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新たな未来を求めて  作者: イーヴァルディ
第二章 学園都市
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第七十七話 関連

オレは小さくため息をつきながら工程表を見ていた。様々な訓練が書かれておりそれらの一部には○がついている。


これはメグがこなした訓練の数々を表にしたものだ。基礎訓練は自主練をしっかりしていたから早々に切り上げ、基礎応用訓練にステップアップしたのだが、そのスピードは凄まじい。


訓練に必死というのもあるが、別の意図で頑張っているようにしか思えない。


「あれ? 周、まだ残っていたの?」


その言葉にオレは顔を上げた。そこにいたのはエレノアだ。今日は見回りの日だが、あれ? 何か見たことがあるような光景だ。


オレは小さくため息をつきながら軽く肩をすくめる。


「別にいいだろ。ゴールデンウイーク前の確認だよ。エレノアこそ、今日はどうしたんだ?」


「私達は明日に帰省するからちょっとね」


エレノア、ベリエ、アリエ、リリーナの四人はゴールデンウイークは魔界に帰省する。帰省すると言っても魔界の王ギルガメシュに報告するだけだが。


アルや冬華も『ES』の方に行くため若干人数は厳しくなる。


厳しくなると言ってもメグが入ってきたから若干の余裕はあるけれど。


「まあ、久しぶりに楽しんでくればいいさ。こっちはこっちで楽しむから」


「そうね。学校でもお楽しみだったらしいし。ほら、一昨日とか」


一昨日、嫌な予感がしてオレは由姫から逃げた。結局は捕まったけどあれは壮絶なレースだった。というか、階段の上り下りってあんなに疲れたっけ。


その後は色々あって駐在所でメグに手段について語ったからまあお楽しみと言えばお楽しみか。


「新人はどんな感じ?」


「頑張っているというかちょっと怖いくらいにがむしゃらだな。基礎訓練と基礎応用訓練の終了が予定より一週間早い」


「じゃ、即戦力としては十分に期待できそうね」


確かにメグは即戦力としては十分だ。まだまだ模擬戦では勝てないとは言えその実力は第76移動隊としては相応しいだろう。それに、訓練を真剣にやってくれる以上、こちらもやり応えがある。


だけど、オレからすればそれは危険だと感じていた。


「ちょっとオーバーペースなんだよ。メグはそもそも体力がかなりあるし基礎がしっかり出来上がっているからベリエ、アリエのどちらか一人となら勝てると思う。それほどまでに原石としては優秀なんだ。優秀だからメグは訓練についてくる。魔力負荷で鍛えているオレ達の訓練にも」


「疲労骨折になるかも。確かにオーバーペースよね」


「そうなんだよ。ゴールデンウイーク中は模擬戦自体も強化する予定だったけど、予定を変えないとな」


でも、考えられる候補はかなり少ない。オレからすればオーバーペースのメグは心配ではあるがゴールデンウイーク中に新しい訓練を取り入れようとしているからそれをどうするかだ。


いっそのこと既存の訓練を根本的から変えるのはありかもな。


「周も大変だね」


「わかっていたことさ。それに、オレは昔からそうだった。ずっと、ずっと戦っていた。何事にも。だから、今更だとは思う。まあ、この学園都市にいれば世界の滅びなんてありえないと思うしな」


「うん。私もここに来るまでは新たな未来を求めて戦おうって思っていたのにいつの間にか学園都市ののほほんとした空気にやられたかも」


「だよな。狭間市にいた頃なんて世界の滅びを止めて新たな未来を作るための戦いが繰り広げられていたからな」


狭間戦役が特にそうだ。狭間市にいたオレ達第76移動隊が戦い抜いた戦役。未来を変えるために動く勢力を止めるためにオレ達は戦い抜いた。


滅びがどういうものなのかを探り、どうすれば世界を救えるかも必死で考えていた。今もそれは変わらない。


だけど、ここにいたら日常というのに身を流されてしまう。今までのオレが崩してしまう。


「久しぶりにその話でもしない? 周は今はどう思っているのか」


「そうだな。滅びを回避する方法はまだ見つかっていないな。そもそも、前がどんな滅び方をしたのかよくわかっていないのも問題だと思う。巨大な敵によって滅ぶならこちらのメンバーはどうなのかがわからなければ動きようがないし」


「ごめんなさい。そこまではわからないの」


それが分かれば苦労はしないだろう。だけど、問題としてあの慧海がいるのに世界が滅んだのはおかしいというべきか。


慧海の本気は本気で世界を砕くのに。


「やっぱり、人数を集めるしかないな。滅びの明確な時期が分かった時、世界に報告して戦時体制に入る。そして、集めれるだけの人を集める。そうすればまだ望みはあるだろ」


「むしろ、少数精鋭はどう? 第一特務と第76移動隊と強襲作戦とか」


「難しいところはあるけどありっちゃありかな。でも、今は学園都市内のことに目を向けないとな」


いくら世界が滅ぶ時が近づいているとしてもオレ達は学園都市の治安を守らなければならない。それが今の仕事だ。


そして、オレ達がやらないといけないのはナイトメア関連だろう。『赤のクリスマス』と繋がるナイトメア関連。


「よくよく考えてみると『悪夢の正夢ナイトメア』達って世界の滅びに対抗するための組織だよな」


「手段はかなり過激だけどそう思う。大規模なテロを起こすなんて正気じゃないと思うけど」


「確かに、文明や軍事力が滅びに関係するかもって思ったけど、『赤のクリスマス』のニューヨークはむしろ逆効果じゃないのか?」


ニューヨークの死者は他の都市とは桁違いに多かった。だけど、それがあったからか世界は軍事力増強になったはずた。


アリエル・ロワソが『赤のクリスマス』を起こしたのはオレ達のような人を作り出すため。それはわかる。実際、『赤のクリスマス』ではニューヨーク以外は小さなテロばかりだ。だから、警備体制は増強になっても軍事力増強はなっていない。


多分、アリエル・ロワソはそれも警戒したのだろう。だけど、ニューヨークで起きた。『悪夢の正夢ナイトメア』達は何が目的でニューヨークで起こしたのだろうか。


「そう? 別にニューヨークでも」


「だって、ニューヨークには『GF』の主力部隊がいたんだぞ。滅びが起きれば一番対抗策になる若手で優秀な主力部隊が。なのにニューヨークを狙った。滅びから遠ざけるために。逆効果じゃないか?」


親父は『GF』最強の魔術師と呼ばれ、第一特務に属する世界屈指のだった。だけど、ニューヨークで亡くなり戦力が一時的に落ちたと言われている。


よくよく考えると逆のことをしていないか?


「ニューヨークで起こしたのはただ人が多かったからじゃないのか?」


「ニューヨークで起こさないといけなかったってこと?」


オレは頷いた。オレの考えからしたらそれ以外に思いつかない。『赤のクリスマス』でニューヨークじゃなければいけなかった理由はなんだ? 何を狙ったんだ?


「だぁー、頭がこんがらがってきた。どうやって証明すればいいんだっつうの」


「いつもの推測は?」


「判断材料が少ない。はぁ、今は考えても仕方ないか。『悪夢の正夢ナイトメア』と『赤のクリスマス』は一度離して考えた方がいいし」


「周らしくない」


「それはわかっている」


わかっているのだが、オレからすれば小骨が引っかかった状況だ。これを取り除くことが出来ればいいのだが。


「考えても仕方ない。そろそろ戸締まりするから出るぞ」


「うん。送っていこうか?」


「それはオレのセリフだ」


エレノアが危険にさらされるわけじゃない。エレノアに手を出した不審者が危険にさらされる可能性があるからだ。


実際、過去にあったからな。


オレは小さくため息をついて立ち上がる。引っかかる何かをそのままに。


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