核晶の大きさと貯蓄量は比例しない。もちろん、比例する人もいる。


例えば、今、オレの目の前にある茜の核晶もそうだろう。茜の核晶はオレが知っている中でも大きく、他人のオレがあそこまで魔術を使えるのにも納得出来る手のひらサイズだった。


対するオレの核晶は小さい。小指の先ほどの小ささ。怖いくらいに小さい。


「オレの、だよな?」


「うん。お父さんはそう言っていたけど」


困惑した表情のまま核晶を受け取る。小指の先ほどしかない核晶を手に取り、オレはその核晶を自分の中に入れた。そして、気づく。


茜が現れた時に感じた奇妙な違和感のことを。核晶が体に馴染む。これが、オレの本当の核晶だとわかる。


茜も同じようで幸せそうに微笑んでいた。何か和むな。


『和んでいるところすみませんが、後ろを見てもらえますか?』


レヴァンティンの声にオレは振り返る。振り返った先には視界の端で光る何かを見つけた。


オレはまた振り返る。だが、やはり視界の端で何かが映るだけ。振り返った先にいる茜は信じられないような目でオレを見ていた。


『間違えました。後ろではなくマスターの背中を見てください』


その言葉にオレは首だけ動かして振り返る。そこには、光があった。


信じられないし表現も出来ないが、そこには光の翼があった。


オレはレアスキルを使っていないし、こんなオーロラみたいに綺麗な光の翼は見たことがない。


「これは一体」


「お兄ちゃん、早く」


茜の苦しそうな言葉。オレはハッとして茜を見て、そして、茜を抱きしめた。


「お兄ちゃん?」


「大丈夫だ。オレに任せろ」


今、使えるのは背中の翼と幻想空間ファンタズマゴリアと金色の力。頭の中で勝手に解が組み上がる。でも、そんな解はすでに出来ている。


オレは背中の翼に金色の力を流し込んだ。たちまち翼が金色かつ大きくなり、オレと茜を包み込む。次にするのは幻想空間ファンタズマゴリア


幻想空間ファンタズマゴリアで伸ばす能力は精神感応だ。オレは茜と額を合わせた瞬間、世界が変わった。


自分が浮遊している感覚と共に周囲を見渡すと、そこにはどす黒いもやのような何かがあった。そして、それが茜を包み込もうとしている。


「茜!」


すかさずその中に飛び込もうとするがオレの体は黒いもやによって弾かれる。


すぐさま自分の使える装備を確認。全くない。使える魔術。ストックしていた魔術の反応がない。魔術の詠唱。そんな時間があるなら翼の力で飛び込め。


すかさず背中の翼を操り茜に向かって飛び込む。


使い方なんて知らない。だけど、この翼の力はわかる。これは選ばれた者の証。くだらない。そんなものじゃない。これは、


「未来を切り開く、意志の翼だ!」


翼で体を包み込み、まるで弾丸のように茜に向かって突き進んだ。道を塞ぐ黒いもやは翼に当たるや否や翼に吸い込まれて消えていく。その度に体の中にある魔力が膨れ上がるのがわかった。


オレはそのまま茜に近づいて茜の体を翼で包み込む。すると、茜を包み込もうとしていた黒いもやが翼に吸い込まれた。


「お兄ちゃん!」


茜がオレに抱きついてくる。オレは優しく茜を抱きしめた。


「お帰り」


「ただいま。ただいま、お兄ちゃん」


兄妹の再開シーンではあるが、よくよく周囲を見渡すと黒いもやが一斉に襲いかかってきて翼に吸い込まれ、魔力として消えていく。


それを考えるとかなり汚いシーンだなと思ってしまう。


「どうかしたの? お兄ちゃん」


「何もない。茜、核晶の調子はどうだ?」


「懐かしいかな。これだけの魔力があれば何だって出来る気がする」


そう言いながら満面の笑みを浮かべる茜にオレはそうか、としか言葉を返すことが出来なかった。


オレがその核晶を使っていた時もそんなに自信満々になることは出来なかった。


「うーんと、うわっ。魔術がストックされてる」


「なるほど。ストックは核晶依存なのか」


魔術のストックに関してはどこにストックされるかでいろいろ議論されていたからな。そう考えると新たな研究テーマの一つとして出来るか。


オレは納得したように頷きそうになってすぐさま首を横に振った。


オレはそんなためにここに来たわけじゃない。


「他に何かないか?」


「全く。お兄ちゃんの核晶は全く合わなかったから大変だったけど、自分の核晶はやっぱりいいなって」


「そういうものなのか?」


「お兄ちゃんはわからないと思うけど、自分の核晶ってやっぱりいいものだよ。何というか、ホッとする」


確かにそれには賛成だ。自分の核晶が戻ってきた時は確かにそれに近い感情はあった。感じている暇は無かったが。


オレは頷いて周囲を見渡す。いつの間にか黒いもやはかなり少なくなっていた。少なくなっているだけで無くなってはいないがここまで少なかったなら大丈夫だろう。


「そう言えば、茜は親父達に何か飲まされたのか」


「うん。白い粉。それをずっと飲まされてた。禁断症状が出るくらいに」


「かなりマズいよな」


ナイトメアは中毒になりにくい薬だったはずだ。いや、ナイトメアと幻影秘薬ナイトメアは別種のものなのか?


「お母さんが言うには、最強になるための薬だって言ってた。幻のように消えたりするんだって」


すごく心当たりがある。つまり、あれは幻影秘薬ナイトメアによって出来たものなのか。それだったらかなり厄介だな。


幻想空間ファンタズマゴリアにしか破れないならはっきり言って、大軍で来られたら勝ち目はない。それに、幻想空間ファンタズマゴリア自体もデメリットが無いわけじゃない。


実際に、幻想空間ファンタズマゴリアを使った後は一部の能力が著しく減少する。例えば、治癒の幻想空間ファンタズマゴリアを使えば通常での治癒が弱くなる。


「もしかして、この黒いもやがって、ないし」


いつの間にか黒いもやは消え去り、代わりにファンシーな空間が出来上がっていた。説明するなら文字通りファンシー。


まあ、ぬいぐるみとかたくさんある茜らしい空間ということだ。


「なるほど。ここって茜の心象風景か」


「なるほどじゃないから」


納得したオレの頭に茜のチョップが当てられる。威力はあまり無く、オレは苦笑しながら茜を見ていた。


「また、戦いが終わって退院したら、こんな部屋にすればいいじゃないか」


「そうだね。じゃあ、出ようよ」


オレは頷いて幻想空間ファンタズマゴリアを解除する。それと同時に世界が戻った。


ちょうど前にあるのは茜の顔、は変わらない。だが、周囲の風景は元に戻っている。


倒れ伏すローブの人達と必死に戦う由姫や都達。そして、数を増したゴーレム集団。


神隠しトリックオラトラップって本当にむちゃくちゃだよな」


オレが感心したように呟くと茜が呆れたように溜め息をついた。


「お兄ちゃん、戦闘中だよ」


「悪い悪い。じゃ、援軍にでも行くか」


「そうだね」


茜が持っていた弓から剣に変える。よくよく思うと、これって隼丸なんだよな。


「お兄ちゃん」


「何だ?」


オレがレヴァンティンを握りしめると後ろから茜の声がかかる。


「雷王具現化か風王具現化のどちらがいい?」


「我が妹ながら突拍子もないことを言うよな。無理だろ?」


「そうかな? じゃ、雷王具現化で」


その瞬間、空中に魔術陣が出来上がり、そして、ゴーレム集団にのみ雷の嵐が降り注いだ。


あまりのことにオレはポカンと固まってしまう。一番、固まっているのは近接していた由姫だろう。目の前でゴーレムが雷に打たれて黒こげになったからだ。


「なあ、茜。今、何をした?」


オレは未だに展開されている雷王具現化を見上げながら茜に尋ねた。


「雷王具現化の限定発動。やれば出来るもんだね」


雷王具現化は範囲内無差別攻撃のはずなんだが。


「具現化って難しいって聞いていたけど案外簡単だよね」


未だにオレは具現化の一つも使えてないのですが。


「やっぱり魔術って気持ちいいね。次は半分くらいの力で撃とうかな」


「全力じゃないのかよ!?」


そこは言うしかない。というか、ツッコミ自体を二回待ったのだ。三回目はいいだろう。


茜は不思議そうに首を傾げ、


「息を吸う感覚で」


全力には程遠い。


オレは改めて茜が天才だと理解した。音姉や孝治も天才の中の天才だと思っていたが、茜はそれを超える天才。


どうりで親父や慧海達がどうにかしようとするわけだ。


「ともかく、この場をどうにかするぞ」


新たに現れるゴーレムの集団。それに向けてレヴァンティンを構える。


「うん」


茜もオレの横に並んで剣形態の隼丸を構える。


「まずはここを抜けて中央に向かう。ついて来いよ」


「うん」


オレと茜は同時に地面を蹴った。

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