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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第二章 学園都市
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第百三十九話 二日目の朝

――――予想が外れたらどうする?


頭の中に響く声。オレ自身の心にある不安の表れ。


――――考えている作戦が失敗したらどうする?


いくら自信満々に推測したところでそれが失敗したなら全てを失う。


――――大切な仲間が死んだらどうする?


考えたくないのに考えてしまう。それはオレの心の弱み。


――――逃げ出したいんじゃないか?


オレが背負っている重みは18歳にしては重すぎる。


――――楽になりたい。


ああ、そうだ。確かに逃げ出したいとは思ったことがある。


――――だけど、


だけど、オレはこの道を突き進むと決めたから。


――――諦めたくない。


自分でそう決めた道なのだから。だから、オレは、






「お兄ちゃん! お兄ちゃん!」


由姫の声が耳に響く。それと同時に体を揺すられている。オレはゆっくり目を開けた。


目を開けた先にいるのは心配した表情の由姫。


「何か、叫んでいたか?」


「そうじゃなくて、お兄ちゃんが時間になっても起きて来ないから心配して。声をかけても反応しないし、もしかしたら、お兄ちゃんが」


「悪かった」


オレは起き上がりながら由姫の頭を撫でる。疲れていたとは思えない。だけど、やっぱり緊張しているんだろうな。


例え、オレの推測通りに事が進んでも、オレは第76移動隊隊長の地位にいられるとは限らない。もしかしたら、誰かに殺されるかもしれない。

それでもいい。それでもいいはずなのにオレは、まだ、諦めきれない。


「不安、なんだよ。本当に作戦が成功するのか、本当にこのままで大丈夫なのか。」


「お兄ちゃん」


「失敗したら全てを失う。成功しても、オレは失うものが出てくるかもしれない。それが地位や名声なら大丈夫だ。でも、みんなを失うと考えたらオレは」


その時、オレは由姫に抱きしめられていた。


「大丈夫だよ。私は大丈夫だから。今回の体育祭はたくさん傷つくかもしれない。たくさん批判を浴びるかもしれない。でも、私はお兄ちゃんの隣にいるよ」


「由姫」


「妹だからじゃない。お兄ちゃんを、海道周を手助け出来る白百合由姫として支えたい。だから、お兄ちゃんは前に進んで。それがお兄ちゃんが決めた道なら私は喜んで手伝うから」


「お前は、どうしてオレに手伝ってくれるんだ?」


疑問だった。不思議だった。未だに納得がいっていない。オレみたいな青二才がただの推測だけで語っているのだ。


例え、義理の妹である由姫だとしても納得出来ないと思う。


「自惚れないで。妹だから、一人の女として好きだから、お兄ちゃんを手伝うのじゃない。お兄ちゃんの未来に私は向かおうと決めたから。例え否定されたって、私は自分の決めた道を進む」


「そっか。そうだよな。オレは一人じゃないよな」


親父達とは考えが違う。もしかしたら、親父達が異端ではなくオレ自身が異端であり世界の滅びを手伝っているんじゃないかと思える。


結果が出ないから、というわけではない。結果に求めることが多すぎるから。


「もし迷ったら振り返ってよ。お兄ちゃんの後ろには私やお姉ちゃんみたいに頼りになる人がいるから」


「そうだよな。ところで、由姫の後ろはどうなんだ?」


オレは由姫に尋ねる。これに気づいたのはほんの今さっき。由姫に癒されていたら完全に気配を感じれなかった。


「後ろ?」


振り返った先にいたのは音姉と義母さんの姿。音姉は頬を赤く染め、義母さんはとても面白いものを見つけたかのように笑みを浮かべている。

状況としては最悪だけど、開き直るしかない。


オレはとっさに離れようとした由姫を抱き締めた。


「お、お兄ちゃん?」


戸惑いの声。オレはそれを聞きながら耳元で囁く。


「もう少しだけ、頼む」


「うん」


頬を赤く染め頷く由姫。ここで部外者の、


「あうあう、由姫ちゃんと弟くんが非行に走ってる」


「あらあらまあまあ」


の二つの声が無ければ雰囲気的には押し倒していたかも。というか、非行ってなんだよ。


オレは少しだけ由姫を抱き締める。不安な自分を由姫に知らせるかのように。






「由姫ちゃんと弟くんのせいです」


「兄さんのせいです」


「オレのせいだ」


結果、遅刻した。


オレと由姫と音姉の三人は揃って集合場所(駐在所ではない)に正座させられている。


「こんな大事な時に遅刻するとは自覚があるのか?」


腕を組んだ孝治が高見から見下ろしてくる。まったくもって反論出来ません。


「周、お前は第76移動隊隊長だ。第76移動隊隊長は女の子といちゃいちゃして遅刻する人という噂があったらどうする?」


その言葉にオレ達三人は同時に視線を逸らした。孝治の額に青筋が浮かぶのがわかる。


隊長と副隊長揃ってこうだもんな。怒るのは当たり前だ。


「くっ、羨ましい」


「レーヴァテイン、セット」


唐突に響き渡る死刑宣告レーヴァテインの名前にオレ達の顔が引きつるのがわかった。


振り向いてはいけない。振り向けば、とばっちりを喰らう。


「孝治? 羨ましいって、どういうことなん?」


「ひ、光。落ち着け。昨日ちゃんと可愛い」


「死にさらせ!」


そして、孝治に放たれる死刑判決レーヴァテイン。こういう時の中村を止めようと思えば本気で死ぬ気でいかないとダメだからな。


爆音と同時にオレ達は両手を合わせた。


「悪い、遅れた」


呑気に響き渡る声。その悠聖の声にオレ達は両手を合わせて目を瞑った。


「死にさらせ!! このアホんだら!!」


「『胡蝶炎舞』に『炎熱蝶々』とレーヴァテインの同時展開はさすがに死ぬと思うからな!」


「ブラスト!」


「孝治ガード!」


孝治、不幸なり。


「ブラストブラストブラストブラストブラスト!!」


「ちょっ、それ以上はさすがに、ギャーッ!!」


ああ、頭の中で光景が簡単に思い浮かぶ。オレは二人のご冥福を祈った。






「遅刻してすいません」


「口を滑らせてすみません」


オレ達の代わりに座る悠聖と孝治。悠聖はともかく孝治の理由はすごいよな。


「孝治は第76移動隊副隊長って自覚はあるん? ただでさえ学年都市の中でも残念イケメンって呼ばれてんねんで」


オレは隣にいる都に尋ねた。


「都、残念イケメンって何だ?」


「孝治さんのことです。学年都市トップ3に入るイケメンで第76移動隊副隊長ありながら、小学生、から彼女を持っているため名付けられました。後は、光さんが美人というより可愛い方面だからでしょうか」


「なるほどね。確かに孝治はイケメンだよな」


「「周様(兄さん)の方がイケメンです」」


うん。お前らならそう言うと思った。


「ただでさえ女の子近寄ってくるのに、うちより可愛い女の子がいっぱい寄ってくるのに、うちなんて」


「光、ストップ」


中村の唯一のストッパーである楓がやんわりと中村を止めた。


「今日からは第一特務の人も本格的に手伝ってくれるんだから。ほら、二人共ポカンとしてる」


確かに、アルトとリコの二人を見れば口を開けてポカンとしているよな。


二人は昨日、学園都市の案内を都と琴美にしてもらっていたのだ。だから、体育祭の護衛の参加は今日から。


「っと、さすがはリュミエル・カグラ。世界で唯一地獄の異名を持つ光を止めるとは」


確かにキレたら音姉くらいしか止められないしな。


「亜紗、第76移動隊って怖いね」


『基本的にはいい人達だよ。基本的には』


「そなたら、話が脱線しておる。今は遅刻した者達の魔女裁判じゃろうに」


『絶対に通じないと思いますが』


エリシアの言うように魔女裁判って何だ?


「とりあえず、今日の予定を確認するぞ」


オレは何かを言われることを覚悟で口を開いた。


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