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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第二章 学園都市
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第百三十一話 体育祭初日

なかなかスムーズに書けています。久しぶりにスラスラ言ってます。多分、学校が始まったからかもしれません。

体育祭初日は基本的に静かだ。別に種目をしていないというわけじゃない。短距離走や長距離走の予選が多いからだ。団体種目でない以上、駆け引きはそれほど多くなく、出場者が必死に走り回っている。


だから、体育祭初日は警備がしやすい。だが、警備がしやすいとは言えいさかいが起きないというわけではない。それを止めるのが『GF』の地域部隊だ。


オレ達はその一つである第十三学園都市地域部隊の駐在所に来ていた。隊員の大半は体育祭のために動き回っている。だが、駐在所にも最低限の人数はいるのだ。


駐在所に入った瞬間、筋肉がムキムキで上半身裸の男(高校生)が白く光る歯に光を反射させ満面の笑みで迎えてくれた。


「ようこそ、第十三学園都市地域部隊へ」


チラッと横を見ると亜紗が完全に視線を逸らしていた。確かにその気持ちは本当にわかる。正直、耐性がなければかなり辛いはずだ。


耐性があってもかなり辛いが。こいつの性癖を知っていれば。


「おや、海道周第76移動隊隊長ではありませんか」


「よっ、アレックス(源氏名)。紅はいるか?」


「紅隊長なら奥の部屋にいます。海道周隊長からビシッと言ってやってください。女の子に目を向けるのではなく男の子に目を向けろと」


俊也が逃げ出したい理由の85%をこのアレックスが占めている。噂によると、アレックスの上位存在にロドリゲスという人物がいるらしいが。


つまりはそういう性癖だ。


「とりあえず、奥にいるんだな。ったく、一体誰といるんだか」


勝手知ったる駐在所だからオレは普通に奥の会議室に向かう。そして、会議室のドアをノックした。ノックしてすぐにドアが開く。


「周じゃない」


会議室から現れたのは冬華だった。あまりのことにオレは一瞬だけ目を疑う。


「何か部隊の用事があったのか?」


「そうじゃないわよ。個人的な用事。悠聖達の用事と言っていいわね。ちょうど休憩時間だから来たけど」


冬華が視線を細める。そして、小さく溜め息をついて正の肩を掴んだ。


「こいつと一緒に外で待っているわ」


「仕方ないね。周、また会おう」


別に紅ならどうにかなったとは思うが、正が冬華に連れられて出口に向かう。ちょうどその方向にはボディビルダーの写真が大量にある雑誌を見ながらハァハァ言っているアレックスの姿。


オレは猛烈に頭が痛くなった。


「紅、今は業務時間中だよな?」


「当たり前のことを言うなって。海道、早く入れ。この部屋だけはさすがにマズいから」


確かにこの部屋だけはかなりマズい。どれくらいマズいかと言ったら第十三学園都市地域部隊が消え去るくらいにマズい。


オレは小さく溜め息をつきながら会議室という名の紅の私室に入った。そこにあるのは大量に張られたポスター。ただし、ぐらびああいどるとなる謎の集団のポスター。基本的に水着。


この部屋に来る度に焼き払いたい気持ちになるのはオレだけか?


『周さん、斬っていい?』


「頼むから斬らないでください。ここのポスターは超高級ばかりなんです」


紅が見事なジャンピング土下座を決める。亜紗が来る度にこんなことをしているような。


オレは小さく溜め息をつく。とりあえず、この部屋に来たら溜め息が多くなる。そう思いながら溜め息をついた。


「紅、今のところは順調か?」


「今のところはな。まあ、外部から人が入って来ないからいい人が見つからない、とアレックスが嘆いているけど」


「それは無視していいな。まあ、基本的にはそういう風になるだろうな。予選初日だからまだ大丈夫だけど、本番初日になれば忙しさは桁違いだからな。ちゃんと休暇は出しているか?」


その言葉に紅は満面の笑みで頷いた。


「当たり前だろ。今年こそは彼女を作るためにナンパ技術を増やしているというのに」


「誰がそんなことを聞いた?」


第十三学園都市地域部隊はこういう部隊だ。簡単に言うなら思春期真っ只中の中学生がたくさんいるかのような部隊。まあ、アレックスのようなアブノーマルな人物も数人いるが。


さすがにゲイはちょっと。


特に紅は隊長職よりナンパ技術を磨くことに力を入れているくらいだ。まあ、成功したという話は聞かないけど。


ちなみに、蛇足ではあるが、第十三学園都市地域部隊隊員は誰一人として彼女がいない。正確には誰もが妨害と牽制を行うから彼女が作れないが正しい。


一番近いのは俊也だろうな。


「海道みたいに彼女候補がたくさんいるのとは違うんだ。俺達の今はこの瞬間しかない。ならば、この瞬間を最高の時間にするために日々努力し、最高の男を目指して邁進する。それこそが大学生活というものだ。そして、それが男としての義務だ!」


ドヤ顔で言い切った紅に対してオレは手のひらに炎を作り出した。


「なあ、紅。どのぐらびああいどるだっけ、それを燃やせばいい? 答えないなら右から順番に」


「この私が間違っておりました! ですから命より大切なグラビアアイドルのポスターは燃やさないでください」


「命は軽いな」


紅がジャンピング土下座をするのをオレは呆れて溜め息をつきながら見ていた。アレックスといい紅といい、第十三学園都市地域部隊は変人が多い。


『うん。相変わらず変人にしか見えない』


もしかして、無意識に精神感応をしていた?


「誉め言葉をありがとう」


「『誉めてないから』」


オレの言葉と亜紗の文字がぴったり重なった。まあ、さすがに今のは誉めてはいない。


「ともかく、何かあればオレ達に連絡すること。これは体育祭前に言ってはいるが」


「わかっている。不審者と変質者と可愛い女の子がいたら連絡しよう」


「最後のは必要ないからな」


それに、変質者なんてお前らだ。


「チッチッチッ。わかっていないね。第76移動隊で可愛い女の子を必要とする関係者は三人はいる。命懸けで頑張る三人が」


「亜紗。後で中村、アルネウラ、優月、冬華、リースに報告な」


『了解!!』


「我が同士を殺すつもりか!」


多分、死ぬより辛い目に会うだろうな。確実に。


オレは小さく溜め息をついた。


「不審者と第十三学園都市地域部隊以外の変質者を見つけたらだ」


「なるほど。わかったが、海道はもしかして、イニシャルDか?」


『最低』


亜紗が即答でスケッチブックを捲るが、オレは紅の言った意味がわからなかった。というか、完全に第十三学園都市地域部隊が変質者だということをスルーしたよな。


多分、一番スルーすべきじゃないところを。


「それがわかっているならいいさ。困ったことがあれば連絡すること。基本的に音姉が受け付けるはずだから」


「了解って、スルーかよ! 相変わらず抜けているよな」


「意味がわからないのは答えないって決めているんだ」


オレは肩をすくめてドアに手をかける。そして、ドアを開けた瞬間、そこにアレックスの姿があった。オレはすかさず後ろに飛び退く。


「どうかしましたか? 海道周第76移動隊隊長」


「驚いただけだ」


「合田、どうかしたのか?」


「隊長、アレックスと呼んでください。そんななよなよした名前は僕、嫌いなので。隊長にお客様です」


アレックスが退いた先にいたのは私服姿の女の子だった。首から提げたのは許可証だから、学園都市外の人物か。


オレが紅をチラッと見ると、紅は目を見開いて女の子を凝視していた。オレは亜紗の手を取る。


「じゃ、紅。何かあったら連絡な。アレックス、出るぞ」


オレは亜紗の手を引っ張りながら会議室から出て扉を閉める。そして、小さく息を吐いた。


「彼女は?」


隣にいるアレックスに尋ねる。だが、アレックスは首を横に振った。


「冬華殿が案内してきた人物で」


どうやら冬華に直接話した方がいいみたいだな。


「ありがとう。アレックスも気をつけろよ」


「了解です」


オレ達はそのまま第十三学園都市地域部隊の駐在所から外に出た。そして、あの女の子を案内した冬華に近づく。


「彼女は?」


「妹、らしいわよ。紅の。少々ブラコン気味の妹」


『焼かれたかな?』


「僕も妬かれたと思うよ」


その文字は間違っているようで合っている。今頃、会議室は大変なことになっているだろうな。


余談ではあるが、その日に第十三学園都市地域部隊会議室でボヤ騒ぎがあったらしい。おかげで貼っていたポスターが全て焼けたとか。


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