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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第二章 学園都市
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第百七十八話 始まりの宣言

言い合いって勢いで相手を打ち負かしても勝ちですよね

海道駿の声が響き渡る。その声に眼下が騒ぐのがわかった。


海道駿の名前は未だに有名だ。『赤のクリスマス』で失った最強の『GF』戦力。圧倒的な魔術で全てを叩き潰す反面、魔術に対する造詣も深く、何冊もの魔術に関する本を出しており、その内の一つは学校教材の副読本として幅広く広まっている。


『私は帰ってきた。あの日、国連を助けられていらい、あの日の真実を調べていた』


海道駿の語りに周囲が静かになる。確かに、あの日のことはアリエル・ロワソが起こしたことであり、そのアリエル・ロワソが黙秘している以上、真実はわからない。


でも、狙いはあれだろうな。


『そして、私達は知った。『赤のクリスマス』は止められることが可能であったのに止められなかったことが』


実際は不可能だ。アリエル・ロワソが狙った場所は数十万にも及ぶ。それほど大規模なものだった。


『それは『GF』が意図的に動いたからだ。『GF』はただ、日本や中国など、自分達の勢力が極めて強い場所を守ったにすぎない! そして、あの日、ニューヨークを見捨てたのだ』


正確には東アジアが狙われるとわかっていたために警備を厚くしたが、アリエル・ロワソは裏をかいてヨーロッパやアメリカに比重を置いていた。もちろん、東アジアも狙っていたが、テロリストの検挙数は東アジアがダントツだったりもする。


その数値は公表されているため、一部の本には『GF』が『赤のクリスマス』を予見していたのでは、と思っていたりもする。


『私は調べた。そして、この真実を見つけた時に私は愕然とした。『GF』は民を守る組織ではないのかと。そして、『GF』は新たな事実を隠している』


事態は親父の有利に進んでいるな。公表されているデータは有名だ。だからこそ、今、口だけで言っても信じられる。


『それは、世界を滅ぼそうとしていることだ。世界を守護する組織と言いながらも、『ES』や国連に地域を明け渡し、かの狭間戦役においても子供ばかりの第76移動隊が戦いに出向いた。『赤のクリスマス』がわかっていたのに対し、『GF』は自分達の地域だけを守り、あまつさえ、大きな事件にも子供ばかりで行かせる。これはどう考えても世界を守る気がないのは明白だ!』


まあ、オレ達が有名すぎたからな。


『だからこそ、私達は動いた。学園都市の皆さん、よく考えてください。学園都市内部での『GF』を。地位を騙し、麻薬をバラまき、のうのうとお金を貰っているという事実を。敵対する者には容赦なく剣を抜く姿を。『GF』という組織は偽りだ! だからこそ、私達は動く! あらゆる組織が対抗出来ない『GF』と対抗するためにこのタイミングで動く。私達は正義だ。世界を滅ぼそうとする『GF』に正義の鉄槌を与えるための。だから、皆さんは、特に学園都市『GF』の諸君は動かないように。私は今から、この地下にある学園都市のエネルギー源を回収しに行きます。それは『GF』が埋めたこの学園都市を滅ぼすためのもの。安心してください。私達が、皆さんを救います』


なるほどね。『GF』がどれだけ悪者かを言い、『GF』の代わりに自分達が守るということを言う。確かに、作戦としては悪くない。現に、眼下では何人かの観客が近くの『GF』隊員に尋ねていた。


オレ達にとっては寝耳に水。だが、学園都市にいる身としては死活問題。これにより、『GF』隊員の大半は身動き出来ない。


イージスが狙いをつけているのが全て『GF』というのもポイントだな。


オレは小さく溜め息をついた。予想通り、いや、予想以上というべきか。まあ、いくつか良かった点はある。


想定外までなることはなかった。


「見事な作戦だな。たったこれだけの時間で海道駿はたくさんの味方をつけた。そのことには脱帽させてもらうよ」


オレはレヴァンティンを口に近づけて言う。それは、マイクのようにあらゆるスピーカーからオレの声が流れていた。


レヴァンティンの多機能っぷりには本当に驚きだ。


「だからこそ、反撃させてもらうぜ。学園都市はオレ達の都市だ。学生が、学生のために作り上げる都市だ。お前達犯罪者には絶対渡さない」


『犯罪者? 何を言う。私達は確かに体育祭を乗っ取った。それを罪だと言うならそのことを』


「違うな。麻薬をバラまき、違法なものを輸入し、『赤のクリスマス』の理由をでっち上げ、ニューヨークの惨事は自分達が作り上げたことを棚に上げている」


『でたらめだな。どんな証拠があってそれを言う?』


確かに証拠をこの場で立証するのは不可能だろう。不可能だからこそ、全てをひっくり返す理由が必要だ。だから、オレは笑みを浮かべる。


「『赤のクリスマス』はアリエル・ロワソが公式で否定されている生体兵器であるオレを回収するために目くらましで起こされ、それに乗じたお前らが世界を救う鍵となる茜と共に姿をくらますために起こした事件。結局のところ、お前らは私利私欲のために『赤のクリスマス』でニューヨークを消し去ったんだよ!」






オレは顔が引きつるのがわかった。


周が流した放送によって近くにいたクラスメート達が固まっている。ほんのさっきまで海道駿が正義だったのに、それが一瞬でひっくり返ったのだ。


『赤のクリスマス』が起きた要因は周と茜ちゃんの二人によるものだと。


「おいおい。周。お前は一瞬で真っ黒に埋められていた板状を白に戻したけど、両刃の剣だぜ」


周が持つ最大の武器。それはあのニューヨークを生き残った当事者であるということ。しかも、その前に学園都市自体を学生達が動かすものと言っていた。


つまり、学園都市外の『GF』に学園都市内のことを介入させないという言葉の現れ。


『それは』


『言葉に詰まるか海道駿。確かに、お前の目から見たらバカな行為かもしれないな。あの『赤のクリスマス』の要因となったのがオレ達兄妹だとしたなら、世界中からの非難を浴びるだろう。もしかしたら、オレ達は路頭に迷うかもしれない、殺されるかもしれない。だけどな、これだけは言ってやる。『GF』が『赤のクリスマス』が起きることを知っていたのは事実だ。それは様々なデータを参照すればわかる事実。それは否定しないし事実だと思っている。だから、言わせてもらうぜ。『GF』がどうして知っていたか。簡単だ。信じられない話かもしれないが未来を知っていた』


周の言葉に顔がにやつくのがわかった。興奮する。あいつがしようとしていることが手に取るようにしてわかるのだ。


海道駿を相手にした喧嘩じゃない。世界の、様々な勢力が必死に隠そうとしている事実の公表。つまり、世界との喧嘩だ。


『『GF』は知っている。それは世界を『GF』が滅ぼす未来ではなく、世界が滅びに直面しているという未来を! 狭間戦役もそうだ。『赤のクリスマス』もそうだ。今回の海道駿の動きもそうだ。全てが世界を救うために様々な勢力が様々な考えの下に動いた結果だ!』


周囲に浮かんでいるのは信じられないという言葉。多分、何が正しくて何が正しくないかはわからないだろう。


「周、頑張れ」


オレは笑みを浮かべながら小さく周を応援する。周が望む未来を作り出して欲しいから。






「それをお前は耳がいいように言い直し、嘘をついた」


『世界は滅びはしない! 周、お前も『GF』の手先だったのか!』


オレは笑みを浮かべる。


親父の顔にあるのは焦り。もし、作戦が成功したとしても、オレが言ったことが事実なら、親父のやったことは完全な犯罪だ。だが、それはオレにすら刃が届きかねないこと。だからこそ、オレは口にする。


「『GF』を滅ぼせば、この体勢に楔を撃ち込めるかもしれない。それは、ただの世界の混乱だ! そんなことで世界を混乱させようといすることこそ、犯罪者というべきものだろう! そんなことはさせない。それにな、この学園都市はオレ達の領域だ。『GF』じゃない。オレ達学生の領域だ! そんなところに大人の介入なんてさせるかよ!」


『貴様たちが仕様としているのはただの子供の喚きだ!』


「ああ、そうさ。だから、もう一度言う。学園都市はお前達の好きにはさせない! 学園都市はオレ達がオレ達で作り上げる聖域だ! 学園自治政府も、様々な学校組織も、自分達の手でよりよく学校を、都市を作り上げてきた! そこにお前達が介入していいものか! 学園都市はオレ達の手で守り、オレ達が動かす。大人の手なんか借りずに、オレ達はやっていけることを証明してやる! 全『GF』隊員に通達。今より緊急事態宣言を発令。学園都市にいる人全員をシェルターに誘導。第76移動隊、第一段階始動! オレは、今までのオレの過去を断ち切るために、海道駿を捕まえる。オレに続け!」


『貴様、正気か!?』


親父の驚きの声。それに対してオレは笑みを浮かべた。


「『GF』のやるべきことはただ一つ。守るべきものを守り、守るべきものを脅かすものを捕まえる。単純明快それだけだ。だから、オレは親父と戦う。確かに、総長や第一特務隊長が何を考えているかわからない。もしかしたら、親父の考えている通りかもしれない。そうだとしたなら、オレが、オレ達がそうにかする。それが、第76移動隊だ。だから」


レヴァンティンを親父に向ける。この戦いの始まりを宣言するために。


「海道駿。『赤のクリスマス』でニューヨークを壊滅させた首謀者としてあんたを拘束する!」

最近、ユニーク数が怖いです。時折かなり伸びているのですが、アクセス数の伸びがあまり芳しくないのが怖いです。いや、まあ、自己満足で書いているのでいいんですけど、やっぱり、気にすることは気になってしまいますね。

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