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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第二章 学園都市
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第百七十五話 白百合家の秘宝

「はい」


オレの目の前に差し出されるのは一つのデバイス。いや。ただのデバイスじゃない。これは装着型のデバイスだ。


デバイスのコアである丸い球体(見た目はそう見えるだけ)はまるで板のようなものにくっ付いている。


これは他のデバイスに装着するためのデバイスだが、使い道がほとんど無いため絶滅しかけだったような。


「これは何だ?」


オレはそれを差し出した相手に尋ねた。


海道姫子。


海道家宗家トップで今忙しいはずなのにオレにデバイスを差し出している。


「拾い物?」


「叩き潰して不燃ゴミに出しておけ」


それがデバイスのゴミの出し方だ。データを全部消してからリサイクルに出すのもありだけど、拾い物は無差別テロ(デバイスウイルスによる)の可能性があるから一番いい。


オレは小さく溜め息をついて海道姫子を見る。


「本題は?」


オレは周囲を一瞬だけ探知してから尋ねた。時間が時間だから盗聴の危険性は高いはずなのに気配はない。


「ようやく宗家の足取りが掴めたの。だから、海道家の中で自由に動けて戦力にもなる私が来たってわけ」


「いやいや、宗家トップが自由に動ける時点でおかしいよな」


「これからの海道家は分家が中心だから、極力私を排除してもらっているだけ。仕事は一応あるわよ」


「わかってる」


今の海道家は本当に新しくなっているからな。海道家の一員としては本当に嬉しいことでもある。


「で、宗家は?」


「国連よ」


その言葉にオレは小さく溜め息をついた。ある意味最悪なところで足取りが掴めてしまった。まあ、罠の可能性はあるが、今回ばかりはそうじゃないだろう。


「これまた厄介なところに。つまり、お前は海道家の戦力としてやってきたと認識していいよな?」


「そのつもりでいいわ。これでも戦闘訓練は一応は行っているから。まあ、第76移動隊の中だと足手まといだけど」


「いや、作戦を知っている面々が少ない以上、作戦を知っている面々が手伝ってくれるならありがたいものだし。歓迎するさ。まあ、ついでにこれを持ってくるとは思わなかったけど」


オレは小さく溜め息をついて装着型デバイスを手に取る。


この手のものはかなりの重さがあるはずなのだが、この装着型デバイスに関してはかなり軽いというべきか。そもそも、装着型デバイスは専用の武器が無ければ付けられないのに。


「で、これはどうすればいい?」


「判断に困っているのよ。海道家の集積デバイスで調べようとしたら集積デバイス自体が機能停止にされて、海道家縁の研究所に持っていっても同じ結果になって」


その言葉にオレは驚いていた。集積デバイスが機能停止になるのは珍しい。集積デバイス自体が攻撃を受けるか許容を超えるデータを解析するかのどちらかだ。


装着型デバイスなら許容量はかなり高いが、集積デバイスには及ばない。つまり、攻撃を受けたということか。


オレはレヴァンティンを取り出した。


「レヴァンティン、解析を頼めるか?」


『わかりました。抗体プログラムは数億パターン準備しているので大丈夫だと思います』


数億パターンというところで何か言いたい気分はあるが、レヴァンティンとしてはそれくらい準備していないと不安なのだろう。


相手は集積デバイス以上とも言えるデバイス。通常のアクセサリー型デバイスと違い、装着型デバイスは容量や処理速度は同一規格で作れば装着型デバイスの方が上を行く。


オレはレヴァンティンを装着型デバイスと繋げた。


「レヴァンティンは高性能なの?」


海道姫子が不思議そうに首を傾げる。その気持ちもわからなくはない。レヴァンティンはどう見ても普通のデバイスで相手は集積デバイスを機能停止に陥れるデバイスだからだ。


だが、オレは心配していない。だから、笑みを浮かべて頷く。


「オレが知る、史上最強のデバイスだからな」


『史上最強とは語弊がありますよ。正確には歴史上最強。これからの未来では私を越えるデバイスが作られると信じていますから。それと、解析が終わりました』


レヴァンティンの言葉にオレ達はレヴァンティンの方を向く。


さすがはレヴァンティンと言ったところか。もう解析が終わっただなんて。


「兄さん、エクシダ・フバルの護衛をアルトさん達に引き継いできました」


由姫の声が聞こえる。オレがそちらを向くと、由姫、中村、エレノア、ベリエとアリエの五人の姿があった。


「ご苦労様」


『ちょうどいいところに。由姫さん、こっちに来てください』


レヴァンティンの言葉にオレと由姫は顔を見合わせて首を傾げ合う。そして、由姫が小走りで近づいてきた。


『そのままナックルを出してください』


「えっ? わかりましたけど」


由姫は疑問に思いながらもナックルを取り出した。すると、装着型デバイスが浮き上がる。


レヴァンティンが魔術を使っているのだ。許可せずに勝手にオレの魔力を使うとは。


その装着型デバイスがナックルの甲に張り付く。ぴったりと。元からそこにあったかのように。


『これで完成です。いやー、まさか、ここでこれをこの目に入れることが出来るとは。このレヴァンティン、マスターをマスターに選んで良かったです』


「レヴァンティン、説明を頼む」


オレは頭を抱えながらレヴァンティンに尋ねた。この場にいる全員がオレに説明を求めている。


『マスターは気づいていなかったのですか? 一番由姫さんのナックルを』


「気づくか」


オレはレヴァンティンを掴む。そして、徐々に力を入れながら口を開く。


「説明してくれるよな? レヴァンティン」


『わかりました。わかりましたから、ギブでず。ギブアップです。壊れます。壊れます!』


オレは手の力を無くして手を離す。レヴァンティンはそのまま机の上を転がった。


『マスターには冗談が効かないようですね。説明するなら魔科学の遺産。以上』


その瞬間、オレの思考がストップする。多分、他の全員も同じだろう。


つまりは、レヴァンティンと同じ時期に作られた存在ということか。だが、レヴァンティン、運命、七天、アル・アジフ、デュランダル、隼丸の六つのどれかということになる。つまり、これはデュランダルか。


『このデバイスの名前は栄光』


「デュランダルじゃないのかよ!? しかも、七つ目!?」


アルから聞いていた情報とは全く違うことになっているけど。


『私もアル・アジフも栄光に関しては白百合家があると知っていても失ったものだと思っていましたから』


「あのさ、うちらにもわかるように説明してくれへん? 意味がわからんねんやけど」


「由姫のナックルも魔科学時代に作られた武器だそうだ」


レヴァンティンについてわかっているだろうから割愛。だが、由姫のナックルがそこまで古いものだとは思わなかった。


中村は不思議そうにナックルを見ている。まあ、見た目は普通のナックルだし。


「私は、あまりわかりませんけど」


「羨ましいな」


「アリエ、頼むから人のものを羨ましく思わないで。私だって欲しくなるから」


「二人共、双子ね」


「お姉様!」


このままじゃ話が進まない。ともかく、レヴァンティンにもっと尋ねよう。


「白百合家はあるのに栄光は失ったものだと思っていたってどういうことだ?」


『そのままの意味ですよ。当時の白百合家は今と変わらず化け物ばかりでした。あっ、別に由姫さんをどうこう言うつもりは』


「大丈夫ですよ、レヴァンティン。白百合家がどこまでおかしいかはよくわかっていますから」


由姫が苦笑しながら答える。確かに、由姫に音姉にあの素子さんだからな。


『そして、私達が生まれた時代にも白百合家は凄かったのです。そうですね。神への重力グラヴィタスの持ち主がいたと言えばいいでしょうか』


「由姫と同じ」


『はい。その者が持っていたのが栄光です。実際には、一人にして一軍の戦闘能力を持った人物のために作られた武器ですが、その人物のスペックの高さに栄光の性能が追いつくことが出来ず、恋人である白百合の者に渡ったというべきでしょうか』


「その理論だと、神への重力グラヴィタスを制御出来るって感じだよな?」


由姫の最大の弱点を今更上げるなら神への重力グラヴィタス制御出来ないということだ。制御さえ出来ればやりようはあるんだけどな。


由姫の弱点を補える可能性があるなら、由姫はかなり強くなれる。


『はい。白百合の秘宝でもある栄光なら、理論上は制御可能です。理論上はですが』


「理論上?」


『はい。正確なデータを取る前に最終決戦でしたから。まあ、私が見た限り、かなり制御出来ていましたね』


つまりは期待が持てるということか。


「海道姫子、装着型デバイスはもらっていいか?」


「別にいいわよ。私が持っていても意味がないものだし」


「というわけだから、由姫のナックルもとい栄光はお前のもの。いいな」


「いいんですか?」


由姫が栄光を見つめながら海道姫子に尋ねる。海道姫子はそれに対して頷いて答える。


「その代わり、約束。絶対に栄光を犯罪目的で使わないで。それが条件」


「はい! 絶対に使いません。私が兄さんと共にいる限り、兄さんは必ず正義を貫いてくれると信じていますから」


その満面の笑みにオレは若干ながら心が苦しくなる。


これで、由姫は大丈夫かな。


オレな心の中でレヴァンティンに話しかけた。レヴァンティンも心の中で言葉を返してくる。


『そうですね。ですが、マスターは心苦しいのでは?』


わかるか?


『どれだけ付き合っていると思っていますか? 私はマスターがしようとしていることを理解していますし納得しています。ですが、それはマスターに憎しみが集中する可能性があります。それをわかっていて』


これは、オレの正義という名のわがままだからな。


オレはそう答える。


守るためならオレ自身すら使う。それがオレの考えだ。正義と正義のぶつかり合いで勝つのは強い方。その強さのためなら何だって使ってやる。


『私はマスターについていきますよ。どこまでも』


「助かる」


オレは小さく呟いて笑みを浮かべた。


周囲のみんなは由姫の周りにいる。だから、オレの声はみんなには届かない。


「白百合の秘宝ね。栄光にはどんな力があるのやら」


オレの呟きは、やはりみんなには届かない。

前日が驚きの閲覧者数。まあ、微々たるものですが、システムの異常じゃなければ嬉しいです。前の時に受けて落胆したので

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