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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第二章 学園都市
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第百五十話 借り物競走

こんなのが実際の体育祭であったなら完全にぐだぐだになるだろうなと思いながら書きました。本番ではもっとはっちゃけて書く予定です。覚えていれば。

天国と地獄。


この名前を知っている人は多いはずだ。オレも暇な問いはヴァイオリンで戯れ程度に弾いている。完全に成功するのは本当に確率が少ないが。


ただ、天国と地獄は流れているが、グラウンドで走っている人はいない。


ちなみに、オレは一人で見ている。由姫と夢の二人はお花を摘みに行った。


現在の種目は借り物競走。メグはまだ走っていないがこの学園都市の借り物競走だけは学園都市しかできないものでもある。


「海道君、隣いい?」


オレが横を向くと、そこには委員長と俊也の姿があった。というか、手を繋いでいるし。


「報告しに来たのか?」


「えっ? あっ、そういうわけじゃないけど」


委員長がそう言った瞬間に俊也が泣きそうな顔になる。委員長は一度振り返ってそんな俊也の顔を見てまた戻ってきた時には小さく頷いていた。


「お試し期間かな。俊也君が付き合って欲しいと言ってきたんだけど、私は自分に自信がないから」


「そんなことありません。鈴木さんは優しいですし可愛いですし」


「あー、ごちそうさま。ともかく、座れよ。体育祭実行委員の仕事もかなり落ち着いたんだろ」


「うん。みんなが頑張ってくれるから。それに、俊也君とデートしろってうるさいし」


「僕は鈴木さんと一緒にいられれば本望です」


ここはオレにまたごちそうさまという言葉を言わそうとしているんだよな? というか、そう思っていていいよな?


そう考えていると、グラウンドに一人の女子生徒が入ってくる。その後ろにいるのは困った顔をしている音姉。借り物にされていたのか。


「ちゃんと音姫さんに許可は取っているから」


「なるほどね。委員長、予選で使われる借り物ってどんなものがあるんだ?」


「えっとね。多いのが人、かな。ただ、シフトから考えてここの近くの人。ちゃんと場所は書いているし、そこから動かないように海道君以外の上司からは了承を取っている」


オレから取らなくても音姉だから大丈夫だろう。それに、委員長のことだから必ず誰かに代役を頼んでいるはずだ。それくらいしていてもおかしくない。


もしかしたら、今、姿の見えない孝治達に頼んでいるかもな。


「他にも、第76移動隊以外の神剣とか、『GF』最新型デバイス内蔵武器とか、時価総額3000万円を超えるものとか」


聖骸布(アストラル)なら一発で3000万円を超えるだろうな。見た目で4000万は硬く、詳しく調べてみたら億の大台に到達していてもおかしくないものだったし。


まあ、最初の二つは正直、学園都市じゃ手に入らないから完全にSランクの借り物だ。


「委員長さん?」


「えっと、体育祭実行委員長?」


「由姫さんに海道君のお友達かな? 私は鈴木花子」


「星村夢、です」


「星村さんだね。星村さんは北村さんの応援?」


その言葉に夢がこくりと頷いた。オレの横に由姫が座る。


「まだ始まっていませんよね」


「ようやく第一組の一位が決まったところだ。というか、見ているのはかなり退屈なんだよな。本番ならともかく、予選の借り物競走ってアナウンスの一つもないから誰が何を借りたかわからないし」


本番ならどのレーンの誰が何を借りようとしているのかまで教えてくれる。候補に見つかる人がいれば準備できるというものだ。ただ、予選ではそんなものがない。


まあ、簡単なものから難しいものまでたくさんあるからな。過去に会ったのはとある学校の校長のカツラとか、オレ自身とかあった。


その時、ちょうどちょっとした事件があったため本当にかわいそうなことはしたけど。


「じゃ、兄さんか委員長さんがアナウンスをすればいいのではないですか? 機材はありますし、借り物競走を見ている人は少なくありません。ここは飛び入りで行っても大丈夫じゃないですか?」


「委員長」


「どうする?」


オレは委員長と視線を合わす。目でわかる。乗り気だ。そういうオレも乗り気だ。負けるわけにはいかない。だから、オレは腕を振り上げた。


「最初はグー!」






『第二組より体育祭実行委員長鈴木花子が飛び入りで実況を行います。これは予選の借り物競走が静かという指摘があったので急遽やらせていただくことになりました。では、第二組の皆さま、スタート位置についてください』


オレはそんな様子を体育座りで見ていた。


そんなオレを由姫は慰めてくれる。


「元気出してください」


「そう言うわけにはいかないだろ。せっかく、せっかく暇つぶしになると思ったのに。楽しそうだったのに」


「後半が本音?」


夢の言葉には無言を貫く。どっちも正しいけど、どちらかというと後者という感じだ。


「そう言えば、今日はそんなに用事を入れていないんですね」


「昨日で孝治達がかなり終わらしてくれたからな。前倒しで何件かやっていたんだよ。だから、今日はかなり余裕がある。そもそも、メグと合流する予定だったから余裕がないとだめだしな」


「そうですね。私は兄さんと二人がよかったですけど」


「ごちそうさま」


夢が呆れたように言う。その言葉に由姫の顔は真っ赤に染まった。


自分で言った言葉なんだからそこまで赤くなるなとは思うけど、由姫の性格から考えて仕方のないところのもあるだろうな。


オレは小さく息を吐きながら夢を見る。


「夢は大丈夫なのか? 何かクラスの仕事でも」


「大丈夫、だよ。今日はもう何もないし、メグの応援をしに来ただけ、だから」


「そっか。夢は学年対抗で本当に活躍したからな」


その言葉に夢の顔が真っ赤になる。


学年対抗は夢のおかげで勝つことが出来た。というか、相手の目の前で急降下するボールなんて受け止めることは本当に難しい。


多分、夢がいなかったならじり貧で負けていた可能性もある。


「まあ、お疲れ様。今日はゆっくり休めばいいさ」


「ありがとう」


オレ達はこれから忙しいけれど。


第二組のいないグラウンドを見つめると、次の第三組にメグの姿を見つける。思っていたより早かったな。


もう少し後、第七組くらいで来ると思ったいたのに。


「兄さん、メグさんは勝てると思いますか?」


「借り物によるだろうな。メグはSの借り物を狙うって言っていたから何が出るか。聖骸布(アストラル)は持っているからとあるものが出たら大当たり」


「前々から疑問だったんですけど、どうして聖骸布って書くんですか? アストラルだけでいいような」


「色々と逸話が多くて詳しい話を語るのは難しいんだが、聖遺物って知っているよな。主に、宗教を作り出した神のごとき人の遺物。その中の一つに布の逸話が残っているんだ。曰く、どんな炎にも焼く尽くされることなく、神の従者の遺骸を炎の中で守り続けたとされるもの。それをいつの間にかアストラルと呼ぶようになって、聖人の遺骸を守る布、つまり、聖骸布がアストラルとなったんだ」


この話はポピュラーどころか比較的新しい文献を漁らないと出てこないんだよな。遥か昔、それこそ魔科学時代の本とかには一切出てこない、無いだけで存在したかもしれないが、ともかく、見つかることのないもの。まあ、魔科学時代の書物なんて現存しているのはアル・アジフの記述だけだからな。


聖骸布(アストラル)の命名理由はその部分が強い。


「初めて知った。聖骸布(アストラル)については、調べたことがあるから」


「まあ、そういう聖遺物に関する話はかなりあるからな。一番有名なのはデュランダルかな。世界史上もっとも有名な聖剣。聖遺物が四つ埋め込まれているとされているもの」


「兄さん、エクスカリバーは?」


「エクスカリバーは聖剣というより伝承の剣という意味合いが強いな。聖剣としてエクスカリバーが有名になったのはゲームが発祥と言われているくらいだし」


そもそも、エクスカリバーという名前の神剣が存在しているし。


「二人共、メグが」


グラウンドに視線を向けると確かにそこにはメグの姿があった。第二組が続々帰ってきているところをみると、それほど難しいものじゃなかったのだろう。


「さてさて、メグがどんなものを引くか気にはなるよな」


「私としては面白いものを引いてくれればうれしいのですが」


「多分、会場のみんなが期待している」


お前ら二人って案外酷いよな。


第二組全員がゴールに到達する。すでに第三組は準備万端だ。


『第三組、スタート!』


パァンと音が鳴り響き、メグ達が走り出す。こういう時は素早く進めて行かないと借り物競走はかなり時間がかかるからな。


メグが目指しているのはSランクの借り物札。落ちているそれを拾い上げて内容を見る。そして、固まる。


他の参加者は最低ランクのものばかりを取ってすぐさま走り出していた。


メグの顔にあるのは困ったような顔?


オレが首をかしげると聖骸布(アストラル)を取り出して反転する。


「いいのか、これ?」


「さあ?」


「いいと、思うよ」


オレはただ、頭を抱えるしかなかった。ある意味反則だろ。

体育祭は多分、後50話は続きそうな予感がします。

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