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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第一章 狭間の鬼
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第四十二話 不安

それにはもうすぐ満月となる月が浮かんでいる。空を見渡せば星空が多い。田舎ならではの光景だろう。


学園都市では見ることのできないもの。


「何か用か?」


オレは屋根の上に寝転がったまま上がってきた人物に声をかけた。


「音も立てていないのによく気付きいたね」


上がってきたのは由姫か。亜紗だと思ったいた。


「まあな。寒くないか?」


「大丈夫。服は着てきたから」


由姫がオレの横に寝転がる。そして、小さく息を吐いた。


「すごい。こんな場所があったなんて」


「オレのお気に入りだ。亜紗も度々来る」


「教えてくれてもよかったのに。お兄ちゃんのケチ」


「落ち着くからいいんだよ」


それからオレ達は無言で星空を見つめる。


自分の知識の中で、星座の名前と形を結び付けて作り出していく。多分、由姫も同じことをしているだろう。昔は二人で寝るまで星座の地図を見ていたのだから。


「お兄ちゃん」


「なんだ?」


「どうして昔の人は星を繋げるだけであんな絵を作り出したのかな?」


「んこと知らん」


星座の地図はどう考えてもあんな絵が星の光を繋げるだけで出来るわけがないので絵については全く信用してない。だれがこんなことを初めてのかも調べたことないし。


由姫は小さく息を吐いた。


「お兄ちゃん、大丈夫かな?」


「何がだ?」


「三日後」


由姫は不安なのだろう。初めて行う実戦。


オレのときだって前の日は眠れなかったくらいだ。興奮と緊張と不安によって。


「私は、ちゃんとした役割が出来るのかなって思ってね。お姉ちゃんを守れるのかなとか」


「不安になる気持ちはわかる。でも、お前には力があるよ。ところで、ふと気になったけど、八陣八叉って誰に教えてもらっていたんだ?」


「里宮愛佳(まなか)師匠」


「なるほど」


どうりであそこまで強くなるわけだ。


里宮愛佳と言えば世界でもトップクラスに入る武術家で、近接戦闘なら音姉に唯一対抗できる存在らしい。まあ、音姉の化け物っぷりはよく知っているからその強さもわかる。


簡単に言うなら普通の定規で測るべきではないもの。


「私は、お兄ちゃんやお姉ちゃんの役に立ちたいから強くなった。それがお兄ちゃんの言う普通じゃない人生を歩むことになっても、大好きな人と一緒なら戦えるから」


「そっか」


おれは顔を赤くしながら答えた。義理の妹とはいえストレートに大好きと言われでもしたなら恥ずかしくなるだろう。


由姫はオレの方を見ずに話を続ける。


「今回は、その成果が試されると思うから。お兄ちゃんとお姉ちゃんの役に立てるかどうか」


「なあ、オレも音姉も由姫には感謝しているんだ。オレや音姉、仕事で忙しい義父さん達のいない間の家を守ってくれた。オレにとっては命の恩人だ。だから、本当なら戦って欲しくない。でも、オレ達のために戦うことは止めて欲しいんだ」


「どういうこと?」


「オレは自分が由姫やみんなを守りたいから戦う。自分を中心に考えているんだ。だから、戦うことはオレの我がままだ。エゴだ。みんな、自分の我がままで戦っているようなものだよ。こうしたいからああする。ああしたいからこうする。全ての行為は自分のエゴ。由姫はもっと自分の気持ちを前に出さないと」


オレの言葉に由姫は少し考え込んだ。


由姫の考えは足手まといになりたくないという気持ちが多いのだろう。常に不安と戦っている。だから、自分でこうするとは言わない。他人に求められているから、求められるように動く。あくまで自分では決めない。


確かにそれも一つの手だ。だけど、それだけではこの世界は生きていられない。


「お兄ちゃん。私はお兄ちゃんが好きです」


「えっ?」


突然の告白にオレの思考が真っ白になったような気がした。


「だから、私はお兄ちゃんを守りたい。好きだから。お姉ちゃんも家族として好きだから守りたい。自分で守る。だから、見てて。お兄ちゃんのお眼鏡に叶うような私じゃなくて、自分がしたいように守るから。だから、見てて」


「いや、そのさ、告白は無しだと思うんだけど。つか、明らかに死亡フラグだよな、これって」


「私は本気だから。でも、答えは今はいらないかな。私もお兄ちゃんも大きくなって成長したら返事をください」


「ったく、わかった。はあ、亜紗にもされているのにどうすんだよオレ」


その言葉に由姫が体を起こした。


「やっぱり、亜紗さんも。お兄ちゃん、私は負けないから」


「勝ち負けの問題じゃないだろ。ったく。オレらはまだ中学生になったばかりだぞ。恋愛とかはまだ早いだろ」


「いつの時代の人?」


由姫がいぶかしげにオレを見てくる。オレは小さくため息をついた。


「さあな」


「今の時代は中学生でもふつうにするよ。あれ」


「あれ? なんだそりゃ?」


オレは真顔で由姫に尋ねた。すると、由姫は顔を真っ赤にする。


「それは、それは、お兄ちゃんの変態!」


「意味がわからんから!」


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