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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第二章 学園都市
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第百三十二話 競技

パァーンとピストルの音が鳴り響く。それと同時に駆け出す私よりも上級生の人達。その様子を見ながら、私は肩に聖骸布アストラルを巻いた炎獄の御槍の重量を少しだけかけつつ小さく溜め息をついた。


ただ見ているだけというのはかなり大変だ。見ているだけというより観客席内で何か異変がないか見守っているだけだけど。


今、私がいるのは総合大学付属高校のグラウンド。


総合大学付属高校のグラウンドは学園都市の中でもかなりの大きさを誇っており、設備の良さもかなり有名な場所だ。だから、体育祭ではかなりの競技に使用される。


もちろん、グラウンド自体の大きさもそこそこあるのだから警備もそこそこの数がいるはずだった。


でも、警備はたったの四人。


学園自治政府所属で元第76移動隊の佐野浩平と、同じ第76移動隊のリースさんに第十三学園都市地域部隊の壽厚ことぶきあつしさん。壽さんは何故かロドリゲスと呼んで欲しいと言っていた。


佐野さんはリースさんの彼氏らしく、見た目はかっこいいと言えなくもないし、しっかり学園自治政府の制服を着こなしている。髪は前が短く後ろは長くて無造作に括られているから違和感はあるけど。


リースさんは第76移動隊でも一緒に仕事をしたことはなかった。もう六月だというのに長袖の黒いゴスロリ服を涼しそうに着ている。頭の帽子は前見た時はまるで犬のような帽子だったのに、今日は麦藁帽子だ。違和感しかしない。


壽さんは何故か上半身裸で下半身はブーメランパンツ? よくわからないが、ともかく半径20m以内に人の姿はない。そんな中にいるからか、正直落ち着かない。


「大丈夫?」


隣に座っている夢が心配した表情で尋ねてきた。私はそれに笑顔で返す。


「大丈夫大丈夫。夢こそ平気? そろそろ夢の出場する短距離走だけど」


「準備、運動は、万全。後は、天に祈る、だけ」


「夢ってそんなに速くないもんね」


速くはないが遅くもない。速いというのはそう、今行っている女子3000m走(学校から代表一人)をぶっちぎりの先頭を走っている委員長さんのことを言う。


だって、他の人はどう考えても陸上競技用の服(陸上競技部だけの特権)を着ているのに、委員長さんだけは体操服。なのに、委員長さんはすでに一周500mのトラックの四周目にして全員を一周抜かしている。


周から聞いていた以上に委員長さんは速い。


「陸上競技部が」


「うん、夢の言いたいことはわかるけど、委員長さんは第76移動隊で非戦闘員だから。戦闘出来ないというわけじゃないけど、魔術無しのマラソンは女子の部隊内三位だし」


一位は由姫で二位が音姫さん。私はブービー。最下位は魔術が無ければ走る気のないリースさんだ。


「すごい、ね。天性、かな」


「おや、知らないのですか?」


いつの間にか私達に近づいてきていたハトが委員長さんを見ながら口を開く。


「彼女、都島学園都島高校生徒会長は中学生の頃、全国に名を轟かせていた超有名陸上選手だったのですよ。彼女は控えめにしか自分の記録を話しませんし、体育祭では本気を出さなかったらしいのですが、中学二年の時に叩き出した中学記録は未だに高校生ですら破られていないほどです」


「雑学をありがとう。確かに、委員長さんは自分の足の速さに関しては謙虚よね。陸上選手の方が道はあるような気がするけど」


「委員長は兄さん達と一緒にいたいために第76移動隊に入ったんですよ」


そう言葉をかけてきたのは由姫だ。由姫は急な怪我人によってメンバーが足りなくなったため、補欠メンバーとして短距離走予選に参加したのだ。結果はもちろん圧勝。100m走を11秒83で走り抜けた。もちろん、魔術無しで。


由姫は里宮本家八陣八叉流というかなり特殊な武術をしているから、魔術無しでもかなりの速度を出せる。


「お疲れ、様。本当に、速かった、よ」


「あれでも軽く流したつもりなんですけどね。本気で走れば5秒台ですし」


「50m走?」


私は顔がひきつるのがわかった。由姫の本気はかなり速い。私との模擬戦では度々視界から消えられている。


周が言うには脳が目についていっていないらしい。これに関しては慣れが必要だとか。私からすれば慣れるのはかなり大変だと思う。


最近はようやく音姫さんの剣撃が少しずつ見え始めたところなのに。


私達の視界の中で委員長さんが圧勝でゴールテープを切った。未だに走っている人の何人かは泣いているような気がする。


都島高校は地味に学園都市内でも体育祭強豪校の一つとなっている。個人種目は弱いけど、点数配分が桁違いに高い学年選抜種目やさらに配分の高い学校選抜種目で確実に一位を取るからだ。学年選抜はどこかの学年がだが。


強豪校と言ってもここ四年ほど前からの話だけど。


「やはり、圧勝ですね。3000m走も都島高校が手に入れたということは、点数配分的に言えば学年選抜と学校選抜がネックになりますね」


「学年選抜は一年と三年、学校選抜は一位確定じゃないかな? さすがに、あのメンバーで負けるのはありえないし」


特に学校選抜。メンバーの大半が第76移動隊で、体育祭が始まる前から一位は確実と言われているくらいだ。私もそう思う。


「そうなると、強豪校が集まるこのブロックの相手は全て予選敗退ですね。つまり、トトカルチョで勝てる確率が上がります」


「トトカルチョって、都島高校の倍率は1.3倍だよね。儲かるの?」


「儲かりません」


ですよね。


体育祭のトトカルチョは総合優勝する高校はどこかを当てるものだけど、今までのほとんどが総合優勝=学校選抜一位と学年選抜どれかで一位という方程式があるためか、都島高校の優勝をみんな予想している。


おかげで次に低い倍率が3倍超えというくらいになっている。


「とは言っても、数少ない資金を増やすチャンスですし、つぎ込めるだけつぎ込みました」


「負けたら、どうする、のかな?」


夢の疑問はみんなの疑問だった。ハトは小さく笑みを浮かべて空を見上げる。


「次の日の朝、近くの川で水死体が見つかることでしょう」


「兄さんにもプレッシャーをかけておかないと」


由姫が半笑いでハトを見ている。さすがにそんなことをされてはクラスメートとしては嫌だから何としてもでも勝たないと。


「そう言えば、見張り、大丈夫?」


「大丈夫ですよ」


そう答えたのは私ではなく由姫だった。


「浩平さんもリースさんも犯罪や不正は大嫌いですから。浩平さんの実力なら本当は一人でこのグラウンド程度見渡せますよ」


「ほぉ、そんなにすごいのですね」


「うん。それに、今でも術式が展開されているから」


「術式?」


私は目を瞑って術式の反応を確認する。確かに、何かがあるような気がするけど、それはそれでわからない点が出て来る。


だから、私は目を開けて由姫に尋ねた。


「術式の反応はあるけど、ここって術式阻害空間の中だよね?」


身体強化魔術も許可されてしまえば、体育祭は優秀な魔術師の独壇場となる。だから、こういうスポーツでは徹底的に魔術は排斥されるのだ。まあ、阻害空間内でも破り方は簡単だから破壊することは出来るけど。


「そうですよ。術式阻害空間は魔術に関しては作用します」


「そういうことですか。彼女の竜言語魔法には作用しないと」


ハトがそう言った瞬間、由姫の目が微かに細くなったような気がしたけど、多分、気のせいだろう。それよりも、


「竜言語魔法?」


聞いたことはあるけど、それが何だか覚えてはいない。


「竜言語、によって発動する、魔術の上位、だったと思う。図書室にある、魔術大全に、名前だけは」


「そうです。リースさんは数少ない竜言語魔法の使い手ですから、フィールド内での犯罪行為は簡単に見つかりますよ」


にっこり笑みを浮かべながら由姫は言うけど、その笑みのどこかに少し怖いような感じがある。


『800m走総合大学付属高校グラウンド予選に参加する選手は、今すぐ入場門に集まってください。繰り返します。800m走総合大学付属高校グラウンド予選に参加する選手は、今すぐ入場門に集まってください』


グラウンドにアナウンスが流れる。ちょうど、私が出る競技だ。


「由姫、少しの間交代してもらっていい?」


「大丈夫ですよ。そのために来ましたから。メグさん、今までの訓練でメグさんは強くなっています。だから、メグさんが中間試験を必ず乗り切ってください」


「うん」


私は聖骸布アストラルを巻いた炎獄の御槍を由姫に預けて入場門に向かって走り出す。


ライバルは誰だけしらないけど、魔力負荷をかけている今ですら体はかなり軽い。魔力負荷を解けばどこまでいくか不安なくらいだ。


私は少しだけ笑みを浮かべながら魔力負荷を緩めた。


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