表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第二章 学園都市
432/853

第百五十九話 隠されているもの

閉じていた目を開く。どうやら少し寝ていたらしい。ちょっと前の、一週間ほど前の出来事を思い出していた。


前にはマンホールを挟むようにしゃがんでいる都とアルの二人。どう考えても不審者だよな。


「何かわかったか?」


「周様、おはようございます」


「時間的には夕方じゃがな」


どうやら二人はオレが疲れているから起こさないでいてくれたらしい。ほんの少しだけ感謝だ。


ウトウトしてしまうなんて、オレもまだまだだよな。


「悪いな。二人にだけ任せて」


「こんな時くらいは頼ってください。私からは何とも。下水道であるとは確認出来ますが」


「それがさらに地下に続いている可能性は低いの。我が全力を出せばいいが」


「不自然だ。アルの全力は少し危険だというのはちゃんと自覚しようぜ」


アルが本気を出したなら確かに見つかるだろう。でも、魔力反応的に桁違いのことになるから、最悪、『GF』の面々が飛んでくる。


可能性は80%くらいか。そんな確率勝負はやっていられない。


「まあ、見つからなくても大丈夫だ。オレの中だと今日探した場所は基本的にそこだったら困る位置だったからな」


「困る位置ですか?」


「ああ。基本的にシェルターに近い位置。他にも候補はあるけど、シェルターに近くて見通しのいい場所。守るという観点から言わせればかなり都合のいい場所」


「ふむ。シェルターへの避難を妨害するためそちらに人員を割かずにはいられまい。攻撃するメンバーが少なくなればそれだけで制圧は遅くなるからの」


「最悪の想定を考えていたら、必ずそれらは探しておかないとダメだからな。最悪、シェルターの場所の誘導指示の変更を考えていたけど」


難しく考える必要はなかったかもしれないが、とりあえずはこれでいいだろう。


後は、当日にどれだけ早く向かうかどうか。


「相手は使われていない下水道の位置を割り出していますよね? どうしてそれがわかるのでしょうか。普通はわからないような気がするのですが」


「向こうに設計当初に関わっていた人がいるんだろ。それ以外に考えられないから」


だから、下水道の位置がわかっているのだろう。隠し通路という存在がわかれば本当にありがたいのに。


せめて、日本政府にデータがあればな。


「下水道を整備した会社はどうじゃ? 複数関わっている可能性はあるじゃろ?」


「データが全損していた。バックアップも全滅。こちらはちゃんと応じてくれたけど、ほんの少し前に新しい集積デバイスに移すバックアップを失敗したらしい。連鎖的に元のデータも」


どんな失敗したかわからないけど、普通はバックアップから連鎖的には消えないだろう。


レヴァンティンを使っているから考え方が違うのかもしれないけど。


「どんな不運が起きているのかの。だから、日本政府からの」


「そういうこと。本当なら下水道管理会社に問い合わせたかったけどな。案外、協力的だったし」


「協力的? どういうことじゃ? 厄介事は関わりたくないとは思うはずじゃが」


「これは聞いた話なんだけど、学園都市開発当初に、下水道の配管を行った会社は一社だけだったのに、実際に工事した会社は他に二つあったんだ」


その話を聞いてかなり驚いた。その会社も莫大なお金を貰い、学園都市全体に下水道を巡らせると思っていたらしく、いざ、施工してみれば他に二社がやっていたそうだ。


おかげでたくさんのお金を貰いながらほんの少し、学園都市の端にでしか工事しなかったらしい。


その会社は聞いたことのない会社だったようだが。


「つまり、政府が意図的に隠そうとしているのじゃな」


「多分。政府なら知っていて隠していてもおかしくはない。もしかしたら、『GF』が隠していたことにするかもしれないしな」


「そんなことはさすがにしないと思いますけどね。『GF』が日本から撤退したらどうなるかわかりませんし」


「警察が名目上の組織となっておるからの」


名目上の組織ではあるけど一応は活躍していることを考えような。


「まあ、全部が推測だ。日本政府がどう思っているかなんてわからないし、オレ達に出来ることなんて、場所を推測しておくしか方法がないからな」


「もう少し早く調べることが出来ればの」


「仕方ないだろ。学園都市『GF』トップの第76移動隊とは言え、日本政府と対話するような能力がないからな。時雨に任すしかなかったし」


「レヴァンティンならば調べることが出来るじゃろうに」


「確率勝負になってくるな。見つかったらオレ達はアウト。かと言って、見つからないように動けば見つかるものも見つからない。かなりややこしいからな」


レヴァンティンなら逃げ切れる可能性は高いが、最後の最後までその切り札は取っておきたい。それに、レヴァンティンの正体は親父達にもバレているだろうから警戒されているだろう。


だからこそ、オレは今日、マンホールがある地点を中心に調べたのだ。何か尋ねられても答えられるように。


「そうですね。レヴァンティンが没収された周様なんてただの器用貧乏な人になりますよね」


「否定出来ないのがかなり痛いけどな。まあ、こいつはオレ達にとっても切り札だからな」


『ふっふっふっ。敬ってくれてもいいのですよ』


レヴァンティンが偉そうに笑みを浮かべる。実際には笑みを浮かべていないけど、レヴァンティンが人だったなら笑っているだろうな。


『レヴァンティン、それを言ったら全てがお終いじゃないかな?』


『どうせマスターは敬うことがありませんから』


すごいとは思うけど敬うことは確かにないな。だって、無駄だし。


『そうなの?』


スケッチブックで尋ねてくるエリシア。オレは軽く肩をすくめた。


「レヴァンティンの性格を考えてくれ」


『なるほど』


「納得じゃな」


「そうですね」


『私の味方なんてこの世にはいないのですよ。はぁ』


オレは思わず苦笑してしまう。レヴァンティンは本当に相性のいいパートナーだ。


「ともかく、レヴァンティンはオレには必要なんだよ。オレの今があるのはレヴァンティンのおかげなんだから」


『マスター。私も、今の私がいるのはマスターのおかげですよ。それに、マスターは本当にサポートしがいがありますし』


「そうなのか?」


オレがレヴァンティンを扱いやすいと思っていた。慧海なんて、「軽い」と言って拒否して、時雨は、「もろい」と言って放り投げ、孝治は、「短い」と言っていたけどな。


『はい。マスターは本当にバランスが高いから手助けのしがいがあるんですよ。前のマスターは支援特化だったので』


「なるほどな。器用貧乏がここまで役に立つとは」


オレはそう言いながら笑みを浮かべた。レヴァンティンとの相性がいいのはありがたい。レヴァンティンはオレのパートナーなんだから。


オレはゆっくりと目を瞑る。少しだけ嬉しいから目を瞑ったのだが、目を瞑ってようやくわかる。


オレはすぐさま目を開けた。


「何か感じる」


「何かですか?」


「何も感じぬぞ」


都とアルはわからないようだ。だけど、気づいてみればわかる。


今まで気づいていない方がおかしいくらいの感じ。


でも、これは、何だ?


『感覚が止まりましたね』


レヴァンティンの言葉にオレは頷いた。


さっき感じたはずの何かはすでにない。だけど、もし、この感覚が正しいなら、


「見当違いだったのか?」


『それこそまさに、確率勝負というものではないかと。ですが、マスターの感覚は間違ってはいません』


オレの相棒と同意見。どうやら、信じるしかないようだ。


『何かありました?』


不思議そうに首を傾げている二人の前に、不思議そうに角を傾げながらスケッチブックが開かれる。


「何かの魔力の流れを感じたんだ。僅かだけど、方角は商業エリア方面」


「魔力の流れですか? 誰かが魔術でも使ったのでしょうか?」


「いや、違う。これは」


感じたことがないはずなのに懐かしく感じれこの感覚は、一体何だ?


それなのに、その何かを答えることは出来る。


「悠遠の翼」


そう感じた。理由はわからないけどそう感じたのだ。


オレは魔力の流れを感じた方角を向く。


「一体、何があるんだ?」


その疑問に答える人は誰もいなかった。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ