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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第二章 学園都市
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第百六話 GFF-03Z1 エクスカリバーZ1

そろそろ狭間市での戦いも大詰めです。

秒速3518m。


専用装備を身につけたエクスカリバーが出した最速記録だ。エクスカリバーと言っても『GF』内で試験稼働が始まっているGFF-03エクスカリバーじゃない。


GFF-03Z1エクスカリバーZ1。


世界最高峰のパーツと装置を組み合わせ、精神感応とパワードスーツの使用を可能とした僕専用のフュリアス。


Z1は他のエクスカリバーと区別をつけるため周さんが26番目に開発し、開発から26回弄った末に完成した特殊エネルギー機関『Z機関』を使用した機体だからだ。


Z機関用にエクスカリバー本体もかなりいじっているため、性能は最近ロールアウトしたばかりのアストラルシリーズであるアストラルルーラより遥かに高い性能になっていたりもする。


エスペランサの甲板にあるエクスカリバー専用カタパルト。そこに、僕のエクスカリバーZ1がエクスカリバー専用エレベーターを使って移される。


『エクスカリバーの発進準備は出来ているから、タイミングはそっちに任せるよ』


委員長さんの声に僕は頷く。エクスカリバーZ1は今までのエクスカリバーとは違う。発進してからどれだけ加速出来るか。アル・アジフさんの危機にどれだけ早く行けるか。


エクスカリバーZ1にしか出来ないことはたくさんある。だから、


「エクスカリバーZ1、行きます!」


僕は出力を最大まで一気に上げた。エクスカリバーのエンジンが火を噴く。普通は一気に出力を上げても上手く加速しない。でも、今のエクスカリバーは装備が違う。


ハイニトロブースター。


ニトロブースターの強化版じゃない。ニトロブースターとは似ても似つかないくらいのエクスカリバーZ1戦闘機形態専用の真っ黒のパワードスーツだ。


加速という点では他の追随を許さないし、音速を超えることで出る衝撃波に耐えることが出来る。そもそも、音速を超えると衝撃波が出るって本当の話なのかな?


ハイニトロブースターに火が吹いた瞬間、エクスカリバーの体はカタパルトによって打ち出されていた。エクスカリバーが加速する。その時には機首を高く上げて一定の高度まで上がっていた。


すでにこの時にはエクスカリバーの速度は音速に達している。体にかかる圧力。でも、身につけているパワードスーツが緩和してくれている。


この加速で近距離を目指す場合、放物線を描くようにエクスカリバーの機首を動かさないといけない。そうしなければあまりの加速に通り過ぎてしまう。


機首を動かすのは慎重に。だけど、大胆に。最低限の軌道で狭間市へ、アル・アジフさんが信号を出した場所に向かわないといけない。


「待っていて、アル・アジフさん。必ず、間に合わせるから」






炎と炎がぶつかり合う。飛び散る炎を受け止めるのも炎だ。


メグは炎獄の御槍を握り締めたまま兄である北村信吾に向かって駆けだす。信吾が繰り出すのはまるで蛇のようにうねる炎。だが、メグはその中を一気に突っ切った。


「なっ」


「でやっ!」


槍を一閃。だが、その一戦は簡単に避けられる。


「何故だ。何故、お前が炎獄も御槍の力を使える!?」


信吾はその手に炎の槍を作り出し、炎獄の御槍とぶつけ合った。メグはその槍と真正面から受け合う。


「俺が使えなかった力を、何故、お前が!?」


信吾の言葉に反応した炎がメグを襲う。だが、炎に包まれているメグ自身にそんな攻撃は通用しない。


メグはそのまま力任せに信吾を弾き飛ばした。そのまま前に出る。


「そんなこと、知らない!」


横一線に振られた炎獄の御槍は信吾の頬を浅く裂いた。だが、当たらなかったことで大きな隙が生まれる。その瞬間に信吾は炎の槍をついていた。確実に避けられない一撃、のはずだった。


「なっ」


だが、そこには炎の槍を受け止めるメグの姿が。ただし、その受け止めているものは炎の塊。炎の槍だからこそ受け止めることが出来る防御方法だった。ただし、これを狙ってするのは至難の業である。


メグは小さく笑みを浮かべて炎獄の御槍を同じ軌道で戻した。


信吾が慌てて炎獄の御槍を受け止めるが、メグはそのまま受け止めてきた炎の槍ごと信吾を殴り飛ばす。


「貴様!」


「お兄ちゃん、どうしてそう攻撃を急ぐの?」


メグは一歩後ろに下がる。それに対して信吾は大きく前に出た。だが、その瞬間にはメグが前に出ており炎の槍を穂先で薙ぎ払いながら石突で信吾の腹を殴り飛ばす。


「がはっ」


「今だって、不用意に前に出すぎだし」


さらに一歩を踏み出して勢いよく石突で突いた。信吾の体が近くにあった建物にぶつかり、そのまま跳ねて地面を転がる。その上からメグは炎獄の御槍をつきつけた。


「どうして、そこまで弱くなったの?」






ほんの数瞬。たったそれだけでフュリアスの戦闘範囲を大きく逸脱するこの速度。その速度をキープしたまま、僕は機首を下げ出した。


ここからがポイントだ。ハイニトロブースターは加速のみに力を割いているので減速に関してはなんの能力もない。ただ、空気抵抗が極めて大きいので、ハイニトロブースターを使用しない場合は減速しか起こさない。


だから、ハイニトロブースターをパージして虚空に収納する。


速度は減速させているため音速よりも遅い。だから、エクスカリバーそのままの白銀の装甲が陽光を受けて煌めく。エクスカリバーZ1の装甲は音速の中でも行動できるくらい頑丈だけど。


予定通りに行動出来ていることをエスペランサから送られてくる位置データを見ながら確認する。そして、アル・アジフさんから送られてくる戦闘データも確認する。


アル・アジフさんのいる位置の周囲にフュリアスが十七機。機体の系統は不明。だけど、国連の型番系統であることは確からしい。そうなると、弱点は頭。


「全て、頭を打ち抜けばいいよね。だから」


ブースターを逆噴射させて減速を開始する。すでに、エスペランサから発進して三分弱が経過している。


秒速500mの速度は一瞬にして周囲を駆け抜け、標的視界に捉えた。


すかさずレバーを倒し変形させる。秒速500mでの変形は普通なら空中分解か気絶するレベルだけど、エスペランサーZ1とパワードスーツを着込んだ僕ならどちらも回避できる。


「いけっ!」


エネルギーライフルを両手に取りだし、構え、放った。


エネルギー弾は余すことなく三機の敵フュリアスの頭部を貫き、爆発する。


すかさずレバーを立てて戦闘機形態にして一気にフュリアスの群れの中央に跳び込んだ。跳び込んだ瞬間にレバーを再度倒して人型に変形する。


対艦刀は取り出さない。使うのはエクスカリバーZ1のみの装備であるエネルギーナイフ。手首付近につけられたエネルギーソード発生装置の改造版で通常のエネルギーサーベルよりも短い4mほどしか伸びないが射出やトンファーのようにすることもできる。


僕は地面を滑る機体をそのままにエネルギーナイフで近くにいたフュリアスの頭部を貫いた。そのまま振り返りながら両手の発声装置からナイフを射出する。


エネルギーナイフはちょうどアル・アジフさん達の向かい側にいたフュリアスの頭部を貫いた。


その時点でようやくフュリアスが動きだすが遅い。持っているのはエネルギーバルカンだろう。フュリアスには使えない対人鎮圧用兵器。だから、他の攻撃オプションを取り出すのに時間がかかっている。


僕は一瞬で周囲の位置を確認してエクスカリバーZ1の腕を振りながらエネルギーライフルを取り出す。この時にはエネルギーナイフを四度射出しており、その内三つが頭部を貫いている。


横に跳びながらエネルギーライフルの引き金を引く。ちょうど直線状にいた二機のフュリアスの頭部をエネルギーライフルが貫く。これを両手で行う。計四機の撃破。


この時に相手フュリアスはようやく動き出すが、その動きだしたフュリアスの内一機の頭部にエネルギーナイフをトンファーのように逆手にして破壊した。破壊しながらエネルギーライフルの引き金を引く。


残るは一機。その一機は対艦剣を振り上げてこちらに向かって踏み出している。


多分、敵のエース格。だけど、ルーイと比べたら月とすっぽん。僕はその対艦剣を腕で薙ぎ払った。そして、そのまま頭部を掴み、握りつぶす。


国連系統のフュリアスは頭部を破壊されることでセーフティが発動する。それによって機体は完全に動かなくなる。そもそも、頭部にはカメラ搭載されているため、最も破壊されやすい場所でもある。


僕は周囲を見渡した。周囲にいるローブの人達は蜘蛛の巣をけちらしたかのように散り散りなって逃げ出している。僕は小さく息を吐いて、間に合ったことに安堵した。






レヴァンティンの刀身が。『悪夢の正夢ナイトメア』の作り出した防御魔術によって受け止められる。オレはそれを強引に破壊して。『悪夢の正夢ナイトメア』に斬りかかった。


「さすがは第76移動隊隊長というべきか」


レヴァンティンが再度防御魔術によって受け止められる。そして、。『悪夢の正夢ナイトメア』が持つ隼丸が形を変えて剣となり襲いかかってくる。


「くっ」


オレはそれを後ろに下がりながら避けた。だが、後ろに下がった瞬間にいくつもの魔術がオレを狙って飛来する。


それを上手く避けながらオレはさらに後ろに下がった。


「やっぱり、一筋縄じゃいかないか」


「当り前だ。お前とは出来が違うのでな。残りかす」


その言葉にオレは笑みを浮かべた。


「残りかすね。人の才能を認めようとしなかったあんたがそれを言うか?」


オレは笑みを浮かべながら魔術陣を展開する。


「確かに、オレは弱かった。でもな、その弱さをお前達は欠陥品扱いしていただけだろ? オレは、考えたさ。自分の本当の能力を」


「貴様、まさか」


「だから、見せてやるぜ。オレの第三のレアスキル」


『天空の羽衣』でも『強制結合』でもないオレのもう一つのレアスキル。隠していた切り札中の切り札。これを前に使ったのは命の危険があった七年ほど前だ。


オレはレヴァンティンをモードⅢに変更した。そして、その刀身にオレの背中から出ているであろう魔力の輝きを放つ翼が纏わりつく。


「核晶欠損症のオレが弱くても魔術を使えた理由。それが、周囲の魔力を吸収してその魔力を使用できるこのレアスキルだ」


魔力を吸収できると言っても防御には完全に使用できない。ただ、空中に存在する魔力粒子を魔力に変換して吸収し、それを使用できるという破格の能力がある。ただ、その量自体が微々すぎて完全に魔力が虎穴した時にしか利用できない。でも、その量は空間の魔力量によって変化する。特に、部屋の中で戦闘があった場合の恩恵は計り知れない。


戦闘で飛び散った魔力を回収できる、室内に置いて大きなアドバンテージを得る能力。


「まさか、そんな力が」


「あんたはオレを真正面から見ようとしなかった。確かに、オレはこのレアスキルには気づいていなかったさ。気づいたのはあんたらがいなくなってからだ」


「それより、その口ぶり、まさか、俺のことがわかっているのか!?」


その言葉にオレは頷きで返した。そして、両手のレヴァンティンモードⅢを構える。


「ああ。わかっているさ。だから、ここで終わらせる。オレが、この手で!」


周の新たな能力は一見、『天空の羽衣』やレヴァンティンの力と組み合わせることで強力な力を発揮するように思えますが、実は相性がかなり悪いという何とも言えない機能があります。つまり、同時運用はかなり難しいです。出来なくもないですが逆効果だと周も知っています。ただ、能力の使い方次第では魔術師の天敵となりえる能力でもあります。

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