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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第二章 学園都市
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第百九十二話 闇と光と属性と

放たれる光の嵐。それを受け止めるのが黒い球体。


孝治はすかさず弓を構えて矢を放つ。だが、その矢は光によって弾かれる。


「はははっ。そんな攻撃じゃ、僕には当たらないよ」


「確かにな」


孝治は冷静に答えながら矢を放つ。だが、その矢は青年を当たらない。


「高機動かつ三次元行動も熟知した攻撃。確かに君は強いね。情報通りだ。だけど、火力が貧弱だよ」


その言葉と共に光が放たれる。孝治はすかさず光の進行方向に黒い球体を作り出して光を吸い込んだ。そのまま孝治は矢を放つ。しかし、それは光に呑みこまれて消え去る。


孝治は弓を下ろし青年を睨みつけた。


青年の顔に浮かんでいるのは余裕の笑み。対する孝治の顔に浮かんでいるのは無表情。もし、周や光がこの場にいたなら気づいていただろうが、青年は気付かない。


「空中戦に君は向いていない。本当に、向いていない。空中戦は射撃と近接の混合戦闘。君の様な地上でこそ威力を発揮するような戦い方では僕には勝てないよ」


「何様のつもりだ? 俺の戦い方をわかっていない穢れた純白の翼をもっている天使のくせに」


「ほう」


青年の目が微かに細まる。孝治は逆に笑みを浮かべた。


「図星か? 国連特殊部隊直属特殊機動部隊(ファントム)。まさか、本当に実在しているとはな。巷では正体不明の敵(ファントム)と呼ばれているみたいだが」


「その名前を知っているとはね。どうやって? 僕は未だに一言もそのことについては詳しく話していないつもりだけど?」


「裏事情に詳しい友達がいてな。そいつから話はいろいろ聞いている。国連特殊部隊直属直周機動部隊(ファントム)を。特に、国連特殊部隊直属直周機動部隊(ファントム)の隊長についてはな」


「はるほど」


孝治は弓を構える。対する青年は砲撃槍を構えた。


「さすがは国連だ。『GF』にすら勘づかれることなくここまで事を運ぶとは。さすがの周も情報不足でお前達まで予測できなかったみたいだが」


「周? ああ、第76移動隊隊長にして君達の指揮官か。確かに、彼は見事だと言うしかないかな。僕と駿が考えた作戦がことごとく失敗しているのだから。まあ、最初の啖呵には驚いたけど。この学園都市が学生の街? ふざけるんじゃないよ。子供は大人の言うとおりに暮らしていればいい」


「周は親を失っているからな。大人の言うことなんて聞く気はないだろう」


「なるほどね。でも、だからこそ、僕達が動かないとダメなんだよね」


その笑みに孝治は青年を睨みつける。


青年はそれを見てどこか愉快に笑みを浮かべ、そして、両腕を開いた。


「世界は支配されるべきなんだよ。僕達の様な天上の存在に。そのための兵力を僕は呼び出している。この意味がわかるかな?」


「世界間大戦を起こすつもりか?」


「そんなものじゃないよ。全ての世界を破壊し、そして、創生の道を歩む。それこそが人類に残された唯一の生きる術なんだよ」


青年の言葉はそれが正しいかのように笑みを浮かべていた。まるで、その行為が至高の行為だとでも言うかのような言葉。


それは別の意味で捉えるなら一種の滅びだ。だが、孝治は感じている。本気だと言うことを。


そんなことを世間に行ってもただの冗談か頭のおかしい人物にしか聞こえないだろう。かつて起きた世界間大戦の時にはたった一人の男、もちろん、今なお現存する、によって情勢をひっくり返したりもした。


その記憶があるからこそ、世界間大戦は最近起きていなかった。


「世界は壊さなければならない。ここだけは駿とは意見の違うポイントなんだけどね」


「なるほど。海道椿姫に連なる考えか」


「正解。って、あれ? 僕はそんなことを言った?」


「勘だ。今回の首謀者は海道駿。なら、海道椿姫もそれなりの地位を持っているのではないかという推測だ」


その言葉に青年は納得したように頷いた。


「なるほど。その考えなら確かにありだ。だけど、それだけじゃないよね?」


「あまりにも露骨すぎだ。隠す気はないのだろ?」


その言葉と共に孝治の目が細まる。それを見た青年は満面の笑みを浮かべた。


「もちろん」


それは、まるでこれから遊ぶおもちゃに対して言うかのような言葉。その笑みを見た孝治は片手で運命を鞘から抜き放つ。


それにはさすがの青年も焦ったのか顔を引き締める。


「ようやく君の本気が来るんだね。でも、わかっている? 僕の火力の前に君の砲撃は」


「俺の魔術の前に、お前の攻撃は届かない」


孝治が使う魔術は闇属性。対する青年が使う魔術は光属性。その二つのはとても面白い相性がある。


本来、一歩的に強い属性というのは存在しない。例外として氷属性や天空属性が上げられるが、どちらも優位に立つという意味ではなく、邪魔されることなく発動出来るだけであり、強いというわけじゃない。


だが、光と闇の属性は違う。闇属性が一歩的に強いのだ。


そもそも、光属性のカテゴリーは、文字通り光を使った魔術。ほとんどが熱量を伴った攻撃であり、炎属性の上位魔術とも言われている。対する闇属性はそのポテンシャルのほとんどを吸収に費やしている。九州と放出。反射というのは無理だが、吸収しやすいもの、例えば光のようなものは日常的にあらゆる物体が吸収して色を出しているため、その効果があるからか闇属性は光属性にめっぽう強い。


代わりに、闇属性の使い手、特に、属性翼にまで辿りつけるまで極め若手は孝治一人しか存在していないが。


「闇は嫌いなんだよね。光、特に純白の光というのが僕は大好物なんだ。それは君達にも通じるものじゃないかな? 白いということは正しいということを表し、黒いということは悪いということを表す。白は正義であり、黒は悪。白は昼で黒は夜」


「悪いが、俺が好きなのは黒だ」


「なるほどね。根本的から僕の敵だったのか。だったら、手加減しなくていいかな? 僕は君みたいな人種は本当に滅んでいいと思っているから」


「奇遇だな」


孝治が弓に運命を矢の代わりとして構えた。


「お前みたいな人を選ぶ奴は、殺したいほど憎んでいる」


そして、運命が放たれた。だが、運命の刃は放たれた光によって弾かれる。


「だったら、手加減しないよ」


その言葉と共に青年の周囲に光の球体が集まった。それを見る孝治の顔は険しい。


だが、孝治は逃げることなくその手に運命を呼び出してまた構えた。


「愚かだね、君は。君は薄々気づいているんじゃないかな? 僕の正体に気づいているよね? なのにどうして抗おうとするのかな? 君と僕では生きていた年期が違うし実力は、あまり大差はないか。だけど、僕の方が圧倒的に上だ。大人しく降参するなら、痛めつけることなく殺すことを約束するよ」


「愚か、か。すでに知っている」


孝治は自嘲気味に笑みを浮かべた。


孝治にとって、その言葉はこの世界に飛び込んでから何度も言われた言葉だ。孝治自身にではないが、孝治の家族に言われたことは多々ある言葉。


だが、孝治は違うと感じていた。


家族に言わせた原因は孝治自身なのだから。


「人は愚かだ。完璧な人間など存在しない」


「僕達とは異なるね。僕達は完璧を目指す存在だよ」


「だが、それが人だ。人は自分が愚かだと本当に理解出来た時、強くなることが出来る」


孝治はそう信じている。人という存在がどこまで自分自身についてわかるか。その時にこそ、人は強くなれると信じている。


「俺は愚か者だ。親不孝者だ。だがな、俺はこの道を後悔しない。親を、弟を、妹を助けることを誇りに思っている。自分が愚かだと何度も気づいている。愚かでなければこの道には進まない」


「愚かが強さとでも言うのか?」


「その通りだ。だから、舐めるな。完璧だけを追求するお前達にはわからないかもしれない。人間を、舐めるな!」


その言葉と共に運命が放たれる。対する青年は一斉に光を放った。


闇と光。


その二つがぶつかり合い爆発を起こした。


それに青年が怪訝そうに目を細める。


「爆発だと?」


運命と光の魔術がぶつかれば運命が弾かれるか光の魔術が消されるかのどちらかだ。これは、まるで、光がレアスキルを使ってレーヴァテインを放った時に似ている。


それに気づくと共に青年の背中を悪寒が走り抜けた。


「汚れた翼を持つ糞野郎」


爆煙が晴れた先にあるのは、大量の運命と空中に作り出した弓。


「懺悔はすんだか? 鳥もどき」


その言葉と共に大量の運命が一斉に放たれた。

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