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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第二章 学園都市
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第百六十八話 対抗術式

オレは小さく溜め息をついた。体育祭はようやく昼休み。エクシダ・フバルはギルバートさんやアルト達第一特務の面々と学園都市にいる大人のお偉いさんの接待を受けている。だから、オレ達は戻ってくるまで自由時間なのだ。


そのため、オレは近くにあったベンチでぐてっとしている。


「兄さん、お昼ご飯を食べないと昼に倒れますよ」


『栄養補給はしっかりと』


「そうじゃぞ。そなたが倒れたらどうやってあの狸爺の相手をするのじゃ」


ぐてっとしているのだが、背後から聞こえてくる声が耳障りに思えてくる。


オレは小さく溜め息をついて振り返った。


「あのな、オレの心労を察してくれ」


「お断りします」


即答。


芝生の上でレジャーシートを広げてご飯を食べている三人がニコニコ笑っている。もちろん、由姫、亜紗、アルの三人だ。


本来なら都もいるはずだが、


「私は昼休み以外でも周様と共に行動するので皆さんで食べてください」


とのことで音姉と琴美と一緒に別行動している。


『周さんが心労って言ったのは初めてかも』


「周も疲れているのじゃぞ。要人警護は気を使うからの」


「と言ってるアルも手加減しないよな?」


「当たり前じゃ。我はそなたの寵愛を受けた存在じゃぞ」


その言葉に、その場の空気が氷点下まで落ち込んだ。爆弾発言ではあるが、この二人も知らないからな。


だが、その氷点下はあっという間に終わる。


「まあ、私は兄さんとよく一緒にいますし」


『私は一番周さんと一緒に行動しているから』


嫉妬しているのは丸分かりだけど。この二人も可愛いから今すぐ抱きたいという気持ちはあるけど、自重自重。


「ともかく、兄さんはこちらに来てください」


「はいはい」


オレは軽く苦笑して立ち上がり、レジャーシートの上に座り込んだ。すると、卵焼きを挟んだ箸がオレの目の前に現れる。


『あーん』


スケッチブックに書かれたそんな文字と共に。


かなり恥ずかしいのですが。以前のオレだったら躊躇いもなく食べていたような気がする。


以前のオレってある意味すごいよな!?


「あーん」


そうしていると由姫も同じように卵焼きを差し出してきた。アルだけがニヤニヤしながら見ている。


「あーん」


『あーん』


オレにどないせいと?


「君達は何をしているのかな?」


その言葉にアル以外のオレ達が固まった。そして、ぎこちない動きで声のした方を振り向く。


そこには正だけでなく、呆れたような孝治と憎悪の視線を向けてくる浩平の姿。完全に見られていたよな。顔を戻すと差し出していた箸はその場になく、二人の口が動いている。


「羨ましい。羨ましいぞ、周! リースにすらされたことないのに」


「初耳なんだが」


「あいつは顔を真っ赤にして、はでゅば」


ドン、という純粋な何か重いものが落下したような音と共に顔を真っ赤にしたリースが竜言語魔法の魔法書を片手に、もう一方の手にはハリセンを片手に立っていた。


ハリセンで、あの音?


「疑問に思ってはいけない」


リースがハリセンと魔法書を消し去る。


「それは竜の逆鱗に触れること」


「わかったわかった。気にしないし気にも止めない。そのハリセンが鉄で出来ていてもおかしくないからな。そういうことだ」


そういうことで納得しておこう。死にたくはないから。


「つか、何で浩平がここにいるんだ? お前は学園自治政府の方にいるだろ」


「そうなんだがよ、ちょっと厄介なことに巻き込まれたからさ」


「厄介なこと?」


「ああ。そういうわけで、結界レミリア


その言葉と共に周囲に結界が展開される。竜言語魔法の結界だから気づかれることはないだろう。


オレがレジャーシートから立ち上がると正がそこに座り込んだ。


「竜言語魔法の結界を展開するということは、よっぽど隠したいことがあるんだな」


「まあな。単純明快に言うなら『悪夢の正夢ナイトメア』一団に襲われた」


「単純明快すぎて笑えるな」


オレは顔がひきつるのがわかった。まさか、このタイミングで襲いかかってくるなんて思わなかった。


考えられるとしたら、あれか。


「狙われたのは例のデバイスか?」


「全く持ってその通り。リースから受け渡された後に狙われた」


「知らなかった」


「呼ばなかったからな。ただ、あいつら、竜言語魔法を打ち消す術式を使ってやがる」


「はぁ?」


オレは思わずそんな声を出していた。


竜言語魔法ははっきり言うなら不可侵の領域だ。オレやアルが共同でリースに協力してもらって研究したのだが、結論は無理。


竜言語魔法は難解を通り越して、一言ワンワードで魔術を越える絶大な威力を発揮する。魔術の理論からしたらありえない。


「術は?」


おそらく一番冷静でないであろうリースが尋ねる。リースのポテンシャルは基本的に竜言語魔法だ。それが封じられたならどうしようもないから。


雨霰セントリア


「はぁ?」


また、同じように反応してしまう。


雨霰セントリアと言えば浩平が使える最大級の竜言語魔法だ。それを打ち消されるならどうやって戦えばいいかわからない。


いや、ちょっと待て。


「浩平、お前の射撃は?」


「打ち消された」


「それ、竜言語魔法が打ち消されたわけじゃなくて、お前の魔力自体に反応して打ち消されたんだろ?」


その言葉にその場が静まり返る。そういうことは想定していなかっただろう。実際、魔術になら魔術殺しマナシンクという技はあるが、個人の魔力に反応して打ち消すのは一般的ではないし。


確か、国連で開発していたものだ。


魔道具という名前だったはずだ。


「つうか、よく無事だったな」


「無事なもんか。槍を投擲されたから自分を撃って避けたけど、地面と激突して終わり。あの子に助けてもらうまで動けなかった」


確かに無事じゃないな。浩平の話を聞く限り、魔道具はほぼ完成したものだと考えていいだろう。


魔道具はある意味術者殺し。対抗する術者に絶対的な性能を発揮する能力。相手にあるなら厄介だな。


「一ついいかい?」


オレが考えていると正が手を挙げた。


「どうかしたのか?」


「その魔道具についてなんだけど、戦闘した僕から言わせてもらえばそれほど高性能ではないのかもしれない」


「どういうことだ?」


「デバイスをついているものに対して強いという発言をしていたからね。デバイスというものに取り巻く個人の魔力反応にすら反応するみたいだよ」


「デバイスに対して強い? アル」


オレはアルを見た。アルと一緒に亜紗のデバイスを作り上げたことがあるからこそ、魔道具の機関が本当にどういうものかがわかる。


「個人波動じゃな」


「個人波動ですか? えっと、個人が放つ気みたいな何かですよね」


そのことを由姫が知っていることにかなり驚く。デバイスの開発に関わっていなければ、特に個人専用のデバイスを開発していなければお目にかかることが珍しい内容だ。


それに対するものということは、あらゆる攻撃に対抗可能な対抗術式。


「周、どういうものだ?」


「個人波動は基本的に個人が持つ波動、まあ、文字通りなんだが、生命力とかそういうものなんだ」


「個人波動はもちろんそれぞれが違う。一般的なデバイスでは様々な個人波動に対応するために幅広く使えるようにしているのじゃ。それを気をつけないといけないのが個人専用デバイスじゃ」


『これみたいな?』


亜紗が取り出したデバイスを見てアルが頷く。亜紗の武器、綺羅と朱雀が入ったデバイスだ。


「そう。個人専用デバイスはその個人に対して個人波動を合わせておる」


「つまり、その波動に反応する武器というわけか」


孝治が自分の運命を見る。確かに、オレのレヴァンティンや運命は完全なユニーク装備。それに対して対抗術式が発動するならかなり厳しい部分がある。


デバイス部分が壊されたら代えは無いし。


「心配しなくてもよい。レヴァンティンと運命に我のアル・アジフは意味がないからの」


「どういうことだ?」


「我と同じ魔術器はそれぞれが所有者を選ぶ。もちろん、気に入った所有者をな。個人波動を使わずにじゃ」


『なるほど。つまり、魔道具に対しては周さん達しか抗えないということか』


「神剣も対抗出来るだろうから、後はどうやって対抗するか」


今からじゃ対抗のしようがない。どうやって今ある戦力でどうにかするかだ。


「素手なら大丈夫ですよね」


「素手で無理なら打つ手無しだぞ」


「そうだな。俺達の負担が限りなく大きくなるだけか」


とは言っても、かなりぶっつけ本番になる。失敗したら元も子もない。


どうすればいいか。


「あのさ、大火力ならどうにかなるんじゃないか? 個人波動を調整するのって難しいのか?」


浩平のその言葉にオレは一瞬固まった。そして、我に戻って頷く。


「ああ。調整はかなり難しい。個人専用デバイスは基本的に一般的なデバイスを改良したものが多いけど、個人波動から調整なら一週間はやらないといけない」


「そんな精密なものを使う魔道具ならよ、許容量オーバーしたなら壊れるんじゃないか? 楓ちゃんとかエレノアさんならぶち抜けるような」


確かに精密なら壊れやすいって聞くし。


「ちょっと待った。浩平、ドライブ中の雨霰セントリアじゃなかったのか?」


「使ってないけど、あいつらの防御がオレ専用の防御みたいで、許容量を越えたら壊れるって言ってたけど」


「初耳なんだが」


「どうだ? 俺の理論は」


満面の笑みを浮かべる浩平。


「そんなわけないだろ」


「ないですね」


『ありえないと思う』


「ない」


孝治、由姫、亜紗、リースの四人から否定される。だが、オレは首を横に振った。


「アルはどうだ? オレはありえると思うけど」


「我もじゃ。正はどうじゃ?」


「僕も同じ意見だよ」


オレ達三人だけが頷く。ありえないわけがない。確かにある意味盲点だ。


確かに浩平のものが消されたものは一発一発の威力は低い。それが消されたのはわかる。だからこそ、最大威力での試算はしないといけない。


「浩平、デバイスを一日だけ貸してくれないか? 調べてみる」


「我も力を貸そう」


「監視はする」


「あのさ、俺の意志は? まあ、貸すけどさ」


そう言いながら浩平がデバイスを投げてくる。オレはそれを受け取ってアルを見た。


「今日は徹夜だな」


「そうじゃな」


オレ達は呆れたように笑みを浮かべながら溜め息をついた。


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