第四十一話 告知
「三日後の午後八時。金色の鬼の封印作業に入る」
オレは駐在所に全員を集めた。もちろん、学生『GF』を含めた全員を。
「作業するメンバーは第76移動隊有志。学生『GF』の全員は街の混乱を防ぐために出動の準備をして待機して欲しい。何か質問は?」
「はい」
真っ先に手を挙げたのは音姉だった。
「第76移動隊が有志の理由について説明をお願いします」
今回は記録も取っている公式の場だ。音姉はオレに敬語を使う。
「こんかいの任務は極めて厳しい任務。そのため、隊長である私、海道周を除いて有志の参加とする。命を賭ける覚悟があるなら来て欲しい。他には」
「はい」
次に挙げたのは千春だ。
「学生『GF』の待機の理由について説明をお願いします」
「今回の任務で街に被害が出るかどうかは予測できない。何らかの被害が出て混乱する可能性もあり、学生『GF』の諸君は待機をして欲しい。もちろん、準備と共に。何かが起きた時、街を守って欲しい。他に質問は?」
今度は誰も上げない。
今更敵の戦力を聞くのも野暮だし、参加表明するのも野暮だろう。オレの推測では第76移動隊からは八人参加。そう考えている。
「では、解散する。学生『GF』には資料を配っているためそれを参考にして欲しい。今から第76移動隊は緊急会議をするため速やかに立ち去ること」
『了解』
学生『GF』の声が重なり駐在所から出ていく。出て行くみんなの顔はどこか険しい。
オレは記録デバイスを外して小さくため息をついた。
「はあ、これは送らないからダメだとはいえ、話し方を変えるのはだるいな」
「そうかもね。弟くん、緊急会議の内容は?」
「参加するかしないか。自由に決めてくれ」
「なら、俺は参加しない」
真っ先に行ったのは孝治だった。オレ以外の全員が驚いた顔になる。
「理由は?」
「街を放っておくことはできない。それが理由だ」
「わかった。参加しないならここから出て行ってくれ」
「わかっている」
孝治はそのまま駐在所から出て行った。沈黙が部屋を覆う。
「他は?」
「弟くん、何も思わないの?」
音姉が肩を震わしている。
「孝治くんがいなければ作戦の成功率が下がることは弟くんが一番わかっているはずなのに、どうして引き留めようとしないの?」
「音姉、今は静かに」
「静かにしない。これだけは言わせて。今の弟くんじゃだれも付いてこない。だけど、私は弟くんを守るために参加する。その代わり、これが終わったら孝治くんと話をして。お願いだから」
音姉が肩を震わしている。よっぽどショックだったんだろう。
オレは他の全員を見渡した。
「他は?」
「兄さん。聞くだけ野暮ですよ。姉さんがここまで言うならみんな参加しますよ」
「そういうことだね。周兄は私達のことがわかってないよ」
由姫と七葉の二人が参加を表明したのを聞いてオレは思わずため息をついていた。ちなみに悠聖や浩平もため息をついている。中村とリースは呆れた顔だ。
「あれ? 私、何か変なことを言ったかな? 悠兄、何か言った?」
「変なことは言ってねえよ。ただ、こういうことは周隊長にパスで」
「パスするな。あのな、音姉も由姫も七葉も孝治がオレ達に本気でついて来ないと思ったか?」
「無駄だったのか」
その言葉と共に孝治が駐在所の中に入ってきた。三人は完全に目を丸くしている。
「つか、音姉、オレ達の企みに気づいておけよ」
「えっと、説明をお願い」
「孝治が参加しないことで由姫と七葉が参加しないことに出来れば一番だったけどな」
ある意味音姉の余計な言葉で無理になった。
音姉はようやく気付いたのか額に汗が流れている。
「いや、あのね、そのね、別にそういうわけじゃないけど。そ、そう、演技、は通じないよね」
みんな思いっきり頷いている。
オレは小さくため息をついた。
「由姫と七葉はまだ経験が浅い。だから、今回の任務は怪我をする可能性が高いからな。本当なら辞退して欲しかったけど」
「兄さんがいるから大丈夫です」
「周兄いるしね」
オレを頼りにされてもポジションにはオレは隣にいないんだけどな。最前線に出て戦っているから。
オレは小さくため息をついて机の上に置いていた資料を取った。
「今回の作戦資料。ポジションは決定な。孝治、悪かったな」
「いや、一度やりたかったからいい」
なんとなくその気持ちはわかるけど、本当なら音姉がやるはずだったんだよな。そこに孝治がオレがやると言いだした。おかげで成功やら失敗やらわからない状態に。
「まあ、オレと亜紗が二人で押さえつける。孝治と中村は空中で飛ばないように牽制。飛んだら撃ち落とせ。他は音姉と悠聖の護衛及びオレ達の援護」
オレは全員の顔を見渡した。おそらく、由姫と七葉は不安になっているに違いない。戦う敵はオレ達よりも強い。それだけは確かなのだから。
「全員ゆっくり休んで三日後に備えること。じゃ、解散で」




