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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第二章 学園都市
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第百六十九話 雪月花

おかしいな。本当なら第一章で出ている予定の武器が今頃出てきたぞ。

戦闘データの抜き出し。それはかなり難しいものだ。というか、セキュリティーの一つとして禁止されている。


戦闘データは個人の戦い方。つまり、蓄積された戦闘データを見れば何が弱点が一目でわかるからだ。オレみたいにわからないものもあるけど。


だからこそ、高いセキュリティーがかけられている。まあ、大掛かりな施設なら抜き出せるのだが。


オレは浩平のデバイスとレヴァンティンを繋げた。


「浩平は武器無しで大丈夫かの?」


「フレヴァングはこれを使って呼び出していないからな。あれも一応、神剣だし」


「そう言えばそうじゃったな」


神剣というのは特殊だ。神剣はレヴァンティンや運命と同じように持ち主を選ぶが、特徴的な特徴として他者は持てないというものがある。ついでにデバイスには収納出来ない。


収納する方法はあるのだが、音姉しか出来ないため収納出来ないと言っておく。


神剣は持ち主が呼ぶことによって現れる。現れ方は基本的に具現化させる際と同じため、神剣学者達はこれを現界と呼んでいる。その現界によって神剣は収納する必要がないのだ。


まあ、現界自体が魔術の一種だから音姉には使えないけど。


「神剣とは不思議じゃからの。我が知る神剣も不思議なものが多い」


「慧海の飛翔と蒼炎や、孝治のリバースゼロみたいにな」


特殊能力に特化している分、威力は極めて高い。


神剣にはよく驚かされる。


神剣学者の大半は神剣を否定しようとしていて調べていた人物だし。


「周、レヴァンティンと言えどもデータを抜き出すには時間がかかるじゃろ」


「まあな。これから二時間くらいは見込んでいないと」


「そなたは神剣について詳しいのかの?」


「オレは神剣を魔術と科学で証明しようとしたからな。まあ、無理だったけど」


言うなら神剣学者と同じ道を辿っていたりもする。


まあ、神剣についてはいろいろとあるからな。


「ふむ、そうか。では、我がありがたい講義をしてやろう」


「神剣のか?」


「そうじゃ。神剣が生まれた時のお話じゃ」






オレは周囲を見渡す。隣のアルネウラや優月も周囲を見渡す。周囲には反応は見当たらない。


オレは小さく溜め息をついた。


「疲れているのか?」


背後からかけられる声に背筋を伸ばして振り返りながら答える。


「疲れてはいません」


オレの目の前にいるのはエクシダ・フバル。隣ではアルトがクスクス笑っている。リコにいたっては笑いをこらえるので必死だ。


後ろにいる音姫とギルバートもニコニコ笑っていれ。


「やっぱりおかしいね。悠聖君の完全敬語」


「意味が若干おかしいと思いますけど? 音姫さんには敬語を使いますよね?」


「時々ね。時々、普通にため口になっているよ。私はその方がいいけどね」


「悠聖、私にも敬語を使って」


「意味がわからないからな」


オレは頭を押さえて優月を見る。優月は頬を膨らませていた。


「敬語使ってくれたら悠聖に命令出来るのに」


『優月優月。悠聖が敬語を使うくらいで命令を聞くわけがないよ』


「じゃあ、服従させるの?」


『調教だね』


ここに味方はいないのか。


オレは小さく溜め息をついて前を見る。


今進んでいるのは人通りがまばらな地区だ。エクシダ・フバルが行って欲しいと言ったところらしいが、オレからすればヤバい雰囲気は流れている。簡単に言うなら危険だ。


商業エリアの裏ほどではないが、ここも日当たりがわるくて結構な数の不良の溜まり場となっている。


なのに、いない。こういう期間だからいそうなものだがいない。


「孝治」


オレは孝治に対して小型通信機で語りかけた。周が自作したデバイス内蔵型の通信機だ。だが、返ってきたのは雑音だけ。


オレが眉をひそめると同時に誰かがオレの前に着地する。


身構えるアルトとリコ。


「冬華か」


前に降り立ったのは冬華だった。続いてフェンリルが冬華の後ろに着地する。


「ようやく見つけたわ。ジャミングが酷くて見つけるのが大変だった」


「やっぱりな」


小型通信機を外しながら前方に誰もいないことを確認して振り返る。


音姫さんとギルバートさんの二人は鞘から鍔を放しているし、アルトとリコも若干身構えている。


ボケッと立っていたのはアルネウラと優月だけか。


「数はわかるか?」


「わからない。ただ、大きな反応が大きいというのはわかるから」


「親玉が接触してくるか」


オレは通路の先に視線を向ける。そこにはいつの間にか男の姿があった。


目を見開いてしまいそうな状況をこらえる。驚いて身構えてしまいそうになるのをこらえる。


アルネウラと優月は一歩後ろに下がっているけど。


「『悪夢の正夢ナイトメア』か」


男がゆっくり近づいてくる。オレはゆっくり身構えた。


「海道駿か」


エクシダ・フバルが鼻を鳴らしながら尋ねる。対する海道駿はエクシダ・フバルに向かって礼をした。


「まさか、あなたがここに来ているとは思いませんでしたよ、エクシダ・フバル師匠」


「ふん。若僧が。海道周が言うように本当にお前がいるとはな。やはり、今の時代は若手が作り出すということか」


「作り出すのは大人ですよ。だから、私達は戦っている。あの日からずっと」


海道駿に浮かべられた笑みを見た瞬間に、オレは体の中で怒りが浮かび上がった。


あの日から戦っているのは本当だろう。でも、戦っているのはお前だけじゃなくて周やみんなもだ。

「ふざけんな! あの日からずっとって言っているが、お前らはあの日にたくさんの人を殺した犯罪者だろうが! お前らのせいで苦しんだ奴らがいるのをわかっていないのか!?」


「世界のために必要だ」


その瞬間、完全にぶち切れた。我慢することなんて出来ない。


「ふざけんな!!」


アルネウラと優月の手を掴む。二人の顔を見て頷くのを確認しながらダブルシンクロを行う。


薙刀を握りしめて前に踏み出そうとして、


「我慢だよ」


「我慢して」


音姫さんとギルバートさんによって止められた。


右肩は音姫さんに、左肩はギルバートさんによって止められる。二人共力強く止められる。


だけど、こいつだけは許さない。こんな奴のために周は、周達は、


「悠聖、止めなさい。罠よ」


オレの前を刀を構えた冬華が塞ぐ。フェンリルもそのそばに立っている。


「やはり気づいていたか。その少年はわかっていなかったようだが」


「そうね。あなたは完全に悠聖を狙っていた。エクシダ・フバルではなく悠聖を。違うかしら?」


「ふっ」


海道駿が笑みを浮かべる。その笑みに対して、オレがまたキレそうになる。


「精霊使いの少年は本当に厄介だからな。この場で再起不能にしたかったのだが、無理だったか」


「再起不能だ!? ふざけんじゃねえぞ!! てめぇは、周が、周達がどんな思いで戦って来たと思っているんだ!!」


「些細なことだ」


「てめぇ!!」


こいつだけは、こいつだけは!


「いい加減にしなさい」


その言葉が全てを凍らす。底冷えするかのような言葉。それは、オレの前にいる冬華から発せられていた。


「いい加減やかましいと」


「フェンリル」


そんな絶対零度の言葉がフェンリルの名前を呼ぶ。フェンリルは冬華の前に立った。


「それ以上悠聖を怒らせるような発言をしたら、殺すわよ」


「ほう、出来るものなら」


「我の精霊フェンリルよ。全ての力を我に預けよ」


その瞬間、フェンリルが光を放った。その光に対して冬華が手を伸ばす。


「来て、雪月花」


その瞬間、フェンリルから発せられていた光が弾けた。弾け飛んだ時にはフェンリルの姿は無く、代わりに冬華の手に一本の刀がある。


その刀は見るだけで底冷えするかのような絶対的な冷気を纏った剣であった。


「どうするのかしら、海道駿。全ての策を潰されて殺されるか、尻尾を巻いて無様に逃げるか。どちらか選びなさい」

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