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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第二章 学園都市
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第百五十四話 緊急招集

緊急招集(笑)が正しいタイトルじゃないかなと。

体育祭三日目。


私は小さく息を吐きながら靴紐を結んでいた。


「朝から溜め息? もしかして、要求不満? 30分ほど外に出ようか?」


くすくす笑いながら時音が話しかけてくる。昨日、散々私をいじったから機嫌がいいのだろう。


「違う違う。というか、要求不満って何?」


「言わせないでよ。まあ、メグが槍を持つということは、『GF』絡み?」


私は靴紐を結び終わって立ち上がる。確かに『GF』絡み。というか、私は常に炎獄の御槍を持ち歩いているはずなんだけど。


「そうなんだけど、周からの緊急招集。昨日は何かあったらしくて大きく予定が変わったし」


「そう言えば、晩ご飯はいらないとか言っていたのに晩ご飯前に返ってきたよね」


「本当にごめん」


私が頭を下げると時音はまたくすくすと笑った。


「今日はどうするの? 晩ご飯がいるなら一緒に食べたいけど」


「どうかな。多分、今日は忙しいと思うから別々じゃ、ダメ?」


「ダメじゃないけど、最近のメグは付き合いが悪いなって」


そのことに関しては何も言えない。第76移動隊のことをしていればどうしても時間が足りないのだ。私はまだまだ未熟で、勉強しないといけないことが山の様にあるのに。


私はドアノブに手を伸ばした。


「じゃ、また寝る前に」


「体は気を付けてね」


「わかってる」


私はドアを開けて部屋から外に飛び出した。そして、手すりを掴み、そこから飛び降りる。


地上三階。そこから飛び降りたならよほどの状況じゃない限り何か怪我をするだろうけど、私は上手く着地して走り出した。


時間にはまだまだ余裕はあるけどこれも訓練だと思って走らないと。


まだ早朝だと言うのに手を繋いだカップルの横を通り過ぎる。羨ましいけど、気にしている余裕は、


「あれ? メグさん?」


その言葉に私は完全に足を止めていた。そこにいたのは悠人さんと、体育祭期間中、音界から来た第76移動隊への増援の、確か、ルナさんだった。二人が手を繋いでいる。


「そんなに急いでどうしたんですか? 時間にはまだまだ余裕があると思いますけど」


「訓練だと思ってランニングついでに」


「ランニングって速度じゃないわね」


ルナさんが呆れたように言うが、嫌みは一つもない。音界の身体能力は人界と同じという話は聞くけど、魔術に関しては完全に差がある。その分、技術関連に差はあるらしい、だったと思う。


そもそも、音界のことなんて私からすれば雲の上の出来事だ。


「二人はどうしてですか? あまり、接点がないような」


「えっと、ルナと付き合うことになって」


「私の初めてを奪ったんだからそれくらい当然なのよ。それより、止まっていたら間に合うものも間に合わないわよ」


頬を赤くして見当違いの方向を向いているルナさん。それだけで何があったかよくわかる。つまり、大人の階段を上ったということだろう。


私は祝福するように何回か拍手をする。


「みんなへの報告は今日ですか?」


「うん。ちょうどみんな集まるしね」


「みんな?」


「うん」


悠人さんは満面の笑みで頷く。


「第76移動隊のメンバー全員」






「朝早くに悪いな」


私を含め、みんなが腰かけている中、周が一人立ち上がって周囲を見渡している。これを立ち上がってみたら本当にすごい様子だろうな。


私はあまり周や由姫以外の人と一緒の任務は少ない。まだ私が慣れていないと言うのもあるけど、訓練以外ではまず顔を合わせることはない。だから、ここにいるメンバーがどれだけすごいかよくわかる。


最強の剣士との呼び声がある音姫さん。


音姫さんと対抗するように最高の拳士と呼ばれる由姫。


全身真っ黒だけど、その戦闘技術は高校生にして世界トップクラスの孝治さん。


最高の精霊召喚師である悠聖さん。


最強の精霊召喚師である俊也さん。


世界に名を連ねる砲撃術師の楓さん、エレノアさん。


特殊なレアスキルで地獄を呼び出す光。


最強の魔術師であるアル・アジフさん。


竜言語魔法という魔術を異なる体系を用いるリースさん。


膨大な魔力と繊細な操作が出来る都さん。


世界三指に入る速度を持つ亜紗さん。


世界最強のフュリアスパイロットの悠人さん。


魔界の魔王の娘のリリーナさん。


絶対防御のフュリアス、イグジストアストラルを持つ鈴さん。


防御の天才であるアルトさん。


音界のパイロットのルナさんにリマさん。


そして、あらゆる部門で器用貧乏のようにあらゆる作業が出来る周。


よくよく考えてみると、この中に私がいていいのかなと思ってしまう。


「みんな、昨日、予定が多く変わったことに疑問があると思う。だから、説明させてもらう。昨日、カリフォルニア地下刑務所第八層第一独房から真柴隼人が逃げ出した」


その言葉に驚いている人の数は多い。驚いていないのは第5分隊の一部と私くらい。私は真柴隼人の名前に聞き覚えがないからだ。ただ、真柴と言えば、私が小学栄の頃に中東であった戦いの中であったはず。あの時は中東の組織である『ES』の比較的おとなしい穏健派がほぼ壊滅したという話もあった。


その時に真柴という名前が出てきたはずだ。


それに、悠人さんも真柴だし。


「真柴隼人は悠人の父親だ。逃げ出した理由はわからないが、おそらく、悠人を狙っているってことだけは確かだ」


その言葉に視界の隅で悠人さんが微かに肩を震わせた。隣にいるルナさんの表情が強張るけど、その近くに座っている和樹さんや悠聖さんの表情はさらに強張っている。


だって、リリーナさんと鈴さんが凄い顔でルナさんを睨みつけているからだ。


周が小さくため息をつく。


「そこ、リリーナと鈴は話を聞いているのか?」


「聞いているよ。そこお泥棒猫をどうにかして殺す算段を立てようって話だよね」


「違うよ。殺すじゃなくて、死ぬよりも恐ろしいことをしようって話に」


「鈴、明暗。周、今すぐ」


周がため息をついて腕を上げ、そして、振り下ろした。たったそれだけで魔術が発動して二人の頭の上に空気の塊が落下する。ダメージ的には拳骨を落とされたくらいかな。


「話をよく聞け。みんなに集まってもらったのはこれからのことだ。真柴隼人の脱獄ははっきり言って予想外だ。だから、これからの作戦に仕様が出来る可能性があることをみんなは理解して欲しい。特に、第5分隊のフュリアスパイロットは気をつけるように」


「質問」


すると、アルトさんがすっと手を上げていた。


「つまり、真柴隼人はフュリアに乗ってくるということだね」


「おそらくな。真柴隼人の狙いは悠人だ。悠人を倒すにはフュリアスを使ってくると思う。だから、リリーナ、鈴、リマ、そして、ルナの四人は最大限の注意を」


「海道君。予備のパイロットは必要ないの?」


委員長さんは確か固定機体は持たないけど、フュリアスに乗ることは出来るはず。だから、周にそう尋ねたのだろう。固定機体を持つ予備のパイロットの七葉さんや琴美さんの名前は無かったし。


周はゆっくり頷いた。


「相手のフュリアスの性能が未知数だからな。本音を言うなら戦わない方がいいが、そうは言ってられないだろ。だから、実戦経験豊富な四人に任せる」


リリーナさんは後方支援特化にしやすい機体なのに最前線で特攻する気質があるらしいし、前線に立っても壊れない機体を持つ鈴さんは後方支援だし、よくよく考えるとバランスが悪いような。


「他の問題は色々あるんだが、そこはどうにか出来るから気にはするな。さて、今回みんなを呼んだ本題を話そう」


その言葉にその場にいるほぼ全員が呆けたような顔になった。だって、普通は今までの話が本題だと思うはず。現に、私もそうだった。でも、周はそれが本題じゃないらしい。もしかしたら、もっと大きな事件が起きて、


「悠人とルナが付き合うことになった」


「はい?」


私は思わず声を出していた。実際にこの場にいる全員が本題とはかけ離れた内容に、


「ほう。そうか。悠人、めでたいな」


「おもでとさん。まさか、オレと同じハーレムルートを辿ると思っていた悠人が付き合うなんて」


「ジーザス!!」


「かず君? 今は普通にお祝いしようね。というか、意味、わかってないよね?」


「おめでとうございます」


「普通にお祝いできる都の精神に少し驚いているわ」


「私はいいと思うけどな。弟くんも早く誰かと付き合って欲しいし」


「その言葉、そっくりそのまま返すからな!」


「僕は素直にお祝いすればいいと思いますよ」


「俊也君。海道君達は放っておこう」


「いやー、めでたいね。本当にめでたいね」


「アルト、あたしにはこの状況が理解できないのにどうして呑気に祝えるの?」


「ルナ、おめでとう」


「絶対に認めないから。こんな〇〇〇〇〇(ピー)と悠人が付き合うなんて」


「リリーナ、落ちついて。大丈夫、悠人はいつかあんなき〇〇(ピー)いなんて飽きてすぐに私達のところに戻ってくるから」


どういうことーー!!


叫びたかった。でも、叫べなかった。むしろ、この状況をおかしく考えていることが異端。発言を聞いていても琴美さんとリコさんくらいしか私と同じ意見いないし。


「どういうことよ」


私はただ、小さくため息をつくしかなかった。

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